トランプ2.0(2)

著者:ドナルド・トランプ

訳者:月谷真紀

発行:PHP研究所

出版:2016年7月

目次は“トランプ2.0(1)”を参照ください。

 

成功は次なる成功の始まり

・『最高の仕事をする人々は自発的で、生来の好奇心があり、次は何をしろと教えられる必要のない人々である。そういう人になれるよう努力しよう。起業家は自分の内面から湧き起こる力に駆り立てられる。すばらしい生き方であり、人生に対する姿勢としても見事である。』

常に大局観を持て

・『人は時として問題にばかりかまけ、チャンスに目を向けるのをおろそかにしてしまう。細部を考慮したり、ビジョンの細かい点に不必要に気を取られたりするようなときでも、大局観は持っておくべきである。私は常にこの大小二つの視点を同時に持つよう努めている。おかげで考えが硬直化せずにすむし、自分は成功を宿命づけられているのだとあらためて思い直すことができる。なぜそんな宿命がわかるのかって? 私もソロー(ヘンリー・ディヴィッド・ソロー)と同じく、人間は失敗するようにではなく、成功するように生まれついていると信じているのだ。私に信じられるのなら、あなたにも信じられるはずである。

その方法を教えよう。第一に、問題はあってあたりまえと思うことだ。問題が一転、あなたのプラスに働く場合もあるし、時には驚くような出来事が起こったりもする。私は1990年代に財政問題を抱えていたとき、ウォルドルフ・ホテルでの晩餐会に出席しようかするまいかと逡巡したのを覚えている。何かを祝ったり誰かと話したりしたい気分ではまったくなかったが、それでも正装して出かけて行ったところ、隣の席の人と意気投合し、しかもその男性は銀行家だった。天の配剤というほかはない。しかしそれは私の予想だにしない出来事だった。ネガティブな考えにはまっていた私だったが、礼を欠いてはならないという意識が勝った。そして狙ったわけでもないのに、出席したというただそれだけで、事は明らかに良い方向に転がりだしたのである。

第二に、決意を揺るがさないことである。大局観を持つと、それに見合う意志の強さも必要になる。「ローマは一日にしてならず」ということわざがあるが、まさにそのとおり。楽な道はない。あるといいたいのはやまやまだが。しかし心から好きなことをしていれば、それほど苦労は感じないはずだ。ミケランジェロやベートーヴェンのような人々が大変な苦難に見舞われたのは誰もが知るところだろう。だが彼らは打ち克ち、数百年後の今もその名は生き永らえている。他の人々が目標の達成までにどんな苦労をしたかを知ると気が楽になる。往々にして、事前にいくら調査しても、やってみなければどれほどの努力が必要かはわからないものだ。だから不屈の意志は絶対に必要である。

成果を達成する方法は人それぞれ

・『若い頃、ある人からいわれたことがある。人や物事を曇りのない目で見るには判断をまじえないのがいちばんだ。「これは正しい」「あれはまちがっている」と色分けしたり、他人に望む反応をそれとなく指図したりするのではなく、事実をただ見て記録するのだと。これはジャーナリスティックなアプローチで、意思決定が完全に個々にゆだねられる。要するに、偏向のない報道である。少しだけ余分に考えることが求められるが、今の時代、人はもう少し考えるべきではないかと私は思うのである。何かを語るとき自分のやり方がすべてだと思ってはいけない。人生の多様性に感謝し、生まれ持った自分だけの才能に磨きをかける時間をつくるべきだ。』 

画像出展:「AI(Perplexity)で作成」

営業時代にリスク管理の部長さんから「ローデータ(未加工のデータ)から考えないと正しい答えは得られない」と教えて頂き、常に意識してきました。

 

自分のスタンダードを設定せよ

・『あなたが今すぐ大きな発想ができるようになるために自身に問いかけてほしい質問がある。あなたの創造性の資本は何か。あなたが世の中に提供できるものは何か。経験や勉強から身につけた、あなたの価値とは何か。あなたは自分の潜在能力を自覚しているか。いざ前に踏み出そうというときに事をなす力があなたに備わっている。こういう筋道で考えるようになるだけで、あなたの価値は何倍にもなるはずだ。』

直観に従え

・『カール・ユングによれば、人間の意識はふだん、脳の能力のわずか5パーセントしか使っていないという。眠っている95%の無意識、潜在意識を利用できるようになれば、目覚ましい成果が上がるだろう。私たちを助けてくれる直観力の裏にあるのはこの無意識なのではないかと時々思う。

これは心の声を聞くということにも関係する。サバイバル訓練や大事な試験を受けている最中など、いつもよりも注意力が高まった状況下では、いかに自分の反応に慎重になるかあなたは気づいているだろうか。急に、発言一つ、行動一つが重大な意味を持つようになるのだ。自分にも直観があると気づくときである。論理的思考の結果と本能の訴えが食い違う場合もある。理想をいえば、その両方を鍛え上げてベストな意思決定ができるようにすべきである。』 

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ビジネスの世界で成功するために知っておくべきこと

・『私たちの言葉と行動がやがては誠実な人、あるいは不誠実な人という評判につながっていく。私くらい長くやっていると、ありきたりの正直さがいかに貴重かがわかる。ビジネスマンとして、どんな局面も切り抜けられる強みとなるのだ。

もう一つの重要なスキルは交渉力である。私の交渉スキルについて語ってほしいとあちこちからよく頼まれるが、成功する交渉にはバランスがある。多くの人が見落とすところだ。双方が得をするのが最高の交渉である。妥協もしなければならない。つまり相手の言い分に注意深く耳を傾けるということだ。それができれば、良い結果が出る。ビジネスはそれ自体がアートだ。強力な交渉スキルは成功を容易にするために必要なテクニックの一つである。

私はよく人前でスピーチするが、いつも強調しているのが情熱の大切さである。自分のしていることを愛していなかったら、成功の確率は大幅に低下する。苦しいときを乗り切るのもはるかに難しくなるだろう。情熱は大きなことを成し遂げるのに必要な立ち直る力を与えてくれる。ミケランジェロは同時代のローマ教皇や政治家の誰よりも息長く名前が残っているが、その理由は彼が世界に残したものがそれだけ大きかったからに尽きる。しかも大きな困難をものともせずやり遂げたのである。ミケランジェロは妥協しない男だった。彼が自分の仕事に情熱を傾けていたことは疑いの余地がない。物事がうまくいかないときは、彼のような人間、精神と行動において自分の芸術を究めることを第一の、至高の使命として掲げ続けた人間を思い出すといい。

私が成功の要素として挙げる二つ目のポイントはあきらめないことである。身の周りで、あるいは自分自身に何が起きても、足を止めず前に進み続けなければならない。これも一種のポジティブ・シンキングであるが、はかりしれないパワーがある。こういう姿勢がもたらすものとして思い浮かぶのは「不屈さ」である。私はひたすら歯を食いしばることで大きな挫折を何度も乗り越えた。屈することもあきらめることも拒んだ。私にとってそれは目的を貫くことであり、重大なレベルの敗北を喫したり妨害をされたりしてはならないということである。目的を曲げずにいれば、大きな成果が得られる。

「不屈さ」とともに好きなもう一つの言葉は「粘り強さ」である。ビジネスに関しては、この二つはほぼ同義かもしれない。粘り強くあることが、長期的にはあなたを不屈にする。昔からいうカメとウサギの競争の話は今にも通じる。

グローバル化する現代においては、世界の出来事に目を配る大切さも強調しておきたい。アメリカは孤立主義者になってはならない。アメリカは超大国ではあるかもしれないが、その真に意味するところはそれだけ重い責任を担っているということだ。こういう立場にあるからには、今まで以上に敏感に、配慮を行き届かせ、相手の気持ちに共感できなければならない。権力は最大限の思いやりをもって使われたとき、最もその良さを発揮する。』

・『本質的な価値は現代の市場でおろそかにされてきた価値観である。すべてが金銭で測られ、くっきりと白黒がつけられるものになってしまった。ビジネスにはたしかにそういう価値観が必要だ。私たちは目に見えるニーズを抱えた目には見える世界に生きている。しかしあえていいたい。私はこの世の価値観では測れない何か、つまりお金だけではもたらされない価値を示してくれる曖昧な、グレーな領域をしばしば見ようとする。ほとんどの人はそれが何か―金銭的価値を超えたもの―を知っていると思う。ある収集家の話を読んだことがある。彼はアートで一財産築いたが、最高の宝物は亡くなった息子が友人に描いてもらった息子の肖像画だったという。その肖像画はピカソやマティスやモネやミクロの作品と並んで掛けられていた。収集家にとっていちばん大切なのはその絵だった。その絵の持つ本質的な価値は、巨匠たちの作品の持つ何百万ドルの価値を超えていた。収集家は亡くなったとき、息子の絵を購入した人にすべてのコレクションを譲った。息子の絵の値段は10ドルだった。

私が本質的な価値観の話をするのは、ビジネスマンとして、これが毎日のビジネスに誠実さを、この世の価値観では測れない何かさえももたらしてくれるからである。この世の多くがお金で動くのはやむをえないことだが、すべてお金で換算できるわけではない。グレーな領域を探そう。それはあなたのビジネスセンスだけでなく、人生をも高めてくれる。

感想

トランプ大統領のご経験からの貴重なお話でした。大変に参考になりました。不思議だったのは破壊的なトランプ政権による政治と、この素晴らしい本の内容に大きな矛盾は感じなかったことです。

関税に関してはいろいろなことを調べた結果、少し理解できるようになりました。

79歳という年齢で、米国大統領という激務に立ち向かっているトランプ大統領の計り知れないエネルギーの凄さをみると、大統領になった1番の目的が自らの富や名声にあるとは思えません。トランプ大統領を突き動かしているのは、「米国の危機感」のように思います。この危機感の背景にあるのは「中国の台頭」ということです。

鄧小平により「経済の近代化」と「対外開放」が国家戦略として決定されたのが、1978年12月。そして、中国は自由経済(市場メカニズムや民間の利益追求の容認)を導入しました。これは中国の「歴史的な転換」とされています。2000年初頭には「世界の工場」と言われるようになり、2001年に中国が世界貿易機関(WTO)へ加盟したことで、グローバル・サプライチェーンに本格的に組み込まれ、多国籍企業の工場・調達が中国へ集中しました。

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1.米国と中国の競争

1)自動運転

●2025年、米国は技術面で先行し、中国は実用化と商用展開の規模・スピードで先行しています。

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自動運転に関する現状です。

 

2)AI

●AIは単なる道具としての情報処理・伝達を越えて、「自ら考え、創造して提案できる」ことで、情報革命の枠組みと社会の在り方自体を根本から変える力を持つと考えられており、第二の情報革命とされています。

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●中国はAIを国家発展と国際競争の中核と位置づけ、大規模な投資・応用・規制のバランス型戦略を追求しています。

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●中国は「AIの社会実装」「スマート都市管理」「データ活用の量とスピード」という側面で米国を凌ぐ優位性を示しています。

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DeepSeekが米国企業のLLMより優れている主な点は「開発・運用コストの圧倒的な低さ」と「高い性能・推論力」、「完全無料・オープン戦略」にあります。

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3)宇宙開発

全体として米国は民間主導の技術革新・国際協力で優位、中国は国家主導・軍事技術・計画遂行力で強みが顕著です。

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4)量子コンピュータ技術開発

米国は「民間技術革新と商用化」、中国は「国家体制・量子暗号通信・政府主導の投資規模」などに強みがあり、両国とも世界の量子覇権を巡り競争が激化しています。

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2.中国の脅威

1)権威主義国家

●国旗を比べると、明らかに国家の在り方が異なっていることが分かります。

画像出展:「国旗の由来・歴史の資料室

中国は権威主義国家です。国旗にある大きな星は中国共産党を、これを囲む小さな星は労働者、農民、知識階級、愛国的資本家の人民階級を表すとされています。つまり、国の最高権威(大きな星)は中国共産党ということです。 

画像出展:「国旗の由来・歴史の資料室

米国旗の3色にはそれぞれ象徴的な意味があります。赤はvalor and bravery(勇気・勇敢・勇猛)、白はpurity and innocence(純粋・純真・潔白)、青はvigilance, perseverance, and justice(警戒心・忍耐・正義)です。

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権威主義は、指導者の意思により迅速な意思決定が可能です。

 

 

 

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トランプ政権が権威主義傾向に進むとしても、中国・ロシアとは本質的に大きく異なります。

 

 

 

2)トランプ政権による国家非常事態宣言と承認プロセス

国家非常事態宣言の是非はよく分かりませんが、トランプ大統領の危機感が強く、その結果として「国家非常事態宣言」が増えていると思います。

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不法移民、関税、エネルギー問題に関して発令されています。

 

 

 

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「国家非常事態宣言」は議会への通知、そして審議が必要です。

 

 

 

分断を煽るかのような民主党への攻撃は、2021年の「アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件」につながったと思います。これは絶対にあってはならない深刻な事件です。

一方、何故、民主党を徹底的に攻撃するのかという理由を考えると、根底にあるのはやはり「中国に対する危機感」であり、それは民主党政権には任せておけないという、もう一つの強い「危機感」ではないかと思います。

諸外国において仮想敵国をつくることで、国内の支持を固めるという外交的政治手法がありますが、民主党への執拗な攻撃は民主党政治に不満をもつ人々からの支持を強固にするための方策だろうと思います。まず岩盤支持層を固めること。そして景気の安定、雇用の提供、生活水準の確保という経済政策に力を注ぐことで、無党派層からも多くの票を得ようという作戦ではないかと思います。

トランプ大統領を養護するつもりはないのですが、『トランプ思考』を拝読させて頂くと、今起きている数々の問題は、「危機感と優先順位」(選挙に勝たなければ自らが政治を変えることはできない)からくるものではないかと思われます。

「世界の工場」からサプライチェーンにまで広がった中国の巨大な力は、電気自動車の普及と自動運転においても確実に進捗しています。AIにおいても高度なGPUによる輸入制限によって、結果的にDeepSeekという凄いLLMを作り上げてしまいました。また、宇宙開発でも量子コンピュータ技術開発でも激しくしのぎを削っています。

世界のAIをリードするトップ企業は米国の独壇場になっていますが、技術力や人材教育等においては、中国は権威主義国家として迅速な意思決定に基づき、着々と力をつけています。

このような世界情勢において、「世界の工場」、「サプライチェーン」にメスをいれ、今後の、AI、宇宙、量子コンピュータ技術における米国の優位性を維持しつつ、かつ国内の雇用を確保するとともに、老朽化した国内インフラを再生させ、強いアメリカ合衆国に作り変えたいというのが、トランプ大統領の1番の目的ではないかと思います。

トランプ大統領の強引な政治手法に関しては、常に大きな懸念がつきまとい理解することは容易ではありませんが、権威主義国家の意思決定の迅速さは民主主義国家の弱点でもあり、また、権威主義国家の中国が更に巨大化することは、西側諸国、民主主義国家全体の脅威となるため、その点を考慮すれば強いアメリカの存在、MAGA(「Make America Great Again」)は一つの選択肢のように思います。

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米国の主権は国民、中国の主権は共産党といえますか?.pdf
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大統領令であっても憲法や法律に反する内容の場合、議会が根拠法律の改正、予算不認可、さらには裁判所が差し止めや違憲判断をすることで発効停止や撤回とすることは可能です。これは主権が国民にあるからです。

一方、中国では共産党ファーストです。個人や企業よりも重視されるのは共産党の方針です。権威主義とは国家にとっての合理性が優先される非常に怖い政治です。

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AIの革新に対する電力供給の課題.pdf
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AIの進歩はまだまだこれからだと思います。その革新の最大の課題は電力供給の問題のようです。対策は色々あるようですが、Amazon、Microsoft、Googleなどハイパースケーラーの設備投資の規模とスピードを考えると、電力供給の問題はAIの分岐点にもなるような大きな問題だと思います。

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AI構想のための「ジェネシスミッション」.pdf
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『ドナルド・トランプ大統領は月曜日の午後、米国の人工知能の研究、開発、科学的応用を加速させるための新たな連邦政府の取り組みを開始する大統領令に署名した。』

これは、AIなど中国との激しい競争を意識してのものだと思います。

ご参考4(2026年1月12日):“トランプ大統領が語る、成功を導く7つの鉄則

こちらは“ばっちゃまの米国株”さまより拝借した約11分の動画です。

少し極端な印象はありますが、素晴らしいスピーチだと思います。