第8章 坐骨神経痛のセルフケアについての疑問19
Q70 普段の生活で急な坐骨神経痛や腰痛を防ぐ方法はありますか?
●体幹筋がうまく働かないと、腰椎の椎間関節や椎間板に無理な力が集中し、急性の坐骨神経痛や腰痛を招く原因になる。
●「これから物を持ち上げる」「椅子から立ち上げる」などの動作を行うとき、事前に「これからする動作をイメージしてから実際に動く」という方法が有効である。これは、脳から筋肉への指令が確実に伝わり、体幹筋を正しく動作させることにより、急性の坐骨神経痛や腰痛を防ぐことができる。
Q71 姿勢はどんな点に気をつければいいですか?
●均等に力が分散しバランスのとれた姿勢、「ニュートラルポジション」を心がける。
Q75 運動療法で本当によくなるのですか?手術を回避できますか?
●坐骨神経痛は激しい痛みがあるとき以外は、足腰の筋力や関節の柔軟性を維持することは非常に重要である。
●立つ、歩く、座るなどの動作を適切に行うには、運動療法以外にない。
Q77 高齢者でも運動療法を行って大丈夫ですか?
●自分に合った種類や強度の運動療法によって手術を回避できている高齢者はたくさんいる。
●運動療法は心肺機能を高め、血流を促して、生活習慣病を予防・改善する効果もある。
●「これならできそう」と思う運動を試してみると良い。
Q81 坐骨神経痛のある人は、まずどんな体操をやればいいですか?
●腰椎を支える体幹深層筋、特に腹横筋を鍛えることが重要である。腹横筋は最も深いところにある深部筋で、上は肋骨、下は骨盤、背面は脊骨につながり、前面は腱膜という膜状の線維組織となって左右がつながっている。まさに、コルセットのようにお腹をぐるりと取り巻いている。
●腹横筋を鍛え、その使い方を身につけるために最適な運動は「ドローイン」である。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
向かって左が表層、右が深層です。右側のほぼ中央に腹横筋が出ていますが、最も深く広い筋肉で、コルセットのようです。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」
Q83 後屈障害型の坐骨神経痛は具体的にどんな体操で症状が和らぎますか?
●骨盤を後傾させる「骨盤後傾体操」が有効である。ドローインが腹横筋を鍛えるのに対し、こちらは骨盤を後傾させるという動作を重視した体操である。痛みを感じたときに行えば、症状を素早く軽減することができる。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」
Q84 後屈障害型の坐骨神経痛を根本から改善する体操はないですか?
●骨盤後傾体操に加え、「ネコのポーズ」、「胸椎反らし」、「前もも伸ばし」がある。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」
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Q87 特に女性は骨盤中央の仙骨の異常でも坐骨神経痛のような症状が出るそうですが、どう治しますか?
●骨盤の両側を腸骨といい、中央の仙骨とは仙腸関節でつながっているが、靭帯でしっかりと固定されており、数ミリ程度しか動かない。この仙腸関節をずらすような力が加わると関節周囲の靭帯が炎症を起こし、腰、お尻、下肢、鼡径部などに痛みが生じる。
●軽い痛みであれば「仙腸関節矯正おじぎ」で改善することができる。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」
第10章 腰椎と別の部位で起こる坐骨神経痛について疑問13
Q94 腰椎以外で坐骨神経痛が起こる部位はありますか?
●腰椎以外が原因の坐骨神経痛も少なくない。これらを「絞扼性末梢神経障害」という。代表的なものには、お尻の筋肉が原因となる「梨状筋症候群」、脛の神経が圧迫されて起こる「腓骨神経障害」、足の内くるぶしの近くで神経が絞扼される「足根管症候群」がある。
第11章 坐骨神経痛の手術についての疑問14
Q107 手術を受けるべきタイミングはいつですか?
①本人の希望があれば手術を検討…保存療法を3~6ヵ月以上続けても改善が見られず、症状が悪化していくときは、患者さんと医師で相談のうえ手術を検討する。症状が強く仕事や日常生活に支障が出ている場合である。
②早めの手術を検討…10mも歩けないような間欠性跛行や下肢の筋力低下、下垂足(足首の先が下がってしまう麻痺症状)が現れている場合。
③早急に手術が必要…馬尾が障害されて重度の馬尾症候群が現れているときは、緊急手術が必要である。放置すれば排尿・排便障害や下肢の麻痺が後遺症として残る可能性が高くなる。
Q109 手術で坐骨神経痛やしびれは、どのくらいよくなりますか?
●坐骨神経痛の手術は、坐骨神経痛そのものを治療するものではなく、神経が本来の機能を発揮できる環境にするのが目的である。従って、神経そのものが重いダメージを受けていると、手術をしても思うように症状が取れないこともある。
●一般に、年齢が若いほど、発症期間が短いほど、神経の圧迫やダメージが軽いほど回復は良好である。特に、痺れは痛みより改善しにくい傾向がある。
Q110 手術による合併症や後遺症は心配ないですか?
●腰椎の手術には高度な技術が必要だが、近年は内視鏡や顕微鏡など先進の機器を使い、明るく拡大された手術視野で安全性の高い手術が行われている。
●日本脊椎脊髄病学会の2011年の報告では、手術31380例における合併症は、神経合併症(術前にはなかった神経症状)1.4%、深部創感染(切開した部位の深部にある組織の感染症)1.1%となっている。
Q113 手術後再発する可能性はどのくらいありますか?
●腰部脊柱管狭窄症の術後4~5年の経過を見ると、70~80%の患者さんで、良好な結果が得られているが、長期的な経過については十分な調査・研究が少なく、はっきりとは分かっていない。
●腰椎椎間板ヘルニアの摘出手術後の再手術率は、5年後で4~15%とされている。同じ場所のヘルニアの再手術は1年で約1%、5年では約5%。これは椎間板の線維輪(髄核の周囲にある線維組織)は20歳ころから老化が進んでおり、手術後も線維輪が完全に修復されないことが原因と考えられる。
●再手術の可能性を考慮し、姿勢や動作などの生活習慣を見直し、腰椎への負担を避け、運動療法に取り組むなどの配慮が必要である。
Q115 腰部脊柱管狭窄症の手術の最新の術式について教えてください。
●新しい内視鏡手術「全内視鏡下腹側椎間関節切除術(FEVF)」には多くのメリットがあるが、難易度が高く、この手術をできる医師は少なく、注意点もいくつかある。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」