概要
頭痛には通常みられる一次性頭痛以外に脳腫瘍やクモ膜下出血など、生命に関わるような頭痛もあり、これらは二次性頭痛とよばれています。脳腫瘍では嘔吐や意識障害などがみられ、クモ膜下出血では激しい痛みがいつから(何月何日何時頃)起きたかを覚えています。もし、このような所見がみられる場合は、速やかに病院で診察を受けてください。
一方、一次性頭痛の中で、辛い慢性頭痛の患者は2002年の全国疫学調査によると約40%(緊張性頭痛22.3%、片頭痛8.4%、その他9%)と報告されています。通常は頭痛に加え肩や首のこりを訴えられる場合がほとんどです。
ポイント
1.頭痛に嘔吐、意識障害、激しく突然発症する頭痛であれば、病院での診察を最優先してください。
2.肩こり、首こりを伴い、締め付けられるような痛みがあり、生活動作では増悪しない頭痛であれば、改善効果が特に期待できます。
3.標治は頭部も肩や首と同様に、触診して緊張や硬結あるいはブヨブヨ感などの状態を把握することが重要です。
補足説明
筋緊張性頭痛
過度な筋緊張により、後頚部や後頭部の筋に阻血性収縮が起こり発痛します。機序は阻血性収縮→局所の代謝・循環障害→発痛物質が遊離→筋付着部、靭帯の末梢神経を刺激→後頚筋付着部の後頭下に痛み→側頭部、眼窩深部に放散痛(頭に重りを載せられているような頭痛)原因は、姿勢異常(首の前傾)、精神的緊張が考えられます。症状の特徴は非拍動性で持続する痛みが両側に起こります。肩首こりを伴うことがほとんどです。
治療は筋の緊張緩和が第一となりますが、丁寧な触診により硬結、圧痛や陥下、ブヨブヨ感、熱感などの反応点を刺鍼ポイントとしています。また、発生している頭痛が僧帽筋や胸鎖乳突筋、頭板状筋などの関連痛の場合もあり、これらの筋肉にこりや痛みが自覚されていない場合でも、確認作業が必要になります。
片頭痛
血管の拡張により発生すると考えられていますが、まだ解明はされていません。有力と考えられているのは三叉神経血管説です。機序は、刺激→三叉神経→血管拡張性神経ぺプチド放出(サブスタンスP、CGRPなど)→血管拡張・血管透過性亢進→炎症作用→痛み。です。
拍動性、反復性、片側性が特徴で、筋緊張性頭痛とは大きく異なるため鑑別は容易です。また、閃光暗点、視野狭窄などの前駆症状を伴うことがあり、悪心、嘔吐などの消化器症状、鼻汁、鼻閉、目の充血などの自律神経症状がみられます。圧痛は血管上(後頭動脈、浅側頭動脈、眼窩上動脈など)に現れます。誘因は不眠、騒音などのストレスや血管拡張に関係するアルコール類等の飲食があり、生活習慣を見直すことが大切です。
治療は血管の異常拡張の抑制を目的とし、自律神経を調え血管運動を安定させるのが狙いとなりますが、頭蓋血管上の圧痛や肩頚部の筋緊張、硬結部に施術することが基本です。動脈血管壁に対する刺激では、浅側頭動脈[和髎]、後頭動脈[完骨]、頚動脈[人迎]、眼窩上動脈[陽白]などが刺鍼ポイントになります。