前回の「脂肪と筋肉からのメッセージ」に続き、今回は「骨からのメッセージ」になります。
出版:東京書籍
発行:2018年4月
『体を支えるだけの組織だと思われがちな「骨」。
しかし、最新の科学で明らかになったのは、一見無口に思える「骨」が人体のネットワークを通じ、脳や筋肉など全身の臓器にメッセージを送り続けているという事実だ。
そのメッセージが途絶えたとき、まるで命のスイッチを切るかのように、老化現象が加速してしまうという。』
1.オステオカルシン
・記憶力や生殖機能を強化するメッセージ物質。
・通常のマウスとオステオカルシンをつくれないマウスを泳がせるという実験により発見された。
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
・骨でつくられたオステオカルシンは血管内に放出され、血液に乗って脳に運ばれる。そして、海馬に到達して受容体と結合し、海馬の神経細胞の中に「記憶をアップせよ!」というメッセージが送り込まれる。
・動物は老化に伴って筋力が低下し運動能力が落ちていくが、これにオステオカルシンは関係している。
・運動には、筋肉が糖分と脂肪酸を分解し吸収する必要があるが、オステオカルシンには糖分や脂肪酸の分解・吸収を促す働きがある。つまり、オステオカルシンは筋肉のエネルギー利用を増進するメッセージを送り、筋力をアップさせていると考えらえる。
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
・マウスの実験で、正常なオスのマウスにオステオカルシンを注射すると、血液中のテストステロン濃度が大きく上昇する。
・オステオカルシンをつくれないオスのマウスと正常なメスのマウスを交配させたところ、妊娠の頻度が低下し、1回の出産で生まれる子どもの数は少なかった。
2.オステオポンチン
・造血幹細胞は赤血球、白血球、血小板などの細胞へ成長していく。その造血幹細胞の老化に関係しているのが、オステオポンチンの減少である。
・骨が放出するオステオポンチンのメッセージは「免疫をアップせよ!」である。このメッセージが造血幹細胞に届くと、造血幹細胞は活性化し、免疫細胞への分化が促進される。
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
オステオカルシンは記憶力アップ、筋力アップ、精力アップといった複数の役割をこなしている。さらに、オステオポンチンは免疫力増強作用を有する。これらはいずれも若々しさを維持、あるいは回復する働きを担っている。骨は単に体を支えるだけではなく、メッセージ物質によって全身の若さをコントロールしている。
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
3.スクレロスチン
・骨が異常に増え続ける難病である「硬結性骨化症」の患者の体内では、遺伝子の異常によってスクレロスチンというメッセージ物質が欠如している。
・スクレロスチンのメッセージは「骨をつくるのをやめよう!」というものである。
・スクレロスチンは骨粗しょう症の新しい治療薬となる可能性がある。これはスクレロスチンの働きを抑制するための、スクレロスチン阻害薬である。
衝撃が骨を強くする
●骨への衝撃が骨量を増やす
・骨は衝撃を感知すると骨の量を増やす。以下のグラフは週に6時間以上、ランニングあるいは自転車運動を行っている20~50歳代の男性のうち、骨量が低い傾向にあった人(骨粗しょう症予備群)の割合。自転車運動は、骨への衝撃という意味では座っている場合と変わらない。
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」
●骨は“人体の若さの門番”
・全身に数百億個あるとされる骨細胞は互いに結び合い、骨の中にネットワークを張り巡らせている。このネットワークで体にかかった衝撃を敏感に感知する。
・衝撃を感知した骨細胞は、「骨をつくるのをやめよう!」というブレーキ役のメッセージ物質の量を減らし、代わりに「骨をつくって!」というアクセル役のメッセージ物質を発して、骨芽細胞の数を増やす。
・骨は活動的に動いている限り、骨芽細胞からのメッセージをたくさん放出して、全身の若さを保ってくれる。
・運動後では骨量が増加するとともに、「骨をつくるのをやめよう!」というメッセージをもつスクレロスチンの量が減少する。
画像出展:「NHKスペシャル 神秘のネットワーク 人体」