今回の“分子整合栄養医学”はブログ“線維筋痛症”の宿題です。そして、栄養に注目するのは、自然治癒力に深く関係していると考えているためです。
昔から自然治癒力という用語を深く考えず、当たり前のように使っていたのですが、ある時、「ところで、自然治癒力って何だ??」と気になったことがありました。考え出したキーワードは「恒常性の維持」と「代謝」です。そして、最終的に自然治癒力を「ストレス適応と栄養代謝」と定義しました(ご興味あれば、ブログ“がんと自然治癒力13”の後半を参照ください)。
「ストレス」の元であるストレッサーは脳にアタックをかけます。これらのストレッサーに対処し、ダメージをできる限り小さくすることができれば、健康な状態を守ることができると思います。なお、ストレスへの対処に有効なものの代表は運動です。
一方、ダメージを負った心身に必要なものは、食事(栄養素)と睡眠だと思います。「栄養代謝」とは、しっかり食べ、しっかり休息をとり、酵素やホルモンなどが本来の働きをし、食べた物が無駄なく体の血肉になるというイメージです。
以上が、自然治癒力にとって「栄養」は非常に重要であると考える理由です。
画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」
医学の父と呼ばれているヒポクラテス(紀元前460~357年)は次のような言葉を残されています。
『食べ物について知らない人が、どうして人の病気について理解できようか』
著者:森谷宜朋
出版:幻冬舎
発行:2013年7月
一瞬、タイトルにギョギョとしてしまいましたが、よく見ると小さく、”細胞から整える分子整合栄養医学のすすめ”という副題がついており、実際、たいへん勉強になりました。
ブログで取り上げた項目を黒字にしていますが、『』で括られた文章は正しくお伝えしたいので引用させて頂きました。
Chapter3、4、7については触れていません。また、少し長くなったので2つに分けました。
はじめに
Chapter1 アンチエイジングのための分子整合栄養療法
「病気は薬で治すもの」と思い込んでいた勤務医時代
分子整合栄養医学との出合い
産後に精神不安定だった妻が劇的に快復
薬を使わないので副作用の心配がない
自然治癒力を取り戻す
「未病」を発見して治療
Chapter2 答えはすべて血液診断にある
栄養が足りなくなると、どうなるの?
健康は細胞から崩れ始める
体調が悪いのに、血液検査で「異常なし」が出る理由
基準値=正常値ではない
血漿レベルではなく、細胞レベルで濃度をチェック
胃粘膜の萎縮は胃の老化
ピロリ菌を除菌してアンチエイジング
病院の医師は火消し役、分子整合栄養医は修理役
Chapter3 若々しくきれいになるための肉食のすすめ
採食生活のさまざまな落とし穴
鉄不足はしわやたるみの原因に
適量の動物性食品をプラスする
現代人に多い栄養失調
主食は米にあらず
糖質・炭水化物を摂りすぎない
栄養価の高い旬の食材
タン白質を必ず毎日一定量摂る
低血糖症の人はおやつに豆類かゆで卵を
アルコールを飲む場合はナイアシンを補充
市販のサプリメントに頼らない
分子整合栄養医がすすめるダイエット
ダイエット中も、タン白質、ミネラル、ビタミンは摂取
断食をするとリバウンドしやすくなる
Chapter4 分子整合栄養医が斬る食にまつわるウソ・ホント
あなたの食理論はホントに正しい?
「菜食主義」は老化を抑える→ウソ
肉を食べると太る!→ウソ
コレステロールが高い人は、卵や肉を食べてはいけない→ウソ
貧血には、ほうれん草やひじきがよい→ウソ
皮下脂肪は余計なもの→ウソ
タン白質が不足すると、脚が短くなる→ホント
プロテインを飲むと、マッチョになる→ウソ
ビタミンCは、摂りすぎると尿に溶けて出ていく→ウソ
バターよりもマーガリンの方がヘルシー→ウソ
オリーブ油は身体にいい→ホント
心筋梗塞や脳梗塞の原因は、動物性脂肪である→ウソ
青魚と肉をバランスよく食べると、血管がきれいになる→ホント
胃酸は抑えるほどいい→ウソ
お酒を飲むなら焼酎か赤ワイン→ウソ
Chapter5 細胞から整えてきれいな肌になる
真のアンチエイジングは、身体全体がターゲット
皮膚は内臓の鏡
GPTの値が低すぎても「異常」
皮膚は排泄する臓器
理想なのは赤ちゃんの肌
美しい肌のために必要な栄養素
栄養不足が老化の原因
糖質や炭水化物を摂りすぎない
多すぎる活性酸素は老化を進行させる
活性酸素がシミやしわ、がんや認知症の原因に
甘いものは老化の原因
血糖を急上昇させない食事を
フレンチや会席料理の順番で食べる
タン白質をきちんと消化する胃を
ピロリ菌感染で胃は老化する
腸を整えると美肌になる
腸も自律神経を調節する
腸内環境をよくすると冷え性も改善
頭痛の大半は鉄不足から
脳や神経と皮膚の深いつながり
皮膚炎や湿疹の原因が副腎疲労症候群のことも
ストレスはシミも濃くする
最低限のスキンケア+栄養たっぷりの食事を!
Chapter6 お悩み別アドバイス
1.ニキビ・ふきでもの
・鉄不足、ビタミンB群不足、糖分の摂りすぎなどが原因
2.乾燥肌
・肉を食べると、お肌の潤いが保てる
3.シミ
・紫外線による活性酸素を防ぎ、消去する
4.しわ・たるみ
・コラーゲンよりもビタミンC、アミノ酸、ヘム鉄を
5.毛穴の開き
・コラーゲン減少による真皮のたるみが原因
6.赤ら顔
・腸内細菌の乱れが発症の一因
7.主婦湿疹(手荒れ)
・バリア機能の低下による炎症
8.薄毛・抜け毛
・タン白質や亜鉛不足
9.便秘・下痢
・便は健康のバロメーター
10.ダイエット
・タン白質を減らしたダイエットはリバウンドする
11.デトックス
・毒素は水でなく、よい脂肪で追い出す
12.月経前症候群(PMS)
・体内の過剰な水分蓄積や栄養バランスの乱れを直す
13.更年期障害
・副作用がない大豆イソフラボンがおすすめ
14.頭痛
・頭痛の原因は鉄不足にあり
Chapter7 栄養療法はオーダーメイド
栄養療法は健康や長寿につながる
「こんなにたくさん飲むの?」というほど摂取する
サプリメントに抵抗がある人は
自然治癒力を高める栄養療法
継続は力なり
あとがき
あなたには、この栄養素が足りない!
分子整合栄養療法でよく用いる栄養素
はじめに
●分子整合栄養医学とは、「人間の身体は食べた栄養からできており、身体を構成する細胞に必要な分子(栄養素)の不足や乱れが病気や老化の原因になるため、細胞の分子濃度(栄養状態)を正常な状態に整え合わせることで、病気や老化を予防・治療する」というものである。そして、この分子整合栄養医学の理論に基づき、血液検査で不足栄養素をチェックし、治療用に開発された高濃度の栄養素を補充する治療のことを「分子整合栄養療法」という。
●慢性疾患は細胞の分子の乱れ=栄養欠損が原因である。そのため薬に加え、不足している栄養素を補充し、細胞の栄養濃度を正常に戻す必要がある。
●分子整合栄養療法が効果的な疾患は、貧血、アトピー性皮膚炎、ニキビ、湿疹、うつ、関節リウマチ、動脈硬化、不妊、月経不順、PMS(月経前症候群)、がん、認知症、肌の老化などのアンチエイジングなどである。
Chapter1 アンチエイジングのための分子整合栄養療法
「病気は薬で治すもの」と思い込んでいた勤務医時代
・『一般の人はもちろんのこと、医療関係者のほとんどが、病気は薬で治すものと思い込んでいます。かく言う私も勤務医時代はそう思っており、薬を処方してきました。
しかし、大きな病院に勤務し、内科医として薬物治療を行っていながらも、自分はほとんど患者さんを治せていないという無力感を抱いていたのです。特に胃がんや大腸がんの末期の患者さんは、いくら抗がん剤治療をしても、副作用に苦しんで、最終的には残念な結果に至るということの繰り返しでした。』
分子整合栄養医学との出合い
・『何かよい治療方法はないかと模索している時に出合ったのが、分子整合栄養医学です。
分子整合栄養医学は、ノーベル賞を2回受賞した天才生化学者ライナス・ポーリング博士らが提唱したもので、正式には“Orthomolecular Nutrition and Medicine”と言われます。その理論は次のようなものです。
「身体の不調は、加齢、ストレス、遺伝素因、不適切な食生活、生活習慣、飲酒、喫煙等々のさまざまな原因が関与し、身体を構成する細胞の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなることに起因するので、人間の身体の仕組みを細胞の分子レベルで解明し、不足している分子を至適量補給すれば、生体機能が向上し、人間が本来持っている自然治癒力が高まって病態が改善される」』
・ここでいう「分子」とは「栄養素」のことである。従って、「細胞の分子が本来あるべき正常な状態でなくなる」というのは、「細胞が栄養不足になる」ということである。そして、これが原因で身体が不調になる、つまり「病気は、栄養不足が原因である」ということである。
・栄養不足が病気の原因ならば、栄養不足を解消することが治療に至る一番の近道となる。
・栄養不足を解消する治療法とは、人間の身体の仕組みを細胞の分子レベルで解明し、不足している分子を至適量補給すること。つまり、細胞に不足している栄養素を探り、必要な栄養素を必要なだけ補給するというものである。
・どんな栄養素が不足しているかという診断は、生化学的な理論に基づく詳細な血液検査によって行う。分子整合栄養医学では、病院で通常検査する項目以外にも多数検査する。また、検査で得られた数値を、ただ基準値に当てはめて正常か異常かを診るのではなく、生化学的な背景を考慮しながら、本来あるべき細胞濃度と照らし合わせて深く分析する。
画像出展:「日本オーソモレキュラー医学会」
ライナス・ポーリング博士は、1954年度のノーベル化学賞と1962年度のノーベル平和賞を受賞されました。そのポーリング博士が60代になった時、体内の生化学物質が本来の機能を発揮できないことが原因で発生する病気に焦点を当て、これを治療する「オルソモレキュラー・メディスン(分子整合医学)」を提唱されました。
※”オーソモレキュラー栄養療法 導入医療機関一覧”をクリック頂くと、各都道府県で開業されている医療機関を見つけることができます。
自然治癒力を取り戻す
●分子整合栄養医学の最大の長所は元を断ち、根本的な治療をすることである。これは細胞の濃度を「本来あるべき状態」に戻し、個々の細胞を自然な働きへと向かわせることであり、根本原因の栄養不足が是正されれば、自然治癒力が働くようになる。つまり、必要な栄養素を口から摂取し、腸から吸収し、血液に取り込んで血流に乗せて、不足している場所まで運べば、あとは人間の身体が壊れかけた細胞を修復してくれるということである。
Chapter2 答えはすべて血液診断にある
体調が悪いのに、血液検査で「異常なし」が出る理由
●体調不良に伴って病院で行われる血液検査は保険適用内の検査で、目的は「治療のため」であり、検査項目は限られたものになっている。一方、健康診断の血液検査の項目も、血色素量(ヘモグロビン)、赤血球数、GOT、GPT、γ‐GTP、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、空腹時血糖という範囲に限られたものであり、分子整合栄養医学的な検査項目と比較すると、2割程度の項目数にすぎない。これでは、未病や慢性疾患の原因を発見したり、さらに原因を突き止めたりすることはできない。
基準値=正常値ではない
●検査結果の数値は個人差があるので、継続して検査を行う必要がある。何度検査しても同じくらいの数値であれば、その数値が基準値から外れていても、それはその人の正常値であると考えられる。このように、血液検査の分析は経時的変化を診ることが極めて重要である。
●GPTは肝機能を診る検査である。この値が高いと「肝細胞が壊れている=炎症がある」と考えるが、値が低い場合は特に問題なしとなる。しかし、分子整合栄養医は異なる。酵素の多くはタン白質でできており、GPTはさらにビタミンB6を補酵素としているため、GPTが低い場合、分子整合栄養医はタン白質不足、ビタミンB6不足があると判断する。
画像出展:「肉食女子の肌は、なぜきれいなのか?」
血漿レベルではなく、細胞レベルで濃度をチェック
●『たとえば鉄の過不足を診断する際に、現代医学では一般的にヘモグロビンや血清鉄の値が基準値内に収まっていれば、鉄欠乏はないと考えます。
しかし血清鉄とは、臓器やタン白質に貯蔵されている鉄(貯蔵鉄)がヘモグロビンの合成や組織での利用のために運ばれている状態のものです。したがってその値は運搬中の鉄量であり、体内にあるすべての鉄量を示すものではありません。むしろ、体内にある鉄の3分の2がヘモグロビンに、残りの大半が貯蔵鉄に含まれているので、血清鉄はほんのわずかな量でしかありません。しかも血清鉄は運搬中の鉄ですから、貯蔵鉄が少しくらい減ったところで、値は大きく変動しません。
体内で鉄が不足してくると、まず減るのが貯蔵鉄、次に減るのが血清鉄、そして最後はヘモグロビンが作れなくなって、鉄欠乏性貧血が起こります。したがって、鉄不足を初期段階で見つけるには、貯蔵鉄をチェックしなければなりません。逆に、血清鉄の値が基準値を下回っているようなら、すでに深刻な鉄不足です。
貯蔵鉄の値を示す項目が「フェリチン」です。フェリチンは鉄を貯蔵するタン白質で、身体の中の鉄の減少を、血清鉄よりも早く、そして正確に反映します。ですから、血清鉄の値が低くなくてもフェリチンの値が低い場合は鉄欠乏と診断すべきなのです。
このように、栄養素の過不足を判断するうえでは、血液中の液体成分に含まれる血漿レベルの濃度よりも、細胞レベルでの濃度を診る方が重要になります。にもかかわらず、医学者の多くは、血漿レベルでの濃度しか診ていないのです。』