今まで、本やネットにある情報に頼って自己学習してきましたが今回の題材はDVDです。中尾繁樹先生のセミナーをDVD化したもので、タイトルは「発達障害を感覚と運動の視点から捉える①②③」です。また、内容は次の通りです。
①最近の子どもたちの様子とその背景(84分)
・イントロダクション
・特別支援教育の視点
・最近の子どもたちの様子
・子どもたちの問題を捉える視点
・発達障害と学習の問題
②感覚と運動の機能(58分)
・発達障害によく見られる感覚運動機能の問題
・感覚とは
・感覚統合とは
③感覚・運動機能の臨床観察法(86分)
・日常に見られる感覚運動の問題
・ソフトサインとは
・利き側の検査
・チェックの仕方
・教室でできる臨床観察
・反応様式の評価
赤ちゃんにはバギーという快適な乗り物ができました。その結果、抱っこする機会は減りました。保育所などの数が足りないのは大きな社会問題ですが、理想の育児環境は1対1の環境だそうです。つまり、お母さんによる育児が無理であれば1対1のベビーシッターの方が望ましいようです。ここで具体的に問題となるのは「愛着行動の形成」です。これは、赤ちゃんの様々なサインに対して、お母さんがどういった受け止め方をするかで、愛着行動の形成が決まっていきます。そして、愛着行動は情緒の安定と関係していると言われています。
発達障害児には「触覚の混乱」のため、触れられることを嫌う子、苦手な子が少なくありません。マッサージは皮膚に触れ、擦ったり圧迫したり、あるいは関節を動かしたりして、触覚と固有覚に働きかける施術とも言えますので、必然的にこの問題と向き合わなければなりません。そして、この「触覚の混乱」という状態を改善することができれば、発達障害児の情緒の安定にも貢献できると考えます。
なお、今回のブログではDVDの中に出てきた、「触感覚」、「固有感覚」に関することと、それ以外の内容で覚えておきたいと思ったことを列挙しています。
触感覚に関すること
触覚の混乱
・触られるのがイヤ~な子(触覚防衛)
・人に触られるのを嫌がったり、あるいは同じ感触を好んで触り続けたりする。これは「触覚の混乱」、強迫観念が強く安心のため触り続ける行為である。
・楽しい雰囲気の時、好きな活動をしている時など、触られていることが気にならない場面を探し、苦にならない場面から慣れる。
触感覚の働き
・情緒と関係している。嫌いなもの(人)に対し、触感覚はまずは防衛的、本能的に働く。一方、それが背景にあって無意識の判断が育ってくる。触感覚が安定していないと情緒的な安定が図れない。
・環境の状況(気温、湿度などの環境状況を把握する)や他者の働きかけ(抱っこ、身体を触るなど)を知る。
・情緒の安定と発達を促す。
・ボディイメージを形成することで自分の身体の姿勢や運動を知る。
・外界に働きかけ、認知系と連動してものを識別する。
触られるのを嫌がる
・触れられるのを極端に嫌がる子どもがいる
・単に人と人との触れ合いということだけでなく、着衣の肌触りとか洗髪とか、特定のものを握るのに強い拒否反応を示す場合もある。
・触られるのを嫌がる状態や不注意・注意散漫などの特徴が同時に見られると、感覚運動機能上の問題があることが多い。
・特に過敏な子は人が近くに来ただけでビクビクしている場合もある。
・さっと触られるのが嫌いな子は「圧」をかけると良い。
触感覚の問題
・特定の触覚(特定の服、毛皮、芝生等)を嫌がったり、逆に触ることにこだわったりする。
・人から触られることを嫌がる。触られることに敏感な部位は身体の前部(顔、胸、腹など)だが、本人に見えないところ(背部)から触られると強い抵抗感を示すことが多い。
・痛みに関しては過反応(極度に痛がる)と低反応(全く痛がらない)に分かれる。極端なケースでは指が折れているのに全く痛がらない子どももいる。
・触れられた身体の部位がわからないこともある(ボディイメージの問題も関係している)。
・触られることに非常に敏感であるか、反対にくすぐられても平気な顔をしていることもある。
・人が近くにいると落ち着かない。
・わずかな痛みにとても痛そうにするか、反対に自分の打撲やけがに気づかない。
・着ている物が少しでも濡れると非常に嫌がる。
・手や足が少しでも汚れるとすぐに洗いたがる。
・砂遊び、粘土遊び、糊等を嫌がるか、反対に他の子どもよりも過度に好む。
・温度に関係なく厚着、または薄着のままでいる。
固有感覚に関すること
固有感覚の働き
・身体各部の位置や運動を知覚する。
・筋緊張を調節し、姿勢の維持と制御を自動的に行う。
・視空間認知や身体イメージを形成する
ボディイメージが付いていないと通れないところを通ろうとしてしまう。距離感がつかめないため、相手と話す適度な距離感がつかめない(ボディイメージが適切に働くと、腕を伸ばして届くか届かないかの位置関係を無意識に取る)
筋緊張
・安定姿勢状態で各関節の可動域を調べ、仰臥位、腹臥位、坐位等へ姿勢変換した時に、動的緊張がどこに入るかを観察する。
・立位、対面、児童に術者の母指を五指で強く握ってもらう。術者は児童の握った五指を包むように母指と小指で挟む感覚で掴む。この状態で全身が1本の棒になったように体を硬くしてもらう(緊張を入れてもらう)。この状態で前後の揺すった時に低緊張の箇所があれば、そこがグラグラしてしまう。応用で手押し相撲やその練習でもある程度わかる。
固有感覚と前庭感覚の問題
・転びやすかったり、簡単にバランスを崩したりしやすい
・車に酔いやすい
・ブランコなどの揺れるものを怖がる
・床の上にごろごろと寝転んでいることが多い
・動きが激しく、活発すぎる
・回転するものにどれだけ長くのっても、目が回らない
・身体全体をよく揺する、動かす
・理由もなく周囲をうろうろしたり、動き回ったりする
・椅子からずり落ちそうな座り方をする
覚えておこうと思ったこと
感覚統合とは
・人間の発達過程で、脳が内外からの刺激を有効に利用できるよう、効率的に組み合わせることを「感覚統合」といいます。脳に届く多くの感覚情報を「必要なもの」と「不要なもの」に分け、整理したり関連づけたりします。この機能により、私たちは外界の状況に対して適切に反応することができます。
・感覚統合療法をまとめた作業療法士のエアーズ(Ayers,A.J.)は、「もし脳が感覚統合してくれなかったら神経の交通渋滞で身動きできなくなる」といっています。感覚統合とは感覚情報を整理整頓すること」と考えても差し支えないと思います。
気になる言動の要因・背景を考える
・「なぜ気になる行動が起きるのか」その理由を考えてみる。
・「なぜできないのか」「どうしたらできるのか」を考える。
・背景になにがあるのかを知る。
体がシャキッとしない子(低緊張)
・揺れ(回転、直線加速)の感覚は前庭感覚、踏ん張る感覚は固有感覚がそれぞれ担う。
・支持が弱い子は「踏ん張り感」を獲得する。
画像出展:「自閉っ子の心身をラクにしよう!」
・不規則な強い揺れで体のシャキッと感を感じる(ブランコやスクーターボード、遊園地
なら、ジェットコースター)
動きが止めれない子
・自分の体をじっくり感じることのできる活動。固定点をつくる(鉄棒のぶら下がり等)。
歩くのが不安定な子(バランスが苦手)
・体の動きを調整する感覚と小脳。
・片足ずつに体重をかけてバランスをとる。(バランスの悪さの原因には筋肉の使い方による
場合もあるので、必ず筋肉もチェックする)
人とのかかわりが上手にとれない子
・コミュニケーションがうまく取れないためにトラブルが多い
・子ども相手の仕事では子どもの顔をみて、よく話を聞く。目を見るのは一瞬でよい。
・なぜ聞けないのかの視点を持つことが必要
・聞く側が別のことを考えている。
・頭が寝ている(覚醒が下がっている)。
・相手が話している内容が難しく理解できない。
・聞きたくない(こころの問題)。
・わかりやすい場面を用意する。活動の反復やゆっくりとした動きを人とのやり取りに結びつける。相手に合わせることがコミュニケーションの基礎になる。
重力(高さ)の過敏
・重力(高さ)の過敏を持っている子どもの中には5cmでも怖がる。抱っこを嫌がる子の中には、触感覚ではなく前庭感覚が問題のときもあるので注意が必要。
姿勢の維持やバランス保持の困難
・最近の子どもたちの中には、同じ姿勢を一定期間保持できない行動がよくみられ、その原因の一つに、体幹の筋緊張の低さ(低緊張)が挙げられる。このような場合、学習中安定して椅子に座ることが難しくなるため、授業に集中できず、学習が理解しにくくなることもある。さらに、粗大運動に影響したり、指の巧緻運動にも課題が出たりする。これらの背景には前庭感覚、固有感覚等の統合がうまくいっていないことが考えられる。
・背面や側面からの姿勢を見たときに、肩辺りの過度の緊張や背中の後彎、骨盤の傾き等がよく見られ、特に頭の後ろから肩甲帯にかけてある僧帽筋の動きが悪く首の動きが悪い場合がよくみられる。
・衝動的なタイプの姿勢として、骨盤が後方に倒れ、足を投げ出して座っているケースが多く、長時間の姿勢維持が難しい場合もある。比較的授業に集中しているけれども、衝動的で自分勝手な意見を多く言う場合もよくみられる。
・普段の家庭での生活も畳やソファに寝転ぶ時間が長いことも考えられる。(骨盤後傾、体幹維持機能低下させる)
・不注意や不器用なタイプは、骨盤から首にかけての筋の同時収縮が弱く、長時間の姿勢維持が難しくなる。
・バランス保持の困難はよく観察される。身体がバランスを崩して倒れそうになっても立ち直れない様子(立ち直り反応の困難)や、つまずいて転倒しても、頭を保護するために手が出ない様子(保護伸展反応の困難)が観察されることがよくある。
・片足立ちをさせるとすぐにバランスを崩す場合は、前庭覚・固有覚・視覚の統合が十分でないと考えられる。
・静止した状態の「姿勢」と動きのある「動作」の両側面から子どもの実態を見極めること大切である。
姿勢運動
・四つ這い 膝立ち
・片足立ち
・タンデム歩行(上半身が動かなければ分離できている)
運動企画(協調)
・スローモーション:手を水平から両肩にゆっくり付け、その後ゆっくり開く。(我慢できないケースでは、多動、衝動だけでなく、筋の低緊張が原因の時もある)
マッサージの課題と期待される効果
1.マッサージが楽しい、気持ちいいと思ってもらうことが第一歩!
2.関節への抵抗運動で固有感覚を感じることできる(ボディイメージ獲得にプラス)。
3.気を合わせる1対1のコミュニケーションを育成する場として利用できる。
4.後頚部、背部、骨盤部の硬さや緊張を緩めることができる。