腱の障害

腱鞘炎やテニス肘(上腕骨外[内]上顆炎)、成長期に見られる骨端症(膝:オスグッド病、足部:ケーラー病、イズリン病など)などはいずれも筋腱付着部が問題となります。

そして、損傷した組織の修復には血液が欠かせません。しかしながら、腱は筋肉と異なり血管が乏しいため、鍼灸による施術の科学的効果は筋肉に比べると、一般的に小さいと考えられます。

クリック頂くと、PDF資料(9枚)がダウンロードされます。なお、この資料の中には、次のようなことが書かれていました。

『組織の治癒は適切な血液供給を必要とする。しかし緻密結合組織には血液供給が乏しい。筋・腱接合部または腱の最も外側の膜であるパラテノンには血管、リンパ腺、さらに神経が通っているが、骨・腱接合部には線維性軟骨が存在し、限られた毛細血管を除き血管は通っていない。加えて、豊富な毛細血管をもつ滑膜は腱の周りを覆うが血液供給をしていない。このことから、腱や靱帯は再生能力の低い組織であると言える。

良い施術を行うには患者さまとその病態を正しく知ることが前提になりますが、今回の例で考えれば「腱の問題」の知識を持つことも大切です。

それには、整形外科の先生が行っている腱に対する診断(接し方)を知ることが有効であると思い、その視点でネット検索してみました。その結果、見つけたのが『臨床スポーツ医学 2016年5月 Vol.33』という医学雑誌のバックナンバーであり、特集されていたのは「スポーツドクターのための運動器超音波診療 -東京五輪に向けて-」というものでした。 

ブログは特集編集をされた、城東整形外科副院長である皆川洋至先生からのメッセージをご紹介し、続いて“腱の障害”の内容を箇条書きにまとめました。なお、超音波画像も貼り付けていますが、知識不足のため補足説明等はなく原文のままとなっています。画像を拡大しご確認頂ければと思います。

 

出版:文光堂

発行:2016年5月

特集編集 皆川洋至(城東整形外科副院長)

『枝葉にとらわれず、選択と集中を繰り返す。そんな領域に特化したドクターのことを世間は“専門家”と呼ぶ。この100年間、医学が急速に発展してきた背景には専門家たちによる学問への多大な貢献があった。その一方、専門家にとって興味がない分野は進歩から取り残され、学問の谷間へ落ちた患者が、どこの病院に行っても“専門外”という言葉で行き場を失うようになった。さらに専門領域しか診ない医療システムが医療費高騰を引き起こす原因になった。領域を横断する総合診療医が求められる理由である。

医療費問題に直結しないが、領域横断のニーズはスポーツドクターにもある。パーツの手術ばかりでなく、1)運動器全体を診ることができる2)保存治療にも精通する3)時間制約がある中で選手に試合に送り出すための豊富な知識と経験がある4)競技をとりまく環境やチーム事情を考慮できるネットワークがある、そんなスポーツドクターが求められている。エコーが総合診療やスポーツ医学の世界で急速に存在価値を高めているのは、こへでも簡単に持ち運びでき、診断と治療に即活かすことができる領域横断の道具だからである。

2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催される。スポーツドクターがエコーを使いこなすことは、アスリートのためばかりでなく、ドクター自身のためでもあり、日本人としての誇りでもある。なぜならエコーを使いこなすために学ぶのは整形外科学そのものであり、リアルタイム画像・ドプラ画像・エラスト画像はすべて Made in Japan の技術だからである。

枝葉を取り除きながら育てた木は、大きく育っても細い、光合成する枝葉が多ければ、木は時間をかけてより太く、より大きく育つ。本特集が東京オリンピック・パラリンピックを支える若手スポーツドクターのために、少しでも役立つことを祈る。』

超音波診療で腰痛・膝痛・肩痛を解決! ~レントゲンからエコーへ変わる新時代の整形外科~

整形外科におけるエコーの有効性が詳しく説明されています。

画像出典:「Medical Note」

皆川先生が副院長をされている秋田県にある素晴しい病院です。

また、城東スポーツ整形クリニックもあります。

腱の障害の超音波画像診断

●スポーツ障害は、筋肉、靭帯、腱などの軟部組織の損傷が多い。

●特に青少年期には骨端軟骨や腱付着部の障害など軟部組織の異常を伴うことが多い。

軟部組織の診断、病態の評価は単純X線撮影では難しい。

●MRIは静止画像であること、検査待機時間や撮影時間の問題、医療費など制約が多い。

●超音波断層検査は機器の発達に伴う画像の鮮明化により診断精度が飛躍的に向上した。

●超音波断層検査は機器の軽量コンパクト化により機能性が高まり、動的な血流評価や組織弾性度の測定、複数回の評価による病態の変化の把握も容易である。

スポーツにおける腱の障害(腱付着部の損傷、腱実質の損傷、腱の変性など)の診断のポイントは、付着部から実質部へかけての腱の肥厚の有無、付着部の骨棘形成、腱実質内部の低エコー領域[超音波の反射波が少なく黒っぽく写っている部分のこと]の有無、fibrillar pattern[正常の腱や靭帯に見られるパターン]の消失や乱れ、パワードプラ法による腱表層、あるいは深層の血流増加について評価する。次に異常を疑った部位については、ブローブ圧迫による圧痛の有無、内部エコー、周囲の腫脹の有無について評価する。また、腱の滑走性の評価も可能である。

急性、亜急性の腱の変化

●腱障害のうち比較的急性、亜急性のものでは腱実質の損傷部を腱内部や付着部の低エコー像やfibrillar patternの乱れとして確認することができる。(図1) 

●腱の表層おいて腱付着部の腫脹が膨隆として認められる。(図1)

 

 

画像出典:「臨床スポーツ医学

急性期かどうかの判断には血流の評価が有用である。パワードプラ法を用いればより微細な血流増加を捉えることができる。(図2) 

 

 

画像出典:「臨床スポーツ医学

●画像上異常を認める部分と圧痛部位とが一致するかも腱の変化が急性期のものかどうかの判定に有用である。

腱骨付着部の変化

●オスグッド・シュラッター病に代表される骨端症は成長期スポーツ障害の一つであり、膝蓋腱の脛骨付着部である脛骨粗面の二次性骨化中心の周囲に生じた損傷である。超音波検査では裂離骨折の有無のみならず、裂離部の血流増加や腱の肥厚や周囲の血流の増加、膝蓋下滑液包の水腫など多彩な変化を観察することができる。(図3)

画像出典:「臨床スポーツ医学

さらに損傷部位が治癒するにつれて、骨片の架橋形成[骨折部の橋渡し]、血流の低下や腱の腫脹の減少を確認することができ、スポーツ復帰の許可を判断する目安にもなる。

慢性化した腱の変化

●腱の障害は慢性化すると腱の肥厚が特徴的になる。

●腱の肥厚の原因は、オーバーユースによる腱の微小な損傷と治癒が繰り返されることによって、腱が肥厚するものと考えられるが、正常な腱肥大と異なりfibrillar patternが不明瞭であることが特徴的である。

腱表層の水腫や深層での低エコー像や血流増加像がみられることもあるが、慢性化した障害ではそれらの変化はわずかなことも多い。(図5)

画像出典:「臨床スポーツ医学

慢性化した障害では腱そのものの変化のみならず周囲組織にも十分観察の目を向けて、複雑化した病態の把握に努める必要がある。 

腱の組織弾性の評価

●最近では、腱の弾性を評価することによって、より詳細な腱の評価や腱の変化を捉えることが可能になった。

●腱、筋肉は関節の角度や筋収縮などの条件によって変化する弾性体であり、超音波エラストグラフィーの手法がその質的評価に有用であると考えられている。 

画像出典:「臨床スポーツ医学

分かったこと

1.急性期は腫脹が起こるとともに組織修復のために血流が増加する。そして、治癒により腫脹、血流増加とも消える。このことは、発生した炎症の抑制と組織の再生という治癒の過程を示すものです。また、体を休め筋・腱への負荷を減らす努力が最も望まれることだと思います。

2.慢性期は腫脹も血液増加もあまり見られないことが多い。このことは、治癒という再生のプロセスが停滞している状態と考えられます。

また、文中に『慢性化した障害では腱そのものの変化のみならず周囲組織にも十分観察の目を向けて、複雑化した病態の把握に努める必要がある 』と書かれています。この「病態の把握」というキーワードは「原因の特定」にも関係します。

3.以上のことから、腱の障害において鍼灸師として心がけることは次のようなことだと考えます。

慢性化し血流増加が見られない損傷部位に対し、鍼灸治療を行うことで血流を高め組織再生のプロセスを再点火させる。

施術ポイントを検討する際には、周囲の組織(特に筋肉、筋膜など)の状態や首、腰などの主要関節の問題の有無などを把握し、患部の血流を改善するための方針・対策を明確にして施術にあたる。

付記1超音波エラストグラフィー 

「超音波エラストグラフィー」という言葉が初めてだったので、少し調べてみました。

付記2さいたま市内でエコーによる診断をされているスポーツ整形外科 

病院なび”という検索エンジンを使い、”さいたま市”・”スポーツ整形”をキーワードに検索してみたところ、23件がヒットしました。そして、ホームページをお持ちの病院に関し、設備などを中心に見ていったところ、1つだけエコーを使って腱などの軟部組織の病態を診ていただける病院がありました。ホームページ情報からのものなので他の病院でも、「実はやっている」というところもあるかも知れません。あらためて「まだまだ普及していないのだなぁ」と実感しました。

 

”整形外科エコー検査”として紹介されています。

なお、私自身はお世話になっておりませんので、詳細は不明です。