概要
機能性子宮出血は不正性器出血の約30%を占め、頻繁に遭遇する病態ですが、誤診を防ぐために十分な鑑別診断が必要です。
また、年代と排卵の有無による分類があり、年代による分類では半数が45歳以上、一方、20歳未満は約20%です。排卵の有無では、無排卵性出血が約75%を占め、思春期と更年期に多くみられます。排卵性出血はさらに卵胞期出血、排卵期出血、黄体期出血に分類されますが、いずれも性成熟期に多く出血量は少量であるのが特徴です。
ポイント
1.機能性子宮出血は珍しくない病態ですが、重大疾患との鑑別診断が重要です。
2.肝臓の疲労に注意することが大切です。特に刺激物を減らし、ストレスを低減することが重要と思います。
3.特効穴は血海と三陰交です。
補足説明
当院に来院された患者さまは2、3年前に子宮に関する手術後、ほぼ毎月のように出血が続いているという状況でした。2つの婦人科の検査では、機能性子宮出血であり特に心配はいらないとの見解でした。また、時々強い胃痛と背部痛などが起きるとのことでした。
本治は脈診での肝経の緊脈を重視するとともに、不正性器出血に有効とされている血海と三陰交という経穴にも刺鍼しました。
標治は触診により腹部や背部を中心に硬結を取り除くことに注力しましたが、特に3回目までの治療では、頻繁に腹鳴(お腹が鳴ること)があったのが印象的でした。腹鳴は副交感神経が活性化していることを示すので、自律神経のバランスが崩れ、交感神経優位な状態だったのだろうと推測できます。
治療開始は、子宮出血直後のタイミングだったため、週1回、3回目の治療後に出血が止まったということを判断しました。なお、現在は治療を行っていません。
付記
非常にうまくいった治療だったわけですが、何故、出血がとまったのか自分なりに考えてみました。大元は内分泌系(ホルモン)と自律神経系が大きく関与するものと考えますが、引き金となったのは、「ストレスと肝臓の疲労」ではないかと思います。
機能性子宮出血の出血原因の一つに肝機能低下が関係しているのは明らかになっています。具体的には肝臓で産生されるトロンボポエチンという血小板を作るホルモンの減少は、血小板数の低下につながり出血しやすくします。また血液凝固因子の合成は肝臓で行われているので、この点でも出血傾向を生みだします。
肝臓は身体に大きなストレスがかかっているとき、様々な栄養分を作る働きをしているのですが、血液は筋肉を優先するため、肝臓に流れる血液量は少なくなります。この結果、肝臓は酸素や栄養素が不足する状態となって大きな負担がかかります。そして、この状態が続くと肝臓は疲労していきます。
また、煙草、アルコール、大量の飲食物などの刺激物が体内に入ると、その刺激を緩和させるために肝臓が働きます。従って、刺激が強くなればなるほど、飲食する回数が増えれば増えるほど、肝臓に負担がかかります。こうして、肝臓は疲労を起こします。疲労を起こした肝臓はかたくなり、その結果横隔膜の動きが悪くなります。横隔膜の機能が低下すると、胃腸全般の働きにも影響し、胃腸の反応は腹部の裏側にも現れるため、背中に圧痛や硬さが出てきます。
ご参考
画像出展:「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科」
ブログリンク