恥骨結合炎

概要
恥骨は骨盤の一部であり、恥骨結合は左右の恥骨がクッション機能を果たす軟骨円板で結合される部分です。本来は動くことのないところですが、サッカーやラグビーなどのキック動作や俊敏なストップ、方向転換などの激しい動きの連続を伴うスポーツではこの結合部分に捻れや牽引などの強い力がかかり炎症が起きます。

また、出産後の骨盤が緩んだ状態で、育児などの無理な姿勢や同じ動作が繰り返し行われると、同様に恥骨結合炎を発症する場合もあります。

 

ポイント
1.恥骨結合炎はスポーツ選手や出産後の妊婦さんにみられます。
2.日頃のケアとしては、正しい姿勢と内転筋群(太ももの内側の筋肉)のスト
 レッチや体操があります。
3.鍼灸治療では、内転筋群、大腿四頭筋、腹直筋、中殿筋が主な対象になります

 

補足説明
最初は太腿の付け根の違和感や張りを感じ、次第につけ根や恥骨結合部に痛みを感じるようになります。通常は体を動かした時 の痛みのほか、慢性化してくると鼡径部や大腿内側や腹部にも痛みが出る場合もあります。さらに股関節の可動域が低下する といった問題も起こってきます。

特にサッカーでよく使うインサイドキックでは、内転筋の恥骨付着部に大きな負荷がかかるため、恥骨結合部には負担となります。恥骨結合炎がサッカー選手に多くみられるのは、この動作が常に頻繁に繰り返されるからではないかと思います。なお、スポーツではサッカーによるものが約70%であるという指摘もあります。
また、片方の足の怪我をかばい、左右のバランスが崩れた姿勢のまま運動を続けていると、骨盤部に影響し、それが恥骨結合部 の痛みの原因になることもあります。
診断はMRIやX線の画像検査と恥骨結合部の圧痛の有無を診断します。セルフケアとしては恥骨結合部の負荷を軽減させるために、股関節周辺のストレッチを行い、内転筋群の軟らかさを維持することが大切です。
鍼灸治療では、内転筋群を中心に腹直筋、大腿四頭筋、中殿筋を治療対象と考えています。中殿筋を対象にしているのは、内転 筋群中心の治療をした患者さまが治療後、殿部の痛みを指摘されたことがあり、調べた結果、「体幹の安定には外側の中殿筋と 内側の内転筋群の双方の連動が重要になってくる」とのことを確認したためです。

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