以前から「坐骨神経痛」に関しては「顎関節症」に似た、漠然としたイメージがありました。そこで、あらためて本を買って勉強することにしました。
本の題名は「坐骨神経痛 腰と神経の名医が教える 最高の治し方」で、120問のQA形式で坐骨神経痛を深く理解できるようになっています。そして分かったことは、今さらでお恥ずかしい限りですが、「坐骨神経痛」は「頭痛」や「腹痛」と同じように病気の総称だということです。
腰椎に問題がある腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、お尻の梨状筋が坐骨神経を圧迫する梨状筋症候群などすべて坐骨神経痛と診断される可能性がありますが、分かりづらい理由は、坐骨神経自体には問題がなく、腰に症状が出ていれば腰椎椎間板ヘルニアも腰部脊柱管狭窄症も、「坐骨神経痛」ではなく「腰痛」に分類されるという点です。
本書は、薬物療法、運動療法や手術に対する情報や知識なども網羅されており、特に、加齢による腰部脊柱管狭窄症など、病気とのお付き合いが長くなると思われる患者さまにとっては、特に有益な本だと思います。
ブログは目次の黒字について触れています。また、3つに分けています。
編集:飯塚晃敏
発行:2021年5月
出版:文響社
はじめに
第1章 坐骨神経痛についての疑問9
Q1 坐骨神経痛とは、どんな部位のどんな痛みを指しますか?
Q2 「坐骨神経痛」は、病名ですね?
Q3 坐骨神経痛は、腰痛と何が違いますか?
Q4 そもそも坐骨神経とは、どこからどこまでの神経ですか?
Q5 坐骨神経は、各部位をどのように通っていますか?
Q6 坐骨神経に、種類はありますか?
Q7 坐骨神経には、どのような働きがありますか?
Q8 「馬尾」という神経は、坐骨神経とは違いますか?
Q9 坐骨神経痛を放置すると、どうなりますか?
第2章 坐骨神経痛の原因についての疑問15
Q10 坐骨神経痛は、高齢者だけでなく若い人にも起こりますか?
Q11 坐骨神経痛はどんな職業の人に起こりやすいですか?
Q12 坐骨神経痛は、いったいなぜ起こるのですか?
Q13 坐骨神経痛のような足腰の症状がある場合、ほかにどんな原因を疑うべきですか?
Q14 坐骨神経痛やしびれが坐骨神経痛かどうか見分ける方法はありますか?
Q15 足腰の痛みやしびれはどんなしくみで起こるのですか?
Q16 坐骨神経痛を起こしやすいのは腰椎のどこですか?
Q17 坐骨神経痛の急性と慢性では、原因が違いますか?
Q18 坐骨神経痛の主原因である「腰部脊柱管狭窄症」とはどのような病気ですか?
Q19 腰部脊柱管狭窄症にはどんな種類がありますか?
Q20 もう一つの主原因である「腰椎椎間板ヘルニア」とはどのような病気ですか?
Q21 腰椎椎間板ヘルニアにはどんな種類がありますか?
Q22 腰椎椎間板ヘルニアがどこで起こっているか、わかりますか?
Q23 坐骨神経痛の原因になる「腰椎変性すべり症」とはどんな病気ですか?
Q24 「腰椎分離症」「腰椎分離すべり症」とはどんな病気ですか?
第3章 坐骨神経痛の症状についての疑問9
Q25 坐骨神経痛では、具体的にどんな症状が現れますか?
Q26 「痛み」には、どんな特徴がありますか? 鈍痛ですか?激痛ですか?
Q27 「しびれ」にはどんな特徴がありますか?
Q28 痛みで一度に長く歩けないのですが、これも坐骨神経痛の圧迫が原因ですか?
Q29 「マヒ」も起こるそうですが、どんな症状が現れますか?しびれとは何が違うのですか?
Q30 症状が出る場所が変わってきましたが、そんなことはありますか?
Q31 悪化すると頻尿や便秘がひどくなるそうですが、本当ですか?
Q32 どんな症状が現れたら、医療機関に行くべきですか?
Q33 坐骨神経痛のつらさは、いったいいつまで続くのですか?手術は必要になりますか?
第4章 坐骨神経痛の診察・検査についての疑問8
Q34 診察を受ける医療機関・医師はどう選べばいいですか?
Q35 初診から大きい病院を受診したほうがいいですか?
Q36 問診では、何を聞かれますか?
Q37 初診時に医師に確認しておくべきことはなんですか?
Q38 病院では、どんな検査を受けますか?
Q39 「神経学的検査」では、何を行いますか?
Q40 レントゲン、CT、MRIの画像検査は、なんのために行われますか?
Q41 「脊髄造影」とはどんな検査ですか?
第5章 坐骨神経痛のタイプについての疑問10
Q42 坐骨神経痛には3つのタイプがあるのですか? くわしく教えてください。
Q43 坐骨神経痛のタイプの見分け方を教えてください。
Q44 「後屈障害型坐骨神経痛」とはどんな坐骨神経痛ですか?
Q45 後屈障害型坐骨神経痛は、日常生活でどんなことに注意すべきですか?
Q46 後屈障害型坐骨神経痛を改善させるリハビリ法があれば教えてください。
Q47 「前屈障害型坐骨神経痛」とはどんな坐骨神経痛ですか?
Q48 前屈障害型坐骨神経痛を改善させるリハビリ法があれば教えてください。
Q49 前屈障害型坐骨神経痛を改善させるリハビリ法があれば教えてください。
Q50 「合併型坐骨神経痛」とはどんな坐骨神経痛ですか?
Q51 合併型坐骨神経痛は、日常生活でどんなことに注意すべきですか?
第6章 坐骨神経痛の標準治療についての疑問10
Q52 坐骨神経痛が自然に治ることはありますか? 手術しないと治りませんか?
Q53 坐骨神経痛の進行を防ぐ方法はありますか?
Q54 坐骨神経痛に効く薬はありますか?
Q55 腰部脊柱管狭窄症では、どんな治療が行われますか?
Q56 腰椎椎間板ヘルニアでは、どんな治療が行われますか?
Q57 今受けている牽引療法は効果がありますか?続けた方が良いですか?
Q58 温熱療法や超音波療法には効果はありますか?
Q59 コルセットは着けたほうがいいですか? いつまで着ければいいですか?
Q60 ブロック療法とはどんな治療法ですか?
Q61 ブロック療法の種類と効果について教えてください。
第7章 坐骨神経痛の薬についての疑問8
Q62 坐骨神経痛を根本から治せる薬はありますか?
Q63 消炎鎮痛薬の効きめはどうですか?
Q64 ビタミン剤を処方されました。効くのですか?
Q65 プロスタグランジン製剤とはどんな薬ですか?
Q66 筋弛緩薬はなんのために飲むのですか?
Q67 抗うつ薬をすすめられました。なぜですか?
Q68 プレガバリンという薬がよく効くそうですが、どんな薬ですか?
Q69 オピオイド薬は飲まない方がいいですか?
第8章 坐骨神経痛のセルフケアについての疑問19
Q70 普段の生活で急な坐骨神経痛や腰痛を防ぐ方法はありますか?
Q71 姿勢はどんな点に気をつければいいですか?
Q72 坐骨神経痛を防ぐ座り方はありますか?
Q73 後屈障害型の坐骨神経痛で注意すべき日常動作はなんですか?
Q74 前屈障害型の腰痛や坐骨神経痛で注意すべき日常動作はありますか?
Q75 運動療法で本当によくなるのですか?手術を回避できますか?
Q76 運動療法を試せない人はいますか?
Q77 高齢者でも運動療法を行って大丈夫ですか?
Q78 運動療法で効果を感じられません。どうすればいいですか?
Q79 症状がよくなったら運動療法はやめていいですか?
Q80 悪化予防には腹筋強化が必要とのことで上体起こしの運動をしていますが、効きますか?
Q81 坐骨神経痛のある人は、まずどんな体操をやればいいですか?
Q82 腰部脊柱管狭窄症のような後屈障害型の坐骨神経痛を素早く軽減する体操はありませんか?
Q83 後屈障害型の坐骨神経痛は具体的にどんな体操で症状が和らぎますか?
Q84 後屈障害型の坐骨神経痛を根本から改善する体操はないですか?
Q85 腰椎椎間板ヘルニアのような前屈障害型の坐骨神経痛を素早く軽減する体操はありませんか?
Q86 前屈障害型の坐骨神経痛を根本から改善する体操はないですか?
Q87 特に女性は骨盤中央の仙骨の異常でも坐骨神経痛のような症状が出るそうですが、どう治しますか?
Q88 仙腸関節への負担で起こる坐骨神経痛を防ぐ方法はありますか?
第9章 坐骨神経痛の非標準治療についての疑問5
Q89 整体やカイロプラクティックは試してみていいですか?
Q90 鍼灸治療は受けたほうがいいですか?
Q91 マッサージは効きますか?
Q92 漢方薬は何が効きますか?
Q93 坐骨神経痛に効くサプリメントはありますか?
第10章 腰椎と別の部位で起こる坐骨神経痛について疑問13
Q94 腰椎以外で坐骨神経痛が起こる部位はありますか?
Q95 「梨状筋症候群」とはどんな病気ですか?
Q96 梨状筋症候群はどう見分けますか?
Q97 梨状筋症候群は、自分で治せますか?
Q98 梨状筋症候群はどう治療しますか?
Q99 ひざ下の外側から足の甲に痛みやしびれが起こる「腓骨神経障害」が、どんな病気ですか?
Q100 腓骨神経障害は、どう判別しますか?
Q101 腓骨神経障害は、どう治療しますか?
Q102 腓骨神経障害を改善する体操はありますか?
Q103 足先から足裏がしびれる「足根管症候群」(脛骨神経障害)とは、どんな病気ですか?
Q104 足根管症候群は、どう見分けますか?
Q105 足根管症候群は、どう治療しますか?
Q106 足根管症候群を改善する体操はありますか?
第11章 坐骨神経痛の手術についての疑問14
Q107 手術を受けるべきタイミングはいつですか?
Q108 手術前に何を確認すればいいですか?
Q109 手術で坐骨神経痛やしびれは、どのくらいよくなりますか?
Q110 手術による合併症や後遺症は心配ないですか?
Q111 手術を受ければスイスイ歩けるようになりますか?
Q112 手術を受けても足のしびれが取れません。なぜですか?
Q113 手術後再発する可能性はどのくらいありますか?
Q114 腰部脊柱管狭窄症ではどんな手術を行いますか?
Q115 腰部脊柱管狭窄症の手術の最新の術式について教えてください。
Q116 腰椎椎間板ヘルニアではどんな手術を行いますか?
Q117 腰椎椎間板ヘルニアの手術の最新の術式について教えてください。
Q118 腰椎椎間板ヘルニアに体に低負担の新手術が登場したそうですが、どんな治療法ですか?
Q119 腰椎変性すべり症ではどんな手術を行いますか?
Q120 手術後、歩行や職場復帰はいつごろできますか?
はじめに
●坐骨神経痛の典型的な症状
・腰からお尻にかけての鈍痛が消えない
・すねやふくらはぎがしびれて歩けなくなる
・お尻や太ももに激痛が走る
・座っていても寝ていてもズキズキ痛い
・足裏に何かが貼りついたような違和感が消えない
・しびれのせいでよく眠れない
・治療を長年続けても治らない
●坐骨神経痛が治りにくいのは坐骨神経が腰椎から始まり、尻、太ももを通って足に至る人体最大の末梢神経で長さは1mもあるため、随所で障害を受けやすいためである。そのうえ、障害されている原因部位と実際に症状を感じる疼痛部位が異なることも治療を難しくしている。また、神経の修復には時間もかかる。
●坐骨神経痛にはタイプがある。
・腰椎に原因がある場合、「前屈障害型」と「後屈障害型」がある。
●タイプに応じて改善方法が異なる
・姿勢(立ち方、座り方など)
・生活動作(歩き方、体の動かし方)
・運動(ストレッチ、体幹強化)
●安静は逆効果
第1章 坐骨神経痛についての疑問9
Q1 坐骨神経痛とは、どんな部位のどんな痛みを指しますか?
●坐骨神経痛は神経障害性疼痛の一種である。
●坐骨神経痛の原因が坐骨神経にあるとは限らない。例えば、腰椎の神経根や馬尾など色々存在している。
●広い範囲で鋭い痛みやジンジンした痺れ、冷えやほてり等の感覚異常もみられる。
●両側、片則いずれもある。
Q2 「坐骨神経痛」は、病名ですね?
●「坐骨神経痛」は病名ではなく、「頭痛」や「腹痛」と同じように、「症状」の総称である。
●坐骨神経痛の原疾患はいろいろある。従って、症状の背景にある病名を特定する必要がある。
●坐骨神経痛の原因疾患で多いのは腰椎に関わる、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症などである。
Q3 坐骨神経痛は、腰痛と何が違いますか?
●痛み・痺れなどの症状が腰に出ていれば「腰痛」、お尻や下肢に出ていれば「坐骨神経痛」になる。
●腰椎が原因の場合は、坐骨神経痛と腰痛が同時に起こることも少なくない。この場合、お尻や下肢の痛みや痺れの症状が強い場合は、坐骨神経痛と判断されることが多い。
●腰椎が原因の坐骨神経痛でお尻や下肢に出る痛みや痺れを放散痛とよぶ。
Q4 そもそも坐骨神経とは、どこからどこまでの神経ですか?
●坐骨神経痛は第4・第5腰椎と仙骨から出ている「腰仙骨神経叢」がまとまってできた太い神経が、膝裏付近で総腓骨神経と脛骨神経に枝分かれし足先に至る。最も太いところでは小指ほどであり、成人で約1mにもおよぶ。
Q5 坐骨神経は、各部位をどのように通っていますか?
①お尻の深いところにある筋肉「梨状筋」の内側を通り、骨盤の外に出る。
②大殿筋の内側を通り、坐骨結節と大転子の間を通る。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」
画像出展:「人体の正常構造と機能」
L4(第4腰椎)、L5(第5腰椎)と仙骨から出ている、緑と青の太い神経が坐骨神経です。
Th12⇔L4までが腰神経叢、L4⇔S4までが仙骨神経叢になります。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
向かって左は殿筋の浅層で、右は深層です。
中殿筋の下には小殿筋、大殿筋の下には5つの筋があります(1~5の番号がふってあります)。ほぼ中央、1の梨状筋と2の上双子筋の間から坐骨神経が出ています。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
坐骨神経は、多くの人は(必ずではありません)殿筋の梨状筋の下から表層に出てきます。
膝の裏付近で緑は総腓骨神経に、青は脛骨神経に分かれます。脛骨神経に足裏の足先まで伸びています。
Q7 坐骨神経には、どのような働きがありますか?
●坐骨神経痛は下肢の広い部分を支配する体性神経で、運動神経と知覚神経の両方の機能を持っている。
画像出展:「坐骨神経痛 最高の治し方」
坐骨神経は末梢神経です。
Q8 「馬尾」という神経は、坐骨神経とは違いますか?
●脊髄は腰椎にいたると馬の尻尾に似た「馬尾」という末梢神経の束になる。馬尾は坐骨神経痛とは別の神経だが坐骨神経痛につながっており、馬尾が障害されると坐骨神経痛の支配領域に症状が現れることがある(「馬尾症候群」)。
画像出展:「人体の正常構造と機能」
左の図を見ると、まさに馬の尾のようです。