パーキンソン病友の会医療講演会

今月7日、武蔵浦和コミュニティーセンターで行われた、埼玉県パーキンソン病友の会主催の「友の会医療講演会」に参加してきました。今回のブログは、その中から印象に残った3つの事柄について書いています。
なお、講演のテーマは以下の通りです。
「医療環境、医療連帯についてそれぞれのお立場から」
・北里大学メディカルセンター神経内科・・滝山容子先生
・埼玉県総合リハビリテーションセンター神経内科・・市川忠先生
・埼玉県総合リハビリテーションセンター脳神経外科・・大渕敏樹先生

 

1.脊髄歩行中枢(CPG)について
市川先生のお話のなかで出てきたキーワードです。脳の力を借りず、脳と同じ中枢神経の脊髄主導で歩行を行うという仕組みです。私自身、初めて聞いたものだったので、ネットで調べてみました。
参考にさせて頂いたサイトは「リハビリmemo」になります。
・ヒトは普通、歩くために意識して頭を働かせることはありません。例えば、「テレビのリモコンを取りに行こう」と脳が指令を発すると、リモコンがある場所を認識した後、勝手に歩行によって体を移動させています。
これは「歩行の自動化」といえます。ただし、無意識下で中枢神経がリーダーとなって何かの制御機構が発動していることは間違いありません。その制御機能がCPG(central pattern generator)というものですが(日本語訳はいろいろで、「脊髄歩行中枢」という名称はそのうちの一つです)、このCPG発見のきっかけは、脊髄を切断されたネコが脳からの入力なしに、脊髄の働きによって下肢の運動を行なったという実験結果でした。

そして、この脊髄主導の神経回路は腰仙部にあって、運動パターンを作り出すことが明らかになり、1985年にCPGと呼ばれるようになりました。
ヒトにもCPGの存在は予想されていましたが、ネコで行ったような実験をすることはできないため、確認することは難題となっていました。突破口となったのは、1998年に行われた脊髄損傷患者に対する腰髄への電気刺激の実験で、刺激の周波数を調整している時に、突然、麻痺した下肢が動き出すという事件が起こりました。
これにより、脊髄損傷患者を対象にした研究が行われ、筋電図も記録され、そこには電気刺激によって伸筋、屈筋が反応し膝関節の屈曲という運動が観察されました。そして、この研究によりヒトのCPGの存在が明らかとなりました。

なお、パーキンソン病治療ということでは、これからの分野ということだと思われます。

下肢の筋電図
下肢の筋電図

画像出展:「リハビリmemo」

2.パーキンソン病に伴う痛みの問題について
滝山先生のお話です。パーキンソン病患者さまの多くが筋肉や関節などの痛み、特に腰痛に悩まされているケースが多いという実態から、その原因などについて説明されていました。
・姿勢反射障害が原因の一つに考えられる。
・筋肉のこわばりのため、関節を動かす際に必要以上の筋肉などに高い負荷がかかる。特に無理な姿勢はその影響が腰部に出やすく腰痛になっていることが多い。
ドパミン自体に疼痛抑制作用があり、ドパミンが減少することで疼痛抑制の働きが低下し、痛みが増幅される。
・姿勢の問題が脊柱の歪みとなって、それが痛みとなって発現する。
・整形外科の課題は、専門性が高くなっていること。一般的には、脊椎を専門とされている先生が中枢神経に関わる疾患に詳しいように思う。

 

3.患者さまのリハビリ事例
患者さまから、自らが実践されているリハビリの内容についての発表がありました。
・「自己流リハビリで活き活きと」(私が勝手につけたもの。発表者の様子を拝見して、このようなタイトルが思いつきました)
・行なっていること
 ・グランドゴルフ(動きの改善)
 ・カラオケ(嚥下障害を防ぐため)
・止めたこと
 ・太極拳(片足での動きは、自分にとって困難と判断されたため)
・発表を伺って気づいたこと
 ・自分自身の問題を前向きに、積極的に、真剣に考えられている。(けっして、他人任せにされ
ていない)
 ・個人ではなく、複数のクラブ・サークルに入会されて、人とのかかわりを通じて楽しまれて
いる。(あるテレビ番組で、「人とのつながり」を積極的に構築することは、認知症などの予防に非常に有益であるということが放送されていました)
 ・継続させることが重要。発表された患者さまは、グランドゴルフは毎日やっているとのことで
した。
 ・自分に合わないこと、楽しくないことはやらない。という明確な意志と実行力をもたれている。

 

患者さまの「パーキンソン病なんかに負けないぞ!」という強い意志と覚悟が全身から満ちあふれていました。

市川先生より、特にダンスは良いとのお話がありました。

また、Wiiのゲームを利用したリハビリに関する論文が20種類ほど出ているとのことです。

ただし、「疲れるまで行うことは決して、してはいけない。」との注意がありました。

画像出展:「GATAG画像集」

※鍼灸師としての感想
・ドパミンへの影響については、動物実験の結果や、血液ドパミン値の改善データはあるものの、十分なエビデンスとは言い難く、現時点においてはまだ判断は難しいと思います。
・筋肉への影響については、こわばった筋肉を弛める効果は、経験から十分に期待できるものですが、効果の維持がどれ程あるかについては、個人差が大きいと思います。
・以前、受講した講演では、患者さまからの「鍼灸治療はどうですか?」という質問に対し、講演された先生(医師)は「試してみることは悪くないが、対価に見合う効果があるかどうかが重要でしょう。」とのご回答でした。

実験は全部で11件、ラットが10件、ヒトは1件です。ラットの測定は全て脳ですが、ヒト測定は血液(血中)になります。

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鍼灸の作用機序から神経内科領域の可能性を探る.pdf
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