高校サッカー研究2

前回の“高校サッカー研究1”では、人としての成長がサッカーの成長にもつながるだろうと考え、清水桜ケ丘高校(元清水商業高校)の大瀧雅良監督の先生、教師としての“確信”を知ろうとしました。

一方、今回からは、高校サッカー界で多くの成果を上げている監督のお考えや実践していることを勉強させて頂こうと思います。

著者:元川悦子

発行:2011年12月

出版:(株)カンゼン

目次

第1章 “勝利”よりも大事なことがある。 “伸びる土台”を作るのが高校サッカー  栫 裕保

第2章 ボランチ王国の秘密 多彩な個性の伸ばし方  山田耕介

第3章 伝統の継承と新スタイルの確立 南米スタイルにプラスした守備意識  川口 修

第4章 世界で闘える“個”の育成 本田圭佑を超える選手を育てるために  河崎 護

第5章 公立高校から世界への挑戦 “長所をひたすら伸ばす”  平岡和徳

第6章 サッカーでつなぐ地域の絆 東北の背負ったハンディキャップ  齋藤重信

第7章 名将はカメレオン ピッチ上で求められる自立心  本田裕一郎

画像出展:「高校サッカー監督術」

第1章 “勝利”よりも大事なことがある。 “伸びる土台”を作るのが高校サッカー

兵庫 滝川第二高校 サッカー部監督 栫 裕保 

“楽しいサッカー”の追及が選手の探求心を伸ばす

・「人間教育を最優先に考えて、そのうえでサッカーもがんばろう」という考え方でやっている。

・一時的な満足ではなく将来の成功を重視している。

・人間は、楽しいことはどんどん追及したくなる。

・強い好奇心や探求心が生まれれば高校時代は成功である。

全国制覇の裏にあったのはチーム崩壊の危機

・高校総体で準優勝したが、その後チームは下降線をたどり、8月後半の浜名湖遠征では、全国大会未経験の学校相手に1次リーグ4試合に全敗した。8月末には兵庫県U-15選抜の中学生チームに辛くも引き分けた。

強烈な個性の集団がピッチで爆発した瞬間

・2010年度の滝川第二は我の強い人間の集まりだった。

・全国高校サッカー選手権本大会前、20日。持てる力をきちんと発揮できる状態に持っていく必要がある。監督は一日一日を最大限に生かすため、まずは今まで以上にミーティングを実施。バラバラになりがちな選手たちに同じ方向を見るよう意識づけを図った。

・体力の強化トレーニングは、1~2週間、200mx10本(全力疾走)。厳しい練習の中にも楽しさがあること。

・チームをまとめるために、海の砂浜や公園に連れて行って走ったり、野球をやったりして特に遊び感覚のトレーニングも行った。

・チームがまとまることが最も重要である。

・悪いイメージをいかに払しょくすることが重要。

・高校は生徒にとって通過点であり、その後の人生の方がはるかに長く、重要である。それを口が酸っぱくなるほど言ってきた。人間教育を大事にする。そして、人としての成功を強く願う。

滝川第二の土台を作った男・黒田和生

・黒田監督(東京教育大学OB)が滝川第二にやってきたのは、1984年。それまでは13年間は、地元のクラブチーム・神戸FCで少年指導に携わってきた。

・週2回、寮に泊まって自立をうながすためにミーティングや進路指導を熱心にやった。

・少年サッカーの経験から「止める」「蹴る」の基本技術を重視していた。

・個の力で突破できる選手育成を最優先に掲げていた。

・22歳のとき、日本サッカー協会のコーチングスクールで、デッドマール・クラマーさんの考えに感銘を受けた。(「サッカーは技術、戦術、メンタル、フィジカルのバランスを一番に考えてやらないといけない。そのうえで美しく勝つこと。それがグッドゲームだと聞かされた」)

・黒田前監督の失敗「就任4年目のチーム作り」

『当時、急激に強くなった滝川第二は地元の有力選手が集まるようになっていた。全国制覇にはそれだけでは足りないと、黒田前監督自身も精力的に中学を出向いてスカウティングを実施。この年は能力の高いメンバーがそろっていた。ところが、エリート意識の高い彼らの中から天狗になる者が出てチームが混乱に陥った。試合から外すと「何で俺が出られないんだ」と文句を言い始め、勘違いした保護者もクレームをつけてくる。不協和音が生じたチームは勝負をかけていた88年に空中分解し、大事な高校総体も選手権も全国大会出場権を逃す羽目になる。単に上手な選手を集めるだけでは、いいチームは作れない・・・・・・。黒田監督は強く悟ったという。「どんなに恵まれた環境がそろったところで、気持ちがないと続かない。だったら、多少下手でも「滝二でやりたい」という意欲のある子でやっていこうと決めました。そういう選手の方が間違いなく伸びる。それは岡崎や加地も実証していると思います。』

選手の可能性を伸ばすのは“少年の心”

・黒田、栫両監督の共通したサッカー観は「“少年の心”でサッカーに取り組むことの大切さ」だった。

・黒田前監督は1996年春に南米視察に行き、「メンタル面の重要性」を再認識した。それは生徒のモチベーションだった。それを探るため、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイを2カ月かけて回り、育成コーチ30人にインタビューした。そこで得た結論は、“向上心を持っていること”“燃える目をしていること”だった。コーチと選手の信頼関係がサッカーを楽しむ土台になっていると感じた。当たり前のようなハグや握手をする。黒田前監督も積極的に握手を取り入れるようにした。

少年のようにワクワクできる環境を常に整えることで、選手たちのサッカーへの意欲は自然と高まっていく。どれだけ高校時代にサッカーに好きになってもらうか。それが選手の将来を左右する。黒田前監督や栫監督が気づき、作り上げたこの哲学は今も滝川第二の重要なベースになっている。

“意識の共有”がチームをひとつにする

・滝二は誰が監督をやろうが、コーチをやろうが、方向性はまったく変わらない。

試合の後も必ずグループディスカッションを実施。練習方法についても週1~2回は打ち合わせの場を持ち、ケガ人状況を確認したり、最近伸びてきた選手がいるかどうか、スケジュールの組み方、当面の対戦相手との戦い方などを徹底的に確認する。そうすれば、指導現場がバラバラになることは絶対にない。』

・1年生大会の試合だけでなく、Aチームと1年生を組ませて同じ試合に出すといった工夫もしている。

・個々の課題に対し指導者は「自分でどう克服するか考えろ」と言って、一つひとつじっくり取り組ませるようにしている。そういう積み重ねが最終的に大きな力になる。スタッフはこの考え方を常に共有している。

・戦術の基本は「攻撃的なパスサッカー」であるが、選手の個性に合わせて柔軟に変化をつける。

「このサッカーならやりやすいし、楽しいし、勝てる」というスタイルを選手同士が構築するのが“滝二流”である。

・スタッフワークを大事にしながら、選手一人ひとりの個性を大切にすることは、100人を超える大所帯になると非常に難しいことだが、彼らは努力を惜しまない。例えば、下級生で控えの選手でも、生徒は遠慮なく。栫監督にサッカー以外の相談事でも自由にやってくる。

・チーム全体がガラス張りで、部員一人ひとりと顔の見える関係ができているのは、黒田前監督と栫監督が話し合いを重ねて同じ価値観を共有し、「滝二らしさ」を追求し続けたから。彼ら2人の名将の貢献度は計り知れないほど大きい。

新監督の就任とチームの低迷

・自分たちの仕事は選手を育てること。特に1年生、2年生の強化が重要。

・新年度の活動のスタートは「六甲山登山」

・トレーニングは春におおよその年間計画を策定し、プリンスリーグをこなしながら、試合の反省を踏まえた練習を1週間、また1週間と積み上げていく形をとった。

・もっとも重視しているのはテクニック。個人のスキルをあげることが基本である。

・メンバーはあまり固定せず、チーム全員と信頼関係を作ることを重んじている。選手との直接対話を重視する理由はここにある。

サッカー以外のことを自分で考えることの重要性

・高校生はさまざまな角度から刺激を与えることが肝要である。サッカー以外のことを考える時間を作る。

・黒田前監督は読書感想文(月1回。スポーツ選手の自伝や歴史的人物の英雄伝など))や美術やクラシックなど芸術との触れ合いをやってきた。

・黒田前監督が15分の話を聞かせて、感想や意見を紙に書かせる。これは話に集中する能力を高める。監督やチームメイトの話を聞いて実践する力が求められる。

・栫監督は直接的な会話を通して、選手の聞く力や考える力を養いたいと考えている。サッカーノートや感想文では本心かどうか分からない。それが誤解を生む可能性もある。

・1年のテーマを漢字一文字で表す。それを生徒たちだけで考えさせる。これは2002年に始まった。選手権初制覇の2010年は『志』だった。

選手が伸びていく土台を作るのが高校サッカーの役割

・彼らの人生はこれからである。何年かたって、結婚したとか、就職したとか、ビジネスで成功したとか、そういう報告をもらう方がうれしい。

・選手権の優勝監督になっても指導者として成長していかなければならないことはいっしょである。

・高校サッカーは学校教育の一環であり、人間的成長が第一である。

・『僕ら育成の指導者は、選手たちをサポートして、高校を出た段階でもサッカーに取り組みたいという十分な余力を残してやることが大事。それが一番の仕事だと思うんです。サッカーへの意欲が高校でいっぱいになってしまったらその先は伸びないだろうし、逆にまだまだ余力があれば際限なく成長できる。僕ら教育に携わる人間は彼らの才能や意欲にフタしないことがなによりも大切なんですよ』

個性を伸ばすために行う「フタをしない指導」

・滝二は「自由」と「規律」のバランスが取れている。

・7割は個性を伸ばし、3割は不得意のことの克服に当てるような感覚でやっている。

画像出展:「高校サッカー監督術」

第2章 ボランチ王国の秘密 多彩な個性の伸ばし方

群馬 前橋育英高校 サッカー部監督 山田耕介

タイプの違うボランチの育成~自分にしかない武器を持て!

・自分だけの特徴や武器にこだわることは良いことだが、それらはあくまで選手自身の視点になる。指導者が与えるヒントも非常に重要である。

世界で闘うための理想のボランチ像

・ポゼッションを向上させるトレーニングを積極的に取り入れている。

-ワンタッチ、2タッチのボール回し

-グリッドの広さを細かく変化させながらの7対7、8対8などのミニゲームは毎日行っている。

-グリッドは広さだけでなく、ハーフコートの真ん中にタブーゾーンを設けたり、フリーマンを置いたりと工夫を凝らし、選手達の考える力、判断力を養っている。

・テーマは1週間単位で設定している。

・日曜日のゲームで課題が出たら、月曜日のミーティングでどう修正するかを選手たちと話し合い、1週間かけてその課題に取り組む。

・練習の最後にミニゲームをやるのは、その日細かく取り組んだことを実践の場で出させるのが目的である。敵がいる中でのボールコントロールや、ゲームの流れの中で発揮できない技術では意味がないためである。

・優れたテクニックを持っている選手は少なくないが、運動量やフィジカルコンタクトも必須、両輪である。指導者はこれらの部分に焦点をあて、合理的、科学的なトレーニングを考える。

画像出展:「高校サッカー監督術」

第3章 伝統の継承と新スタイルの確立 南米スタイルにプラスした守備意識

静岡 静岡学園高校 サッカー部監督 川口 修 

新たな“静学スタイル”

名将井田監督の後を継いだ川口監督は「今までとまったく同じことをしていても勝てない」と考え、新たなエッセンスとして「守備意識の徹底」を目指した。従来のチームは攻め中心のため、攻守の切り替えやボールへの寄せをサボりがちな選手も見受けられた。それを修正しないと勝てないと確信した。

・川口監督がブラジル留学で経験したのは、ブラジルの選手達の「球際の強さ」だった。

・苦しい状況でもチーム一丸となってカバーし合う姿勢も重視した。

観衆を虜にする独創的な静学サッカー

・サンパウロFCから招聘したコーチが行ったのはハーフコートの11対11だった。6カ月後、選手の判断や球離れが格段に速くなった。これが静学を変えた。

元祖・テクニックサッカー創造者のもとで学んだ12年

・全国大会の大舞台で一番重要なのはメンタルである。

・選手の自由を尊重しながらも、肝心なところでは厳しさを突きつけるのが「井田流選手操縦法」だった。

・井田前監督は宮本武蔵や坂本龍馬ら時代の名士たちの本をよく読んでおり、格言や名言もよく知っている。それをヒントに自分の言葉にして選手に語りかけることに長けていた。

・井田監督が常日頃言っていたこと。

-「こだわってボールにたくさん触れればブラジル人のようになれる」

-「手と同じように足でボールを扱えるようにしろ」

-「静学のサッカーは美しく華麗じゃなきゃいけねえんだ」

・井田監督の「斬新な采配」も特筆すべきものだった。負けるのが怖いと思い切った采配はできないが、井田監督は全く違っていた。

-「光るやつがいたら、俺は学年関係なしに使う。多少のリスクを冒しても、どんどん試合に出すんだ」

-新人戦は登録25人を全員使うのが当たり前。ポジションもシステムもどんどん変える。これは「努力をするやつにはチャンスを与える」ということだったのではないか[川口監督])

-固定観念を取り払って使うことで、新たな才能を発掘することができる。

名将はいかにしてプロ選手を輩出したか?

・「俺がこいつらをプロにしてやる。その方が面白いだろ」と口癖のように言っていた。これはボールテクニックの練習を懸命にやって、他のチームの選手より個人技を磨いてきたからが大きい。

・日本代表になる選手は何が違うのか。内田篤人(清水東⇒鹿島アントラーズ)とはどんな選手か。

-『内田は高校2年でサイドバックに転向した選手。瞬間的なスピードが大きな武器ですけど、それ以上にすばらしいのが、自分で何をすべきかを考える力がある。規律を持ってサッカーに取り組むことができる。そこが学園の選手との決定的な差。テクニックや身体能力はもちろんのこと、彼のような賢さを育てないといけないなと強く感じています。』

ユース年代の環境変化と静学サッカーの存在意識

・川口監督はJユースの台頭の危機感から、静学サッカーの原点回帰を図り、新たな発展型を模索すべきではないかと考えるようになった。

“アイデア”と“ひらめき”こそが静学スタイルの原点

・朝錬6~7時は個人技を磨く時間。午後錬はゲーム形式の戦術練習中心。

・従来の練習を変えたわけでないが、結果は出なかった。それは「余裕がなかったから」である。テクニック重視の静学サッカーには「心のゆとり」が必須だが。これを失っていた。自分の焦りが子どもたちに伝わった。

個と組織が融合した強いチームになるために

・井田前監督にはあまりやっていなかったミーティングを毎日のように実施。静学のコンセプトを徹底的に植えつけた。

・『練習前の15~20分という短い時間ですけど、話をすることでメンタル面を整えて規律を持たせることができるし、チームと進むべき方向性も確認できる。ミーティングにはいろんなプラス効果があるのかなと思いました。』

・守備意識を高めたのは、より迫力ある攻めを繰り出すためである。また、格上のJユースと互角に渡り合うためには、相手からボールを奪うところから考えないと、華やかな攻撃サッカーは実践できない。

・バルセロナの華麗で効率的な攻撃は、組織的な守備と攻守の切り替えの速さがあるから成り立っている。

・球際の強さは必須。選手たちに「1対1で負けるな」「練習から厳しく行け」と言い続けた。

ボールを取られた瞬間の重要性を強調した。これは失った後の3秒間はボールを奪う絶好のチャンスだからである。失った瞬間は休みを入れてしまいがちだが、相手も奪った直後はバランスが悪いのでハードワークすれば、主導権を握れる可能性は高い。また、このような話を理論的に丁寧に説明することで選手の理解(何が大事か等)が上がる。

伸びる選手は自分の意思で判断できる

スーパーチームを作るには、自分の意志で判断できる選手を育てないといけない。人間性の部分が非常に重要になってくる。自主性を持つようになるとサッカーの上達が早い。

・自由でヤンチャな一面を持ちつつ、いざ勝負となったときには規律と厳しさを持てる選手たちが出てくればチーム力はもっと上がる。

画像出展:「高校サッカー監督術」

第4章 世界で闘える“個”の育成 本田圭佑を超える選手を育てるために

石川 星稜高校 サッカー部監督 河崎 護

自主性こそが、勝利の絶対条件

・河崎監督は、「自立心の向上」を重要なテーマにしているが、その契機となったのが全国トップに駆け上がった2000年からの5年間である。

自分たちで考えてやるサッカーの恩恵は、互いを思いやる心と強固な一体感である。

自立心の高い選手がチームにもたらしたもの

・良い相乗効果が生まれるのが、高校サッカーの良さである。

勝ちたければ子どもたちが自ら変わらなければダメだ自主性というのは、勝利への絶対条件である。

第三者の視点を取り入れたチーム作り

自分に足りないものを探し、学び続ける謙虚さは指導者の原点である。河崎監督がそういう姿勢を持ち続けているからこそ、選手も高い目標をもってサッカーに取り組める。

チームを伸ばすために、個の成長を考える

・河崎監督は、将来的に大きく羽ばたく選手を育てたいという思いが強い。「選手第一主義」と言える。選手の個性を見極め、一人ひとりの目標設定を明確にし、方向づけさせるという試みを行っている。とりわけ、個人面談やピッチ外でのコミュニケーションを大事にしている。

気配り上手はぐんぐん伸びる

河崎監督はとりわけサッカー指導の枠を超えた人間教育に強いこだわりを持っている。特に強調しているのが、「気配りのできる人間になれ」ということである。これは、気配り上手になれば苦境に陥ったとき、味方を励まして前向きにする行動もとれるだろうし、パスを出す・もらうのタイミングもうまく計りながらプレーできるはずである。

・掃除や道具管理など生活態度に関しても強いこだわりを持っている。

・春の福岡フェスティバルの大会では、優勝と同じくらい「グッドマナー賞」を真剣に取りに行ったこともある。

第二、第三の本田圭佑を育てるために

・河崎監督はチームを固定化するより、可能性のある選手に出場のチャンスを積極的に与える。

試合中にオーバーコーチングせず、追い込まれた状況でもじっと黙って戦況を見守っているのは、ギリギリの局面こそメンタルを鍛える絶好の機会だからである。選手の逞しさや忍耐強さは、河崎監督の辛抱強い意識づけの成果であると考えられる。

強いメンタリティを養うために、頻繁にミーティングを開いている。これは選手同士で考えさせることが、苦境を打開する力になると考えているためである。

・『本田の頃は子どもたちが自分たちで話し合いをしていたが、今の子は意見をぶつけ合うことを嫌う傾向が強い。それを改善するために、河崎監督は練習後にたびたび場を設けて、「お前らで考えろ」とよく言っているという。こうした試みの一つひとつが、30年近く夢に見続けてきた。“全国の頂点”へとつながるに違いない。』

画像出展:「高校サッカー監督術」

第5章 公立高校から世界への挑戦 “長所をひたすら伸ばす”

熊本 大津高校 サッカー部監督 平岡和徳

奇跡は起きるんだ。俺についてこい!

・赴任した熊本商業高校は全校生徒1500人中、男子は250人。サッカー部は12、13人。グラウンド確保と校内スカウトから始めた。指揮官の姿を見て、選手たちも本気になっていった。そして翌年には部員が30人なり、3年目にはA、B2チーム作れるようになった。その後、有望な選手が入学し4年目には高校総体県大会で29年ぶりの優勝を勝ち取った。さらに、「平岡のところに預ければ選手が変化する」と評判になり、チームの強化は進んだ。

0から1を創ることの楽しさ、大津での再出発

・大津高校では熊本商業高校とのは校風が違っていたため、朝練を始める一方、「午後錬は100分」として集中して練習した。一方、選手には「セルフマネージメント」を強く要求した。

・チーム方針に従わない我儘な選手は、テクニックがあっても実績があってもレギュラーから外した。

愛情を持って厳しくしてきたが、それに反応する選手は伸びた。ブラジルには「水をやりすぎた木は枯れる」という格言があるように、過保護は子どもの成長を妨げる。

九州はひとつ~人と地域の結びつきの重要性~

・鹿児島実業の松澤隆司前総監督が次々と代表選手を送り出してきたのは、伸びる選手を見極め、ストロングポイントを研ぎ澄ますことに長けていたからであろう。

“あきらめない”という才能を持った男・巻誠一郎

・巻誠一郎のように遅咲きの選手は必ずいるので、指導者はその事を改めて認識すべきである。

“大津スタイル”の確立へ

・スカウティングでクレームがついたため、「練習へのフリー参加」を考えた。中学生でもクラブチームでもOK.。用意している大津のウエアを着て、大津の部員といっしょにすべてのメニューをこなす。

・朝錬は週末の試合の反省点をチェックする。午後の100分の全体練習後は、短時間のシュート練習やウェイトトレーニングなどを行う。シャワーを浴びて19時には帰宅する。そんな習慣を見につけ、24時間を自分でデザインできるようにする。

・「課題発見能力」「自主性」「24時間のデザイン力の3つを身につければ、どこへ行っても、どんな仕事に就いても活躍できると考えている。

ここで生きる力を培い、お互い助け合えるような関係を構築してほしいです。」

・特定の保護者との飲食は一切しない。お中元やお歳暮も受け取らない。これは、指導者は何事もガラス張りでなければならないと思うためである。

いまだ果たせぬ夢、全国制覇へ

・『勝つためには常にゴールを狙い続けないとダメだし、団結力も不可欠。あきらめない才能を磨くことも重要です。巻のアグレッシブさを学んで苦しいときにこそ声を出さないといけない。一事が万事で、細部にまでこだわりを持つことが勝利の女神を引き寄せる。こうしたコンセプトを11項目作成し、選手たちに配って意識高揚を促しています。』

画像出展:「高校サッカー監督術」

第6章 サッカーでつなぐ地域の絆 東北の背負ったハンディキャップ

岩手 盛岡商業高校 サッカー部総監督 齋藤重信

東北人のメンタリティと全国ベスト8の壁

・「見る人、やる人、教える人にとって面白いサッカー」が究極の理想。

・全国大会ベスト8の壁を破れなかったのは、「自分たちは後進地域からやってきた」という弱気なメンタリティが原因だった。そのことに気づいたのはだいぶ後になってからだった。

病との闘い、日本一の先に見えたもの

人というのは人のためにと思うとすごい力がでる。

努力を怠らず、粘って粘ってガムシャラに前へ進み続けられたら、それなりの成果が得られる。その重要性を学ぶ最高の場所が高校サッカーである。

画像出展:「高校サッカー監督術」

第7章 名将はカメレオン ピッチ上で求められる自立心

千葉 流経大柏高校 サッカー部監督 本田裕一郎

3・11 東日本大震災を経て

・休みの重要性、長期オフの必要性を感じた。

サッカーで闘える選手を育てるために

ゴールに対する執着心が海外コーチと日本コーチの大きな差である。海外のコーチはシュート練習においてさえ、ゴールを外すことに失望する。その点を取ること対する思いの強さの違いは日本人コ―チとは比較にならない程大きい。

自立心の高い選手を育成するために

どんな修羅場に立たされても、平静さを保てる強靭なメンタリティを養なう必要がある。そのためには「人間力」を高める必要がある。そのために、毎週月曜日のミーティングや寮の点呼では、3分間スピーチ、小論文の執筆などを日常的に行っている。それは、「選手たちが自ら率先して物事を判断できる自主性、自立心を見につけてほしい」と願うからである。

・上級生には下級生に任せる雑用も、「何事も自分たちが先頭に立ってやらないといけない」というリーダーの自覚を持たせる。チーム内の全員に美化委員や規律委員などの役職を与えて責任体制を明確化するといったことも最近の取り組みの一例である。常に新たなヒントを追い求め、すぐに実戦の場に取り入れる。