“氣”とは何だろう39(間中喜雄編)

著者:間中喜雄

発行:1971年2月

出版:創元社

目次は“氣とは何だろう36”を参照ください。

私は以前から【ファシア≒経絡】であると考えているのですが、ファシアとは荒っぽい言い方をすれば“膜”です。日本整形内科学研究会による説明は、『ファシア = 全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う線維性の立体網目状組織。臓器の動きを滑らかにし、これを支え、保護して位置を保つシステム』となっています。また、筋膜はファシアの一部とされています。

画像出展:「日本整形内科学研究会

画像出展:「深筋膜って何だ? (~リハ事典+~リハビリ(理学療法)の総合コンテンツ)」 

右下赤字が筋膜ですが、浅筋膜皮下組織(左側)とされています。

 

 

画像出展:「人体の正常構造と機能」 

左側の図の黄色の部分が膜(ファシア)です。

また右の図では、灰色の部分が膜(ファシア)です。

 

 

画像出展:「ファシア(Fascia)の外観の例日本整形内科学研究会

ファシアは柔軟性・滑走性・力の伝達・感覚受容といった特徴があり、異常が生じると痛みや動作障害の原因となります。

 

 

 

 

ファシアにつながる見解として、第五章には、『皮下組織というのは、皮膚と筋(筋膜)とを結びつける目の荒い網のような線維の結合織からなりたっていて、その間隙は組織腔といわれ、組織液が充満している。ここが、針の刺激の対象である経穴の主体である

そして、第十一章には、『従来、経穴に該当する部の皮膚には、知覚の過敏や鈍麻あるいは圧痛、硬結、陥下などが経験的に知られており、その構造は皮膚表面のみに限られる平面的なものではなく、深く皮下組織に及ぶ立体的なものであると推測している。

 そこで、ここではファシアの視点でいくつか資料をご紹介させて頂きます。

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ファシアの用語普及過程と世界的認知の変遷.pdf
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『「“Fascia”の語源はラテン語の“帯”を意味する「fascis」に遡り、1615年に英国の医師ヘルキア・クルークが初めて解剖学文献で使用した。」とあります。その後、ファシア研究への関心を再燃させたのは1970年代となっています。[本書の発行は1971年]

2012年以降、超音波エコーガイド下での筋膜間注入法が日本で開発され、2015年には拡張顕微鏡法(ExM)を用いた生体ファシアの可視化が実現。これらの技術的突破が、ファシアの動的挙動の解明に貢献した。」とあります。日本では2018年に日本整形内科学研究会が発足し、ファシアが少しずつ浸透していきました。

また、「PubMed データベースにおける「fascia」関連論文は、2000年以前は年平均 50 件未満だったが、2010年以降は年

間300 件以上に急増。特に2018年のニューヨーク大学チームによる「新器官」発表後[“人体で最大、新しい「器官」を発見? 米研究”]、被引用数が前年比420%増加した。」とのことです。』

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日本におけるファシア用語の普及過程と定着時期.pdf
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ファシアの電気抵抗特性とその解剖学・生理学的意義.pdf
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画像出展:「Electrical Impedance of Acupuncture MeridiansPLOS One

『背景:経絡の科学的根拠は不明です。過去の研究では、経絡は生理学的には低い電気インピーダンスを特徴とし、解剖学的には結合組織層と関連していることが示唆されています。私たちは、経絡が低電気インピーダンスと関連しているかどうか、そして超音波検査で得られる指標、特にエコー源性コラーゲンバンドがこれらのインピーダンスの違いを説明できるかどうかを調べることに関心があります。』 

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ファシアの電気抵抗と組織液・イオンの相互関係.pdf
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第十五章 ドイツの電気針

●臨床医学の領域で、数年来、ある一つ一つの臓器の機能が微細正確な電流によって示されることが知られている。心電図や筋電図は多くの人が知っているものだが、最近では大脳の活動電流が頭蓋骨を通じて診断学に利用されている。

MEGについて

画像出展:「MRIとMEGについて脳とこころの研究センター

MEGとは、Magneto-Encephalo-Graphyの略であり、日本語で"脳磁図記録"と呼ばれる検査方法であり、脳内にわずかに発生する磁場変化をとらえて脳の機能を解析する検査です。

脳の中の情報の伝達は、神経細胞間での電流のやりとりで行われています。電流が発生すると磁場が発生します。これを記録するのです。この脳磁場は大変な微量で、例えば都市雑音で発生する磁場の一万分の一程度しかありません。しかし、近年の超電導技術とコンピュータ技術の進歩により可能となったのです。』 

脳磁図(MEG)

画像出展:「脳磁図広大フォーラム

脳磁計とは脳の電気活動に伴う変動磁界を測定する装置です。得られたデータから作成された等磁場線図を一般に脳磁図(MEG)といいます。』 

日本臨床脳磁図コンソーシアム

画像出展:「日本臨床脳磁図コンソーシアム

日本臨床脳磁図コンソーシアムは、脳磁図に関する知識の交換、脳磁図の研究と診断の向上を目標とする団体です。このコンソーシアムは脳磁図臨床研究医師によって構成されています。 

人間からも電波が出る?

画像出展:「人間からも電波が出る?電波50のなぜ

感度の良い電波受信器の前に手をかざすと、手から電波を受けることができます。もちろん、その強さは非常に弱いものですけど』 

●経験的にこれらの診断学的方法が、心、脳あるいは筋肉の疾患を判断するのに役立つことが分かってきたが、患者の手足から心臓の活動電流だけが誘導され、なぜ他の臓器のそれが誘導されぬかということは、生理学の基礎的な研究によって何らの回答を与えられていない現状である。心臓がその活動の表現として微細な電流曲線を示すのに、なぜ肝臓、腎臓、肺あるいはその他の臓器に、これと同じようなことが起こらないのだろうか。

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心臓以外の臓器における電気的活動測定の現状と技術的課題.pdf
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心臓以外の臓器で心電図様の測定法が普及しない要因は、電気的信号の微弱さ・非周期性・解剖学的障壁に加え、臨床的有用性の証明ハードルが高い点にある。ただし、胃電図や EIT の進歩は、技術革新がこれらの課題を克服し得ることを示唆している。今後の鍵は、ナノ材料科学と AI を融合した次世代センサーの開発、ならびに臓器特有の電気生理メカニズムの解明にある。医療機器産業と基礎研究の連携強化により、10年以内に肝臓・腎臓の機能評価に革命をもたらす新技術が登場する可能性は十分に存在する

●経穴と経絡というものは、リンパ系、組織液と密接な関係にある。経穴を鍼または電流で処置することによって、リンパまたは組織液を正常な方向に保つことができる。イオン不正常状態からイオン正常状態にかえることができる。これによってまたコロイド不正常状態からコロイド正常状態に影響を与えることができる。仮説的にいえば、この経穴は生物電気の通路であり、経穴はこの道における蓄電池にあたる。その蓄電池は器官の活動による生物電気によってそれ相当な蓄電を受けるわけである。最もよい荷電は、普通に我々の臓器が負荷された場合に働いている状態の荷電である。しかし、その他にまだ予備的な状態がある。すなわち突然起こってくる強い負荷状態の仕事に対して、それに充分に見合うところのエネルギーが、仕事のために必要になってくる。それによって必要なだけの荷電を要することになる。だから蓄電池の荷電能力はたしかに或る程度、器官の活動能力または活動予備能力に比例するものと考えてよいと思う。

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経穴の電気的抵抗が低いという特性について.pdf
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経穴とその周辺における皮膚インピーダンス軌跡の多点同時測定_2003.pdf
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こちらは2003年12月の日本生体医工学会の論文です。 皮膚インピーダンスとは、皮膚を流れる電流に対する皮膚の電気的な「抵抗」と「リアクタンス(容量性や誘導性成分)」を合わせた総合的な値のこと。つまり、皮膚が電気信号に対してどれだけ流れにくいか(または流れやすいか)を示す指標で、単なる直流抵抗(レジスタンス)ではなく、交流成分も含めた「インピーダンス」として評価されるものですので、この論文が経穴の電気抵抗に関するものであることがわかります。2003年なので新しいとはいえませんが、本書からは30年以上経っています。

画像出展:「経穴とその周辺における皮膚インピーダンス軌跡の多点同時測定

Ch.5は経穴の郄門(げき門)です。

経穴とそうでない部位で皮膚の電気的特性に差異が存在する理由については、 インピーダンスパラメータ、 Z0、 τ0が精神性発汗によって著しく減少することから、経穴において汗腺の活動が局所的に活発になり発汗が促されたのではないかと推測される。 


感想

藤田六朗博士は原穴その他に灸または針刺激を与えておいて、皮膚の電気敏感速度を検査し、反応点や丘疹などの消長が刺激点の経絡に相当して現われてくることを認めました。

中谷義雄博士は臓器の病気について調査し、それぞれ一定の形状をした電流のよく通る絡状のものを発見し、これらを皮膚通電良導絡と名づけました。

間中喜雄博士は身体各部(井穴、原穴、絡穴その他)の電気抵抗のインピーダンス値を測定しました。

七条晃正博士は、平流と脈流とを同時に通電する装置を考案し、点状皮膚の低い電気抵抗部位を通電点と名づけ、針治療の経穴は表皮より深部にあり、電気抵抗の低下点だけでは判定しにくいのではないかとの疑問を投げかけました。

石川太刀雄丸教授は、電気容量成分を一定にし、抵抗成分のみ測定できるように設計した装置を使用し、きわめて低い部位が点状反応として現われることを報告し皮電点現象と呼びました。

芹沢勝助博士は大島良雄博士との共同研究により皮電計の通電方式に対し静電誘導電圧を応用した電位差計を利用し、これを差電計とよび、電極を直接皮膚面上にあて周囲皮膚と比較して明らかに大きな電位差を示す部位を記録しこれを差電点と名づけました。

これらの研究や実験から分かることは、経絡/経穴と電気との関係です。また、人の体の中には弱い電気が流れていますので、電気に注目することは不自然なことではありません。

画像出展:「“生体電気” 電気仕掛けのココロとカラダNHK

『生体電気は、細胞で“発電”され、脳、筋肉、心臓だけでなく、ヒト誕生の瞬間、受精にも深くかかわっている。生命の根幹「生体電気」。その仕掛けから生まれたヒトの不思議を妄想する。』

抵抗率は、骨>脂肪>内臓>筋肉組織>神経組織>血液となっています。

画像出展:「HANAI High Voltage Insulation Consulting

人間の組織は、大雑把に骨、脂肪、筋肉、神経、血液で構成されています。抵抗率は、骨>脂肪>内臓>筋肉組織>神経組織>血液となっており、電気を流しやすい抵抗の低い組織は血液と神経です。神経は脳で発生した電気信号を筋肉に与えて動かしたり、痛みや接触を脳に伝えるために電気を流しやすくなっています。逆脂肪は非常に抵抗が高く良い絶縁物です。


 経穴の図は『臨床経穴図』からです。一方、解剖図は『グレイ解剖学』から持ってきました。

この両図を見比べると、経脈の肺経(左側)と心包経(中央)と心経(右側)は、解剖図では左から橈骨動脈、前骨間動脈の貫通枝(ただしこの動脈は深層に入ります)、尺骨動脈と重なります。そして、経穴の太淵と神門は、それぞれ橈骨動脈と尺骨動脈に近接していることが分かります。血液は脂肪や筋肉に比べ電気抵抗が低いとされています。

気は血を推動するという古来からの定説と照らし合わせても、経脈と血液(血管)、経脈の電気抵抗の低さ、これらは重要な特徴だと思います。

※経脈:経絡の一部、縦に走行する幹線道路のような重要な役割を担っています。

そして、思い出したのは2018年11月にアップしたブログ“閃く経絡(経絡と電氣)”です。これは『閃く経絡』という本を題材にしたものです

著者のダニエル・キーオン氏は救急救命を専門とする医師でありながら、中医学と鍼治療の学位を取得され、著名な王居易医師に師事されたという経歴も持っています。

そして、印象的だったことは、『鍼治療とは、刺鍼ポイントのツボ(経穴)への刺激が、概念である氣の一部である「電」の知性に働きかけ、体表と内臓を結ぶ経路を通じて乱れた状態を元に戻す』というものでした。

 「概念である氣の一部である“電氣”の知性に働きかけ」ということは、電氣は氣という概念の一部であり、式で表現すれば【氣∋電氣】ということだと思いますが、「電氣の知性」とは“氣”の働きに関することだと思われます。その中身はよく理解できませんでしたが、電気は“氣”を考えるうえで無視できない重要な要素だとあらためて思いました。