経絡≒ファシア12(まとめ)

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

鍼治療とファシアの関係、また、鍼治療は体にどんな影響を与えるのか、という視点から整理したいと思います。

そこで、まずはブログ1から11までの内容をチェックし、特に重要と思ったものを“ファシアの概要”、“ファシアの機能”、“ファシアの構造”、“その他”の4つに分類しました。その中の“ファシアの概要”は下の2つの図の後にあります。

皮下組織
皮下組織

画像出展:「人体の正常構造と機能」

上から“表皮”→“真皮”→“皮下組織”になります。“浅筋膜”は皮下組織の部分です。

 

 

深筋膜
深筋膜

画像出展:「Tarzan」

深筋膜は浅筋膜(皮下組織)と筋(筋外膜)の間にあります。

また、図には書かれていませんが、深筋膜と筋外膜の間には、疎性結合組織の層が存在しています。

 

 

ファシアの概要

・筋膜は身体全体を通して広く分布して、不規則でさまざまな密度のコラーゲン線維を織り混ぜたもので構成される結合組織の形態を示す。

・筋膜は身体において複数の役割を果たす。大部分の構造物を覆い保護力は高く、また潤滑機能を提供する。

・筋膜は疎性結合組織によって分けられる重複層として配置されており、様々な層間での滑走性を可能にする。そして、神経と血管を保護し筋膜が被る牽引から緩衝する。

・内臓か身体かにかかわらず、身体の臓器系は高度に分化した組織から構成されており、維持のために複雑な支持機構を必要とする。この支持機構はコラーゲン線維およびエラスチン線維を含む結合組織ネットワークであり、すべて筋膜と称される。線維成分の密度は個体あるいは局所的に大きく変化する。

・筋膜は結合組織の様々な構成要素間にある任意の境界線を明確にしないという重要な特徴をもっている。

身体最大の系である筋膜系は他のすべての系と接する唯一の組織である。

筋膜は身体の織物である。つまり身体を覆う衣服ではなく、材料としての縦糸と横糸である。筋と骨、肝臓と肺、腸と泌尿器、脳と内分泌物といったその他の組織は、膜の織物の中に縫い込まれている。

上記の青字は、特に[経絡≒ファシア]を連想させます。私は[経絡≒ファシア]であると確信します。しかし、生まれも育ちも異なる“ファシア”と“経絡”を[=]とするのには抵抗があります。

なお、”経絡≒ファシア1”でご紹介した“経絡”とは次の通りです。

経絡とは、気血の運行する通路のことであり、人体を縦方向に走る経脈と、経脈から分支して、身体各部に広く分布する絡脈を総称するものである。』

ファシア(まとめ)
ファシア(まとめ)

上記の表内の青字は鍼治療を「ファシアに対する機械的ストレス」とみなしたときに、特に注目すべきと思った個所ですが、以下に抜き出します。

ファシアの機能

・肥満細胞はヘパリン、セロトニン、ヒスタミンを産生する。

・肥満細胞が活性化されると、顆粒を基質に放出して血流と免疫防御を活性化する。

・脂肪細胞はエストロゲンだけでなく、ペプチドやサイトカインも分泌する。

・筋膜の緊張調節と交感神経の活性化の間には、潜在的に緊密な関係がある。

・コラーゲン線維は、機械的ストレスに対して適切に調整する。

・組織の形状の変化は電気電圧の変化につながる。分子はこの圧電性活動を利用する。

ファシアの構造

・リンパ管と毛細リンパ管がある。 

・豊富な動静脈吻合を提供する。

・神経線維は全ての深筋膜内に存在し、神経線維は特に血管周囲に多い。

・疎性結合組織層(深筋膜と筋外膜の間)には多くの血管が存在する。

・結合組織と筋膜には神経が豊富に分布している。

・コラーゲン線維は種々の方向に緊張して変形するので網状組織が生じる。

・病的クロスリンクは網状組織の可動性を減少させ関節包の縮小や筋の短縮に至る。

・筋膜にはマクロファージ、肥満細胞や免疫細胞が存在している。

その他

・内受容は筋膜受容器、感情、自己認識の間の複雑なつながりにおける新しい相互関係である。

・内受容性神経終末への機械刺激は交感神経に関与し、局所の血流を増加させる。

・細胞の損傷は生物フォトンの生成を促進する。

まとめ

コラーゲン線維は、機械的ストレスに対して適切に調整するとあります。つまり、鍼治療がファシアに作用することは明らかです。また、「コラーゲン線維は種々の方向に緊張して変形するので網状組織が生じる」とあり、さらなる“病的クロスリンク”は「網状組織の可動性を減少させ関節包の縮小や筋の短縮に至る」とされています。

一方、ファシアは、神経線維、血管、リンパ管、動静脈吻合、マクロファージ、肥満細胞、免疫細胞、脂肪細胞、さらに各種受容器などを含んでいます。特に肥満細胞はヘパリン、セロトニン、ヒスタミンを産生し、脂肪細胞はエストロゲン、ペプチド、サイトカインを分泌します。また、筋膜(ファシア)の緊張と交感神経には緊密な関係があります。

さらに興味深いのは、組織の形状の変化は電気電圧の変化につながるとされ、また、細胞の損傷は生物フォトンの生成を促進するとされています。さらに、内受容(筋膜受容器、感情、自己認識の間の複雑なつながりにおける新しい相互関係)にも関与しています。

以上のことから、ファシアへの鍼治療(機械的ストレス)は、ファシアが有する機能や構造に加え、電気電圧、生物フォトン、そして、内受容などを通して心身に影響を及ぼします。

ご参考:生物フォトンと君火・相火

生物フォトンをご研究されている(”稲場フォトンプロジェクト”)、東北大学の稲場文男先生は、生物フォトンについて「生物活動の活発なありさまを教えている」、「生物活動をリアルタイムで知らせる光の情報である」と説明されています。

一方、””については東洋医学においても注目すべきものがあります。それは”君火”です。また、この君火と対比して存在しているのは”相火”であり、こちらは””を意味しています。

この”君火・相火”について、何か説明されているサイトがないか探したところ、「日本エネルギー学会」さまのホームページにそれはありました。

君火・相火
君火・相火

君火・相火

『陽火・陰火のことである。君火は明るさを特色とし、相火は温熱を保持することを本分とする。全ての火を観察するとその気と質に上下がある。そもそも明るさとは光であり、火の気である。位とは形であり、火の質である。一寸の燈明が室いっぱいに明るく広がるのは火の気によるものである。また、炉にみちた炭が熱があっても焔がないのは火の質によるのである。

焔も炭もみな火である。しかしながら、焔が明るい時は熱が弱く、焔が立ち上がらずにこもっている時は熱が強い。気が動ならば、質は静と云える。(出典 張介賓(明)撰「類経図翼」1624) 』

張景岳『類経図翼』
張景岳『類経図翼』

張景岳『類経図翼』

張景岳の”景岳”は、張介賓の”号”になりますので、同一人物です。

左の絵は、”九州大学附属図書館企画展 「東西の古医書に見られる身体」-九州大学の資料から-」”というサイトに出ていたものです。

また、”京都大学貴重資料デジタルアーカイブ”には「類経図翼」の膨大なデジタル資料が閲覧できるようになっていました。