今回の本は、日本整形内科学研究会(JNOS)の会員向け動画配信の中で紹介されていたものです。
安くない本だったこともあり、また、県立図書館に所蔵されてこともあり、お借りして勉強することにしました。
編集:村上栄一
出版:日本医事新報社
発行:2020年2月
本書では“椎間関節性腰痛”、“仙腸関節痛”、“臀部靭帯由来の痛み”について、詳しく解説されています(臀部の筋についてはほとんど触れられていません)。
なお、椎間関節性腰痛については「多裂筋の深層は椎間関節包に付着し椎間関節と一体として働くため、椎間関節性腰痛の関節外病変として多裂筋の要因を考える」とされており、多裂筋の要因も含めて椎間関節性腰痛を定義されています。
ブログは腰痛に対する理解を深め、特に初診時の判断力を高めて的確な施術方針を立てられるようにすることを目標とし、本書の中にあった以下の表をベースに、各疾患の特徴や痛みの姿勢や動作などを加筆し、1枚の表にまとめました。
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
目次は小見出しのレベルまで抜き出したため、非常に細かくなっています。
第1章 腰痛診療は進化したか? -現代腰痛診療を落とし穴-
1.画像依存が医療を後退
2.画像信仰を生みだしたX線の登場
●X線画像が与えた影響
●下肢痛は神経圧迫が原因との思い込み
●脊柱管内で把握できない病態の見逃し
3.画像に異常の出ない筋膜、靭帯や関節を軽視!
4.誤った神経支配信仰
●腰臀部の靭帯から下肢痛が生じる
5.靭帯・筋膜由来の腰下肢痛が圧倒的に多い
●神経損傷前に傷害を受ける靭帯、筋膜
6.画像では掴めない関節の機能障害
●機能障害を診断できない医療を招く危険
7.エコーの進歩
8.驚嘆すべき人間の秘めた能力!
●One fingerテスト
●患者は発痛源がわかる
9.集学的治療の前に腰痛の正確な診断を!
●触ってわかる腰痛の真実
●“患者に触らない”医療者であってはならない
第2章 腰痛診療の新展開
腰痛の実態と診断法
1.腰痛の定義
2.腰臀部痛の実態
3.腰臀部痛の診断プロセス
●腰椎椎間板ヘルニアについて
・腰椎椎間板ヘルニアの病態
・腰椎椎間板ヘルニアの診断
・腰椎椎間板ヘルニアの治療
●脊柱管狭窄症について
・脊柱管狭窄症の病態
・脊柱管狭窄症の診断と治療
●腰臀部痛の診断
●腰臀部痛の問診
・腰臀部痛の発症様式・時間経過
・腰臀部痛の増悪・寛解因子
・腰臀部痛の性質・性状
・腰臀部痛の場所
・随伴症状
●腰臀部痛の身体所見・エコー:特異的圧痛点とエコー下触診
・上後腸骨棘(PSIS)
・上臀皮神経
・梨状筋
・上臀神経
・下臀神経、坐骨神経
・仙結節靭帯
・椎間関節
・腸腰靭帯
・腰部筋膜性疼痛症候群:筋肉の働きとエコー画像
●各発痛源の合併および関連性
・仙腸関節障害と梨状筋症候群
・上臀皮神経障害と多裂筋
・椎間関節障害と多裂筋
・椎間板性障害と椎間関節障害
4.症例事例
●診断のストラテジー
●治療
●考察
5.おわりに
腰痛治療の新しいアプローチ:腰部痛に対するエコーガイド下fasciaハイドロリリース
1.エコーガイド下fasciaハイドロリリース開発経緯
2.エコーガイド下fasciaハイドロリリースの定義
3.エコーガイド下fasciaハイドロリリースと発痛源評価
●問診
●疼痛再現評価
●圧痛所見
●エコー評価
●機能評価
4.筋膜性腰痛に対するエコーガイド下fasciaハイドロリリース
5.Fasciaに焦点を当てた局所注射
●Faset周囲(椎間関節腔+関節包靭帯+多裂筋付着部+筋外膜間のfascia+黄色靭帯、背側硬膜複合体と神経根に繋がるfascia)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●腸腰靭帯周囲(腸腰靭帯+facet周囲+後仙腸靭帯+胸腰靭帯)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●神経根周囲(神経線維+fascia)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●腰神経周囲(大腰筋+腰方形筋+胸腰筋膜深層+腰神経叢)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●LED(黄色靭帯+硬膜+多裂筋深層+fascia)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●腰椎筋膜三角(lumbar interfascial triangle;LIFT、胸腰筋膜+腸肋筋+大腰筋+fascia)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●棘間靭帯
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●棘上靭帯(胸腰筋膜+起立筋付着部+靭帯)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●胸腰筋膜(胸腰筋膜+脂肪組織+fascia+脊柱起立筋)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●上臀皮神経(神経線維+fascia+脂肪組織)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
●Iliocapsularis muscle(IC、脂肪体+関節包靭帯+大腿直筋・腸骨筋)
・手技:エコーガイド下fasciaハイドロリリース(交差法)
第3章 画像では診断しにくい発痛源へのアプローチ:腰椎疾患
見逃されやすい神経根性腰臀部痛
1.はじめに
2.神経根性腰臀部痛
3.腰椎椎間板ヘルニア
4.腰部脊柱管狭窄症
5.腰椎椎間孔狭窄
6.神経根性腰臀部痛の治療
椎間関節性腰痛
1.はじめに
2.椎間関節の機能解剖
3.椎間関節の神経分布
4.多裂筋と腰痛
5.椎間関節性腰痛の臨床症状
●椎間関節性腰痛の問診
●椎間関節性腰痛の診断
6.椎間関節性腰痛が合併しやすい疾患
●椎間関節性腰痛をきたしやすい姿勢、動作
●椎間関節の痛みを増強させる動作
・ソファーに長時間座る時の腰痛
7.治療
●椎間関節ブロック
●薬物療法
●物理療法
●装具療法
●温熱療法
●東洋医学的アプローチ
・経筋のツボ(奇穴、陰谷の1cm内側):頸、肩、腰の痛みを訴える患者の反応点
・腰退点と列決
・漢方
●アーン体操
椎間板性疼痛
1.はじめに
2.椎間板性疼痛の病態
3.椎間板性疼痛の症状と検査所見
●症状
●検査
・理学所見
●画像所見
・MRI
・単純X線
●造影およびブロック所見
・椎間板造影
・椎間板ブロック
4.診断
5.保存療法
●薬物療法
●リハビリテーション
●その他保存療法
・椎間板内薬物注入療法
・硬膜外ブロック
・神経根ブロック
・椎間板内コンドリアーゼ注入
・脊髄刺激療法
6.手術療法
●手術適応に関して
●手術方法
7.症例提示
●画像所見
●治療経過
8.おわりに
仙腸関節障害の診断とブロック治療
1.仙腸関節の構造
●動きの少ない関節の役割
2.診察手順
●問診
・発症のきっかけ
・疼痛を訴える動作
・疼痛域
・One fingerテスト
・問診のまとめ
●理学所見
・立位での診察
・仰臥位での診察
-SLRテスト
-Fabere(Patrick)テスト
-Thigh thrustテスト
-腸骨筋の圧痛の検査
-Gaenslenテスト
・腹臥位での診察
-寝返り動作
-SIJ shearテスト(Newtonテスト変法)
-圧痛点
3.診断手順
●診断のアルゴリズム
●仙腸関節ブロック
・後方靭帯ブロック
・ベッドサイド後方靭帯ブロック
・エコー下後方靭帯ブロック
・関節腔内ブロック
・ブロック効果の機序
●鑑別すべき疾患とその方法
・椎間板ヘルニア
・腰部神経根症が合併
・椎体圧迫骨折や仙骨骨折
・変形性股関節症
●リハビリテーション・再発防止、日常生活の指導
コラム1 救急車で搬送される急性腰痛症
コラム2 仙腸関節スコア
コラム3 腰椎術後の腰臀部痛
コラム4 仙腸関節周囲靭帯付着部症
仙腸関節機能障害の画像診断と手術(SPECT/CTを中心に)
1.はじめに
2.仙腸関節機能障害の画像診断
●SPECT/CT画像の価値~意義
●研究からの考察
・SPECT/CTによる集積度と症状の相関
・S2領域に集積する意味
・仙腸関節炎の発症メカニズム
・仙腸関節機能障害の病期分類
・SPECT/CT画像の診断的意義
3.仙腸関節機能障害に対する手術
●手術適応
●手術の意義
●仙腸関節の固定法
・仙腸関節前方固定術
・仙腸関節後方固定術
●代表的な仙腸関節後方固定用インプラント
・iFuse Implant System
・Rialto™ SI Fusion System
●代表的な症例
高周波熱凝固術(RFN)
1.高周波熱凝固術(RFN)の概要
●はじめに
●RFNの歴史
●RFNの原理、作用
●RFNで凝固できる範囲
●RFNの適応症例
●RFN装置の操作方法
●合併症
2.仙腸関節性腰痛の治療成績
●対象
●治療方法
●結果
・腰痛、下肢痛に対する効果
3.RFN治療の意義
●RFN治療の効果
4.おわりに
リハビリテーション①:AKA-博田法
1.はじめに
2.AKA-博田法とは?
3.関節運動学
4.関節神経学と臨床
5.関節の副運動
6.関節軟部組織過緊張連鎖
7.仙腸関節機能障害の診断法
●体幹の関節機能異常を利用した診断
●股関節の関節軟部組織過緊張連鎖を利用した診断
・SLRテスト
・Fadirf
・Fabere
8.治療技術
●上部離開法(superior distraction;sd)
●下部離開法(inferior distraction;id)
●上方滑り法(upward gliding;ug)
・左仙腸関節
・右仙腸関節
9.AKA-博田法の適応となる症状と診察所見
●疼痛部位
●圧痛、叩打痛
●下肢症状
●問診
●診察の手順
10.診断/除外診断に必要な検査
11.急性腰痛と慢性腰痛に対するAKA-博田法の効果
●急性腰痛
●慢性腰痛
12.症例提示
13.AKA-博田法の特徴
●利点
●欠点
14.考察
リハビリテーション②:Swing-石黒法
1.仙腸関節機能障害に対する授動術(Swing-石黒法)
2.Swing-石黒法について
3.症例と結果について
4.仙腸関節機能障害に対する著明な改善、改善症例からの検討
●患者の訴え
●診断の理由と必要な検査
●Swing-石黒法を行う判断
・興味深い症例
・関節炎症状
・腰椎疾患との合併
・側弯症について
・尻もちなどの外力による仙腸関節機能障害
●本法施行後の患者への日常生活指導
5.従来の治療法
6.まとめ
臀部の靭帯由来の痛みに対するアプローチ
1.はじめに
・靭帯機能不全
・仙骨神経後枝(背側枝)の絞扼性神経障害
2.診断に有用な情報を得るための身体所見の取り方
●圧痛ポイントの鑑別
3.長後仙腸靭帯由来の腰臀部痛の治療
●解剖
●機能
●症状
●検査・身体所見
●鑑別すべき他の発痛源の特徴
・上臀神経
・中臀皮神経
●治療法とその選択基準
・軽症の場合
・中症の場合
・重症の場合
●エコーガイド下fasciaハイドロリリースの平行法手技(交差法でも可能)
4.仙結節靭帯(仙骨側、坐骨結節側)由来の腰臀部痛の治療
●解剖
●機能
●症状
●検査・身体所見
●鑑別すべき他の発痛源
・下臀神経
・坐骨神経
・陰部神経
・後大腿皮神経
●治療法とその選択基準
・軽症の場合
・中症の場合
・重症の場合
●エコーガイド下fasciaハイドロリリースの交差法手技(平行法でも可能)
・仙骨側
・坐骨結節側
5.腸腰靭帯由来の腰臀部痛の治療
●解剖
●機能
●症状
●検査・身体所見
●鑑別すべき他の発痛源
・腰椎椎間関節
・胸腰筋膜
・上臀皮神経
●治療法とその選択基準
・軽症の場合
・中症の場合
・重症の場合
●エコーガイド下fasciaハイドロリリースの交差法手技(平行法でも可能)
臀部での絞扼性神経障害
1.臀部における絞扼性神経障害
●坐骨神経
●上臀神経
●下臀神経
●後大腿皮神経
●臀部絞扼性神経障害の病態
・梨状筋の拡大
・坐骨神経の破格
・線維性バンドによる絞扼
・内閉鎖筋-双子筋複合体による絞扼
・大腿方形筋損傷からの炎症波及
2.診断の手順
●問診
・発症のきっかけ
・症状の特徴
・既往歴の確認
・疫学
・身体所見
・患肢における股関節外旋
・圧痛の確認
・SLR(straight leg rising)テスト
・Freibergテスト
・Paceテスト
・FAIRテスト
・Beattyテスト
・Seated piriformis stretchテスト
・Active piriformisテスト
・股関節内旋テスト
・神経学的所見の評価
●画像診断
●電気生理学的検査
●神経ブロック
●鑑別すべき疾患とその方法
・腰椎疾患
・変形性股関節症
・脊椎骨折、骨盤部骨折
・臀部筋群の筋損傷、腱障害、骨化性筋炎
・仙腸関節障害
・骨盤内腫瘍
・異所性子宮内膜症
・血管病変
3.治療
●薬物療法
●ブロック療法
●理学療法
・坐位でのストレッチ
・仰臥位でのストレッチ
●手術療法
上臀皮・中臀皮神経障害の治療
1.はじめに
2.上臀皮、中臀皮神経とは?
3.患者が訴える痛みから診断へ
●患者の症状から疑ってみる
●圧痛を確認する
●上臀皮・中臀皮神経ブロックを行って診断を確定する
4.診断/除外診断のために必要な検査
5.治療・治療介入するかどうかの判断
●上臀皮・中臀皮神経ブロック
●手術による治療(臀皮神経剥離術)
●リハビリテーション、再発防止の生活指導
6.おわりに
第4章 アスリートの腰痛
アスリートの腰痛に対する評価・診断
1.はじめに
2.腰痛の評価法
3.伸展型腰痛(椎間関節性腰痛、椎弓疲労骨折、棘突起インピンジメント障害)
・問診
・脊柱所見
・圧痛点
4.椎間板性腰痛
・問診
・脊柱所見
・圧痛
5.仙腸関節障害
・問診
・圧痛
・脊柱所見
6.筋筋膜性腰痛、筋付着部障害
・問診
・脊柱所見
・圧痛
7.腰部障害と他の運動器障害との関連性
●矢状面上でのmotor control不全による運動器障害
●冠状面上でのmotor control不全による運動器障害
8.おわりに
アスリートの腰痛に対するリハビリテーション
1.はじめに
2.アスリートの仙腸関節障害の発生機序
3.仙腸関節障害に対するリハビリテーション
●位置異常に対するリハビリテーション
●不安定型に対するリハビリテーション
4.(競技における)原因動作の修正
5.おわりに
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
多裂筋と腰痛
『多裂筋浅層は起始が仙骨後面、全腰椎乳様突起で、停止は起始より3~5椎体上位の棘突起である。多裂筋深層は起始が椎間関節関節包で、停止は起始より1椎体上位棘突起であり、脊髄神経後枝内側枝支配をうける。下部腰椎椎間関節由来の疼痛に関与するのは、浅層は仙骨後面より起始しL4/L5、L5/S1を通る筋層である。
多裂筋はⅠ型遅筋線維が多く、脊椎安定化・生理的前弯の維持に働いている多裂筋深層部は体の中心に近いため、回旋運動では外側の筋肉(腸肋筋や最長筋)より動き始め、最後に深層の多裂筋が収縮する。筋収縮で疼痛が誘発されるのは回旋最終段階で疼痛が出現する。
腰部を伸展・回旋した時、短い鋭い痛みが出れば、関節包または多裂筋深層の関節包付着部炎による疼痛と考える。反対側に回旋させてズーンとした痛み(C線維)が誘発されれば多裂筋浅層の筋線維の攣縮状態と考える。ピリッとした痛みであれば浅層の仙骨付着部炎と考える。多裂筋は椎間関節の制御安定を図る馬の手綱に相当する、両側が働けば首は伸展(腰椎前弯)し、片側が働けば首は横に向く(腰椎回旋)。
多裂筋深層部は通常、背側の関節包のインピンジメントを防いでいる。多裂筋の浅層の異常は仙腸関節性腰痛と複合して生じることが多い。深層線維が損傷されて関節包がインピンジされると、多裂筋全体の攣縮が生じ、体動困難な状態となる。
一般的に筋付着部炎は、動作の向きを変える時や強い牽引力が働くと、ピリッと瞬間的な痛みが生じる。しかし軽いストレッチでは痛みは起こりにくい。テニス肘も筋付着部炎であるが回外伸展から回内屈曲にする時(ボールを打つ瞬間)痛みが生じる。また、tennis elbow testで筋を最大収縮させた時にも痛みが出る。これらの部位はゆっくりとしたストレッチでは疼痛は軽度である。腰でいえは前屈から伸展に体を起こす時や右から左に急に向きを変える時に痛みが生じやすい。
筋線維部分断裂や線維化している時あるいは筋線維束の攣縮の時は軽いストレッチでもズシーンと長めの痛みが生じる。筋全層の攣縮では屈曲も伸展もできない状態となる。
腰椎を伸展回旋すればその痛みの性質で多裂筋の疼痛部位を推察することができる。』
ご参考
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
3カ所〇で囲まれた箇所がありますが、左から”大転子”、”坐骨結節”、”PSIS(上後腸骨棘)”になります。
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
”臀部靭帯由来の痛み”や”臀部での絞扼神経障害”は、臀部(骨盤部)に生じる圧痛がポイントですが、ここには筋肉・筋膜も存在しているのでその鑑別は難しく、鍼治療では深さを意識し、鍼数で対応します。
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
”仙腸関節痛”を判断するための指標です。合計9点なので、One fingerテストによるPSIS付近の圧痛と鼡径部痛だけで5点となるため、特にこの2つが重要です。
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
日常の何気ない姿勢から臀部の靭帯にかかる緊張や負荷を考えます。
画像出展:「長引く腰痛はこうして治せ!」
”靭帯”、”神経”、”皮神経”、”関節”の上には筋肉があるのですが、骨盤の構造を把握し圧痛や硬結を見つけることが基本になります。
まとめ
原因が重複することもあるので、点ではなく視野を広くして向き合うことが大切だと思います。
1.判断材料
1)入室の様子(表情や顔色、歩き方、姿勢[体の傾き・歪みなど])
2)問診
3)動作確認(痛い動き、動作テスト、One fingerテストなど)
4)触診(圧痛、硬結など)
2.判断の流れ
1)鍼灸不適応疾患の除外
●腰痛一覧表の“骨折・感染・腫瘍”および“非脊椎”の中から“心因性腰痛”を除く4つを鍼灸適応外とする。なお、判断は、安静時痛有(胃痛のように全く体を動かさないのに辛い痛みがある)、かつ1回の施術で全く改善がみられない場合とする。なお、電話やメールで安静時痛か動作時痛かの事前確認をし、明らかに前者であれば来院前に内科や整形外科の受診を優先して頂くようお願いする。
2)約6割を占める“脊椎・筋”もしくは“臀部靭帯由来の痛み”を想定する。そのために“神経根性腰臀部痛”ではないことを確認する。
●腰椎椎間板ヘルニア:前屈制限、下肢痛、圧痛は主にL4-S1、SLRテスト陽性、好発年齢20~40歳代、男性に多い。
●脊柱管狭窄症:伸展制限、間欠性跛行、坐位および前屈で痛みが緩和される。好発は中高年。
3)“仙腸関節”由来、または“臀部靭帯由来の痛み”であるか確認する。
●仙腸関節痛:前屈・伸展制限、鼡径部痛、正座はできるが椅子は座れない、One fingerテストでPSISを指す。(”仙腸関節スコア”に基づく)
●臀部靭帯由来の痛み:仙骨に沿った臀部の圧痛を確認。
・長後仙腸靭帯由来の腰臀部痛:PSIS下部の圧痛、寝返り困難。
・仙結節靭帯由来の腰臀部痛:坐骨結節周辺の圧痛、前屈困難。
・腸腰靭帯由来の腰臀部痛:L5/L4外方の圧痛、前屈・回旋困難。
4)“椎間板性腰痛”、“椎間関節性腰痛(多裂筋の問題を含む)、“筋筋膜性腰痛”であるか確認する。
●椎間板性腰痛:鼡径部痛、長時間の坐位で痛み(激痛ではない)、好発年齢は20~40歳代。
●椎間関節性腰痛:伸展・回旋制限、起床困難、起立困難、家事・掃除で痛み、ソファーに長時間座れない。
●筋筋膜性腰痛:筋肉別圧痛:脊柱起立筋(最長筋、腸肋筋)、腰方形筋、腸骨筋、大腰筋の圧痛。
ご参考:筋筋膜性腰痛にかかわる主な筋肉
画像出展:「人体の正常構造と機能」
画像出展:「人体の正常構造と機能」
腸骨筋などの緊張や硬結が腰部に関連痛を引き起こす場合があります。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
広く覆う大殿筋の前方に中殿筋、その下層に小殿筋があります。一方、中央部には梨状筋があり、大腿骨の大転子に停止する比較的小さい筋群が多くあります。
なお、大殿筋の停止は大転子ではなく、腸脛靭帯と大腿骨殿筋粗面になります。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
多裂筋の要因を”椎間関節性腰痛”に含めると、”筋筋膜性腰痛”は腰部の腰方形筋、腸骨筋、大腰筋と、後頚部にまで続く最長筋、腸肋筋がターゲットになります。