“氣”とは何だろう44(まとめ)

2024年12月20日に始めた「“氣”とは何だろう」という一連のブログで読んだ本は計23冊です。

テーマは計19になります。

鍼灸編

東洋医学概論編

エントロピー編

科学編

治癒力編

ミラーニューロン編

脳腸相関編

臓器ネットワーク編

酵素編

リンパ編

合気道編

気功編

気療編

本山博編

間中喜雄編

長濱善夫編

磁気生物学編

この発散し収拾のつかない状態をどうやってまとめるのか、「どうする??」という感じでしたが、まず、すべてのブログを見直し、あらためてExcelに特に重要と思った箇所を列挙してみました。次に“森”と“木”に例えられるように、“全体”を俯瞰しながら、個々の内容を一つ一つ深堀してみました。その際、中心に据えたのは「氣は血を推動する」ということです。すべてはここに集約されると思って作業を進めました。

※氣は血を推動する

氣は血を推動するは、約2000年前の『黄帝内経(こうていだいけい)』にさかのぼります。『黄帝内経』は、中国最古の医学書であり、戦国時代から前漢(紀元前3〜2世紀)に編纂されたとされます。この中で人体の生命活動は「氣・血・津液」によって維持され、「氣は血の帥(すい:統率者)」と述べられています。すなわち、これが「氣は血を推動する」という発想の原点です。

その結果、補足を入れて6つの視点から整理することにしました。

1)氣と森羅万象

2)氣と同調現象

3)氣と健康

 ①氣は血を推動する

 ②病の始まりはストレス

 ③脳腸相関

4)東洋医学と西洋医学のパラドックス

5)氣の訓練

補足)長濱善夫先生の経絡

そして、肝心の「“氣”とは何だろう」の答えは、氣≒シグナル伝達分子となりました。

そして、“氣”をよびこむ最も重要なことは「肩の力を抜くこと(リラックス)」だと思います。やっと自分の腹に落ちました。

画像出展:「命を支える神秘の巨大ネットワーク “メッセージ物質”が医療を変える!

この番組(本)では“メッセージ物質”という表現をされていますが、この本の中でも説明されているように、“メッセージ物質”は一般的な医学用語ではありません。通常は“シグナル伝達分子”です。つまり、この図は【氣≒シグナル伝達分子】のイメージということになります。 

この答えに至った経緯をご説明させて頂きたいと思います。なお、「シグナル伝達分子」とは、生体内で情報伝達する役割を持つ分子で、代表的なものにホルモン、サイトカイン、神経伝達物質、成長因子などがあり、細胞外や細胞内での情報伝達を担っています。

1)氣と森羅万象

「森羅万象」とは、宇宙のありとあらゆる存在・時間・空間・生物・無生物・自然現象・人間の営み全てを網羅する言葉です。なぜ、このような視点で考える必要があるのかと思ったのは、東洋医学には宇宙観(人間と宇宙は本質的に一体であり、同じ原則に基づき存在・変化している)があるからです。宇宙全体を「マクロコスモス」と呼びます。人体は「ミクロコスモス」とされ、“氣”はこの2つに関わっています。

この東洋医学の世界観は、“氣”を知るために無視することはできないと考えました。そこで頭に浮かんだことは、最終的に宇宙(マクロコスモス)と人体(ミクロコスモス)の双方に存在し、かつ、生命に絶対必要な根源のようなものは何かということでした。それこそが“氣”に関係するのではないかと考えました。

その結果、注目したのは「酸素」と「電気」です。宇宙では呼吸できるような量の酸素はありませんが、銀河や星の中、星間ガスの中には酸素原子や酸素分子、酸素を含む化合物(二酸化炭素や水、氷など)が存在しています。一方、電気は宇宙空間には電気的に帯電した粒子(電子・イオン)の集まりであるプラズマが存在します。そのプラズマは宇宙の主成分だそうです。一方、ミクロコスモス(人体)に存在する電気は生体電気と呼ばれています。

画像出展:「“生体電気” 電気仕掛けのココロとカラダNHK

『生体電気は、細胞で“発電”され、脳、筋肉、心臓だけでなく、ヒト誕生の瞬間、受精にも深くかかわっている。生命の根幹「生体電気」。その仕掛けから生まれたヒトの不思議を妄想する。』

酸素と電気は宇宙にも人体にも存在していることが明らかになりました。次に明らかにすべきは生命にとって両者は根源のようなものなのかという点です。ちなみに酸素は物質ですが、電気は物質である電子とイオンの運動によるエネルギーとされています。

なお、本件を考える上で、「生命のエネルギーの起源」を考えてみました。これはエネルギー通貨とされているATPではないかと考えたのですが、実際はATP産生機構そのものが、まず膜を介したイオン勾配というエネルギー源を前提にして進化してきており、生命のエネルギーの原点としては「ATP」よりも「イオン勾配」がさらに根源的とのことでした。なお、酸素はイオン勾配(特にプロトン勾配)を作る化学的ドライバーであり、プロトン勾配は「膜を介したプロトン濃度差(化学ポテンシャル差)」と「プロトンが持つ正電荷による膜電位(電気ポテンシャル差)」の両方を合わせた電気化学的勾配で成り立っているとのことです。

つまり、生命のエネルギー産生の起源ともいえる「イオン勾配」に酸素と電気が深く関わっているということは、酸素と電気は「シグナル伝達分子」にとっても、無視できない存在であると思います。

画像出展:「ミトコンドリアでの酸素を利用したエネルギー産生酸素研究所

『摂取した栄養と酸素を利用して生命のエネルギー通貨と呼ばれる「ATP(アデノシン三リン酸)」に変換し、それを分解することで放出されるエネルギーを使って、人間は生命活動を行っているのです。』

2)氣と同調現象

気功には内気功と外気功があります。内気功は姿勢・呼吸・心を調えて(調身・調息・調心)、体内の気の流れを良くし、自分の自然治癒力を高める方法です。一方、外気功は熟達した気功師が自分の「気」を他者に送ることで施術する方法です。ブログ(“氣”とは何だろう15)でご紹介させて頂いた矢山利彦先生は、「気功は、漢方も鍼も効かない患者さんに対するものであり、何をやっても良くならず、失望と深い悩みをもち、体もこころもこわばっている患者さん、そして、自らの自然治癒力に背を向けている患者さんに対して用いている。」とのことでした。

“氣”が自分自身のみならず他者に影響を及ぼすことができるという特質は、“氣”を明らかにする上で非常に重要だと思います。このため、2つめは「氣と同調現象」という視点で整理したいと思います。

品川嘉也先生(“氣”とは何だろう7)は、「脳波は気の情報が目に見えたもの」とされています。さらに、脳波の同調現象は、気の送り手である気功師から気功の手ほどきを受けたことのある人ばかりでなく、その気功師にはじめて会い、生まれてはじめて気を受けた人にも共通して見られた。これまで十数回の実験を繰り返し試みているが、どの実験でもかならずなんらかの同調現象が観察されたのである。したがって、この脳波の同調現象こそ、気の謎を解き、気功のメカニズムを解明するカギとなる概念にちがいないと考えている。」というお考えです。

画像出展:「気は脳の科学」

気功師と受け手の同調を示す写真です。

 

 

"ブログ(“氣”とは何だろう17)では、ミラーニューロンについても触れています。ミラーニューロンは、自分がある動作をしているときに発火するだけでなく、ほかのだれかがそれと同じ動作をしているのを見ているときにも発火する。簡単な話に聞こえるので、うっかり見過ごしてしまいやすいが、これは大きな意味をもつ。ミラーニューロンは、あなたがほかの人に共感し、その意図を「読み取る」こと―その人が実際に何をしようとしているかを把握することを可能にしているのである。とあります。

また、“2人の間の発話リズムがそろうと、脳波リズムもそろうことを発見 -コミュニケーション時の2者の脳波を同時に計測し解析する手法を確立-”という研究結果もありました。

画像出展:「理化学研究所

『理化学研究所は、2者が言語コミュニケーションしている時の脳波を同時に計測し解析する手法を確立し、発話リズムが同調すると脳波リズムも同調することを発見しました。』

作家の五木寛之先生は『気の発見』という本の中で、「勇気や敬意、敵意や圧力もそうだ。表情や動作にあらわれる場合もあり、反対に隠されている場合もある。しかし私たちは、あきらかにそれを感じて反応する。知らない街で、はじめての酒場に一歩はいったとき、一瞬、ピリピリするような警戒心や、好奇の目を肌で感じることがある。店内にそのような気が電磁波のように流れているのだ。」とお話されています。

「これは何だろう?」と考えてみたのですが、これらに共通するのは五木先生がご指摘されたように、「表情や動作」であり、眼から入ってくる情報による脳の反応ということだと思います。視覚情報は可視光線なので取り込まれる情報は電磁波ということになります。これに声の情報も加わるとすれば、それは耳から入ってくる情報であり音波ということになります。ここから分かることは、人間は言葉を使わずとも意思を伝えることが可能であり、意図や感情を把握することもできるということです。 

帯津良一先生がYouTubeの中で、中国式ではなく英国式のスピリチュアル・ヒーリングを使っているとのお話しをされています。このスピリチュアル・ヒーリングは外気功に大変似ているとのことですが、特に修行する必要もなく、「誰にでもできる」という考えに基づいているそうで、英国では保険適応され大病院でも行われているようです。帯津先生は非科学的な療法が保険を使って一般的に普及していることに大変驚かれたとのお話をされています。

外気功では熟達した気功師が、洗練された特別の「氣」送っているのだと思います。しかし、もしかしたら、受け取る側が特別な「氣」を無意識に感じて、心身に大きな変化をもたらしているという部分があるのかもしれません。

この「外気功と龍神レイキ」という動画は、エフエム西東京さまから拝借しました。

気功師の脳波の実験、ミラーニューロンの存在、五木寛之先生のご指摘(動作と表情から感じることができる)、そして、帯津良一先生の中国とイギリスでのご経験から、同調現象はたいへん興味深いものだと思いました。そこで、AI(Perpflexity)に同調現象について質問してみました。

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まとめとして書かれていた内容は以下の通りです。

『対人的な気功(外気功)で生じる脳波の同期現象は、現代神経科学で研究が進むinterpersonal neural synchrony(INS)やミラーニューロン系の活動と同じく、「複数人が心身で共鳴し合う生理学的・神経学的メカニズム」の一端として説明できる現象です。今後は、hyperscanning技術による同時脳波計測が鍼灸や気功の科学的解明に一層応用される流れが期待されます。』

3)氣と健康

「“氣”とは何だろう」を調べようと思ったのは、専門学校で学んだことが腹に落ちていないと思っていたからです。また、“氣”の本質を知ることが鍼灸師として重要であり、それは間違いなく施術力を上げるものと思っていました。従って、3つめの「氣と健康」は最も知りたいものです。そして、絶対に外せないと思ったことは、繰り返しになりますが、「気は血を推動する」という基本中の基本です。 

帯津良一先生の「気とは余分のエントロピー(“汚れの量”)を上手に捨てる能力ではないか」というご指摘があり、ここではエントロピーをストレス(心理的・身体的ストレス)に置き換えてみたいと思います。また、ストレスに関しては矢山利彦先生の次のようなお話が印象的でした。

「病気は、根源にさかのぼって考えると、結局、ストレスを十分に統御・調整できなくて、身体の防御のバランスが崩れて、その人の弱いところに発症する、といえるはずだ。」

「気功の原点は気を流すことです。これは気の推動作用といわれ、血の流れをよくする働きに他なりません。つまり、気功は気に働きかけ血の流れをよくし、こころと体のこわばりをとり、そして歪みを整え、その人の本来の自然治癒力を通じて、心身の健康を取り戻すものであると理解しました。」

自然治癒力について

分かっているようで分かっていない「自然治癒力」を真剣に考えたことがありました。その時の結論は、自然治癒力とは“ストレス適応と栄養代謝”というものでした。これは、血流を良くし自律神経系と代謝系の2つが正しく機能することが治癒力の原点であるという考えです。これは上記の矢山先生のお話に通じる部分があるように思いました。

外せないと思った2つめは「病の始まりはストレス」ということです。

最初に「ストレス」はどこを攻撃するのかを考えました。その答えは「脳」です。そして、脳の疲労は自律神経を乱すと考えられています。なお、以下の2つの画像は『自律神経失調症を知ろう』から拝借しました。


脳をどう理解するかで悩みました。それは東洋医学における脳は、「奇恒の腑」と言われ、重要とされる五臓六腑には含まれていないからです。奇恒の腑には髄が含まれており、この髄は腎精が変化したもので五臓の「腎」が主っています。

画像出展:「鍼灸重宝記」

読みづらいですが、脳のところは「髄海」となっています。

 

また、興味深いのは五臓にはそれぞれ神気があるとされていることです(五神といいます)。

画像出展:AI(Perpflexity)が作成」

 

 

脳を攻撃するストレスが居座り続けると、その慢性的なストレス状態は交感神経を活性化させ、自律神経のバランスを乱します。そして、緊張状態から血管は細くなり血流を悪化させます。血流が悪くなれば酸素も栄養素も、血液の中にあるホルモンやサイトカイン、神経伝達物資などのシグナル伝達分子も滞り、各組織の健康状態は悪化しついには病気になります。

この、「ストレス→自律神経の乱れ→血流悪化」を防ぐことが健康維持には不可欠であり、これにはその人が本来持っている自然治癒力を調えることが大切です。

「病は氣から」、「氣は血を推動する」、この2つに関係するのはリラックスする心であり、それによって自律神経のバランスが整い(副交感神経が活性化)、血流が改善し酸素も栄養素もシグナル伝達分子も各組織にしっかり届きます。この中で酸素でも栄養素でもなくシグナル伝達分子を最も重要なものと考え、【氣≒シグナル伝達分子】としたのは、シグナル伝達分子の中には、病の原因となるストレスを抑制する非常に重要な働きがあるためです。

そして、そのストレスを抑制する重要なシグナル伝達分子は、セロトニン、GABA、アセチルコリン、メラトニン、ドーパミンの5つとされています。

画像出展:AI(Perpflexity)が作成」

リラックスに関係が深い感情と関連するシグナル伝達分子です。

 

「氣と健康」を考えるうえで重要なポイントは、①「気は血を推動する」、②「病の始まりはストレス」でしたが、3つめは「脳と腸」です。西洋医学では「脳腸相関」という考えがあります。何故、脳と腸が重要かといえば、5つのシグナル伝達分子は脳と腸の双方で作られるからです。特に重要とされているセロトニンに関していえば、90%が腸で産生されています。

画像出展:AI(Perpflexity)が作成」

5つのシグナル伝達分子が作られている場所です。

 

画像出展:AI(Perpflexity)が作成」

念のため、すべて腸でも産生されていることを確認しました。

 

西洋医学では腸は第二の脳と呼ばれています。腸は大量の情報収集、蓄積、分析、それへの反応という機能を考えれば、消化管は真のスーパーコンピューターといえます。また、細胞の数という点でも脊髄をしのぎ、能力という点でも脳のいくつかの機能に匹敵するとされています。

腸は脳と、神経や血流によって結合しています。腸で生成されたホルモンや炎症性のシグナル伝達分子は脳に伝達され、また、脳で生成されたホルモンは、平滑筋、神経、免疫細胞などの腸内のさまざまな細胞に送られます。

脳へのストレスは腸の働きを低下させ、腸の動きが悪くなると脳が不安を感じます。脳腸相関はストレスの影響を拡散させてしまうこともあります。その一方で、脳腸相関にはストレスを抑制するメカニズムがあります。

画像出展:「ブレインフォグの原因「腸内細菌の乱れ国立消化器・内視鏡クリニック

『脳腸相関とは、脳とおなか(腸)で両方向におこなう情報伝達のやり取りと相互に影響を及ぼしあう関係のことです。不安やストレスを感じると急な腹痛や下痢、おなかが張ってグルグルと鳴るような経験をしたことはありませんか?これは、脳から腸に向けた情報伝達の信号からくる影響のひとつです。対して今までよくわかっていなかった腸から脳に向けた影響についても、近年の研究で明らかになってきました』 

画像出展:「人体の正常構造と機能」

脳と腸および他の臓器をつないでいる自律神経(副交感神経)は迷走神経です。なお、迷走神経には運動や知覚を担う線維(運動・求心性)も混在しているため、「混合神経」とも呼ばれまています。

セロトニンは、腸と脳のシグナル交換に用いられる究極の分子とされ、セロトニンを含む細胞は小さな脳と大きな脳の両方に密接に結びついています。そして、迷走神経の経路の近くに膨大なセロトニンが蓄えられています。

氣≒シグナル伝達分子とする理由は、脳と腸に存在する、セロトニン、GABA、アセチルコリン、メラトニン、ドーパミンの各シグナル伝達分子が、ストレスの抑制に働くためです。

早期に過度なスレスを排除することが、血液循環を改善させ本来の自然治癒力を復活させて、心身を健康な状態に戻します。

4)東洋医学と西洋医学のパラドックス

「パラドックス」という言葉が適切かどうかは分かりません。そもそもパラドックスの意味を正しく理解しているのかという点も気になるところです。

お伝えしたいことは、東洋医学も西洋医学もみているのは「人間の健康」ですが、異なる土俵から見ているため、ジグゾーパズルのピースがうまく合わないという感じです。その原因には古今の医学の差にあります。東洋医学は約3000年前とされています。一方、西洋医学を科学の医学(近代医学)とするならば、顕微鏡が発明された16世紀後半といえるのではないでしょうか。言いたいことは、東洋医学と西洋医学の差の本質は、科学の有無によるものではないかということです。特に注目したいのは、「脳」と「小腸」と「腎臓(東洋医学では腎)」です。この3つを整理したいと思います。

(うまく説明できないのですが、健康には脳と腸が非常に重要で、東洋医学においてはその2つに関わる“腎”という重要な存在が、この2つの背後で大きな力を及ぼしているイメージです)

「奇恒の腑(髄海)」と呼ばれる「脳」は、専門学校の教科書では次のように説明されています。

「脳は、頭骨の中にあり、髄の大きなもので、下は脊髄に連なる。脳は、肢体の運動を円滑にし、耳目を聡明にし、長寿を保つ。脳が充実していると、耐久力ばかりでなく、すべてにわたって一般の基準を超える。不足すると、目が回る、耳鳴り、めまい、すねがだるい、身体中だるくて寝ていると落ち着くなどの症状を呈する。」

運動(遠心性)や感覚(求心性)、生命維持や意識・集中といった内容ですが、これは西洋医学の脳(大脳・間脳[中脳・橋・延髄]・脳幹・小脳)の機能の一部です。先に「五神」についてお話しましたが、「七情」というものも臓腑に割り当てられています。詳しくは2つの添付資料をご覧ください。

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東洋医学における五神と五情.pdf
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これは「東洋医学概論」の内容を元に作った「五神」と「七情」の表です。これらの働きは五臓に割り振られています。

『神を分類すれば、神、魂、魄、意、志などが挙げられる(『霊枢』:本神篇)。神は、このなかで最上位にあって、他の神気を支配している。ときにより、魂魄は神の支配を受けずに独自の働きをすることがある。魂・魄は、人体のかげの活動(無意識的、本能的活動)を支配するものである。』

 

「奇恒の腑(髄海)」に「五神」と「七情」を加えると、脳(大脳・間脳[中脳・橋・延髄]・脳幹・小脳)に近づきます。一方、現代の脳は、科学によってこれから先、想像できない程の多くの発見が期待されています。

画像出展:「国内外における脳科学研究の現状と問題点について

ウンザリするような細かい表ですが、ご紹介したのは「脳科学研究はこれから、奥が深いんだなぁ」ということをお伝えしたかったからです。

戦国の世の中、死者を通して血液や肺、胃、腸などは何となく理解できたと想像します。しかし、顕微鏡すら存在しない太古の時代に、脳(大脳・間脳[中脳・橋・延髄]・脳幹・小脳)の働きを詳しく知ることは不可能です。そのため、大切な臓腑に「五神」や「七情」として割り当てたのではないでしょうか。

興味深いのはNHKシリーズ人体が明らかにした「メッセージ物質(シグナル伝達分子)」です。矛盾するようですが、脳(大脳・間脳[中脳・橋・延髄]・脳幹・小脳)の働きは非常に大きなものである反面、臓器同士が会話しているという事実はむしろ昔(東洋医学)に戻ったような話です。

『解体新書』を翻訳した杉田玄白先生は、神経(中枢神経[脳・脊髄]・末梢神経)を「神気の経脈」と訳されているのですが、この訳は素晴らしく、東西医学の架け橋のような気がしました。

画像出展:「語源から読み解く自律神経」 

 

「脳」の次は「小腸」です。

東洋医学の小腸は、「消化・吸収の過程で得た精微物質(栄養)を脾に運び、不要な固形物は大腸、水分は膀胱へ送ります」とされています。消化・吸収や大腸に送るという機能は西洋医学と同じです。

一方、現代の小腸には免疫機能があります。また、脳腸相関という考え方もあります。

日本での医学的な脳腸相関の研究は、1980年代に「セロトニンの多くが腸で産生されている」ことの発見を契機に爆発的に発展しました。まだ50年経っていません。

東洋医学の小腸は特に難しいところはないのですが、悩ましいのは丹田という場所です。

丹田は下腹部であり、皮下にあるのは小腸です。そして、この丹田には関元という小腸の募穴があります。募穴とは重要な経穴(ツボ)の一つで「臓腑の気が集まるところ」とされています。つまり、関元は「小腸の気が集まる経穴」ということになります。

悩ましいというのは丹田が、東洋医学の「小腸」ではなく、「腎」に深く関係しているという点です。この件は次の「腎」で詳しくご説明します。なお、西洋医学では「腎臓」になりますが、東洋医学では「腎」になります。

NHKシリーズ人体では、「腎臓が寿命を決める」というタイトルが印象的でした。酸素が足りなくなると腎臓は「酸素が足りない」というメッセージ物質(シグナル伝達分子)を出します。これはエリスロポエチンという造血ホルモンです。また、腎臓は血液成分の組成管理・調整の中枢でもあります。【氣は血を推動する】とは血(血液)こそが生命になくてはならないものと言えます。すべての組織は血液が運んでくる酸素・栄養素・生理活性物質(シグナル伝達分子を含んでいます)の働きにより命は続いていきます。その血液を管理しているのが腎臓になります。

NHKスペシャル「人体」取材班

出版:東京書籍

スライドは酸素不足の時に腎臓がシグナル伝達分子のEPO(エリスロポエチン)を出し、そのメッセージを受け取った骨(骨髄)が酸素を作るプロセスを説明しています。

腎臓は間違いなく大切な臓器です。しかしながら、それでも東洋医学の「腎」はさらに重要といえると思います。脳とされる「奇恒の腑(髄海)は腎精から生成された髄により養われ、腎の状態が脳の働きに大きく影響する。」とされています。

腎の役割

・東洋医学の「腎」は、生命力の根源である「精」を貯蔵し、成長・発育・生殖・老化といった生命活動全般を支配する存在です。

・先天の精・原気(元気)の中心として「腎」は体の根本エネルギーと位置付けられています。

腎と丹田の関係性

・丹田は「腎」の精・気が集まる場所とされ、「腎間の動気こそが人の生命」と古典医学書『難経』などにも記されています。

・丹田に気(腎の精・元気)が充実していると、生命力が上がり、健康や精神の安定に寄与します。逆に、腎の気や精が不足すると、丹田の力も弱くなり不調の原因になると考えられています。

・丹田を鍛えたり意識したりすることで、「腎」の力を高める養生法や鍛錬も多く伝えられています。

三丹田について

・三丹田(上丹田・中丹田・下丹田)の理論は、道教・煉丹術・医学思想の発展のなかで徐々に整理され、後代に確立したものです。

画像出展:AI(Perpflexity)が作成」

 

 

整理すると、丹田とは「腎」の精・気が集まる場所であり、「腎」は体の根本エネルギーと位置付けられます。丹田に気(腎の精・元気)が充実していると、成長・発育・生殖・老化といった生命力が上がります。そして、その生命力は健康や精神的安定の土台になります。

西洋医学の小腸は消化吸収以外に、免疫機能があります。腸全体では約70%、小腸では約50%の免疫細胞があり、小腸の粘膜下にはパイエル板という免疫器官が集中していて、T細胞・B細胞・NK細胞など多くの免疫細胞が集まっています。また、腸内には腸内フローラという腸内細菌の集まりがあり、腸の免疫機能維持・調整に不可欠です。腸内フローラを良好に保つ(善玉菌優位にする)ことで、全身の免疫力を底上げすることができます。

東洋医学には「衛気」という氣があり、働きは「体を外邪から防御し健康を守る力」とされています。これは紀元前2世紀ごろの文献である『黄帝内経』という書物に書かれています。「衛気」は科学で証明された免疫ではありませんが、免疫のような考えは大昔からあったということです。

【氣≒シグナル伝達分子】のシグナル伝達分子は、セロトニン、GABA、アセチルコリン、メラトニン、ドーパミンと考えていますが、これらはすべて腸でつくられます。

セロトニンの働きをあらためてご説明します。①腸の運動を調整(セロトニンは腸管の平滑筋に作用し、消化管の蠕動運動を促進します)、②便通を改善(便秘の予防や改善に寄与)、③腸内細菌・腸内環境との相互作用(腸内環境を整える役割)、④脳との関係(感情安定・睡眠調整・食欲などを担う、脳腸相関といわれる)。

これらの西洋医学における小腸の働きは科学による発見です。

近代免疫学として体系化されたのは18世紀末、エドワード・ジェンナーによる種痘(天然痘ワクチン)の実施(1796年)がきっかけで、19世紀以降に免疫のしくみや理論が解明されていきました。

腸内細菌が初めて発見されたのは1670年代のオランダです。その後19世紀後半には、パスツールやコッホらによる細菌学の発達によって腸内にいる大腸菌、ビフィズス菌など様々な腸内細菌が発見されました。腸内フローラの概念が一般的になったのは1950年代です。腸内細菌をフローラ(叢)として扱う研究が本格的に始まりました。

ホルモンが最初に発見されたのは1902年です。この発見をきっかけに「ホルモン」という言葉・概念は、1905年にスターリングによって提唱されました。

このように「消化・吸収」の東洋医学の小腸は、時間と科学により「消化・吸収、免疫」さらには脳腸相関という働きを重視する西洋医学の「小腸」に変わり、その重要度はさらに大きくなりました。

画像出展:「けんこう名探偵

古代では「天・人・地」や「三丹田(上丹田・中丹田・下丹田)」という考えが中国で生まれていました。このことからも、頭部(脳)と下腹部(腸)は健康にとって極めて大切であると確信できます。

画像出展:消化・吸収だけじゃない!腸の意外な働きからだカルテ

『ストレスを感じるとおなかが痛くなったり、下痢や便秘などの腸の異常を感じるのは、脳→腸へのシグナル伝達ですし、一方で、腸内環境が悪化することによって、不安を感じたり、腸内環境が改善することで、抗うつ効果など脳への影響があることは、腸→脳へのシグナル伝達です。』

 

 

 

画像出展:中国武道への道

『「天地人」は、春秋戦国時代から漢代にかけて成立・体系化されたものとされています。一方、「丹田」は、秦漢期すでに現れており、主に気功や導引、仙道における生命エネルギーの集積点として語られていました。また、「三丹田(上丹田・中丹田・下丹田)」の考え方が体系的に確立したのは、中国の道教・内丹術が発展した唐代〜宋代と考えられています。』 

ホメオスタシス~私たちを守り続けるシステム~」6分14秒 

こちらは「ネコかん 【ネコヲの解剖生理学】」さまからの拝借です。とても分かりやすい動画です。

 

 

5)氣の訓練

合気道の第一人者である藤平光一先生は、「心で氣が出ていると思えば、すなわち氣がほとばしり出る。」とお話されています。

また、当院のホームページの「ご挨拶」の中で、「幕末の剣・禅・書の達人といわれた山岡鉄舟は、ゆったりとした心の有り様こそが、最も「気」を相手に通じさせるということを教えています。」と書いています。

ここで最初に思ったことは「心」とは何だろうということです。

画像出展:AI(Perpflexity)が作成」

 

 

これによると、「心」とは意思や意識を含む、精神活動全般を指す抽象概念ということです。思ったことは、「心」は「一人称」だけではなく「二人称」、「三人称」の世界でもあるという点です。「氣と同調現象」という章もありましたが、今一度、「二人称」、「三人称」に関しての重要性を最認識しました。「一人称」に陥りがちな「氣の訓練」において、忘れてはならないポイントのように思います。

氣の訓練の方法

まずはブログに立ち返って、「気功」、「小周天」、「丹田」をキーワードに気の訓練に関するものを抜き出しました。

・東洋の伝統では、「気」のはたらきは元々主観的に感じるものとされてきた。それは、普通の意識状態では認識できないが、瞑想とか武術・気功などの訓練をつんだ人は気の流れを感じとることができると説かれてきた。

・気功とは訓練によって自律神経を自分でコントロールできるようにするものであるといえる。

・「自律訓練法」は気功にとって役にたった。例えば、皮膚の温度を自分の意識で変える訓練―自己暗示をかけるかたちで、ゆっくりとした呼吸とともに「手があたたかーい」とくり返す。訓練を続けることで手をあたたかくすることができるようになる。

“てのひら療法”という本に、治療は「してあげる」という気持ちではなく、「いっしょにする」という気持ちが非常に重要と書いてある。この心が欠け、気功の技術だけに頼り、「治してあげる」という心持ちでは“気の取り込み”はできない。

・ゆるめるための身体の動かし方を、気功訓練で習得してもらう。ゆっくりした呼吸法、力のぬき方、背骨の歪みの矯正を、気功をとおして実現していく。また、気功はもう一つ、精神的なリラックスもつくりだす。これは、最近の脳波の研究ではっきりしたデータで証明することができた。

気を流すためには、まず、下腹部にある下丹田に気を集める。そのためには“下腹部に意識を集中し、息を吸うときも吐くときも下腹部を軽く緊張させ、そこに気が集まるとイメージし続ける訓練を行う。

・呼吸にあわせて、ゆっくり腹筋運動をしながら、意識を下丹田に集中する。呼吸と熱のイメージと筋肉の緊張と弛緩をくり返す。すると、下腹部に運動による熱が発生する。これをくり返していくうちに、だんだんすこしの運動回数で熱が発生するようになり、徐々に運動を減らしていって、最終的にう呼吸と腹筋の緊張だけで熱感を生みだすことができるようになる。

・気功には非常に多くの流派があるが、唯一共通しているのは小周天である。

気功ができるようになったという証拠は、丹田が熱くなることである。

・息を吐きながら、気を百会から体の前の任脈を通して会陰まで下ろす。それから今度は息を吸いながら、気を背中の督脈を通して百会まで上げる。これをぐるぐる回すのが小周天である。

・吐くときにゆるめて、吸うときにゆるめて、体がゆるみさえすれば呼吸は自然に深く流れる。だから、まだまだゆるめられる、ゆるめられると、思いながら小周天をする方法は有効である。 

小周天

気の訓練でトライするのは、「小周天」に決めました。これは、「気功には非常に多くの流派があるが、唯一共通しているのは小周天である」というのが1番の理由です。

画像出展:「気でひきだせ、無限の治癒力」

“腕周天法”と“小周天法”です。

動画(7分57秒)がありました。

気功・矢山式 - 気のボールで小周天のルートを開く

 

 目標は、「丹田が熱くなること」です。訓練は一人で行ないますが、鍼灸師としては患者さまの存在をイメージし、「いっしょにする」という気持ちを頭に置いておきたいと思います。これは先にご説明した、気功とは「二人称・三人称」の世界でもあるためです。また、「ゆるむ」、「温かい」、「ゆっくり」というイメージを呼吸に合わせるということも意識したいと思います。そして、「小周天」の訓練により「氣」を心と体で受けとめ、自律神経を自分で動かせるようになりたいと思います。

 補足)長濱善夫先生の経絡

経絡治療に関し、何度もお伝えしてきたことに【経絡≒ファシア】ということがあります。今回は、長濱善夫先生の著書である『鍼灸の医学』の中に、経絡と氣に関し私の考えを後押しして頂けるような貴重なご意見がありました。それをご紹介させて頂きます。

●『針の響きによる経絡現象の発現は、筋の主因とする説でひとまず説明されているが、実際には筋まで達しないで、単に皮下の結合織に達した深度で針響が起こる場合も決して少なくないのである。また、稀にはやっと真皮に達したくらいの深さでもおこる。こういう場合は、体液的な変化で間接的に筋が刺激されるためであろうと説明(藤田六朗氏)されている。しかし、こう考えたのでは、体液が何によって変化を受けるのかという点が不明になってくる。そうなると、結合織線維そのものが直接関与して、またある程度刺激を感受してこれをつたえる役目をも果たすのではないか、ということも考えなくてはならなくなる。

 もし、結合織線維が刺激感受の主体になるものとすれば、全身の結合織系が形態的に経絡系の実体になるという想定が、いよいよたしかめられてくる。といっても、もちろん経絡の走行を解剖学的に規定するものとして、また機能的な関連において、筋の意義が重大であることには変わりはない。』

●『経穴の深さは、どれくらいかというと、これは針を刺していったさいに、それに応じた感覚がおこることによっておよそわかる。まず皮下一定の深さに達するとおこる。そしてさらに深く進めていって再び強く感ずることもある。これは皮下組織(結合織)より筋(特に筋膜のあたり)に至る間に相当する。だいたいにおいて結合織が中心になっているようである。そこで大多数の経穴は、深部は筋に達していて筋にも関連しているものなのであろうと考えられている。いくつかのモデル経穴について解剖学的にしらべてみると、経穴にあたるところは、筋に対して神経の枝と血管の枝とが相ともなって入ってきているところになっていると言っている人もある。』

皮下組織というのは、皮膚と筋(筋膜)とを結びつける目の荒い網のような線維の結合織からなりたっていて、その間隙は組織腔といわれ、組織液が充満している。ここが、針の刺激の対象である経穴の主体である。

血は体液的なもの、そして気とは筋を主因とした電気的なものという解釈がなりたちそうである。

画像出展:「東洋医学研究会(PDF5枚)

千葉医科大学(現・千葉大学医学部)における東洋医学研究会発足の経緯と、発起人の一人としての長濱善夫氏(前列向かって左端)の活動が紹介されています。

 

 

日本東洋医学会の発足は1950年3月12日です。慶應義塾大学医学部北里図書館会議室にて創立総会が開催されました。

 

まとめ

理想の鍼灸師は、すべての施術において1回で治してしまうスキルをもつことです。ただし、これは明らかに夢のような話です。それは無理だとしても、その土台となるのは知識と技術の積み重ねだと思います。

鍼灸の施術は「病」と「人」の両面をみるものなので、全人的な知識は理想だと思います。しかしながら、最も大切なことは鍼灸の真髄を腹に落とすことです。私の場合、それは“自然治癒力”、“経絡”、“”の3つでした。今回の「“氣”とは何だろう」の試行錯誤の時間を通して、最後に残っていた“氣”を腹に落とすことができました。

この3つは自分なりに次のように捉えています

1.“自然治癒力”:ストレス適応と栄養代謝(栄養代謝とは消化・吸収・代謝を意味しています)

2.“経絡”:経絡≒ファシア(膜)

3.“氣”:氣≒シグナル伝達分子(シグナル伝達分子の中ではセロトニン、GABA、アセチルコリン、メラトニン、ドーパミンの5つを特別な存在と考えています)

なお、"自然治癒力”は簡潔にいえば「生きる力」です。また、3番目の【氣≒シグナル伝達分子】という答えは完全に私見です。 

今後の課題は、氣を体で知ること、生きたツボをみつける力(触診術)を向上させることです。

“氣”に関しては「小周天」に挑戦します。“触診技術”は実践が重要ですが、まずは『治療家の手の作り方』という本を、あらためて熟読することから始めたいと思います。そういえば、専門学校時代に「電話帳に髪の毛をはさみ、その髪の毛の存在を「手」で感じられるようにする訓練方法があったように思います。慣れるにしたがい、ページ数が増えていくというものでした。これもトライしようかなと思います。

画像出展:「命を支える神秘の巨大ネットワーク “メッセージ物質”が医療を変える!

氣は血を推動する、そして、生きたツボを発見するのは「手」が重要です。この写真は鍼灸師として忘れてはいけないことを教えてくれているような気がします。