前回は中尾繁樹先生のDVDに関する内容でしたが、中尾先生の本も1冊は読んでおきたいと考え、『みんなの「自立活動」特別支援学校編』を拝読させて頂きました。
出版:明治図書
そして、以下の3つの章の中から自分にとって特に重要と思うポイントを洗い出してみました。
第3章 「コミュニケーション」と「人間関係の形成」
第4章 「環境の把握」と「身体の動き」
第5章 「身体の動き」と「人間関係の形成」「コミュニケーション」と「環境の認知」
第3章 「コミュニケーション」と「人間関係の形成」
様々な補助的手段の活用とコミュニケーション指導
1.自立の第一歩は自己決定すること
・欧米は障害のある子どもが自立していくための第一歩は、自己決定することであるという考え方で、何を選ぶ・どれに決めるといった自己決定する力を向上させることが重要です。
・自己決定する力に加え、決定したことを相手に伝える力が必要であり、コミュニケーションにとっても大切なことです。
2.障害があっても〇〇デキルという視点
・自己決定するためには、自分で決めたいという意欲が必要です。子どもの意欲を育てていくには、外界(人や物、状況など)に対して自ら能動的にかかわり、その活動の中で成就感や満足感を味わうことが重要だと考えられています。
・「障害があっても〇〇デキルという視点」は「何でも良いからできることを探してみよう」部分的にでもデキルことからやっていこう」という考え方です。
3.コミュニケーションを阻害する学習性無力感
・いつも感謝・依頼する立場が、感謝・依頼される立場に逆転したとき、その子の心の中には喜び以上の心の躍動が芽生えます。
4.学習性無力感を獲得させないために
・人は、ほめられる・認められる・感謝される・依頼されると、誰しも「次もがんばるぞ」といった意欲が湧いてくるものです。どんなに重要な障害があっても、能動的にオモチャにかかわって遊んだり、毎日責任をもって役割を担えたりすることは素晴らしいことですし、彼らの意欲を育てる上でたいへん重要なことです。
5.コミュニケーションの力を育てる
・Beukelman&Mirenda(David Beukelman and Pat Mirenda)は、どんなに障害が重度な子どもでも三つのサインを発信しており、それぞれのサインに対して支援者が適切に応答することが重要であると紹介しています。三つのサインのうちの一つ目は、注意探索と呼ばれるサインで、赤ん坊が泣いてお母さんの注意を引く行動のように、他者に何かを訴えたいときに使われるものです。二つ目は、受容のサインで、オモチャが動くことや大人からの働きかけといった外界の変化に対して、「満足だ、嬉しい」等の表現として、笑う・声を出すといった行動で示されます。三つ目は、拒否のサインであり、生理的に不快な状況や大人からの不適切な働きかけなどに対して、「イヤだ、不快だ」等の表現として、顔をしかめる・泣く・体をよじらせる等の行動で示されます。発信したサインに対して必ず応答があることを子どもに気づかせ、理解させるための練習が必要となります。
・Beukelman&Mirenda(David Beukelman and Pat Mirenda)は、日常生活の様々な場面の中に、次のようなルールでコミュニケーションしていくという指導方法を紹介しています。
①何らかの活動をする際に、必ず子どもの同意を求めるための働きかけまたは問いかけをする。その際、言語的な働きかけだけでなく、子どもが受容できる感覚器すべて(触覚的、視覚的あるいは聴覚的など)に働きかけるようにする。
②働きかけまたは問いかけに対する子どもの発信サインを待つ・観察する。
③子どもが発信したサインに応じて適切な応答行動をフィードバックする。
・能動的な活動を通して子どもの意欲を育てていくことと並行して、自分の意志を外に向けて発信する力を育てていくことはコミュニケーションの第一歩であり、大変重要なことです。
・子どもが受容のサインを発信しやすいのは、楽しかったり喜びが大きかったりする活動、すなわち遊びの場面だと思います。そこで、子どもの知的発達の段階に応じた様々な遊びを準備しておいて子どもたちと遊ぶようにすると良いと思います。
・選択による自己決定力を育てる
・返事を待ちましょう(最低でも10秒程度)。
・子どもを信頼し、子どもの自己決定を尊重しましょう。
・選択できる情報をすべて提示し(子どもによっては多く提示できない場合もあり)、その後で選択を求めていきましょう。
・何に対してもYesの反応をする子どももいます。一見、自己決定できているように見えますが、必ずしもそうではないこともあります。Yesの答えが得られる質問だけでなく、Noの答えを求めるような尋ね方も必要となります。
・音声を使ったコミュニケーション
・知的障害のある子どもの中にはことばを使う意味が理解できていない子どもに対し、私たちはことばや文字を身に付けさせようと一生懸命になりがちです。そのこと自体はとても大切なことなのですが、ことばは教え込まれて身に付けるものではありません。赤ん坊はいつの間にかことばを覚えて、いつの間にか使うようになっていませんか?その際、親は四六時中「さあ、このことばを覚えなさい。覚えるまで遊ばせませんよ」と言っていないはずです。したがって、ことばを使う意味が理解できていない場合には、まず、音声を使う楽しさや便利さを経験させる必要があります。例えば、命令語を録音しておいてやりとり遊びをしたり、じゃんけんことばを録音しておいてじゃんけん遊びをしたり、との応用はいくつでも考えられると思います。
6.自立と社会参加を進めるために
事例
ミネソタ州で出会ったKさん(41歳)は、脳性まひによる運動障害があり、頭を動かすこと以外は随意的に動かせる部位はありませんでした。そのために、食事や排泄、更衣、入力といった日常の生活に必要な行為すべてに全面的な介護を必要としており、州政府から24時間体制で派遣されるヘルパーにその介護を委ねています。また、発語はなく、質問されたことに対して、[頭をたてに振る=うなずき]-[頭を横に振る=いやいや]の動作によってYES/NOを相手に伝えるというコミュニケーションの状況です。
ところが、Kさんは安定した収入を得ることのできる仕事に就き、コンサートに出かけて音楽を楽しむことを趣味とし、自分で購入した家で一人暮らしをしているのです。彼女の仕事は、パソコンとインターネット技術を利用した電話オペレーターで、自宅にいながらその仕事をこなしていました。
写真は、姿勢を保持する機能をもった電動車椅子に乗ったKさんが自宅で友人と談笑している様子です。Kさんの頭に注目してください。彼女は支援機器を操作するために、ヘッドスティックとよばれる棒付きの帽子をかぶっています。話すことのできない彼女は、電動車椅子のテーブルに取り付けられたコミュニケーションエイドのキーをヘッドスティックで押しながら、友人と会話をします。このコミュニケーションエイドは、あらかじめ録音してあることばを出力する機能をもっているだけでなく、テレビやエアコンなどのリモコン機能と併せて、パソコン用のキーボードとしての機能の付加されている機器なのです。このコミュニケーションエイドとパソコンを利用して、彼女は電話オペレーターの仕事に携わっているのです。
彼女は生まれて間もない頃に重度・重複障害と診断され、10年以上もの長い期間にわたって入院を余儀なくされたそうです。その上、「無能力者(本人段)」と評価され教育からも見放されていたそうです。
そんな彼女のもとに、一人の大学生がボランティアとして本の読み聞かせをしにくるようになりました。何か月もベッドの横で読み聞かせをしているうちに、その大学生はKさんの表情の違いやほんの少し頭を動かす能力があることに気づきました。そこで、大学生は頭で押せるスイッチとブザーを作り、KさんにYES/NOで返事をしてもらう練習をはじめたそうです。すると、それまで「何もわからないし、何もできない」と評価されていたKさんが、実は簡単なことばを理解しており、頭を動かすことで返事ができるということがわかったのです。その後、彼女は病院を退院して家庭教師に勉強を教えてもらいながら様々な知識を身に付けていったそうです。
今では、電動車椅子やコミュニケーションエイドといった支援技術を駆使して収入を得ながら自立した生活を送っています。ボランティア学生が「Kさんはデキルんじゃないだろうか」と信じて、彼女の生活環境を工夫しなければ今の彼女はなかったと言っても過言はないでしょう。
Kさんの自立生活は支援技術の効果とともに、周囲の人々が「この人はデキルんだ」と評価したからこそ現実のものになったと思います。重複障害のある人への支援を考えるとき、「障害があっても〇〇デキル」という視点が今後ますます重要になってくるのではないかと思います。
画像出展:みんなの「自立活動」特別支援学校編
AAC(Augmentative and Alternative Communication;拡大代替コミュニケーション)
・話すこと・聞くこと・読むこと・書くことなどのコミュニケーションに障害のある人が、残存能力(言語・非言語問わず)とテクノロジーの活用によって、自分の意思を相手に伝える技法のことです。AACの技法の種類には、大きく分けてノンテク、ローテク、ハイテクの3つがあります。
・機能訓練だけでなく、コミュニケーション能力の向上も考慮してします。
・コミュニケーションには、コミュニケーションしようとする者同士の間に、共通して理解し合える手掛かりやルールの存在が必要です。
2017年は9月27日(水)~9月29日(金)、会場は東京ビッグサイト東展示ホールで開催されます。
上記の2つのサイトは、発達障害児向けの商品やアプリを扱っています。
これは、お母さんが息子さんのために、文房具や学用品を使いやすいように改造したお話です。すばらしいです。
第4章 「環境の把握」と「身体の動き」
知的障害のための感覚運動遊びを中心とした自立活動の実際
1.知的障害のある子どもたちの感覚運動の特徴
・子どもたちは自分なりに一生懸命取り組むのですが、なかなか思うようにできません。記憶したり、理解したり、理解したり、問題解決をする、考える、自分の意見を述べるといったことが苦手であるために意欲が高まらない原因となっていることがよくあります。これらの原因と同じように感覚運動面の問題が課題を行ううえで大きな影響を与えていることがあります。感覚運動学習とは、身体に入ってくるたくさんの感覚を適切に処理したり、姿勢・運動をコントロールすることです。感覚運動は遊びや学習に必要なレディネスであると言えます。ここでは、知的障害がある子どもたちが苦手な動きをまとめてみました。
・力を入れる運動、リズミカルな運動、巧緻運動、道具を使った動作、空間での運動
・低緊張では腕や脚で自分の体を支える筋力の動きづくりにポイントをおいた運動も大切。
第5章 「身体の動き」と「人間関係の形成」「コミュニケーション」と「環境の認知」
発達障害の子どもの運動や人間関係を高める自立活動の実際
1.発達障害について
・自閉症の乳幼児は、触覚・聴覚・視覚などの過敏傾向が強く、抱っこをしようとしても、体をのけぞらせて嫌がったりすることがよくあります。そのため、抱っこから育っていく愛着行動の形成に大きな遅れが起こってきます。
・反復的な自己刺激行動(手をひらひらさせる・クルクル回る・ピョンピョン跳ぶ等)は自閉症特有の「情報の中の雑音を除去できない」という特性も影響しています。そして、自閉症の幼児はやむを得ず「自分で一定した刺激を作り出して感覚の遮断を行い、情報の洪水に対するバリアをはる」という戦略をとります。
・「情報の洪水」の中にいた自閉症の幼児も、徐々にですが認知の焦点を合わせることができるようになります。しかし、それは一般の子どものような「自然、広く開かれた柔軟な認知」ではなく、彼ら特有の「意識的な焦点の絞込み」だと思われます。その結果、強い「過剰選択性・興味の限局(認識しやすい特定のマークや蛇口、窓などにこだわる)」を抱えやすくなります。
画像出展:みんなの「自立活動」特別支援学校編
(上下の絵も同様)
2.広汎性発達障害への対応例
・同時に複数の情報を出さない。つまり、刺激を整理し、落ち着いて認知対象に集中できる環境を設定する。(構造化)
・ゆっくりと短いことばで話しかける。
・結論を先、理由を後にするとわかりやすい。
・具体的なことばで伝える。抽象的なことばは、ジェスチャーやカードなどの視覚的情報を併用して伝える。
・スケジュールカードなどによって、活動の流れや終わりを視覚的に伝え、予測可能な生活環境を整える。
・予定の変更については慎重に行う。変更する際には、子どもが認識できるように、必ず予告を行う。
3.注意欠陥多動性障害(ADHD)への対応例
・常にひと呼吸おいて、焦らないで対応する(互いの感情のコントロールが大切)
・気が散りやすいので、学習のときは刺激を少なくして、集中しやすい環境を整える。
・「部屋を片付けて!」ではなく、「オモチャは箱にしまおう!」「脱いだ服はハンガーにかけてね!」など、より具体的な伝え方を工夫する。
・スモールステップで、少しずつ課題に取り組めるように工夫する。
・スケジュールやこれからやることを、見通しがもてるように工夫して伝える。
・「〇〇なときは、〇〇しようね!」など、事前に想定される混乱を避ける配慮をする。
・ことばだけで伝わりにくいときは、視覚に訴える支援を行う。
4.コミュニケーション・人間関係の形成について
・コミュニケーションとは「伝え手と受け手の間で、ある観念や思考が共有されている」という意味合いがあり、全体として見ると「伝達のコミュニケーション」の背後には常に「共有のコミュニケーション」が存在しています。そして、「共有のコミュニケーション」は「感情の発達・分化」「他者理解力」「ともにありたいという欲求」などの力に支えられています。
・「他者理解」には子ども実態に合わせて表情をデフォルメしてあげる方法があります
(例えば、怒った表情を顕わにしたり、少し大袈裟に喜んだり)。また、目の見えない
人や車椅子の人を介助する体験が役に立ちます。
・豊かで多様な感情を育むには「いろいろな人との密度の濃い交流」や「水や木、川や山や海、木や草や虫や動物、暑さや寒さ、息苦しさやにおい、眩しさや暗闇、土や風、といった自然との五感や身体に手ごたえのある触れ合いやかかわり」が重要で、様々な「からだ体験(においや手ごたえ、肌触りなどの身体全体で感じる体験)」に挑戦することが大切です。