概要
末梢性のめまいであり、激しいめまいに加え耳鳴、難聴、耳閉塞感という蝸牛症状を伴います。昔は症候診断のため、回転性めまいの多くがメニエール病と判断され、循環改善薬などが提供されてきましたが、現在はMRI画像で正確に診断できるようになった結果、メニエール病という診断は減り、その代わりに良性発作性頭位変換めまい症が増えました。
ポイント
1.主な症状は激しいめまいと耳鳴、難聴、耳閉塞感などの蝸牛症状がみられます。
2.病院でMRI画像検査などを行うことをお勧めしています。
3.本治は腎経、心包経および肝経に注目します。また自律神経の問題も検討し治療方針を決めます。
4.標治は耳および脳幹を意識し、後頭から耳周辺の硬さや圧痛を取ることが基本になります。
5.予防は日常生活で疲労とストレスをためないこと、首を冷やさないことが大切です。
補足説明
メニエール病は内耳の病気で、繰り返す激しいめまいに耳鳴や難聴、耳閉塞感を伴いますが、通常は片側に限定されます。ただし、稀に両側に障害が発生することもあります。
症状は突然、回転性のめまいが起こり、めまいと同時か少し前から、片耳に耳鳴や難聴、耳の閉塞感が起こることが一般的です。めまいを繰り返す間隔は、数日、数週間、数カ月、あるいは1年に1回など様々です。激しいめまいは、普通30分くらいから数時間続きます。めまいが激しい時は、吐き気、嘔吐、動悸などが起こり、非常に辛い症状を呈します。
本治は、耳疾患は腎が関係すると考えられており、腎経を中心に心包経および肝経に注目しますが、個人差もあり基本的にはあくまで、四診に基づき治療方針を立てます。現代医学的には主にストレスからくる自律神経のバランスの乱れを調えることや、脳幹や耳、つまり頭部の血液循環を高めることが指摘されていますが、鍼灸でもそれらは重要と考えます。
標治では胸鎖乳突筋、斜角筋、板状筋、半棘筋および後頭下筋などの側頚部、後頚部への刺鍼を行っています。さらに骨盤部を覆う筋肉の硬さによる脳脊髄液の循環低下による可能性もあるため、骨盤部への刺鍼も行います。
付記
脳脊髄液を含む嚢状の脊髄硬膜は脊髄と馬尾を包み、一般的には第2~第3仙椎の高さで急に先細りとなりますが、この部位にまで達しています。さらにその先端からは終糸に癒合する細い索状の脊髄硬膜糸となって下行し、尾骨後面に付着して終わります。