小児鍼

最近、小児鍼についてのお話を頂くことがあるため、代々木の日本伝統医学研修センターで学んだことに加え、専門学校時代の教科書や小児鍼について書かれた本も、一度読んでみようという気持ちになりました。

はりきゅう実技〈基礎編〉
はりきゅう実技〈基礎編〉

これは、懐かしい教科書です。

小児鍼は鍼灸の世界では「特殊鍼法」という分類に入っています。以下、教科書からの引用です。
『小児鍼とは、普通の毫鍼を刺入する刺鍼法と異なって、軽度の皮膚刺激を主とした鍼法である。対象は、生後20日から5、6歳ぐらいまでの乳幼児である。小児鍼は、術式から接触鍼法、摩擦鍼法、刺入鍼法に大別されている。刺激量は、施術部位が発赤や発汗する程度を基準として行う。』


接触鍼法
『一般に毫鍼が用いられるが、集毛鍼、振子鍼、バネ式小児鍼等も使用される。毫鍼によるものは、下の図のように鍼体を母指と示指でつまみ、鍼尖を少し出し、手首で加減しながら直角に皮膚にわずかに接触されるように行う。刺激の度合いは、鍼尖の「出し方」の長短、「当て方」の強弱等で調整する。この方法の大切なことは、手首を振るようにして、鍼尖が皮膚に触れたら、弾くようにリズミカルに移動させることである。鍼尖を皮膚に接したまま移動させると、皮膚に損傷を与えやすくなるので注意する。』

接触鍼法
接触鍼法

当院の鍼は1番(0.16mm)が大部分ですが、腰殿部では3番(0.20mm)や5番(0.25mm)も必要に応じて使います。

画像出展:「はりきゅう実技基礎編」(医道の日本社)

摩擦鍼法
『下図のような形の鍼を用いて、皮膚を軽い力で触れるように摩擦する方法である。施術時に、皮膚を軽く引っ張って皮膚を緊張させて行う方法もとられる。』

刺さない鍼(鍉鍼)
刺さない鍼(鍉鍼)
摩擦鍼法
摩擦鍼法

刺入鍼法
『きわめて細い毫鍼を浅く速刺速抜する方法で、刺入深度は1~3分(3~9mm)程度である。』

代々木での小児への治療は、特別な小児鍼は使わず、年齢に関係なく使用する鍉鍼(ていしん)という刺さない鍼を用い、「摩擦鍼法」を主に時にツボを軽く圧迫するような手技等を組み合わせて使っていました。

アトピーなども鍉鍼を使うと赤みが軽減されます。患者さまにも自宅で鍉鍼することをお勧めしていました。
素材はチタン。太さは筋の大きさで使い分けます。また、両端の大小は大は筋を押し、小はツボを押す時に使います。       

滑りが悪い場合は、日本手拭を置いてその上から行います。 

大師流小児鍼

小児鍼で全国展開している団体に「大師流小児鍼」があります。創案者は谷岡捨蔵という大阪の先生で、129年の歴史をもつ代表的な小児鍼です。
図書館の蔵書検索で、「わかりやすい小児鍼の実際」という本があったので、さっそく借りて読んでみました。その中で、特に重要であると思ったことをご紹介させて頂きます。

著者:谷岡賢徳
「わかりやすい小児鍼の実際」

著者:谷岡賢徳氏

出版会社:源草社

『鍼治療の作用は、生体の持っている自然治癒力を助長することにあるわけであるから、小児鍼においてはほとんどの疾病にその効果が認められる。特に小児は生命力が旺盛であるから、ほんの微細な鍼刺激で驚くほどの効果が得られる。』
小児鍼は「気持ちよい」が第1条件である。気持ちがよければ、子供の方からすすんで来院してくれる。気持ちよい鍼をするには、子供の皮膚を読めなければならない。「柔らかい皮膚には弱刺激、硬い皮膚には強刺激」が原則である。硬い皮膚の子供は、年齢相応の刺激でも、くすぐったく感じたり、ものたりなかったりする。逆に柔らかい皮膚の子供は、年齢相応の刺激でも痛く感じてしまうものである。同じ年齢の子供でも、柔らかい皮膚には弱い鍼をし、硬い皮膚には強い鍼をする。』
『大人に気持ちよくても、子供にも気持ちがいいとはかぎらず、たいていの場合は子供は大人より十倍以上弱い刺激が適するものである。
治療効果の判定
・治療中に眠くなる。
・治療後にもっと治療してほしいという。
・治療後の帰宅途中に寝てしまう。
・治療後にお腹が空く。
・翌日の表情が明るい。

当院の小児鍼
小児鍼の対象
・基本は小学校就学前までです。(「おすわり」が可能となる生後8ヶ月位からを想定しています)

「ビジュアルノート」より
成長と発達、小児関連疾患

画像出展:「ビジュアルノート」(医療情報科学研究所)

治療概要
・鍼は鍉鍼を用います。手技は「摩擦鍼法」が中心です。
・ツボはまだ曖昧なため、経絡の流れを整えることが治療の目的になります。実際には動いてしま
うので難しい面はありますが、狙いは明確にします。
・経絡は腎経(足少陰)、脾経(足太陰)、肺経(手太陰)になります。腎経、脾経は足部から膝、
肺経は肘から手首の部位に鍉鍼を行います。

お腹背中も重要な部位です。お腹は鍉鍼の重さを利用して、「の」の字を描くように、背中は上下両方向に鍉鍼を使います。

・特にストレスが強い場合は、頭部も加えます。手技は頭頂部と側頭部に対し、前(顔)から後頭に

 向かって行います。

※鍉鍼について詳しく説明された資料とサイトをご紹介します。

左をクリックすると「てい鍼の使い方マニュアル」が表示されますが、

これは 『手づくりてい鍼どっとこむ』というサイトを立ち上げられている、

小越建二先生の資料です。