後脛骨筋腱機能不全症(PTTD)

概要
内果(内くるぶし)の痛み、つま先立ちができない、O脚であるなどの所見があり、X線画像検査では異常がなかった場合、後脛骨筋腱機能不全症(PTTD)を候補として考えるべきと思います。後脛骨筋は足首を伸ばしたり、捻ったりする運動に関与しています。そして筋は腱に移行しており、内果のところで直角に曲がっています。このため、骨に擦れて慢性的な摩擦が起こりこれが後脛骨筋腱の炎症の原因になります。また、足首の捻挫のようにひねる力も後脛骨筋腱を傷め、同じく炎症の原因になります。

 

ポイント
1.内果(内くるぶし)の痛み、つま先立ちができない、O脚であるなどの所見が
 あります。
2.X線画像検査では異常は確認されません。
3.度重なる足首の捻挫など足首を酷使してきた経緯が関係します。

 

補足説明
以下の内容は自分に対して行った治療に基づくものです。「この痛みは一体何だろう?」という思いで、色々調べた結果たどり着いた疾患になります。学生時代に度重なる捻挫を経験し、30代後半以降で3回の疲労骨折も経験しました。このように右足関節は酷使してきたため、ボロボロ状態であるといえます(関節が緩く、コキコキと音がします)。

数年前より主に内果下方に鈍痛を感じるようになりましたが、その後、歩行時にも痛みを感じる状態となりジョギングはおろか小走りすら困難になりました。このため、整形外科、鍼灸院、整体で治療を受けましたが原因も分からず、状態が改善されることもありませんでした。
自分としてはせめてジョギング位はできないとまずいなぁ、という思いからネットで徹底的に調べて出てきたのが、この、後脛骨筋腱機能不全症でした。これは外反母趾や偏平足の原因にもなるということが記述されていました。状況は同じではありませんが、私は生まれつき偏平足であり、やや外反母趾の傾向があります。断言はできませんが、これらの背景も後脛骨筋腱機能不全症を疑う要素と考えても良いのではないかと思っています。

 

治療について
治療方針
●後脛骨筋のトリガーポイントを取り除くことにより筋肉を改善し痛みを取り除く
治療経過
●膝窩下方3cm付近の深層に棒状の硬結と強い圧痛箇所を確認し、この部位に4か
 所刺鍼した。この際、顕著な局所短収縮反応(ビックとする反応)があった。そ して、翌日には内果下方の疼痛は明らかに軽減された。

●一方、土踏まずに新たな痛みが出たため、数ヵ所、刺鍼してみたが痛みは全く変 わらなかった。
●翌日、再度調べたところ、この土踏まずの痛みは腓腹筋内側頭下部付近のトリ
ガーポイントの関連痛の可能性が高いことをつみ、硬結と圧痛の部位を確認し刺鍼した。すると後脛骨筋の時の局所単主縮反応を超える、強い反応がビク、ビク、ビクと3回連続で起きた。その結果、痛みは踵骨近辺の箇所を除きほぼ解消された。
●次に疼痛は外果に移ったが、疼痛部位は深く場所が非常に分かりづらい部位で
あった。トリガーポイントから考えると長・短腓骨筋が予想されたが触診により短腓骨筋のトリガーポイントを意識し、複数個所に刺鍼した。僅かだが局所単収縮反応がみられた。
・翌日には外果の痛みもほぼ取れ、疼痛レベルは90%程軽減された。

 

付記
この治療を行ったのは2年前の夏でした。正直、あまりにうまくいったため、いつか参考にする時が来るだろうと考え、当時、記録に残していました。今回の内容はその時のものになります。また、これがきかっけでトリガーポイントの有効性を強く認識し、自分の治療スタイルの1つに組み込みたいという気持ちに至りました。

ブログリンク:宮市選手の怪我について(足関節捻挫)

こちらのブログのほぼ中段に、少しですが ”後脛骨筋” に関する情報が出ています。

後脛骨筋は深い所にあり、前脛骨動静脈、後脛骨動静脈、腓骨動静脈に囲まれています。
下腿の断面図

画像出展:「人体の正常構造と機能」

後脛骨筋は深い所にあり、前脛骨動静脈、後脛骨動静脈、腓骨動静脈に囲まれています。

足首の捻挫としては圧倒的に内反の捻挫が多くなっています。
外反と内反

画像出展:「人体の正常構造と機能」

「外反」と「内反」を紹介した写真です。足首の捻挫としては圧倒的に内反の捻挫が多くなっています。

 

・MRIによる急性内反捻挫の損傷部位の調査では、次のように報告が出ていました。
 ・外側の軟部組織
  ・96%…前距腓靭帯
  ・80%…踵腓靭帯
  ・27%…短腓骨筋
  ・13%…長腓骨筋
 ・内側の軟部組織
  ・53%後脛骨筋 
  ・13%…長母指屈筋
  ・ 7%…長指屈筋
  ・ 6%…三角靭帯

「トリガーポイント・マニュアル」では“ランナーの強敵”と命名されています。
後脛骨筋のトリガーポイント

このMRIによる調査で注目したいのは、内反捻挫でも内側に損傷が発生することで、特に後脛骨筋が50%超えているというところです
後脛骨筋については、”適応疾患”(後脛骨筋腱機能不全症)で紹介させて頂いているのですが、ここでは「トリガーポイントマニュアル(トリガーポイントの原点ともいうべき書。著者はJanet G.TravellとDavid G.Simons)」から後脛骨筋のトリガーポイントをご紹介します。この本には各筋肉毎にキャッチフレーズのような見出しがついているのですが、後脛骨筋は「ランナーの強敵」となっていました。

慢性捻挫でアキレス腱から内果付近に疼痛があって、この絵の「✖印」付近に棒状の硬結があり、押すと、思わず「ウッ」となる強い痛みがある場合は、後脛骨筋のトリガーポイントが原因になっている可能性が考えられます。