腸内フローラ(腸内細菌叢)

腸内フローラと腸内細菌叢は同じものですが、「細菌叢」とは「多種多様な細菌の集まり」ということです。
「専門学校時代に習ったかなぁ?」というのが感想でした。そこで、久々に生理学の教科書を広げたところ、次のような内容が別々に掲載されていたのを確認できました。
1.大腸内の消化と吸収―腸内細菌
大腸内には、大腸菌をはじめとして多数の細菌が常在している。腸内細菌は小腸で消化しきれなかったものを分解する。食物線維は腸内細菌の働きにより発酵されて、酪酸・酢酸やCO2、H2、メタンなどのガスを発生する。アミノ酸は腸内細菌によりインドール、スカトールなどを生成し、糞便臭の原因となる。
2.生体の防衛機構に働く組織と因子―生体表面のバリア
皮膚や粘膜表面には、病原性のない常在菌が細菌叢を形成しており、病原菌が生育しづらい環境に保たれている。

皮膚および粘膜による感染防御障壁
皮膚および粘膜による感染防御障壁

 

絵もありました。腸のところにも「常在菌の細菌叢」とありますが、やはり学んだ記憶がありません。

画像出展:「第2版 生理学」

一方、「人体の正常構造と機能」でも同じように調べてみたところ、次のような記述がありました。
腸内の常在細菌叢は、消化管粘膜免疫系の維持と制御に深く関っている。
これを見て、「腸内細菌」と「消化管粘膜免疫系」のそれぞれの働きを把握できていないこと。あやふやな知識がぐちゃぐちゃになっていることが分かりました。

消化管粘膜免疫系(腸管免疫系)について、ネット検索すると「ライフサイエンス 領域融合レビュー」という学術サイトの中に関連する記事がありました。専門的な内容ですが、その記事の「要約」の部分をご紹介させて頂きます。なお、「ライフサイエンス 領域融合レビューは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター から発信・公開される日本語コンテンツのひとつ」とのことです。
腸内細菌と腸管免疫  
要約:『消化管はユニークな免疫系を構築している。そこでは、強い炎症活性をもつ免疫細胞と同時に抑制能の強い免疫細胞がバランスよく生み出されている。これは、消化管がさまざまな微生物の侵入という危険につねにさらされているのと同時に、日常的に接する無害な食物や腸内フローラに対しては不必要に免疫応答しないよう制御される必要があるためである。こうしたバランスよく制御された消化管免疫系の構築において、腸内フローラが重要なはたらきをしていることが徐々に明らかになってきている。腸内フローラを構成する個々の細菌種は、それぞれ異なる様式により消化管免疫系に影響をあたえる。たとえば、セグメント細菌とよばれる消化管に常在する細菌はマウスの小腸の粘膜固有層においてTh17細胞の分化を強力に誘導する。一方で、クロストリジアに属する消化管に常在する細菌は制御性T細胞の数を増加させその機能を高める。そして、腸内フローラの細菌種の構成の異常は免疫の異常へとつながり、さまざまな疾患を誘発する。ここでは,腸内細菌に影響をうけて構築されているユニークな消化管免疫系について紹介する。』

今回、勉強のために参考にさせて頂いた本はこちらです。

著者:藤田紘一郎
腸内細菌を味方につける30の方法

著者:藤田紘一郎

出版:ワニブックス

「はじめに」に続いて、目次でもある「30の方法」をご紹介しています。その後、特にブログに残しておきたい要点を書き出しています。なお、目次で太字になっているところが、それぞれの要点の元になった「方法」です。

 

はじめに
『わずか数年の間に、腸内細菌をとりまく環境は激変しました。近年の遺伝子研究とコンピュータの発達を受けて、腸内細菌の大規模な遺伝子解析が行われたことが一つのきっかけとなっています。
以前は、腸内細菌の研究は、培養によって種類を特定する方法しかありませんでした。このとき、腸内細菌の数は500種類、100兆個と推定されていました。ところが、遺伝子解析によって、腸内細菌は3万種、1000兆個もいるとわかってきました。
また、かつては「善玉菌が腸によいことをして、悪玉菌が悪いことをする」と単純に語られていた腸の世界が、実は非常に複雑であり、体と心の状態を支配するほどの影響力を持っていることが明らかになってきたのです。

その影響力とは、私たち人間が感じているよりもすさまじいものです。健康も病気も腸からつくり出されるといっても過言ではないほどです。腸内細菌の乱れが起こす病気は、風邪や食中毒などの感染症にとどまらず、がんや肥満、動脈硬化症、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病、認知症、うつ病、アレルギー疾患、自己免疫疾患にまで及んでいるのです。しかも、最近の研究では、自閉症などの発達障害や、パーキンソン病にまで関与している可能性が示されています。(以下省略)』

1.私たちの腸にすむ「もうひとりの自分」を意識せよ
2.あなたにはあなただけの腸内細菌叢があることを知ろう
3.病原体を退治する“免疫の武器”が腸内細菌の選別を行っている
4.腸内フローラは数日あれば変わる!生かすも枯らすも毎日の生活しだい
5.細菌を殺しては健康になれない!おおらかにつきあう気持こそ「菌活」「腸活」の基本
6.人類は細菌のおかげで立派な脳を持てた。うぬぼれてはいけない
7.がんやアレルギー、うつ病は人類の衰退を示す「退化病」
8.納豆な土壌菌の塊。毎日食べておけば腸内フローラも男性力も衰えない
9.食物繊維を食べていると、腸内細菌が善玉物質をつくり出す
10.「おデブ菌」をおとなしくさせれば、肥満は治る
11.食の好みは、腸内細菌に操られている。「酢玉ネギ」で腸内環境の改善を
12.食物繊維をエサにしていれば悪玉菌は悪さをしない
13.除菌活動に熱心になってくると感染症や食中毒にかかりやすくなる
14.免疫システムは腸内細菌にコントロールされている
15.土壌菌は食べなければいけない。ピロリ菌は除菌してはいけない。
16.酵素食品をとっても体内の酵素は増えない。腸内細菌が多くの消化酵素をつくり出す
17.サプリメントを飲んでも腸内細菌が働かなければビタミンは得られない
18.腸内細菌を増やし、小麦粉・牛乳を遠ざける食事療法で自閉症が改善される可能性
19.腸を鍛えればうつ病はよくなる!人の幸福感をつくるのは腸内細菌だ
20.イライラや不安、カッとなりやすい心は、汚れた腸からつくられる
21.認知症は「腸内細菌」と「水」で予防できる
22.腸にすむ「マイ乳酸菌」はオリゴ糖で増やせる
23.ヨーグルトは、菌が生きたまま腸に届かなくてもよい
24.医者に金を払うよりも味噌屋に払え
25.「白い炭水化物」は腸内細菌を疲れさせる
26.病気にならない体づくりには肉や油も必要だ
27.保存料、食品添加物、抗生物質は腸内細菌を減らし免疫力を低下させる
28.冷凍機キノコ、ニンニク酢、昆布酢で活性酸素の害を消す
29.腸に開いた穴を塞げば大人の食物アレルギーはよくなる
30.日本人の腸内フローラは世界で最低水準。毎日の大便チェックを状態改善に役立てよう

おわりに ~笑う者の腸には福来る~

1.私たちの腸にすむ「もうひとりの自分」を意識せよ
・腸内細菌は約2kg、腸内の壁にくっついている。
・米国では2007年から1億5000万ドル以上と5年間の歳月をかけ、国立衛生研究所が「ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクト」を実行した。腸内細菌一つ一つのDNA配列の全般にわたる解読を目指した。マイクロバイオームとは「細菌叢」のことで、微生物の生態系を意味する。

・腸内細菌から見れば、人間は「宿主」になる。宿主とは寄生生物に寄生される側の生物のこと。私たちと腸内細菌は共生関係にある。 
・善玉菌と呼ばれる菌だけが体に必要なのではなく、悪玉菌も日和見菌もとても大事な働きを担っている。
・微生物の世界は壮大で複雑なため、有用なものを選び、不要なものは排除する、という選別を宿主ができるものではない。

2.あなたにはあなただけの腸内細菌叢があることを知ろう
・一卵性双生児や親子であっても、両者の類似性はさほど高くない。
・人間の遺伝子は20,000~25,000個。腸内細菌の遺伝子数は、3,300,000個にも上る。
生後わずか1年間のうちに、生涯にわたる腸内細菌の組成は決定づけられてしまう。母親の胎内は完全なる無菌状態。菌の洗礼は産道を通る時、そして外界に産み落とされた瞬間から、赤ちゃんは膨大な細菌を浴び、腸や皮膚、気道などで細菌たちが繁殖していくことになる。生後1年間で、赤ちゃんはまるでスポンジのように細菌を取り込んでいく。
・赤ちゃんがなんでもなめたがるのは、多種多様な細菌をとり込んで立派な腸内細菌叢をつくろうとする本能である。

3.病原体を退治する“免疫の武器”が腸内細菌の選別を行っている
・免疫の主な働きは、「感染からの防衛」「健康の維持と増進」「老化と病気の予防」。その免疫力のおよそ70%を腸がつくっている。
・腸が人体の免疫の大半を担うのは、病原体が腸から侵入するからである。腸は「内なる外」である。人の消化管は口から肛門まで9メートルにも及ぶ一本の管になっており、腸には多くの免疫組織が集まるようになった。

「イラスト解剖学」より
食物の移送にかかる時間

この絵をご覧になると、中央の消化管が「内なる外」(体内にあるようで、実は体の外側、皮膚と同じ位置づけ)であることがご理解いただけると思います。

画像出展:「イラスト解剖学」

・腸管の免疫では「自己」と「非自己」がたえず識別されている。食べたり飲んだりしたものも、腸にとっては外から侵入してきた非自己である。そこで、腸は食べたものを分解してブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸などの最小粒子にし、非自己物質としての機能を失わせる。これが腸の行う「消化」の働きである。消化されたものは、腸管の表面を覆う上皮細胞から体内に吸収される。
・腸の上皮細胞の表面には粘液がある。この粘液には、消化された栄養素にまぎれて病原体が体内に侵入しないように殺菌物質やウィルスを不活化する物質が含まれている。また、「IgA抗体」という免疫物質も大量に存在している。
・抗体とは、特定の非自己物質にくっついて、その異物を排除する分子のことである。つまり、異物を退治するための武器だと考えるとよいだろう。私たちの免疫は、どんな異物に対してもぴったりの抗体をつくり出すことができるのである。
・これまで、IgA抗体は腸粘膜の中にあって、侵入してくる病原体を殺す物質と知られてきた。しかし、実際には腸内細菌の選別にも働くことが明らかにされた。
・IgA抗体は、腸の粘液でつくられる。また、母乳の中にも含まれる。とりわけ母乳が初めて出す初乳には、たくさんのIgA抗体がある。初乳の重要性は昔から伝えられていることであるが、それは生後まもない時期の感染症を防ぐためといわれてきた。ところが、初乳は細菌を腸にとり込むために必要だったのである。

4.腸内フローラは数日あれば変わる!生かすも枯らすも毎日の生活しだい
・体は自分ひとりだけのものではなく、1000兆個の腸内細菌たちと共有している。成人の体はおよそ60兆個の細胞から構成されているが、私たちの腸には、人体の全細胞より16倍以上もの数の細菌がすみついている。
・食生活が乱れて腸の状態が悪ければ腸内フローラは荒れる。体に悪さをする細菌が爆発的に増えてしまえば、優良な菌たちはとたんに数を減らす。ただし、腸内フローラには野生の花畑と決定的に違う点がある。腸内バランスはひとたび崩れても、野生の花畑ほど再生に多くの時を必要とはしない。細菌の増殖力は植物よりずっと強いからである。つまり、宿主が腸内フローラの乱れをいち早く察知して適正な努力を行えば、わずか数日間のうちに美しく整えられるのである。
消化のしくみは、はじめから腸内細菌との共生ありきで組み立てられている。腸だけの消化能力では、体が欲するように栄養素をとり入れることはできない。
・便のうち食べカスは5%、60%が水分で、20%が腸内細菌とその死骸、15%は腸粘膜細胞の死骸である。

免疫機能も腸内細菌との共同作業によって初めて成り立つものである。腸にたくさんの細菌がすむのは、病原体の侵入を防ぐためでもあるが、腸内細菌は縄張り争いをしながら腸の中に自分の生息場所を守っている。外から新たな細菌が侵入してくると、いっせいに攻撃してその排除に働くのである。しかも、腸内細菌は、腸にいる免疫細胞を活性化する力もある。つまり、免疫システムだけでは十分な免疫力を発揮できず、免疫力を高めるには腸内細菌を増やすことが大事なのである。

6.人類は細菌のおかげで立派な脳を持てた。うぬぼれてはいけない
・脳も腸から分化した臓器である。腸にはもともとニューロンなどの神経細胞が存在していた。また、心の状態を築くセロトニンやドーパミンなどは、脳内で分泌される神経伝達物質と思われているが、その起源は腸にある。腸内細菌が腸の多くの働きを肩代わりする中で、腸内細菌は仲間どうしでの情報伝達が必要になっていった。セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質は、腸内細菌間の交流のために必然的に生まれたものだったのである。たとえば、「ビタミンを生成しましょう」「外敵が来たぞー!」などといった情報の伝達を、神経伝達物質を介して行っていたのである。

12.食物繊維をエサにしていれば悪玉菌は悪さをしない
・腸内細菌たちの大好物は水溶性の食物繊維

14.免疫システムは腸内細菌にコントロールされている
・マクロファージは「自己」と「非自己」を見極める力の特にたけている。

15.土壌菌は食べなければいけない。ピロリ菌は除菌してはいけない。
免疫力が低下すると、システムの統制をとれなくなり、免疫細胞は何が本当の「非自己」なのか見極められなくなる。
・ピロリ菌は日和見菌である。宿主の免疫力がしっかり働いている時には体に良い働きをする共生菌である。ピロリ菌が悪さを始めるのは、宿主がストレス過剰の状態にあって免疫力が低下しているときである。こうなると、ピロリ菌は胃を荒らす方に働いてしまう。細菌とはそもそもそういうものである。細菌自身は、自分が宿主にとって悪玉か善玉かなど考えていない。環境に応じて自分の居心地の良い環境を築こうと、せっせと働いているだけである。

17.サプリメントを飲んでも腸内細菌が働かなければビタミンは得られない
・私たちの腸はビタミン類を合成する機能を持っていない。食べたものからビタミン類を合成するのも腸内細菌たちの働きである。
・腸が元気ならば体が若返る理由の一つは、腸内細菌のビタミン合成力に隠されていたのである。
・ホルモンの一部も腸内免疫がつくっている。消化管ホルモンのセクレチン、コレシストキニン、インクレチンなど。
・強力な抗がん作用をもつエクオールも腸内細菌が大豆イソフラボンからつくり出す成分。ただし、このエクオールをつくれるのは、イソフラボンと相性のよい腸内細菌をもった人だけ。

腸内細菌がつくる主なビタミンとその機能
腸内細菌がつくる主なビタミンとその機能

画像出展:「腸内細菌を味方につける30の方法」

18.腸内細菌を増やし、小麦粉・牛乳を遠ざける食事療法で自閉症が改善される可能性
・自閉症の子どもは、そうでない子と比べて、腸内細菌の多様性が乏しいという報告がされている。

19.腸を鍛えればうつ病はよくなる!人の幸福感をつくるのは腸内細菌だ
・腸内フローラの組成は、生後だいたい1年間で決まってしまうが、腸にすみついた細菌たちの数はたえず変動している。たとえ乳児になんらかの問題により腸内フローラの多様性を十分に築けなかったとしても、今ある腸内細菌を増やす生活を送ることで、腸内環境は変わってくる。そうした変動が、脳や心の状態にまで影響を与えることがわかってきた。
・セロトニンとドーパミンはあわせて「幸せホルモン」と呼ばれるが、その原料となる前駆体は、実は腸でつくられている。そのため、腸内環境が悪化すると、幸せホルモンの分泌量は著しく減ってしまう。腸の健康は脳の健康であり、脳の健康は腸の健康である。生物にとってもっとも重要な臓器である腸と脳は、強く影響を及ぼしあいながら動いている。そうした両者の関係を「脳腸相関」という。
・トリプトファンからセロトニンの前駆体がつくられる際は、ビタミンB6が使われる。また、ドーパミンはフェニルアラニンという必須アミノ酸からドーパミンの前駆体になるまで葉酸やナイアシン、ビタミンB6が必要とされる。
・腸内細菌たちがつくり出した幸せホルモンの前駆体を、脳へと送り出しているのも腸内細菌である。

20.イライラや不安、カッとなりやすい心は、汚れた腸からつくられる
・九州大学の須藤信行教授らのグループは、系統的な研究により、人間の体は有害なストレスを受けたときに、「視床下部—下垂体—副腎」という流れを介して腸内細菌に悪影響を与えることを明らかにしている。有害なストレスを脳が察知すると、消化管の局所で「カテコラミン」が放出され、腸内フローラに直接的な影響を与えていることがわかったのである。カテコラミンとは、アドレナリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の総称である。これらはストレスホルモンとも呼ばれており、ストレスを感じると発生し、動悸や血圧の上昇、発汗、血糖の上昇、覚醒などの不安な変化を体に与える。須藤教授の研究では、このカテコラミンが腸内で発生すると、大腸菌の増殖が進み、腸管局所での病原性が高まることが認められた。カテコラミンが腸内細菌の病原性を強めさせる作用は、大腸菌以外の細菌でも観察されている。このように、不安や緊張によるストレスは、腸内細菌のバランスを著しく乱す。その乱れた腸内環境が脳へ情報を送ると、脳内ではストレスホルモンがつくり出される一方、セロトニンやドーパミンなどの幸せホルモンの量を減少させる。それによって脳が不安と緊張を増強させるという循環ができあがっているのである。

21.認知症は「腸内細菌」と「水」で予防できる
・人間の脳は、活性酸素の害を非常に受けやすい臓器である。人体を形づくる成分のうち、もっとも酸化しやすいのは脂質である。人間の脳は、約80%が水であるが、水分を除いた部分のうち、約60%が脂質からできている。その脂質が活性酸素に過剰にさらされ続けると、褐色の色素沈着を起こす。これが脳内で蓄積されてくると、「アミロイドβ」や「タウタンパク」などのゴミタンパクが大量につくり出され、さらに活性酸素を過剰に発生させるようになる。こうなってくると、脳の神経細胞が変性し、萎縮するようになるのである。つまり、活性酸素の過剰発生を防ぐことが最大の予防法といえる。

22.腸にすむ「マイ乳酸菌」はオリゴ糖で増やせる
・最近の研究により、腸にはその人特有の乳酸菌がすみついていることが明らかになった。

24.医者に金を払うよりも味噌屋に払え
・匂いが強いというのは、発酵力が高くて、菌が元気だという表れである。たくさんの種類の細菌が数多くいる発酵食品のほうが、腸内フローラの活性化には効果的である。

25.「白い炭水化物」は腸内細菌を疲れさせる
・たしかに白米や、白い小麦粉を使かったパンやうどんなどの麺類は、おいしいものである。しかし、そのおいしさは、腸が感じているのではなく、脳が感じるものである。脳がブドウ糖をとくに必要とするのは、とっさの判断やストレス時の反応など、瞬発的な活動をするときである。現代社会のようにストレスフルな状況にあると、脳はたえずブドウ糖を要求することになる。体が疲れているときにもブドウ糖を欲する。こうしたときにブドウ糖が入ってくるから、脳は「おししい」と感じるのである。ところが腸は白い炭水化物が大量に入ってくるのを嫌がる。

・小腸の直接の栄養源はグルタミン酸というアミノ酸の一種である。昆布やチーズ、緑茶、シイタケ、トマト、魚貝類に豊富な「うま味」成分である。

・大腸の栄養源は、腸内細菌が食物繊維を発酵させてつくる短鎖脂肪酸である。

・小腸も大腸も、白い炭水化物を必要としていないのである。それにもかかわらず、白い炭水化物が大量に入ってくると、腸はまっさきに消化吸収のために働かなければならない。脳がブドウ糖を執拗に欲するからである。

27.保存料、食品添加物、抗生物質は腸内細菌を減らし免疫力を低下させる
腸内細菌に特に悪影響を与える化学物質は防腐剤と抗生物質である。
・体に生じる風邪の症状は、免疫細胞が病原体を排除する際に起こる炎症である。

28.冷凍機キノコ、ニンニク酢、昆布酢で活性酸素の害を消す
過剰な活性酸素は腸内フローラにもダメージを与え、細菌数を大きく減らしてしまう。

29.腸に開いた穴を塞げば大人の食物アレルギーはよくなる
・腸内フローラが“いい子”に育てば、健康を増進する物質をどんどんつくり出すとともに、免疫力を高めてくれる。
・腸の消化吸収能力を超えて食べることも、腸内細菌に混乱を起こす元凶である。
・「人+腸内細菌」で人間である。

おわりに ~笑う者の腸には福来る~
腸内フローラを元気にする生活習慣
1.朝起きたら外に出て深呼吸をする
2.疲れない程度の適度な運動をする(朝のラジオ体操でもOK)
3.ぬるめのお風呂にゆっくり浸かって腸を温める
4.夜更かしをせず、寝室は真っ暗にして寝る
5.休日には自然の中に出かけていく
『腸内細菌によい生活習慣とは、宿主である私たちにとって楽しいこととわかります。楽しいという気持ちが腸内環境を整えてくれるのです。腸内細菌を人生の味方につけてください。より楽しく充実した人生を築くためのベストパートナーは、あなたのおなかの中にいるのです。

追記:2020年8月12日
”『病は気から』『医食同源』とはいうものの、腸内細菌を含む腸管環境の変化をどのような仕組みで脳は認識し、病気の発症を抑えているのか、その謎は解明されていませんでした。”

今回追記したのは、マウスによる実験ではありますが、上記の疑問に対する研究で成果があったとのニュースを知ったためです。

自律神経が紡ぐ新しい炎症抑制メカニズムの解明―迷走神経を介した感染症・がん・炎症性腸疾患の治療に新たな光―

研究のポイント

『近年、ライフスタイルや環境の急激な変化によって、炎症性腸疾患、メタボリックシンドローム、うつ病、がん、新興感染症などの病気が増加しています。最近では、ライフスタイルの変化に伴う腸内細菌などの腸管環境の乱れが、これらの疾患の主な原因として認識されています。しかし、『病は気から』『医食同源』とはいうものの、腸内細菌を含む腸管環境の変化をどのような仕組みで脳は認識し、病気の発症を抑えているのか、その謎は解明されていませんでした。本研究では、腸内細菌の情報を肝臓が統合し、肝臓→脳→腸管という迷走神経反射を通じて、過剰な炎症を抑える働きをする腸管制御性T細胞(Treg;注1)の産生を制御していることを世界で初めて示しました。本研究のさらなる発展は、増加の一途を辿る現代病、がん、COVID-19など新興感染症の新たな治療法の確立につながると期待されます。』

迷走神経肝臓枝を介した腸管pTreg維持機構
迷走神経肝臓枝を介した腸管pTreg維持機構

画像出展:「日本医療研究開発機構」