発達障害児へのマッサージを考える#2

発達障害児のマッサージを始めていますが、早速、通常のマッサージとの違いに直面しました。それは以下の3つです。個人個人により抱えている課題も異なり、程度も様々ですが、少なくともこの3点に対しては対応が必須と考えました。なお、内容については「障害者のための絵でわかる動作法 はじめの一歩」に順じています。

著者:長田 実、渡辺 涼、宮崎 昭
「障害者のための 絵でわかる動作法 はじめの一歩」

著者:長田 実、 渡辺 涼、 宮崎 昭

イラスト:田丸 秋穂

出版会社:福村出版

絵を見ながら実践できる解説書です。プログに載せている表、イラストもすべて本書のものです。

課題1マッサージを受けることに対して不安がある。
課題2発語(会話)、聴覚の問題を含め、痛み、こり、違和感を意思表示できないことが多い。
課題3仰向け、うつ伏せ、横向きの姿勢を数十秒もじっとしていられない児童もいる。

 

それぞれの課題に対して考えた対策をご説明します。

 

対策1
本の中に「訓練の進め方」が書かれています。本の対象は「動作法による訓練」なので、マッサージの施術とは同じではありませんが、たいへん参考になります。下記がマッサージ用に考えた手順とポイントになります。
準備状態を整える
 ・施術は自然な位置関係と無理のない姿勢が大切です。施術者自身の姿勢と気持ちを
安定させることも必要です。
 ・施術を始める前に、部位や方向、強さをわかりやすく伝えることが大切です。特に関節を
動かす場合は、施術者自身が動かせて見せることも有効です。また、動かしていく時も戻す時も「ゆっくりそっと」が原則です
施術の開始を明確にする
 ・施術を始める時には「さぁ、やるよ」と声をかけます。なお、児童が落ち着かない場合は、
あわてず、受け入れてくれるまで待って、気持ちを合わせて始めます
児童の抵抗や緊張を感じる
 ・施術者に伝わってくる児童の微妙な抵抗感に「気づく」ことが大切で、緊張があると
いうことを察知します。この場合、急がないこと、施術者自身が緊張しないことが基本す。施術中は、日常よりもアイコンタクトしやすいので、なるべく心がけるようにしますが、じっと見るのではなく、短く軽いアイコンタクトを心がけます
動作の終わりを明確にする
 ・施術によりますが、関節の他動運動などでは回数を伝えることが必要です。また、気持ち
良い感覚をもって施術を終えることができるように意識します

 

対策2a
児童自からが意思表示することが困難であるとすれば、まず必要なことは、児童の心身の特徴や
題をよく知ることだと思います。本には「フェイスシート」と呼ぶフォームが掲載されています。また、特に「からだ」の状態は「状態像をみる姿勢」として、イラストが示されています。
これらは現場で大いに役に立つと考え、パソコンでデータ入力をできるようにするため、ファイルを作成しました。

フェイスシート
フェイスシート

青字は本に書かれていた各項目の記述ポイントです。フォームの情報は高度な個人情報になりますので、パスワード管理をはじめ、必要な対策を取ります。

対策2b
児童の状態を把握するため4つの姿勢をとってもらい、不自然な箇所、緊張の強いところ、緊張の弱いところなどを確認します。ここで確認できた箇所は施術の重点ポイントと考え検討します。

状態像
状態像

下段の図に同じ内容を書き出しています。

対策3 
座ればじっとしていられる場合は座位にて施術を行いますが、マットの上、椅子、年少者であれば施術者の足の上に腰掛けさせるなど、安定した姿勢を取ります。

児童は床にあぐらで座ります。術者はその背後から頚、肩、頭にマッサージを行います。

児童の大腿部を固定し、躯幹を捻ります。これは体幹と股間をリラックスさせます。

足首の軟らかさは立位の安定に関係する重要な個所です。この図では椅子を使っています。

この図も足首を緩めています。年少者であれば施術者の足の上に座らせる方法もあります。

手や手指へのマッサージは脳を活性化します。向い合って行う際、短いアイコンタクトを心がけます。

施術は、「緊張から解放されリラックスできること、リラックスした心と体の状態を感じてもらうこと、そして共有すること」を一つの目標にしていきます。