発達障害児へのマッサージを考える

昨年12月16日のブログからスタートした、「小児障害・発達障害」に関する突貫工事も、中締め的に一度整理し、実践に向けて準備したいと思います。まとめ方は、サラリーマン時代に使っていた課題検討のやり方で、ちょっとマニアックな印象を持たれるかも知れません。

なお、新たに勉強した本は以下になります。

「続 自閉っ子、こういう風にできてます!―自立のための身体づくり 」も岩永先生の著書です。

Goal
1.個人としての自立、就職、そして将来に渡って生活していく基盤を獲得する。

Objective
1.施術により個人が抱えている問題が改善され、自立に向けて前進する。
Strategy
1.障害児の個性と現状を理解し、明確な目的を持ち最適な手技を選択する。
2.感覚統合療法を補完し、総合的な改善の促進を図る。
Action1(準備)
1.感覚統合療法を理解する

 

この図は「自閉症スペクトラム」を対象として描かれたものですが、左右の破線で囲まれたBoxにある「感覚調整の問題」および「運動行為の問題」に記載された各問題点は、他の病態にも適応可能な共通性の高いものと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

 1)五感と二覚の中からマッサージでは「固有受容覚」と「触覚」をターゲットとする。
 2)「感覚調整の問題」7項目と「運動行為の問題」4項目を問診により把握する。
  A)計11項目のうち、該当した項目については施術効果の判断指標とする。
2.マッサージの対象を絞り込む
 1)社会性の発達障害…広汎用性発達障害(自閉症スペクトラム)
 2)注意力、行動コントロールの発達障害…注意欠陥性障害(ADHD)
 3)運動の発達障害…肢体不自由、動作不自由
3.筋緊張を確認する
 1)緊張、不安が強い
 2)低緊張
  A)低緊張の判断ポイント
   ・口元:よだれがよく出る
   ・姿勢:うつぶせの姿勢から手だけで体を起こそうとする。 
移動するときにおしりを床

       につけてずりばいする等。
4.健康の基本を確認する
 1)睡眠
 2)食欲
 3)便通
5.気になる部位等を確認する
 1)皮膚
 2)筋肉
 3)関節
 4)消化器
6.理解を深めるために知っておくこと
 1)生まれつきの障害であり、統合失調症などとは決定的に違う。つまりその世界に生きてい

   る者にとって、その世界は奇異でも何でもなく、ごくごく当たり前である。
 2)自閉症の精神病理の基本は、対話の際に雑多な情報の中から、目の前の人が発する情報に

   注意が集中できないこと、一度に処理できる情報が非常限られていることの二点であ

   る
 3)不安定で、怖い世界から自分を守るために、自閉症の幼児がとる戦略は、自分で、一定の

   安定した刺激を作り出して感覚遮断を行うという方策である。幼児期の自閉症でよく見ら

   れる自己刺激への没頭に他ならない。一定のリズムでぴょんぴょんしたり、目の前で手の

   ひらをひらひらさせたりして、彼らは押し寄せる情報へのバリアーを作り出しているので

   ある。
 4)大まかで曖昧な認知がとても苦手である
 5)一般的に4歳前後までの幼児期が最も大変で、5歳ごろにコミュニケーションが目覚しく伸

   びる時期がある。また、10歳~12歳の小学校高学年はさらによく伸びる時期である。
 6)何度も体験したからといって徐々に慣れてくるということが期待できないところがある。
 7)現在では脳科学の進展によって、注意欠陥性障害(ADHD)の症状の背後にはドーパミン

   系およびノルアドレナリン系神経機能の失調があることが明らかになっている。
 8)現在の感覚統合理論では、感覚統合障害は大きく二つの障害、すなわち「行為機能の障

   害」と「感覚調整障害」に分けられる。行為機能の障害は、触覚、固有受容感覚(筋肉に

   ある受容器で感じる身体の位置や動きの感覚)、前庭感覚(耳の奥の三半規管や耳石器な

   どで感じる回転やスピード、傾きの感覚)などの感覚情報の処理過程に問題があり、それ

   によって身体の位置や動きがわかりづらいなどの問題が生じ、不器用さや姿勢運動の問題

   など運動行為面に困難が出る。
 9)ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要になる。マッサージなどで

   他動的に触覚や固有受容覚を刺激することは効果的と思うが、ボディイメージを高めるた

   めには、能動的体験の中で触覚、固有受容覚を体験することが必要である

 

以前にもご紹介させて頂いたことのある図です。この絵のように関節を動かすことは、屈筋を収縮させ、拮抗する伸筋を弛緩させるので、固有受容覚に刺激を入れることができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)

Action2(施術)
1.マッサージのガイドライン
 1)働きかける神経
  A)知覚神経
   ・鎮痛、鎮静
  B)運動神経
   ・機能亢進(マヒ性疾患)、機能抑制(筋痙攣)
  C)自律神経
   ・交感神経と副交感神経のバランスを整える
   ・自律神経反射
    ・胃、腸管への刺激による血管運動や消化液の分泌調節
    ・内分泌系、特にストレスに関係する副腎皮質に働きかける
 2)部位に対する効果
  A)皮膚におよぼす作用(触覚)
   ・新陳代謝を活性化する
   ・皮脂腺、汗腺の働きが活発になり分泌が亢進する
  B)筋におよぼす作用(触覚、固有受容覚)
   ・血行を良くする
   ・筋疲労を早く取り除く
   ・筋萎縮の予防
   ・筋痙攣の抑制
  C)関節におよぼす作用(固有受容覚)
   ・関節内の血行を良くする
   ・可動域を広げる
   ・滑液の分泌を促す
   ・関節の拘縮を軽減する
  D)消化器におよぼす作用(触覚→神経反射)
   ・背部、胃部の施術で胃液の分泌亢進、消化機能亢進、食用増進
   ・腹部施術で腸の吸収力増加、蠕動運動の亢進と便通が良くなる
 3)手技による効果
  A)興奮作用:主に軽擦法
   ・興奮作用とは病的に機能が低下している神経、筋に対してその機能を回復させる作用。

    手技は弱い刺激で時間は短く行う。
    運動麻痺、知覚鈍麻、知覚脱失などに対して治療効果がある。
  B)鎮静作用:主に軽擦法、揉捏法、圧迫法、叩打法
   ・鎮静作用とは病的に機能が亢進している神経や筋に対してその機能亢進を抑え、鎮静さ

    せる作用。手技は強い刺激で時間も長く行う。しかし病的に機能亢進をきたしているよ

    うな場合には感受性がたかまっているため、実際的には強い刺激を与えずに、患者が強

    いと感じる刺激を選んで施術する必要がある。
    神経痛、筋痙攣、筋緊張、知覚過敏、筋肉痛などに対して治療効果がある。
  C)反射作用:主に軽擦法、圧迫法
   ・反射作用とは疾病部位から離れた部位に施術をして反射機転を介して、神経や筋、内臓

    などに刺激を与え調整を図る。生体は内臓に異常がある場合に、皮膚、結合組織、筋肉

    などの表在組織に反射されて異常が現われる。その部の過敏、圧痛、緊張、硬結などを

    取り除くことにより、内臓の状態は改善される。
 4)運動法による効果

  A)他動運動法
   ・術者が患者の関節を可動する範囲で動かす方法
   ・関節拘縮、変形の予防
   ・可動域の維持・改善
   ・筋短縮の予防
   ・固有感覚受容器への刺激
  B)自動運動法
   ・患者が自分で行う運動法
   ・筋力の維持・増強
   ・可動域の維持・増強
   ・関節・筋肉内循環の促進
  C)抵抗運動法
   ・患者に自動運動を行わせながら、術者がその運動に対して抵抗する方法
   ・筋力の増強
   ・筋持久力の増強
 5)効果を上げるためのコミュニケーション 
  A)安心感を与える手の当て方をする
   ・まず、子供は自分の体に触れられることに対して大きな不安を感じている。
   ・不安を感じない程度の力を使う。
   ・手のひら全体を使う感じ。
  B)体の感じを子供と共有する
   ・子供が感じているだろう感覚を、施術者も同じように感覚を感じるようにする。
  C)言葉かけを大切にする
   ・子供の気持ちをリラックスさせ、その気にさせる。
   ・施術者も言葉かけと施術を重ねることで良いリズムで楽しく取り組むことが大事。
  D)主体的な取り組みを大切にする   
   ・子供は気が散って、集中できないことが多い。特に自閉や多動の子供たちは、訓練を自

    分が主体的に行っているという実感を欠いている。したがって、子供が自分の体の感じ

    に気づき、自分で体を緩めたり動かしているという感じをつかめるようにする主体的な

    動きを行わせる必要がある。
   ・まず、優しく、ゆっくりと何をどうしようとしているのかを部位に軽く触れながら「こ

    ういう動きをするよ。」と説明する。
   ・どこがどう感じているかを聞きながらゆっくり進め、自分で緩む感じや動く感じを認知

    する。
   ・さらに、自分自身が主体的に動かす感じをつかめるように、動かしている方向、スピー

    ド、可動域などを細かく伝えながら、二人三脚で理解するという課題に取り組んでい

    く
  E)仰臥位の運動法の時にアイコンタクトを行うようにする

 

一般的にアイコンタクトを避ける障害児も、刺激が入っている時はアイコンタクトの回数が増えるようです(感覚統合療法で行われている工夫)。これはマッサージの施術中でも意識すれば可能なので実践します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「もっと笑顔が見たいから」(花風社)