自律神経失調症

自律神経失調症のことは、それなりに知っているつもりでしたが、この本を読んで自分の理解が心もとないものだったことが分かりました。今回も、本の内容に則して概要をまとめたいと思います。なお、『』内は本文からの完全な引用です。

『「心臓は私達が意識していなくても適切に拍動を続け。全身に血液を送り続ける」、「胃は食べ物が降りて来たら、すぐ動き出して食べ物を砕き腸へ送る」。これら内臓の働きは自律神経が調節しているのです。当たり前のように私達は思っていますが、自律神経がもしヘソを曲げたら、内臓の営みは崩れてしまうのです。』

著者:渡辺正樹
「自律神経失調症を知ろう」

著者:渡辺正樹

出版社:南山堂

自律神経とは

「病気がみえる vol.7 脳・神経」より
自律神経の主な働き

循環、呼吸、消化、分泌、排泄、体温調節など、基本的な生命活動(自律機能)の維持に働いている神経系を自律神経系といいます。

自律神経系は内臓、心筋、平滑筋、腺など、ほぼ全身に分布します。

自律神経系は、生体の恒常性(ホメオスタシス)の維持に重要な役割を果たしています。

画像出展:「病気がみえる vol7 脳・神経」(メディックメディア)

「病気がみえる vol.7:脳・神経」
交感神経系と副交感神経系

自律神経には交感神経と副交感神経の2種類あり、互いに相反する役割を担っています。

交感神経は「エネルギーを消費する変化」を、副交感神経は「エネルギーを確保する変化」を担います。

画像出展:「病気がみえる vol7:脳・神経」(メディクメディア)

自律神経失調症とは
自律神経失調症は交感神経が強いか、副交感神経が弱くなるか、いずれかの状態で、それにより内臓が十分な休息をとれない事態になることです

その結果、動悸、立ちくらみ、ふらつき、発汗過多、血圧上昇(変動)、片頭痛、肩こり、手足の冷え、易疲労など多彩な症状が出現します。
原因不明、内臓に問題があり、しかも精神的なストレスが強いとなると、自律神経失調症と診断される症例は少なくありません。このことは、自律神経失調症が不定愁訴の受け皿になっているためと考えられます。

発症のメカニズム
1.ストレスが脳の疲労を生む
ストレスは身体的要因と精神的要因があります。前者のストレスは、身体への負担により、知らず知らずに蓄積されるものです。睡眠不足などの生活に関わるもの以外に、寒すぎる、暑すぎる、騒音がうるさいなど環境面によるストレスも含みます。一方、精神的なストレスは「イヤ」という感情によって生まれるもので、通常、ストレスはこの精神的なものを指している場合が多いと思います。
これらがまず脳にダメージを与え、脳の疲労が生まれます。身体は元気でも、脳(精神)は疲れ果てているということもあります。そして、脳の疲労はまず「不安」として現れます。全般性不安障害、強迫性障害、パニック障害、うつ状態などは、不安が脳の中に広がった状態であり神経症と呼ばれています。

注)以降に添付されている画像はすべて、「自律神経失調症を知ろう」からの出展です。

「自律神経失調症を知ろう」より
ストレスの第一の標的は脳
「自律神経失調症を知ろう」より
脳の疲労が神経症に発展

2.脳と内臓を結ぶ自律神経
脳の下方に位置する視床下部や脊髄から、自律神経が電線のように伸びて、体内の内臓が円滑に動くように指令が出されます。生命維持には末梢神経である自律神経の働きが不可欠です。脳に疲労が溜まっても、自律神経が正常なら疲労は身体へは伝わりません。
交感神経が副交感神経を圧倒した状態では、体内でエネルギーを蓄えることができず、身体は少しずつ消耗していきます。つまり、自律神経失調症が長く続くということは、身体のエネルギーがどんどん少なくなっていくということです。そして、その影響が最も出るのは脳です。脳は約1.5kgしかない臓器でありながら、体全体の20%もの酸素を使います。つまり、自律神経失調症は大食漢の脳にとって特に深刻であり、自律神経失調症の更なる長期化の原因にもなります。

「自律神経失調症を知ろう」より
脳と内臓を結ぶ自律神経
「自律神経失調症を知ろう」より
自律神経が悪いと臓器に脳の疲労が伝わる

「自律神経失調症を知ろう」より
“神経症”と“自律神経失調症”の違い

 左の2つの図は、脳の疲労だけであれば、疑われるのは「神経症」

これが体内の内臓に及んでしまうと「自律神経失調症」の可能性が高まります。

自律神経失調症と片頭痛
・首こり、肩こりが原因の筋緊張性頭痛と異なり、片頭痛は脳周辺の血管の異常な収縮と拡張のギャップで生じる拍動性の頭痛で、一般に月に1~2度の頭痛発作が襲ってくる傾向があるとされています。青少年期にみられる自律神経失調症によることが多いと考えられています

「自律神経失調症を知ろう」より
片頭痛では血管が縮み気味

片頭痛の患者さんは、ストレスなどのために、日常的に血管は縮み気味です。

自律神経失調症と認知症
中高年の自律神経失調症では認知症との関連性に注目すべきです。アルツハイマー病は脳内にアミロイドというタンパク質の変性した物質が蓄積して、神経細胞を障害するために発症する疾患です。本来は溜まるべきでないアミロイドというゴミが脳に溜まるのは、副交感神経の働きである体外への排泄機能が低下するからとも考えられます。さらに交感神経が強くなると、脳内で活性酸素が産生されやすくなるため、神経細胞に与えるダメージが増幅されます。

「自律神経失調症を知ろう」より
自律神経失調症と認知症

「加齢」と「メタボ」はアミロイドを脳に蓄積させる原因になります。

自律神経失調症への対応
1.生活習慣からのアプローチ
仕事をしている人にとって、生活習慣を見直すということは容易なことではありませんが、心がけて欲しい4つの対策をお伝えします。
・自然食品を食べる
精神安定剤では自律神経は治せません。むしろ魚貝類などに多く含まれるビタミンB12の摂取が有効です。
・スローライフに戻る
スローライフとは時間に追われない生活スタイルです。歩く時間を増やす、朝型生活に変える、ゆっくり食事する、ゆったり入浴するなど、一つでも変えることができれば素晴らしいと思います。
我慢しないで吐き出す
副交感神経は体内の老廃物や分泌物などを吐き出す働きをする神経です。日頃あまり弱音を吐かず頑張っている人は副交感神経もおとなしいのではないかと思います。笑い、泣く、怒るという感情を抑えすぎないということが大切です。
休息を恐がらない
忙しい人にとっては難問で、工夫する必要がありますが、特に50歳を越え「疲れがたまって抜けないなぁ。」と感じることがあるとすれば、積極的に有給休暇を取ってリフレッシュすることを考えてください

2.「もくもく」と「ワクワク」
ストレスに強くなるための脳内物質セロトニンを増やすには、「もくもく」と作業を続けること
ストレスを力に変える脳内物質ドパミンを増やすには、積極的に楽しいことを行うこと
セロトニンは疲労した脳、特に古い脳である大脳辺縁系を直接癒し、ドパミンは大脳の前頭葉を元気にし、それにより大脳辺縁系を癒す効果があるとされています。

「自律神経失調症を知ろう」より
セロトニンによりストレスに強くなる
「自律神経失調症を知ろう」より
ドーパミンはストレスを力に変える

追記:2022年5月13日

自律神経と季節の関係を調べていてみつけました。
季節の変わり目にご注意を!~春の体調不良の予防と対策~” 山梨県厚生連さま

季節の変わり目と自律神経の乱れ” ナチュラルクリニック代々木さま