捻挫(足首)

概要
捻挫は関節の過度な伸展にともない、靭帯が部分的に傷害されたもので、強い痛みと共に傷害の大きさにより腫れ、発熱、皮下出血、水腫などがみられます。受傷時は肉離れ同様、皮下出血を最小限に抑える処置のRICE(ライス)という応急処置を行うのが基本です。下段「メモ」を参照ください。

 

ポイント
1.受傷時はRICEにより、皮下出血を最小限に留めることが重要です。
2.治療点は受傷部位と足関節の稼働に関係する筋と腱になります。
3.慢性化した捻挫の場合、硬結に運動鍼や灸を使うことが有効です。

 

補足説明
鍼灸治療は傷害の程度、皮下出血の量によりますが、通常は受傷48時間~72時間経過後であれば治療は可能です。

目的は回復を促進しできる限り早く、通常の状態に戻すことですが、そのためには硬くなった筋や腱などの硬結や受傷部位の瘢痕(傷あと)を除去するために十分な血液を送り、酸素と栄養素を最大限に供給することが必要です。例えば、足関節外側部であれば、長短腓骨筋の負荷が高まり筋や腱が硬直化しますので、長短腓骨筋腱が対象になります。

 

慢性化した捻挫の対応
●硬いシコリは古傷の瘢痕治癒(傷あと)とよばれる状態です。この古傷の硬結や 突っ張りを取り除かないと再発の可能性が高くなります。
●触診はやや爪を立てる感じで指先に力を入れ、特に痛みを感じる圧迫方向をチェックします。
●治療は痛い所を探すのが第一の仕事です。内果であれば下部、外果であれば後下 部の靭帯に1㎜以下の細い線状の硬結が出ており、これらの硬結に鍼もしくは灸を使い取り除きます。

 

付記
●RICE(ライス)…RはRESTで「安静」、IはICEで「冷却」、CはCOMPRESSIONで
 「圧迫」、EはEREVATIONで「高挙(横になって患部を心臓より高くする)」です。目的は出血や炎症を最小限にするために行います。

ブログリンク

足関節捻挫後遺症

下記はブログの一部です。治療は足関節に影響を及ぼす筋群と損傷部位の2つに注目します。

足関節捻挫の遠隔治療の筋肉

1.大腿後面の筋(ハムストリングス:大腿二頭筋、半腱様筋・半膜様筋

2.下腿の筋腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長指(趾)屈筋、長母指(趾)屈筋、長腓骨筋

3.足部内在筋(足裏への刺鍼は強い痛みを伴うため、基本的には施術対象外と考えています)

4.股関節外転筋・外旋筋大殿筋、中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋、梨状筋など

腫脹の周辺と損傷靭帯部が刺鍼対象です。置鍼は10~20分。
スポーツ鍼灸

著者:松本 勅

出版:医歯薬出版

発行:2003年7月

靭帯の損傷が大きく、疼痛、腫脹、機能障害などが顕著な場合は一般治療(整形外科治療)を優先させるが、軽度の場合は消炎、鎮痛、腫脹の軽減などを目的に腫脹の周辺への数本の刺鍼および損傷靭帯部への1靭帯1本の刺鍼を行い、可能であれば10~20分間置鍼する。後に円皮鍼を腫脹の周縁部に留置してもよい。

靭帯は軟部組織(ファッシア)です。1mm以下の細い線状の硬結をねらいます。
内反捻挫

損傷靭帯部の刺鍼は、前距腓靭帯は外果の前下部(中封穴付近)に、踵腓靭帯は外果の下部(申脈穴付近)に、後距腓靭帯は外果の後下部に、外側距腓靭帯・二分靭帯(踵立方靭帯と踵舟靭帯)・背側踵立方靭帯は外果前下部よりもさらに前方にあるので、指先で腫脹・圧痛を調べて靭帯を確認して的確に刺入する。