変形性膝関節症と人工関節2

編集:小俣孝一

初版発行:2020年7月

出版:文響社

目次は”変形性膝関節症と人工関節1”を参照ください。

第2章 症状についての疑問14

Q25.変形性膝関節症を発症したかどうか見分けられる初期症状はありますか?

・変形性膝関節症の初期はほぼ痛みはない。最初に察知できる自覚症状は、膝のこわばりや違和感である。

・この状態がしばらく続くと、やがて立ったり、歩いたり、座ったりしたときに一時的な痛みが現われる。

・人によっては膝関節の滑膜の炎症が起こり、強烈な痛みに襲われ日常生活に支障をきたすこともある。

第3章 診察・検査・診断についての疑問12

Q44.血液検査が行われるのは、どのようなケースですか?

・変形性膝関節症の場合、血液検査を行う必要はない。ただし、関節リウマチや化膿性関節炎、痛風などが疑われる場合は血液検査によってその可能性を確認できる。ここでの検査値は「CRP」(C反応性たんぱく)である。CRP(基準値は0.3㎎以下)は体内に炎症が起こったり、組織の一部が破壊されたりした場合に生じるたんぱく質の一種である。

関節リウマチではMMP-3、痛風では尿酸値も重要な検査である。

第4章 保存療法① 薬物療法・注射療法についての疑問16

Q50.世界では、変形性膝関節症の治療方針はどうなっていますか?

変形性膝関節症の治療の主役が鎮痛薬と注射療法なのは日本だけ。この理由は治療費がかさむ上に、一時的な改善効果しか期待できないためである。日本では健康保険制度によって治療費を大半は国が支払うため、安易に薬や注射が選択されている。

・OARSI(国際関節症学会)では、「薬を用いない治療を中心にして、薬の治療は補助的に用いる」ことが第一に推奨されている。運動・減量、サポーター、足底板の使用、患部の加温、冷却といった薬を用いない治療を十分に試したうえで、耐え難い痛みがある場合のみ薬物療法や注射療法が行われている。

画像出展:「膝関節症 最高の治し方」

Q54.NSAIDsを飲みつづけると胃腸障害などの副作用を引き起こすというのは本当?

・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は酵素の一種であるCOXの働きを阻害して鎮痛作用を得る薬である。COXには炎症を引き起こすCOX2の他に、細胞の代謝に関わるCOX1があるが、NSAIDsは、COX1、COX2の両方の働きを阻害する。COX1が働くなることで問題なのは、細胞の代謝が悪くなって胃腸や腎臓、肝臓、造血機能を担う骨髄が衰えることである。これにより、消化性潰瘍、腎不全、肝硬変、骨髄抑制(白血球の減少)が起こる危険が大きくなる。

・『私(順天堂大学医学部 整形外科学 黒澤 尚 特任教授)が医学生だったとき、NSAIDsを毎日服用し、その副作用で胃に穴があいて急死した先輩がいました。以来、私は「薬の副作用は怖い」と肝に銘じています。みなさんもNSAIDsの連用や長期服用は、くれぐれも控えてください。

Q61.ヒアルロン酸注射を医師からすすめられました。受けるべきですか?

ヒアルロン酸注射の効果は一時的であり、ヒアルロン酸注射をくり返し受けると、膝関節が弱くなって変形が促進されるため、注射を繰り返し受けるのは避けるべきである。

Q63.ひざに水がたまり腫れています。水は抜いたほうがいいのですか?

・関節水腫(膝に水がたまる)の原因は滑膜の炎症である。従って、膝の炎症が治まらない限り、水抜きで余分な関節液を抜き取っても、すぐにまた水がたまる。注射は痛みを伴い、細菌感染の危険もあることから水抜きは行わない方が良い。

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第5章 保存療法② 運動療法についての疑問10

Q65.運動療法で本当によくなるのですか?

・変形性膝関節症の治療では「運動療法」が主流になりつつある。これは痛みの軽減と病気の進行の抑制が期待できるためである。

人工膝関節置換術の効果を検証した研究では、手術によって痛みが改善した人の割合は83%であり、一方、運動療法で改善した人の割合は69%であった。この研究結果をみても、まず、手軽にできる運動療法を行うべきである。

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Q69.ひざへの負担が軽く高齢者でもできる運動療法はありますか?

・世界の膝痛治療においてスタンダードな運動療法は約40前に考案された「ひざラク体操」である。

「ひざラク体操」のポイントは、上げる側の膝を伸ばすこと、足の上げ下げの動作をできるだけゆっくり行うことである。この体操により、大腿四頭筋、腸腰筋、腹筋などの筋肉が強化され、膝が丈夫になる。


Q73.手術をすすめられるほど進行していても運動療法は行うべきですか?

・『最近は、人工膝関節置換術を実施する前に、運動療法をすすめる病院が増えています。というのも、運動療法をやれば重症の患者さんでも、安静時の痛みが和らいだり、ひざ関節の可動域が広がったり、杖を使わずに歩けるようになったりして、30~40%の割合で手術を回避できるようになるからです。

第6章 保存療法③ 装具療法や温熱方法についての疑問10

Q77.O脚の矯正には足底板がいいと聞きましたが?

・「足底板」はO脚になった変形を直すことはできないが、膝にかかる荷重が変わり痛みが緩和できる可能性はある。ただし、重症の場合は期待できない。

Q78.ひざのサポーターは使ったほうがいいのですか?

・サポーターの効果は保温である。膝を温めることで関節内の組織の新陳代謝を促し、炎症を鎮める効果が期待できる。また、「膝が守られている」という安心感が得られるのも利点である。

Q82.鍼灸治療は効果がありますか?

・『変形性膝関節症には、鍼灸治療がある程度効くと考えられています。』

・『最近は、鍼灸治療を取り入れている整形外科も増えています。興味ある人は、主治医に相談してみるといいでしょう。』

第7章 手術についての疑問23

Q87.変形性膝関節症のどれくらいの人が、手術を受けていますか?

・変形性膝関節症の患者さんは約3,000万人であるが、手術を受けているのは全体の1%未満である。

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Q89.手術待ち患者の半数が自力ケアで手術回避できたと聞きました。どんな方法ですか?

・手術を希望する患者さんに対し、まず、三つの自力ケアを必ずやってもらうようにしている。この自力ケアを実行した患者さんは、痛みが10~20%程改善され、他の病院で手術を勧められた患者さんの半数以上が手術を回避している。

1)減量

2)O脚を正す歩き方

踵から着地して、足の小指を浮かせるように親指に体重をかけて歩く。こうすると膝の内側に重心がかかり、O脚が矯正される。

3)太ももの筋肉強化

-「足指握り」

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Q98.半月板を切除する関節鏡手術を医師からすすめられたら、受けるべきですか?

・スポーツなどの激しい運動が原因で、半月板が割れたり、避けたりした場合は手術で対応することが一般的であるが、加齢による半月板変性断裂は老化現象の一種なので特に問題ない。温存した方が膝の機能維持には望ましい。安易に半月板切除を行うと、膝関節の変形を早め、痛みが悪化することが多いからである。

Q100.人工膝関節置換術とは、どのような手術ですか?

・末期の変形性膝関節症には最適な方法である。

・インプラント(人工関節)はクロム・コバルト合金やポリエチレンでできている。

・大腿骨と脛骨の接合部分にインプラントを装着する。

・全置換手術の手順

1)全身麻酔をかける。

2)膝をかんぜんに消毒し、切開して膝関節を露出する。

3)大腿骨と脛骨の変形した部分を取り除いて整形する。

4)仮のインプラントで膝の曲げ伸ばしや靭帯の張り具合を確認する。

5)本番のインプラントを骨に設置する。

6)傷口を縫い合わせて閉じる。

Q102.人工膝関節置換術を受ければ、ひざの曲げ伸ばしが自在にできるようになりますか?

・『人工膝関節置換術を受けると、ひざ痛は完全に消失し、歩行能力も回復します。しかし、ひざ関節を人工関節に入れ替えるため、ひざの柔軟な曲げ伸ばしが困難になり、ひざの可動域は大幅に制限されます。

ですから、残念ながら手術後は通常、床にしゃがんだり、正座をしたりすることはできません。治療成績としては、手術後にひざが100度以上曲がれば合格点。これは、無理なくイスに座れる角度です。手術後にどれだけひざが曲がるようになるかは個人差があり、中には60度程度までしか曲がらない人もいます。ひざがこの程度までしか曲がらないと、イスに座ったときに両足を前に突き出すような姿勢になり、電車やバスの座席を利用しづらくなります。

こうしたひざの曲がりの制限は、インプラントの性能ではなく、むしろ患者さんが手術前にひざをどれだけ動かせたかに比例します。そのため、手術前にひざ関節の変形が進んでいた人ほど、ひざの曲がりは悪くなります。

Q103.人工膝関節置換術には術後の回復が早い術式があると聞きました。どんな手術ですか?

・近年は、変形がひどい部分だけをインプラントに入れ替える「単顆片側置換術」が広く行われている。この片側置換術なら7センチ程度の皮膚切開で行えるため、骨を削る量や出血が少なく、患者さんの体力的な負担はかなり軽減され、入院期間、リハビリ期間も短くなる。

片側置換術は、軟骨のすり減りがひざ関節の内側・外側どちらかに限定している人、日常生活の活動性が低い人、体重が軽い人、高齢の人などに適している。

注意点としては、手術をしなかった側に変形が生じすいこと、全置換術に比べてインプラントの耐用年数がやや短く、再手術が必要になる可能性が比較的高いこと等がある。

Q105.手術は1度行えば、再手術が必要になるようなことはありませんか?

変形性膝関節症の手術は再手術の可能性はある。

・人工膝関節置換術の場合、術後に歯槽膿漏(歯周病の病態が最も進んだ状態)、胆のう炎や膀胱炎などが生じ、何らかの原因で体力消耗や免疫力が低下すると細菌が血管の中に入り、インプラントに付着すると感染症をきたす。こうなると再手術が必要になる。

インプラントの劣化など人工関節の耐用年数の問題から再手術が必要になる可能性がある。ただし、近年では、人工関節の材質の改良や、手術手技の向上によりインプラントの耐用年数は延びており、劣化による再手術の可能性は低くなっている。

第8章 日常生活とセルフケアについての疑問21

Q121.ウォーキングは1日1万歩を目標に行えばいいのですか?

・1日10,000歩は健康な人の場合であり、中高年では8,000歩が妥当とされている。更に変形性膝関節症の人は、膝関節症の軟骨の損耗を防ぐするため、1日6,000歩程度に抑えた方が良い。なお、これは家の中で歩いた分も含めた歩数である。

Q122.最もいいウォーキングの方法を教えてください

・変形性膝関節症の人にとって重要なことは、「痛くない距離を痛くないペースで歩くこと」である。

・慣れてきたら徐々に歩く距離をのばす。そして、自分なりの10分コース、30分コース、60分コースを考え、体調に合わせてコースを選択する。坂道や階段のない平地が望ましい。

Q125.水分不足はひざ痛を悪化させると聞きました。水分はどのように補給すべきですか?

・水分不足は関節液の量に影響する。関節液は膝の動きを滑らかにし、軟骨に水分や栄養を運ぶ。従って、水分不足は膝の軟骨の弾力性を奪い、クッション機能を低下させ膝痛の悪化につながる。水分は喉の渇きを感じる前に摂るように心がける。水分の量の目安は1日当たり約2リットルである。

なお、心疾患、腎疾患、糖尿病の人は水分摂取量を主治医に相談する必要がある。

Q128.プロテオグリカンは日常の自力ケアで増やせると聞きました。どんな方法ですか?

・プロテオグリカンは、水分やコラーゲンとともに、膝の関節軟骨を構成する成分の一つである。プロテオグリカンは、水分を引きつけて内部に蓄え、クッション機能を生み出す重要な役割を担っている。しかし、老化や閉経によりプロテオグリカンが不足し、膝の軟骨がすり減りやすくなる。また、プロテオグリカンは、肥満や膝をかばいすぎる生活で減少する。

プロテオグリカンを増やす方法に「ソフト屈伸」がある。膝の曲げ伸ばしによりプロテオグリカンの新陳代謝が促進される。また、関節軟骨が関節液を吸い取るスポンジ機能もアップして、軟骨細胞が活性化しプロテオグリカンは多く作り出される。

画像出展:「膝関節症 最高の治し方」

第9章 関節リウマチなど他の病気が原因のひざ痛についての疑問9

Q135.ひざ関節に骨の破片が挟まる関節ネズミが疑われています。どんな治療が行われますか?

・関節ネズミは軟骨や骨の一部が剥がれ、その破片が関節内をまるでネズミのように動き回る状態で、正式には関節遊離体という。

・主な症状は、膝の痛みと動きの制限である。遊離体が関節に引っかかったり、大腿骨と脛骨の間に挟まったりすると激痛が走り、膝が突然、動かなくなることがあり、歩くことはもちろん、膝の曲げ伸ばしもできない。膝が腫れて水(関節液)がたまることもある。診断はX線やMRIなどの画像検査で確認できる。

・手術は関節鏡視下手術や関節切開手術を行うのが一般的である。

感想

今回の1番の収穫は、軟骨は軟骨に負担のかからない運動を行うことで、再生が期待できるということです。

軟骨には血管が入り込んでいないため、通常の組織のように血液を通じて酸素や栄養は補給されません。しかし、関節にかかる圧の変化によって関節液を吸収し、必要な酸素と栄養を補給することが可能です。関節液を繰り返し吸収・排出することで新陳代謝が活発になり、軟骨は強化されます。

画像出展:「膝関節症 最高の治し方」

こちらが、「軟骨に負担のかからない運動」です。