パフォーマンス向上を支えるスポーツ医科学専門誌として「月刊トレーニングジャーナル」があります。今回のブログは、この「月刊トレーニングジャーナル 2016 11 No.445」の特集を題材にしています。
この専門誌の創刊は1979年であり、私が大学1年生の時になりますが当時、時々購入していました。まさか再び「トレーニングジャーナル」を購読することになるとは、びっくりです。
特集の『速さを鍛える』は次の4つの記事から構成されています。
1.「はやさ」は鍛えられるか?
2.運動と知覚の関係を考える-速さを構成する要素として
3.トレーニング指導で知っておくべく概念-速さを鍛える上で必要な要素
4.ゴルフスイングをよくするために
今回は3番目の、桂良太郎氏(日体協公認ATなど)が「トレーニング指導で知っておくべく概念-速さを鍛える上で必要な要素」の中で紹介している、「パフォーマンスピラミッド」について理解をしたいと思います。
土台となる1段目が「ファンクショナルムーブメント」、2段目が「ファンクショナルパフォーマンス」、そして3段目が「ファンクショナルスキル」となっています。「速さ」は2段目に関係しており、その「速さ」を生みだすためには、まず土台がしっかりしていることが重要です。
2段目を構成する要素としては、筋力、スピード、パワー、敏捷性などが複合的に関係しています。そして、これらの指標としては運動制御、姿勢の統合性、パワー、パワー効率性の4つがあります。以上がパフォーマンスピラミッドの概要です。
この図の2段目に含まれる「プライオメトリック」はブログ『止まれる体をつくる』にも登場したもので、そこでは「瞬発力強化、走るときではなく止まるときに重要である」という説明がされていました。
一方、「プロプリオセプション」とは固有受容感覚、いわゆるセンサーです。このセンサーによって筋肉や腱の状態を把握し正しく脳に伝え、3次元空間での体の位置などを正しく認識します。背骨は四角い骨がいくつも積み上がって、柱(脊柱)となっていますが、プロプリオセプションが働くことにより、小さな傾きも検知し脊柱を安定させます。そして脊柱を力強く支えるのは、インナーマッスルと呼ばれる腹横筋、腸腰筋、多裂筋などです。
なお、プロプリオセプションについて詳しく説明されているサイトがありましたのでご紹介します。
これは『コアスタビライゼーション 世界レベルのパフォーマンスのために』という、米国NATA公認アスレティックトレーナーの稲葉晃子氏の一連の記事の中にあります。
http://mywellnessia.com/?page_id=1395
なお、「コアスタビライゼーション」については、“上肢と下肢を繋ぐ体幹を鍛える事により、上肢から下肢まで一本化して体を使う。”と解説されています。
スタビライゼーションについては、日本タビライゼーション協会があり、その説明を引用したものが下記になります。
『スタビライゼーションとは、主働筋だけのトレーニングではなく、主働筋・協働筋・拮抗筋や補助筋群(スタビライザー)を刺激するトレーニングメソッドです。動作中、常にアライメントを意識することによりアイソメトリクスを生じさせて体幹(コア)をはじめとする体軸の安定強化が行えます。』
一通りの確認ができたので、「パフォーマンスピラミッド」を自分流に整理し、理解を深めたいと思います。
「モビリティ/スタビリティ」は「関節運動の可動性と安定性」とします。
次に「プロプリオセプション」は「体幹の強さ」とします。これが速さを支える土台になります。
この上にのる要件は「スピード」、「敏捷性」、「瞬発力」、そして「ストレングス」ですが、NSCA(National Strength and Conditioning Association)ジャパンではストレングスを「神経-筋系全体の能力」と定義しています。そして、これは拡大解釈して「適応力」とします。なお、以下のサイトに「ストレングス」についての詳しい説明が出ています。
1番上のSkillは特に「速さ」に関わる要件として、ここでは技術・戦術・予測力にしたいと思います。
完成した自己流パフォーマンスピラミッドを眺めて気づくことは、これらの要件を兼ね備えたモデルとなるサッカー選手は、インテルの長友選手だろうということです。実際、体幹トレーニングを積極的に取り入れている話は有名です。
そして、速さの追求は「止まれる体」と表裏一体となっており、特に土台となる体幹の強さ・体の柔軟性が十分に鍛えられていないと、怪我のリスクが高まります。
最後に、「スポーツ傷害調査支援システム SIRIUS(シリウス)」という非常に興味深いサイトを発見しましたのでご紹介します。
特に優れているのは「コンディショニングセルフチェックシート」という機能です。これはチームごとに専用URLを発行し、コンディショニングを選手自身で記入・送信し、セルフチェックシートをつくることができます。
更に、送信された情報を集計し、表計算ソフトでグラフ化することができるというもので、チームメンバーのコンディショニングの管理に有効です。
選手自身が客観的に自分のコンディションを定期的に意識し、スタッフが公開されたその情報を把握したうえで、トレーニングの内容を検討できることは画期的だと思います。