イメージトレーニング
1 実力発揮とイメージトレーニング
・イメージトレーニングには2つある。1つは実力発揮のため、もう1つは新たな技術、戦術の習得のためである。イメージによって体だけでなく心も反応する。
・『本番1週間前から毎日、試合当日を想定しながら一連の流れや成功イメージを作るようにしておくと、本番では頭の中では「8回目のプレー」になるのです。イメージの中でリハーサルをいっぱい積んでおく。実力を発揮するためにイメージトレーニングというのは非常に重要です。』
2 対応策の蓄え(ソリューションバンク)
・イメージトレーニングの中で大切なのは、起きそうな出来事を想定して対応策の蓄えを作っておくことである。これを「ソリューションバンク」という。つまり、対応策をシミュレーションしておくということである。例えば、試合開始早々に失点してしまったような場合でも、チーム内にそのような事態の時の準備(ソリューションバンク)があれば、動揺を最小限に抑えることができる。
3 メンタルコーチの重要性を痛感した2014年W杯でのブラジル代表
・心技体の中で「技」と「体」は1日にしてなくなることはないが、「心」はたった1試合でも大きく崩れる。これはサッカーにおいて「心」の重要性を説いている。
2014年W杯での日本対コートジボワール戦、後半62分にディディエ・ドログバが交代出場し、スタジアムの空気も試合の流れも一変した。スタジアムの異様な雰囲気に飲まれてしまった日本イレブンは64分、66分と2分間で2失点し、1対2で逆転負けとなった。[日本リード-疲労が出はじめる後半途中のドログバ登場⇒その時、日本チームの心理的準備はどうあるべきか]というソリューションバンクを用意しておけば悲劇は避けられたかもしれない。
4 サッカーで「2点リードは危険なスコア」と言われる理由
・「2点リードは危険なスコア」は、“トップダウン性注意”と“ボトムアップ性注意”に関係している。トップダウン性とは集中させられている状態、受動的な状態である。2—0になると勝っているチームは守りの気持ちが強くなる。一方、負けているチームは点を取ろうと能動的になる。これがボトムアップ性である。そして、試合展開は負けているチームがコントロールし始める。このバランスを欠いた一方的な試合の流れから失点は生まれやすい。この危機的状況を避けるために必要なことは、受動的ではなく能動的に守るということである。つまり、トップダウン性ではなくボトムアップ性の本来の守り方を徹底することである。このようにボトムアップ性注意になれば、コートジボワール戦のように2分間に2失点するようなことは避けられる可能性が高くなる。
・サッカーはボールを保持しているチームが有利である。これはチーム全体がボトムアップ性注意の状態であるため、ゲームをコントロールしやすいからである。この相手に対抗するために重要なことはトップダウン性注意になりがちな守備をボトムアップ性注意に切り換えた守備にすることである。これは「パスを回されている状態」から「パスを回させている状態」に変えることである。
5 新たな技術、戦術を身につけるためのイメージトレーニング
・イメージトレーニングの2つ目の目的である新しい技術や戦術の習得がある。このトレーニングでは、まずは頭の中のイメージ作りから入る。それには良いプレーを見ることが何よりも大切である。次の段階は見たプレーをスローモーションのようにやってみることである。
・イメージトレーニングではリラックスした状態でやる必要がある。それは、イメージトレーニングは右脳を使うためである。
※リラックスとイメージトレーニング:調べたところ次のようなことが分かりました。『ストレスは創造的思考の最大の障害の一つであり、リラックスしているときの方が創造的なアイデアが出やすいと神経科学・心理学の文献で繰り返し指摘されています。』
・イメージトレーニングには内的イメージと外的イメージがある。前者は自分目線、後者は観客目線、自分を外から見ているような俯瞰のイメージである。トップアスリートはこの2つができる。外的イメージには自分のプレーの映像を見ることがとても役に立つ。また、人のプレーを後ろから見ることもとても有効である。スキーのインストラクターが生徒の順番を変えるのは、インストラクターのすぐ後ろの生徒の習熟度が高いことが明らかだからである。サッカーでもドリブルやキック、トラップなどコーチやドルブルが得意な選手のプレーを後ろから見てイメージを作る。
6 2種類の真似学習
・真似学習にはモデリングと呼ばれているものもある。モデリングは対象とするプレーヤーの思考まで探るものである。例えばメッシのプレーを真似するだけでなく、「なぜメッシはその場面でこのようにボールを触ったのか?」、「なぜここでスピードを下げたのか?」という狙いまで探ることである。これがモデリングと模倣の違いである。モデリングはプロセスも大事にする。試行錯誤を通し、上達を目指して自分自身と向き合うことに価値がある。
7 五感を使うことの重要性
・トップアスリートはイメージする時に雰囲気、音、感触、感覚的な部分、筋運動感覚、リズムといった五感をフル活用している。これは研究結果としても出ている。
・イメージだけのグループ、体を動かすグループ、イメージトレーニングと体を動かすトレーニングを両方行うグループで行なった研究では、両方やったグループが断トツだった。一方、イメージトレーニングだけ、体を動かすだけのトレーニングは大差なかった。重要なことは、ただ単に体を動かすだけの練習は十分ではなく、体と同じくらい頭を使うということである。特にゆっくり体を動かすということも大切である。
8 イメージ力を上げるための工夫
・予測力、判断力、決断力はとても大切である。この3つは作戦能力に関わる。この3つがないと臨機応変な対応ができない。試合の流れを感じて、攻めに出たり、相手の攻撃の特徴を見て守り方を変えたりといった対応をできるようにするためにこれらの能力も磨く必要がある。
9 ボトムアップ理論
・サッカーで「センス」があるというのは、周りが見えていて、相手の嫌がることをできるということであり、そのためには、予測力、決断力、判断力が重要である。
10 試合当日のイメージトレーニング
・イメージトレーニングは習慣化されると良い。試合当日はシンプルに成功イメージを作り、試合前のストレッチの間などにもできる。
・イメージトレーニングは個人だけでなく、チームとしてイメージを共有することも大事である。例えば「今日の相手はこうしてくるだろうからその場合はこう対応しよう」といったことを話合うことです。
11 プロ選手が試合のためのバス移動で音楽を聴く理由
・音楽には「この曲を聴くと気持ちが乗る」といった条件付け効果がある。また、自分なりの集中法であったり、緊張を和らげる目的だったりもする。
セルフコントロール
1 自信の作り方
・「自信」の構成要素は3つである。①結果や目標に対する自信、②自分の能力、③自信に影響する要因。
① は「勝利」、「得点」、「評価」という結果からの自信である。②は「背が高いからヘディングが得意」、「ドリブル、技術、フェイントが得意」、「強い気持ち、諦めない気持ち」など、「強い気持ち、諦めない気持ち」など、心技体の能力からくる自信である。主にここは長所とか武器からきている。③は「生活からくる自信」である。これには普段のトレーニング、家庭生活といった日常生活からくるようなものである。
・この3つが高まると「よい自信」となる。結果による自信は相手が必要であり、また失いやすいが、②能力、③生活からくる2つの自信は自分で作ることができる。
2 準備からの自信を作る
・大切なのは能力と生活から作る自信で、この2つを一つの言葉で表現するなら「準備」である。つまり、自信と準備は表裏のような関係である。
・準備することは継続的なやる気、モチベーションにつながる。継続に大切なのは「自分らしさ」、「自分のペース」である。
3 理想的な心理状態とは
・試合中の理想的な心理状態とは、「集中している」状態である。これは今やるべきこと、今できること、目標に対してスポットライトが当たっている状態である。そして、「今やるべきこと」は何かを分析する必要がある。
5 広島がG大阪に逆転勝利した試合
・「能動的な守備」とは相手が自由にボールをコントロールしている状態である。特にファールは相手のペースを加速させるため危険である。このような相手ペースを崩すには、「自由に持たせない」、「判断を遅らせる」、「パスを弱める」、「パスコースを限定する」、「プレッシャーにいくと見せかける」、「わざと体を当てる」など相手のペースを乱し、自分たちのペースに引き込む工夫をすることが相手の流れを止めることになる。
・人は興味あるものに対しては集中できる。これは言い換えれば、興味を作れば集中力が高まるということである。種を蒔くと、「どんな芽が出るのか」、「どんな花が咲くのか」という興味が湧くように、サッカーでも「こうなるかもしれない」、「こういうことが起きるかもしれない」という予測があると自然と興味は高まる。つまり、「相手はどのようにするのか」と考えることで、自然に集中力、注意力が高まっていく。これがボトムアップ性注意である。相手の攻撃に受け身となり、無意識的に漠然と相手に合わせ守っている状態は非常に危険である。これがトップダウン性注意である。
6 試合前は多くを話さない。できるだけシンプルに
・人間は一つのことにしか意識が向いていないと他のことに注意が向かないという傾向がある。そのため注意することは「相手を感じてプレーすること」である。試合で大切なことは相手を感じて味方が優位なスペースにボールを運ぶことである。それは相手にとって嫌なプレーになる。
・ボールを持っているチームが優位なのは相手の注意を惹きつけ、先手を取った積極的なプレーをしかけることができるからである。それは相手に疲労をもたらし、集中力の低下から守備の穴を作ることにつながる。
・集中力はやるべきことを明確にすることで高めることができる。集中力が散漫になり始めるのは、心と体の疲れ、トップダウン性注意が続いている局面(相手に合わせ、流れにまかせたまま無意識的に守っているような状態)である。
・サッカーのプレーは進行していくが、あえて「間」を作っていくことも大切な戦術である。これはわずかな時間を使って集中し直す工夫をすることである。これを「リフォーカス」という。チームとして、個人として現状を把握し、いますべきこと次に起ることを探り次の適切な行動を取れるようにする。
7 「ゾーン」を作るには
・適度な緊張感、興奮は重要だがこれには「目標」、「課題」、「役割」などが重要である。練習日誌や自己分析、「自分がどうなりたいのか」という中・長期的な目標、課題、プラン、役割、イメージは特に有効である。
11 コントロールできないものはコントロールしない
・セルフコントロールにおいて大切な考え方に、「自分がコントロールできないものをコントロールしようとしない」というものがある。天気、ピッチ、過去などは変えられない。コントロールできるのは自分の心である。今できることは何かを考え、それを行動に移すことである。これを「心理的柔軟性」といい、とても重要である。
・天気もピッチのコントロールできないが、その状況を把握し試合に活かすことはできる。
12 パフォーマンスルーティーン
・「パフォーマンスルーティーン」とは一連の動作・手順で集中力を高め、イメージをつくり、プレーの成功率やパフォーマンスの向上を促すものである。
・『ルーティーンは走りながらでもできないとダメだと思っています。つまり、オフ・ザ・ボールの状態でセルフコントロールを完了し、最終的には無意識でできていることがベストです。オフ・ザ・ボールと駆け引きで消える動きやフェイク、そういった相手を引きつける動きが重要だと、私はいつも言っています。それ自体をルーティーンにしてしまうということも指導しています。一度出て戻る、戻って出て裏を取る動きなどですね。
FWとしてのボールの受け方も、それ自体をパフォーマンスルーティーンとみなしてもいいと思います。あとは、オトリです。オトリの動きを入れていくこと。自分のペースで自分の得意なことを出していくこと。それを自分のルーティーンにしていく。ただし、ルーティーンを作りすぎると相手に読まれてしまいます。』
・シンプルなルーティーンとしては、まず「姿勢」である。姿勢の確認の動作、重心の確認(体重を感じる)からリラックスすることもできる。次は「呼吸」である。呼吸を意識し、確認、整える、感じることで集中力を高めることができる。
・声は大切である。声は2つの効果があるとされている。一つは自分のセルフコントロール、そしてもう一つはチームメイトに集中やリラックス、鼓舞するメッセージを発信する。
感想
「モチベーション(やる気)がなければ、メンタル強化は意味がない」そして、重要なのは「自己決定理論」であり、これは自分で考えて行動していく力を養うことにより成長するものである。また、メンタル強化と目標達成は表裏一体のようなものである。
これらのことから、「モチベーション⇒目標達成(自分で考えて行動していく力)⇒メンタル強化」ということではないかと思います。
西武台高校の選手は全国高校サッカー選手権出場を目指し。また多くの選手はJリーガーもしくは大学サッカーを目指しているように思います。目標設定は浦和西高の選手にとって難しい部分かもしれません。しかしながら、目標達成のプロセス自体に重点を置き、ひとり一人が「自己決定理論」と真剣に向き合うことは、高校3年間のみならず、豊かな人生につながる“揺るぎない力”を獲得できるような気がします。
画像出展:「日本の人事部」
「自己決定理論」を見て、マーク・ザッカーバーグの著書『マーク・ザッカーバーグの生声』に書かれていた内容を思い出しました。
それはザッカーバーグが社員を採用するときに重視している2つの才能です。一つは「心からの共感」です。そして最も重視しているのは「地頭のよさ」ということです。この「地頭のよさ」は「自己決定理論」を追求することで磨かれるように思います。


