サッカーにおけるスペース

サッカーに関する本を何気なく見ていて、『世界一受けたいサッカーの授業 戦術・戦略に欠かせない100の基本』を見つけました。まず、そのタイトルに興味を持ちました。著者はレアル・ソシエダというスペインの強豪チームの育成年代からトップチームコーチ、そして強化ディレクターを歴任された、ミケル・エチャリ氏でした。

「サッカー部OBに過ぎない私が買うのもなぁ」と思ったのですが、スペインサッカーの何かを知ることができるかもしれないと思い買ってしまいました。

著者:ミケル・エチャリ

構成:岡崎 篤

初版発行:2017年2月

出版:(株)ベースボール・マガジン社

 

読み終わって気づいたことは、“スペース”という部分です。50年以上前の記憶ではありますが、サッカーにおいて“スペース”ということを深く追求したことはなかったなと思いました。選手として、ほとんど感覚的にスペースを使っていたに過ぎなかったと思います。

そこで、もし監督だったらサッカーにおけるスペースの問題をどのような戦略・戦術に落とすのかということを考えてみることにしました。

目次

1.知識の伝達方法は議論の的になり続ける

2.育成年代の目的設定とそれを達成するための方法論

3.そのほかの職業で行われているような継続した観察や分析は、フットボールという職業においても、職業訓練の質を維持向上させるために必要である

4.知識の伝達を通じて、フットボールを『見る』ことをサポートする

5.フットボーラーはピッチで思慮深い存在でなければならない

6.戦術の進化は終わりを知らない

7.監督は自チームがロジックを機能させられるようにしなければならない

8.戦術は技術よりも短い時間で習得される

9.戦術的判断に影響を及ぼす要素には、スペース、スピード、時間がある

10.決断されたアクションは味方に安定を与え、相手には対応を余儀なくさせる

11.ロジックを通じて入ってくるのは必ず身につけることができる

12.相手よりもいかに賢いか

13.フットボールにおける会話は『動き』を通じて行われる

14.常に何かをやっていなければいけない

15.プレーのリハーサルは実際のプレーで回答を見つけることを速め、そして、それはフットボールのスピードを上げる

16.各選手に求められる機能はスペースをどう共有するかによって決まる

17.いいプレーをするにはボールから目を切らなければいけない

18.選手は自分の目の高さから情報を得てプレーしている

19.各ポジションの機能を知っておくことが重要

20.選手の動きはアクションとリアクションの原則に基づく

21.目的を変更するための戦術的豊かさ

22.繰り返し発生する不均衡の中で均衡を見つけ続ける

23.スペースを埋める作業はポジションバランスの獲得につながる

24.話すことは情報の伝達を意味する

25.作られるスペースと埋められるスペース

26.近い方から離れて遠い方を背中で受ける

27.リベロとマーカーの距離を制限する

28.ボールに対して遠い方が修正する

29.声で押す

30.数的優位よりポジション優位の方が大事である

31.良いフットボールをするのは難しく、その形はひとつではない

32.フットボールをプレーする際の目的は『点を取られず』に点を取ることである

33.技術的に貧しいチームは、スペースを確保した状態でプレーできるように、速攻を志向するべきだ

34.全ての瞬間で攻撃と守備が存在する

35.指導者は、ボール近くの現在のエリアではなく、その先に有益になる未来のエリアに集中するべきである

36.ボキャブラリーは選手と指導者の間で共通したものであるべき

37.多様な目的を達成するための中間ポジション

38.リスタートのアドバンテージ

39.未来に注意する

40.価値あるスペースに変わり得る場所を相手よりも速く予測する

41.パフォーマンス向上のカギとなる視野の確保

42.幅は失ってもいいが、深みを失うことはできない

43.ピッチ中央でのポジションバランス

44.騒音の中を生きる

45.フットボールにおける才能とクオリティー

46.背景を知ることもプレーを評価する一部である

47.基本的なことをいかに素晴らしく行えるか

48.ポジションバランスの獲得はパスコースを作ることにつながる

49.正しく動く11本の棒を突破するのは難しい

50.似たような状況での同じ回答

51.90分間で得られなかったものを取り返すことはできない

52.逆サイドのサイドバックの動き

53.攻撃陣の守備戦術の欠如はチームに危険をもたらす

54.遠い方のセンターバックが守備を指揮する

55.近い選手によるプレッシングと遠い選手による警備

56.ペナルティーエリア前での最後のディフェンダー

57.円を描く動きとポジション優位

58.ラインをカバーリングするための逆サイドからのダイアゴナル

59.『1対2』よりも『3対4』の方が守りやすい

60.壁パスにおける壁役は出し手と反対側へ

61.物体は通り抜けることができない。空中は支配することができない

62.逆サイドのディフェンダーの体の向き

63.『触れ』と『放っておけ』

64.逆サイドのサイドバックはセンターバック方向に絞る

65.本当の動きから嘘の動きへ

66.最後方の守備の相手の最前方から2番目の選手にはアタックできない

67.ストップを通じてだます

68.あらかじめ『いる』のと『現れる』や『つく』は違う

69.壁パスにおける離れながらのサポート

70.壁パスでの幅と深み

71.技術が高い選手は人に仕掛け、技術が低い選手はスペースに仕掛ける

72.動きが変われば、作られるスペースも変わる

73.幅と厚みを考慮した速攻の準備

74.数的不利な状況において、2列目から飛び出しに注意しながら、オフサイドを誘発する

75.ひとつに集中する方がゾーン内のすべてに集中するよりも簡単である

76.『ゾーンでマークする』のであって、『ゾーンをマークする』のではない

77.ゾーンは埋めるもの、人はマークするもの

78.マークの立ち位置を決定する要因

79.攻撃における自由は守備における安全性に基づく

80.遠い成功のために近い危険を冒してはいけない

81.構造を整えるための動きはチームにポジションバランスを与える

82.攻から守への『切り替え前』に準備しておく

83.守から攻への『切り替え前』に準備しておく

84.特別な選手の模倣可能な部分とそうでない部分を区別する

85.パスコースは短命である

86.良い状態の仲間がいる場所に自分のマークを引き連れていかない

87.写真+記憶=プレー視野

88.静的ではなく動的なコントロールを

89.プレッシャーを受けてボールを運んだ場合、そのあとのボールの移動中に、『見えなかったエリア』に目をやる

90.斜めの動きと円を描く動き

91.サイドで休憩する

92.利き足を内側にしてプレーすることで作られる角度

93.軸足の指の向きはボールの軌道に影響を与える

94.フィニッシュにおける数メートルのアドバンテージ

95.チームが守備しているとき、攻撃は同サイドで待つ

96.斜めのポジション回復

97.何人を前に並べるかではなく、何人と敵陣に迫るかが重要である。そして、ポジション優位を意識する

98.詰める選手はどこに詰めるかを選定し、クロスを上げる選手はどこにボールを届けるかを選択する

99.サイドからパスを受ける3人目の攻撃の選手は止まるか少し下がる

100.フィニッシュにおける交差の順番

最後に 人間は最後の日まで学び続けることができる

目次

18.選手は自分の目の高さから情報を得てプレーしている

●言われてみれば当然なのですが、あまり意識したことはなく、しかし、とても重要な注意点だと思います。

●『指導者が絶対にやってはならないのは、選手が実際にどんな環境でプレーしているのかを忘れて指導することです。』とのことです。

23.スペースを埋める作業はポジションバランスの獲得につながる

●ここで書かれていることの前提は、『チームの構成員全体でどのスペースが有益なのかを知る必要があります

ということです。対戦相手が変われば戦略も戦術も同じではありませんが、チームのメンバーはある程度固定されますので、戦い方が試合ごとに大きく変わるということは、あまりないと思います。したがって、攻撃においても守備においてもそのチームの戦い方を十分に理解したうえで、スペースの問題も考える必要があると思います。

25.作られるスペースと埋められるスペース

●セットプレーよって試合が止まらない限り、プレーによってスペースは新たに作られたり、埋められたりと常に変化します。大事なことは自分の周りに加え、少しでも広くフィールドのスペースを把握できるよう周りを見られるというスキルを身につけることです。

61.物体は通り抜けることができない。空中は支配することができない

●ボール支配率は試合を有利にする方法です。特に主導権を握るということは身体的および精神的な疲労を軽減することにもつながります。試合終盤、残り時間5分をきってからの劇的な得点は、このような疲労の差ではないかと思います。ただし、技術面などに課題が多い場合などパスをつなげるサッカーが難しい場合は、中盤の後ろのスペースをチーム戦略として狙うという選択もあります。これは空中をうまく理由した攻撃といえます。

パス主体のポゼッションサッカーであってもパスに固執すると攻撃が単調になり、相手にとって守りやすくなるため、空中を使った攻撃を効果的に組み合わせることは有効です。ただし、対戦相手に対するチーム戦術として事前に練習を通してチーム内の意識合わせができていないと、この戦術はうまく機能しないように思います。

81.構造を整えるための動きはチームにポジションバランスを与える

●ここでのポイントは、『チームがボールを持って攻撃をしているときに攻撃をしないグループが存在しなければなりません。そして、チームが守備をしている際に守備をしないグループが存在しなければならないことも重要になります』。

これはバランスという事だと思います。「全員攻撃全員守備」であったとしても、攻守は一瞬にして替わってしまうものなので、フィールドプレイヤー全員が100%攻撃、100%守備では逆襲による失点のリスクを高めるとともに、攻撃においては有効な反撃ができず、守勢一方になってしまうリスクがあると思います。試合の流れを冷静に判断しつつ、攻守のバランスを意識した対応(ポジションバランス)が重要だと思います。

86.良い状態の仲間がいる場所に自分のマークを引き連れていかない

●『自分と相手の関係だけに意識を向けていたことによって、味方がフリーでボールを受けようとする場所に自分のマークを引き連れていってしまう、そんな現象をほとんどのサッカー場で見かけます。』

これは試合をしているとついやってしまうプレーだと思います。確かにチャンスを自ら潰してしまう悪いプレーです。これをなくすには、周りの状況を把握できる個人のスキルとチームとしての戦い方やスペースの使い方の意識合わせができているということが対策になると思います。

87.写真+記憶=プレー視野

画像出展:「世界一受けたいサッカーの授業」

●『優れたプレー視野をいかに持つことができるかが、フットボールをうまくプレーする上での最も重要なパラメータになります。育成年代においては、その選手のプレー視野をいかに向上させるかが、その選手の成長を加速させるカギになります。では、優れたプレー視野はどのように獲得されるのでしょうか。試合中、常に首を振って周りを見ようとすることが大事だと言われます』

89.プレッシャーを受けてボールを運んだ場合、そのあとのボールの移動中に、『見えなかったエリア』に目をやる

●『ボールを運んでいるときに、ピッチの状況をくまなくチェックするのは不可能です。そのため、ボールを一度離したら、失った時間を埋めるべく、運んでいる間に見ることができなかったエリアにすぐさま目をやる必要があります。なぜならば、それらの情報を基に次のアクションを決めなければならないからです。見えなかった場所にいかに速く目をやるかが、その選手のプレーの質やスピードを上げるカギを握っています。ボールの移動中は、情報を得るための時間だと言えます。』

91.サイドで休憩する

画像出展:「世界一受けたいサッカーの授業」

●『ボールを持っている中央の選手がプレッシャーを受けているとき、サイドの選手はどんなプレーを求められているでしょうか。相手の背後でボールを受けるために、サイドを一生懸命に駆け上がる選手をよく見かけます。しかし、ボール保持者である味方がプレッシャーを受けている場合、サイドの選手は、一度ストップし、足元でボールを要求するべきです。そうすれば、ボール保持者は、ボールを失わずに、味方に預けることができます。私は、これを「サイドで休憩する」と表現します。』

感想

ショートパスをつなぐスペインのサッカーは観ている観客を魅了します。パスを回すには選手間の距離が重要です。また、ボール、味方、敵、スペースを把握するというスキルも必要ですし、正確なキック(多くはサイドキック)の技術も必要です。これらを身につければ細かくパスをつなぐサッカーはできるはずです。後は、これらの技術、スキルを身につけるための練習を工夫し、高い意識で取り組み、そして体で覚えることです。

このパスサッカーを身につけるために、「サイドで休憩する」ということも大切だと思います。タッチラインでのプレーは背後から敵はこないので、比較的落ち着いてボール保持することができます。従って、このエリアはチームの決まり事の一つになると思います。

サイドから同サイドのゴールポスト半径25mのエリアをどう狙うかも面白い決まり事になるように思います。パスをつないでいくのか、空中を活用するのか、ドリブルでそのエリアに入り込むのか、基本的にはこの3つです。これらを試合で生かすには、明確な狙いをもった練習を準備します。そして、チームの決まりごとに加えます。

また、中盤をシンプルに経由して、逆サイドのゴールポストの半径25mのスペースを狙って攻撃するというパターンも相手ディフェンスを揺さぶる戦法になると思います。

美しいパスサッカーも、単調な攻撃が繰り返されれば守りやすくなります。そこには変化のある攻撃が有効になります時に“空中”を活用し、“狙いのスペース”をチーム戦術の中に落とし込むことにより、相手のディフェンスに圧力をかけることができます。

そして、相手のディフェンスが両サイドへの意識に偏より、中央にスペースができ始めたら、時折、ドリブル、ワンツーパス、ミドルシュートなどの攻撃を仕掛け、さらに相手のディフェンスが混乱するように揺さぶりをかけます。

最終的に、“両サイドのスペース”と“中央のスペース”を臨機応変に組み合わせた攻撃ができるようになれば、相手にとっての脅威になります。

ここで書いたようなことを、敵に囲まれたフィールドで実践することは容易ではありませんが、チーム全員の高い目的意識と具体的な戦術、そして効果的な練習の積み重ねによって、チームに根付かせることは可能だと思います。