経絡≒ファシア2

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

序論

筋膜の世界にようこそ!

・第1回国際筋膜研究学術大会は2007年10月、ハーバード大学医学大学院の会議センターで開催された。

『本書の目的は、研究者と身体構造を治療している専門家のために、身体の結合組織マトリックス(筋膜)に関連した情報を系統化することである。』

臓器を包んでいるだけではない

・解剖において筋膜は“何かを見るため”最初に切除しなくてはならない白い包みである。

・筋から腱を通じて骨へ力が直接に伝わることはほとんどなく、筋は筋膜シート上に収縮力や緊張力を与えることに関与している。この筋膜シートは拮抗筋と共同筋に力を伝える。そのため1つの関節ではなく、それ以上のいくつかの関節に関与する。

・『筋膜組織は1つの大きなネットワーク器官であり、たくさんの袋やロープのような局所の高度化を何百と有しており、ポケット内に何千というポケットを有し、また頑丈な隔膜や疎性結合層によりすべて相互に結合している。』

筋膜とは?

・『軟部結合組織内の解剖学的区別は重要であるが、細部にこだわると大きなスケール上で認識されているだけの重要な組織の連続性については無意識に排除されかねない。たとえば、頸部斜角筋の筋膜は胸郭内の心膜と隔膜に連続しているという臨床上の重要性について、われわれと議論する整形外科医には驚きであるが、オステオパシーや一般外科医にはそれほどでもない。』

2009年の筋膜研究学会(Huijing & Langevin 2009)において、膜という用語は、“人体に広がっている結合組織系の軟部組織成分”とされた。また、人体全体の張力伝達システムである線維性コラーゲン組織であるとも記述された。 

筋膜と考えられている異なった軟部組織
筋膜と考えられている異なった軟部組織

画像出展:膜・筋膜

・筋膜組織はコラーゲン線維の密度と方向によって異なる。

・浅筋膜は低密度でほとんどは多方向か不規則は線維アライメントであり、腱や靭帯より密度が高く一方向性である。

・筋内の筋膜(隔壁、筋周膜、筋内膜)、内臓筋膜(体網や心膜のようなより強固な軟部組織を含む)は、さまざまな方向と密度を有する。

・固有筋膜は二方向から多方向配列である。

・支帯や関節包は示していないが、靭帯と腱膜、固有筋膜の間でさまざまである。

 

・『膜組織の広汎な定義における大きな有用性の記載がある一方、より伝統的な著者は筋膜という用語を腱膜や靭帯のような規則的な組織と区別して、“不規則”な結合組織の高密度化層と限局して使用していることも認識している。ある分野においては、そのような区別はほんとうに可能であり、臨床において有用である(例として腰部の筋膜と腱膜)。そこで本書には可能なところに12の特定用語を追加し筋膜組織の詳細な記述をした。この特定用語はHuijing & Langevin(2009)によって提言された以下の用語である。

密性結合組織、疎性結合組織、浅筋膜、深筋膜、筋間中隔、骨間膜、骨膜、神経血管路、筋外膜、筋内および筋外腱膜、筋内膜。しかし身体の多くの重要な部位はそのような形態上分類間の緩やかな変化やさらに局所のコラーゲン構造の幾何学的種類(主要な線維方向、組織の厚さと密度の観点から)により特徴づけられるため、詳細な組織特性を理解することは非常に有用である。

・『本書は、筋膜学会のように、科学者と臨床家の両方に向けるという困難な役割を果たしている。第1部で筋膜の解剖学と生理学、第2部では臨床状態と治療について、第3部では近年の研究成果を紹介した。われわれは研究者が直面している筋膜周囲組織の定義の努力について目を向けた。どの組織か? どの線維方向か? 何が何に結びついているか? 臨床治療においてどの組織が損傷し、どの方向への力がかけられているかを定義する一助となるよう、研究手段により、いっそう臨床分野についての議論を展開しなくてはならない。臨床家と科学者が一緒にそして別々に、筋膜の基礎的理解と臨床治療についてさらに進めることに挑戦していくことがわれわれの希望である。』 

第1部 科学的基盤

パート1 筋膜体の解剖

1.1 筋膜の一般解剖

序論

・筋膜は三次元的基質を形成し、すべての器官に連続しており、線維と束間を分けているというよりはむしろ結合している。

●筋膜の一般構造と構成 

骨格筋の筋膜図
骨格筋の筋膜図

画像出展:膜・筋膜

・筋外膜は筋の周りを取り巻いているもの。[筋外膜は筋上膜とも呼ばれています]

・筋周膜は筋線維束を分けているもの。

・筋内膜は筋線維を分けているもの。

・各筋線維内には収縮性筋原線維が存在する。

 

筋内膜の機能解剖学

・筋内膜は筋線維を筋束につなげる唯一の組織である。

・筋内膜ネットワークは連続的な構造であるため、線維管内の終末線維で発生した張力は筋内膜ネットワークを通して伝達する。

筋周膜の機能解剖学

・筋周膜の量と空間分布は身体の筋間において異なる。

筋周膜は張力により簡単に形を変える。

・筋周膜は張力下において高張力剛性を示し、張力の大きな力を伝達するが、それは筋の作用する長さ以上に伸長された状況においてである。

筋周膜-筋内膜の接合領域

・筋線維を取り巻いている筋内膜は、筋周膜接合板(PJPs)にて断続的に筋周膜と結合していると考えられている。

筋周膜と細胞内下位領域

・筋線維の主細胞質構成要素間において、核とミトコンドリアが重要である。それは、筋線維の代謝とエネルギー算出をコントロールするためである。

・筋周膜のⅣ型コラーゲン成分の欠乏は、筋線維核とミトコンドリアのアポトーシス(細胞消滅)と関係する。

・筋が収縮するストレス下においては、筋周膜ケーブルの最終分岐が機械的情報伝達において重要な役割を果たす。

結論

筋膜は隣接筋線維が筋束内できつく結びついて力が伝達することにより、過伸長下における力の協調と損傷部位の保護を可能にする。

・力の伝達は少なくとも連続した線維筋では収縮力伝達の主要経路である。

・筋周膜と筋外膜が筋膜での力伝達経路としても作用するという根拠が多数存在する。

・動筋の機械的役割に連続的に適合するために、筋膜は合成と再構築(リモデリング)間で連続的な動的バランスをとっている。

1.2 体幹の筋膜

身体の筋膜の包括的組織

身体における体幹の筋膜の組織概説

全ての体幹組織は、身体の実質を包み込んでいる筋膜という軟部組織の中に存在する。

・筋は結合組織基質内で成長し、成体組織は筋外膜に覆われる。

・骨は間葉と呼ばれる胚筋膜基質から起こり、成体形では骨膜となる。

・間葉は肥厚化して関節包を強固にし、最終的に関節包の高密度層を覆っている筋膜を形成する。

体幹組織を包んでいる筋膜シートは、各組織を取り囲むことで直接的摩擦から保護している

・結合組織である筋膜は体幹系組織を取り囲むことにより、複雑で連続的な面やシートを結びつける。

・筋膜には多面的にゆがむと同時に、速やかに元の形に戻る能力がなくてはならない。この特徴は線維性成分が織り混ぜられている不規則性結合組織の筋膜によくみられる。

固有筋膜は線維要素が不規則に分布する結合組織と定義され、組織が平行に並んでいる腱や靭帯、筋膜、関節包とは対照的である。

筋膜の線維成分密度は局在と機能により非常に様々である。

皮下にある筋膜は動きやすいようにコラーゲン線維密度は低い。一方、筋や靭帯、腱、関節包を覆う筋膜は、コラーゲン線維の密度は高く、強固な支持が可能である。

・体幹系(筋、腱、靭帯、腱膜)は分化した構造ではないため、筋膜面の明確な境界域は存在しない。

リンパ管は筋膜面の不規則組織内に分布しているため、境界域組織に力がかかってもリンパはリンパ管の中を容易に流れる。

筋膜の体系―4つの主要な層

一般的アプローチ

・本章では不規則結合組織または、“固有筋膜”に焦点を当て、身体の軸を覆う主要な4層について述べる。この基本理念の修正が四肢に適応される。 

筋膜と考えられている異なった軟部組織
筋膜と考えられている異なった軟部組織

画像出展:膜・筋膜

固有筋膜は左の図の下部左端になります。

 

・体幹の4層は一連の同心性チューブとして配列している。

・筋膜の際外側部は層あるいは脂肪層と呼ばれる。

・脂肪層の深部に体幹の軸性筋膜がある。この層は体軸筋の筋外膜、歯根膜と腱や靭帯の周囲靭帯、骨膜となる。

・筋膜の軸層は四肢筋膜と連続している。

軸筋膜の内部は2層に分かれる。1つは神経組織を取り巻く髄膜筋膜、もう1つは体腔を取り巻く内臓筋膜である。

皮下脂肪組織層の下に、軸筋膜に類似した構成の筋膜層が四肢の筋を取り巻いており、四肢筋膜と呼ばれている。

四肢筋膜の内部には神経血管束を収容している筋内中隔がある。

筋膜の主要な4層

皮下脂肪筋膜

最外側層は皮下脂肪層筋膜で、浅筋膜とも呼ばれる。

・皮下脂肪層は脂肪細胞と同様に部位により様々なコラーゲン線維密度の著しい変化を伴って不規則結合組織で構成されている。

軸(体幹)筋膜

2番目の層は軸筋膜または深筋膜という。軸筋膜は層に末梢性に融合して身体の深部へ広がり、軸下(腹側)筋および軸上(背側)筋を取り囲む。

・軸筋膜は2つの平行した結合組織管により構成されていて、脊柱の前方と後方に走行する。発生的にこの2つの管は成人で脊柱となる脊索によって分けられる。前菅は軸下筋群を取り囲み横突起へ付着する。軸下筋群は頸部では頸長筋や斜角筋、胸部では肋間筋、腹部では腹斜筋と腹直筋を含む。軸筋膜の後管は軸上筋群を取り囲み横突起に付着する。各椎体の棘突起により、軸上筋膜管を2つの“半分の管”に分ける。後部の傍脊柱筋群は軸上筋膜の“半分の管”に含まれる。

脊柱の前方と後方を走行する軸筋膜
脊柱の前方と後方を走行する軸筋膜

(A)白い輪郭は軸筋膜を示している。

(B)筋区画の陰影

(C)軸上(背側)と軸下(腹側)筋膜円柱

軸(体幹)と四肢の境界には複雑な筋膜関係が存在する。

体壁の筋膜配列は肢節の連結によって非常に複雑になっている。

・胸筋や僧帽筋、前鋸筋、広背筋のような上肢の筋は、長い翼のように展開して体幹を覆い身体の正中の棘突起や、胸腰筋膜のように最終的に正中に附属する組織に付着する。

髄膜筋膜

3番目の筋膜層は神経系を取り囲む髄膜筋膜である。この層は硬膜ならびに下に横たわる軟膜を含む。

・髄膜筋膜は末梢神経を取り囲む神経上膜となり終わる。

・脊髄髄膜は壁側中胚葉から派生すると考えられる。

内臓筋膜

4番目の筋膜層は内臓筋膜であり、4つの主要筋膜層のうち非常に複雑な筋膜である。

発生学的に内臓筋膜は内臓組織から派生し、胸膜・心膜・腹膜として体腔を取り囲む。

身体の正中で内臓筋膜は、頭蓋底から骨盤腔まで延びる厚い縦隔を形成する。

要約

筋膜は身体全体を通して広く分布して、不規則でさまざまな密度のコラーゲン線維を織り混ぜたもので構成される結合組織の形態を示す。

筋膜は身体において複数の役割を果たす。大部分の構造物を覆い保護力は高く、また潤滑機能を提供することである。

・骨格成分間の相互接続ネットワークにより力の変換を制限する。

・細胞組成が免疫機能と感覚神経の役割を強く担っていることを示唆している。

・『特定の筋膜には多くの名称がついているにもかかわらず、本章では4つの主要筋膜層だけを表現することを試みた。最外側または皮下脂肪層(浅筋膜)は、おもに疎性結合組織と脂肪で構成されており、露出した開口部以外の体幹と四肢すべてを取り巻く。次に、筋や腱、靭帯、腱膜を覆っている、高密度な不規則性結合組織で構成された軸筋膜(深筋膜または被覆筋膜)の複合体配列がある。軸筋膜は四肢(四肢筋膜)に達し、軸(体幹)対照物と類似した構成と機能がある。この筋膜ネットワークは、骨格筋系要素の保護と潤滑に作用し、筋収縮時に力変換の伝達にも作用する。軸筋膜は脊柱で分けられる2つのそで(スリーブ)からチューブで配列され、そこから四肢筋膜が起こる。最終的な2層は軸筋膜内に包まれている。これらは、髄筋膜および内臓筋膜であり、両者はそれぞれ神経系と内臓を保護する役割を担っている。本章では、それらの小成分よりもむしろ主要層の提示に限定することで、身体の筋膜面の連続性を強調した。』