胃腸症状(神経性)

概要
胃腸症状は、急性、慢性、神経性に分けられますが、神経性の胃腸症状とは胃や腸自体には何も異常がないにも関わらず、胃腸症状が起きているという病態です。原因はストレス、特に仕事や人間関係などの精神的ストレスが大きいと思います。
ここで少し脇道にそれてしまうのですが、解剖学者・発生学者の三木成夫先生の著書に[内臓とこころ]というものがあります。とてもユニークな視点で混乱しやすい「こころ」と「あたま」を分かりやすく解説されているのでご紹介します。
「こころとあたまは、いわゆる精神を支える2本の柱ともいわれているが、この両者は対照的である。[切れるあたま]とはいうが[切れるこころ]とはいわない、また、[温かいこころ]はあっても[温かいあたま]はない。つまり[あたま]というのは、判断とか行為といった世界に君臨するのに対して、[こころ]は感応とか共鳴といった心情の世界を形成する。一言でいえばあたまは考えるもの、そしてこころは感じるもの、ということである。また、あたまは体壁の世界に属したものであり、こころは内臓の世界に根を下ろしたものである。」
これを読むと、精神的ストレスとは、現実社会の中で奔走する「あたま」に「こころ」が追いつけず、振り回されてしまっている状態なのではないかと思います。

 

ポイント
1.神経性の胃腸症状はストレスが1番の原因です。
2.消炎鎮痛剤の使用は、辛い状態の時だけ服用するのがよいと思います。

 

補足説明              
鍼灸治療では、肝経と脾経に緊脈が出ていないかに注目します。また、腹診も硬結、圧痛に加え、動悸や膨満などを診ます。ストレスが強い場合は、背中の脊柱の両側に線状の硬結が出ていることも多く、そこも重要な診断・治療ポイントになります。
なお、市販の消炎鎮痛剤(多くは非ステロイド性抗炎症薬とよばれるもの)を服用される場合ですが、消炎鎮痛剤は痛みを抑えるには良い薬なのですが、自律神経の交感神経を優位にするため、冷えにつながります。また健康には十分な血液による酸素と栄養素が臓器や組織に届くことが大切ですが、血行の点からも望ましいものではありません。従いまして、症状が辛いとき限定とされた方がよいと思います。