尿蛋白クレアチニン比(“尿TP/CRE比”)

先日、患者さまからの腎臓に関する検査値のお話の中で、全くノーマークだった重要な検査値があることを知りました。それは、尿蛋白クレアチニン比(尿TP/CRE比)というものです。

以下はネットで調べた内容になります。

尿蛋白クレアチニン比の利点

●尿検査(尿一般試験紙法)は被検者の健康状態により、尿が希釈あるいは濃縮されている場合には正確な評価が難しくなります。一方、尿蛋白クレアチニン比による計算式では、希釈尿や濃縮尿が補正されるメリットがあり、1日尿蛋白排泄量(g/日)ともよく相関するとされています。また、専門医への紹介基準や “CKD(慢性腎臓病) 重症度分類基準”などにも用いられています。

尿蛋白クレアチニン比の計算式

●尿TP/CRE比  “随時尿の尿蛋白定量結果(mg/dl)” ÷ “尿中クレアチニン濃度(mg/dl)

『内科プライマリ・ケア医の知っておきたい“ミニマム知識” =尿蛋白定量・クレアチニンクリアランスの考え方を身につけよう=』より

こちらは、2007年の日本内科学会雑誌 第96巻 第5号の掲載されていたもので、執筆者は横井内科医院院長の横井 徹先生です。内容は横井先生が内科医の先生方向けに書かれたものになっています。

ブログでは、“1.尿検査は試験紙法だけでとどめないで、尿蛋白持続陽性例では定量検査で「尿蛋白クレアチニン比」をチェック!”だけをご紹介していますが、太字は私の選択であり原文には太字はありません。なお、以下をクリック頂くと資料がダウンロードされます。

蛋白尿定量・クレアチニンクリアランスの考え方を身につけよう
蛋白尿定量・クレアチニンクリアランスの考え方を身につけよう

1.尿検査は試験紙法だけでとどめないで、尿蛋白持続陽性例では定量検査で「尿蛋白クレアチニン比」をチェック! 

『内科医なら誰でも尿検査、特に試験紙法による検尿は日常的に行っている。しかしこれからは、これだけで終わらないようにしたい。尿蛋白が+だから軽度、3+だから高度、というのは必ずしも正しくない。試験紙法は程度を濃度で分類しているため、蛋白の「尿中含有量」が同じでも希釈尿環境では+、濃縮尿環境では3+になることも多い。ここに、試験紙法で定性反応しかチェックしないことの盲点がある。 

一般に一日尿蛋白排泄 0.3~0.5g以上が数カ月間以上持続する場合、5~10 年単位で徐々に腎機能が低下してゆく慢性糸球体疾患が存在する可能性が高いと考えられる。そしてこのレベルの尿蛋白で一日尿量が2リットルある場合、一日0.5gの蛋白尿は単純計算で25mg/dlとなり試験紙法では±、高度の脱水で尿が 500mlにとどまる場合、100mg/dlとなり2+になり得る(一般に試験紙法において、+は30mg/dl以上、2+は100mg/dl以上、3+は300mg/dl以上が目安である)。すなわち、尿量が多いケースでは試験紙法で尿蛋白±程度であっても軽視できないわけである。 

この盲点を回避するために、尿蛋白定量が必要となる。しかし蓄尿が困難な環境で単に受診時採取した尿で「尿蛋白定量」をオーダーしてもmg/dl、「濃度」の単位でしか報告されない。これでは試験紙法と何らかわりはなく、無駄である。それに対して、随時尿の「尿蛋白クレアチニン比」はその人の一日尿蛋白排泄量(g/day)とほぼ等しいか、等しくなくともよく相関することが知られているのでこれを用いたい。尿蛋白クレアチニン比は、随時尿検体で尿蛋白定量結果(mg/dl)を尿中クレアチニン濃度(mg/dl)で除することで計算できる。これで0.3~0.5であれば、すなわち尿蛋白排泄0.3~0.5g/day程度と推定でき、できれば 1、2年以内には腎専門医へ紹介して欲しい(理由は前述のように進行性の慢性腎疾患の可能性が高いからである)。これよりも尿蛋白が多い場合、腎機能低下スピードはさらに速くなるのでもっと早めの紹介が必要である。さらに高度となるネフローゼ症候群のレベルになれば 1、2カ月以内の専門医紹介が必要なことが多い。蛋白尿が高度であればあるほど、できるだけ早期の治療介入が将来の腎機能低下を予防する一番の手段になるのでこの判断はたいへん重要である。 

なお、一過性に、ある程度以上の蛋白尿が出現することもある。体位性蛋白尿や発熱・感染など可逆性の原因に伴い一時的に出現するものであり、当然これらは腎実質性疾患ではないため、通常腎生検など精査の適応にならない。将来の持続性蛋白尿(すなわち何らかの腎実質性疾患)の前兆という可能性がゼロではないものの、腎疾患診療では蛋白尿が持続的に認められるようになってから精査する、という方針で臨んでも決して治療開始が遅くはならない。以上の理由から、尿蛋白クレアチニン比を計算するのは、ネフローゼ症候群のような高度の蛋白尿例を除き、通常は数カ月以上通常の試験紙法にて蛋白尿が持続している場合に行うとよい。』 

感想

今後、患者さまの血液や尿の検査結果表を拝見させて頂くときは、“CRE(クレアチニン)”、“eGFR(糸球体濾過値)”、“ALB(アルブミン)”に加え、11月に勉強した“尿中微量アルブミン”と今回勉強した“尿TP/CRE比”の5項目をチェックしていこうと思います。