変形性膝関節症

概要
膝関節の軟骨の変性、磨耗によって関節の破壊が起こり、これに対して骨硬化や骨棘形成などの骨増殖がみられ、膝関節の変形と疼痛、運動制限を起こす疾患です。

老化や肥満以外に原疾患が明らかでない一次性が多く、特に40歳以上のO脚(内反変形)の女性に多くみられます。

 

ポイント
1.変形性膝関節症のX線画像検査による評価は、個人差による痛みのバラツキが
 非常に大きく相関性は認められていません。
2.鍼灸治療では膝関節に関わる筋肉群の硬さを取り除き、大腿四頭筋を筆頭とす
る筋肉群の筋力を高めることが重要です。
3.整形外科でのヒアルロン注射は有効です。
4.人工関節の置換手術を行う場合は、術後の生活に支障ないだけの筋力を保持し
ていることが前提になります。

 

補足説明
変形性膝関節症は加齢による関節軟骨の退行変性です。関節軟骨には神経も血管も存在しないので軟骨からの痛みはありません。痛みの原因は滑膜炎、歩行や可動域に関わる関節周囲の筋によるものになります。

大きな課題として、ハムストリングスの屈曲拘縮により完全伸展ができない状態が起きます。この課題は、内側広筋や外側広筋などの大腿四頭筋の収縮が制限されるため、大腿四頭筋の筋力低下につながります。また、二関節筋である腓腹筋も影響を受け、同様に筋力低下および筋短縮による筋肉の硬さが問題になります。

近年まで、変形性膝関節症のX線画像検査による重症度評価が、痛みに関係するとされてきましたが、個人差による痛みの程度のバラツキは非常に大きく、相関性は認められないとの結論に至っています。従って、現在では痛みや機能障害との関連性は主に筋力低下であると考えられています。
なお、危険因子は、年齢、肥満、O脚、大腿四頭筋筋力が上げられますが、特に問題となるのは痛みによる負のサイクルです。
これは、痛みは一時的な筋収縮を起こし虚血状態をつくります。さらに痛みが続くと筋の虚血状態は続き、細胞から発痛物質が分泌され痛みは強くなります。発痛物質は筋を収縮させるため、虚血状態の筋肉はさらなる発痛物質によって痛みが増してしまうという悪循環に入ってしまいます。
整形外科ではヒアルロン注射により、関節部の摩擦抵抗を減らすことで痛みを軽減できると考えられています。また、歩行困難が重度な場合には人工関節の置換手術が行われますが、基礎となる筋力が術後において必要となるため、筋力が低下している高齢者の場合は十分な検討と慎重な判断が求められます。

鍼灸治療では関節あるいは軟骨に働きかけることはできませんが、膝の痛みの原因が膝関節の動作に関わる筋肉などの軟部組織の疲労や硬さが主な原因となるため、大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋群および下腿前面の前脛骨筋、側面の腓骨筋、背面の下腿三頭筋を緩めることで、膝痛の緩和が可能です。また、変形性膝関節症患者は膝の伸展に制限が出やすく、このことは大腿部の筋力低下につながるため、膝の伸展、屈曲の可動性を高めるための運動鍼も有益です。