グリア細胞2

著者:R・ダグラス・フィールド

監訳者:小西史朗

訳者:小松佳代子

発行:2018年4月

出版:講談社

第4章 脳腫瘍―ニューロンはほぼ無関係

・脳腫瘍はすべてが悪質ではないか、一般的には致死性が最も高い癌の部類に属している。

・脳腫瘍は脳内のどこにもでも発生し、腫瘍に伴う初期症状は脳が担っている機能と同じように多種多様である。最も多い初発症状は頭痛と疲労感であるが、腫瘍の発生部位によっては、視力や発話、起立や歩行に関する問題や、人格や心理状態の変化などもある。

・優秀な脳外科医は、症状からそれを司る脳の領域を割り出す方法で、脳内のどこに腫瘍があるのかを把握することはできる。

・癌細胞の特徴は制御不能な細胞分裂の暴走であるが、通常、細胞分裂は非常に複雑に調節されているので、その制御過程に複数の不具合が起こらない限り、細胞分裂の暴走は起きない。

・癌は遺伝的および環境的危険因子が複合的に働いた結果として生じる。

腫瘍の種類

・脳にできる癌のほとんどがグリア細胞から生じる。

・脳の発達期、ニューロンが未成熟な乳幼児以外の、成熟ニューロンに関しては細胞分裂しないので癌化はしない。ただし、髄膜細胞や上衣細胞はグリアと同じく細胞分裂するので腫瘍を生じるが、大多数の脳腫瘍は異常をきたしたグリア細胞である。末梢神経の腫瘍もグリア細胞であるシュワン細胞に由来する場合が多い。

・女性に比べ男性の方が悪性の脳腫瘍に罹りやすいが、脳と髄膜にできる良性腫瘍は女性の方がはるかに多く、約20倍と言われている。

第5章 脳と脊髄の損傷

脊髄に対する細胞応答

・『軸索が切断されると、ニューロンはすぐに死滅し始める。細胞体が損傷個所から離れたところにあって無傷でも、それは変わらない。これは自然死ではなく、いわば細胞の自殺であることがわかっている。ニューロンは、通常支配している標的から切り離されると、細胞体内の遺伝子が活性化して、自己破壊を開始する。自己破壊を引き起こす遺伝子を妨害するように操作した変異遺伝子を持つ動物では、軸索が切断されても、ニューロンは死なない。残された貴重なニューロンが、このような集団自殺をするのはなぜだろう?

この不可解なニューロンの大量死は、切断された軸索が結合していた細胞、たとえば筋線維や皮膚細胞、あるいはもとの神経回路内の次のニューロンなどから、成長を刺激するタンパク質が放出されていることに関係している。胎生期には、このタンパク質は、神経終末から取り込まれて細胞体へと送られることによって安定的に供給され、細胞全体が正常に機能していることを、そのニューロンに知らせている。しかし発達期には、正確な数のニューロンが生成され、結合を必要としている細胞の適正な数に釣り合うよう調整されたうえで、各ニューロンがそれぞれ適切な標的のもとへ、軸索を長く伸ばしていかなくてはならない。道筋を間違えて、正しい接合地点にたどり着けなかったニューロンは、生存に欠かせないこの成長因子タンパク質を取り込めないので、子宮の中で脳が形成されている間に死滅する。このメカニズムは、私たちの神経系を適正に配線し、誤った経路をたどった接続を排除する非常に有効な方法だ。だが、軸索が押しつぶされたり、切断されたりすると、シナプスの適切な接合地点で放出された成長因子タンパク質は、細胞体までたどり着けなくなる。軌道を外れたロケットと同じく、もはや正しい軌道に乗っていないことに気づいたニューロンは、自己破壊のメカニズムを活性化するのだ。

だが、細胞が死に向かいつつあるときでさえ、治癒と修復のプロセスを開始する別のメカニズムが活性化されている。受傷部位にあるニューロンの一部は、切断あるいは粉砕された軸索の末端を塞いで、長い間休眠状態にあった遺伝子群を再活性化する遺伝プログラムを起動させる。この遺伝子は、そのニューロンが最初に軸索を伸ばして全身に配線を巡らせた胎生期に機能したのを最後に、休止していたものだ。この遺伝子は、軸索を発芽させるタンパク質を産生し、発芽した軸索は適切な標的を探し求めて伸長し始める。

損傷したにもかかわらず、こうしたニューロンが自己破壊を起こさないのは何故だろう? その理由のひとつに、アストロサイトとミクログリアがこの再生期に、ニューロンを生存させる神経栄養因子を放出することが挙げられる。神経栄養因子となるタンパク質の一部は、標的細胞から放出されていた成長刺激物質と同一の物質だ。受傷部位で神経栄養因子を放出することによって、アストロサイトは損傷したニューロンの死滅を防ぎ、軸索の発芽を促進する。アストロサイトは同時に、タンパク性の血管新生因子も放出し始めて、損傷した組織の生存に欠かせない栄養と酸素を送り込むための新しい血液の成長を刺激する。

オリゴデンドロサイトは、再び若々しい状態を取り戻し、細胞分裂を開始する。この若返った細胞は、損傷領域に移動してきたオリゴデンドロサイトとともに、細胞性触手を伸ばして、損傷してむき出しになっている軸索に、できるだけ多く絡みつく。その後すぐに、それらの細胞は軸索の周囲にミエリンを何層にも巻きつけて、絶縁を修復する。軸索はこのミエリン再形成によって、受傷後にミエリン鞘が損傷したせいで失われていた電気的インパルスを伝導する能力を取り戻す。オリゴデンドロサイトが軸索のミエリン鞘を修復するにつれて、患者は一部の感覚や運動能が以前より少し回復してきたように感じ始めるが、まだ麻痺は残る。

しかし、生き残った軸索が新しい分枝を発芽して、もとの結合部位を探し始めても、その途中で受傷部位まで来ると、伸長はそこで止まってしまう。その結果、麻痺は一生続くことになる。これがもし、腕や脚の神経を損傷したのならば、軸索は順調に伸び続けて、ついには筋肉上の適正な結合点を見つけ出すだろう。全身の知覚神経線維も、痛覚や触覚、温度、圧覚をはじめとする外界からの感覚を脳へ運ぶ回路と再結合することになる。だが、脊髄や脳が損傷した場合、発芽しながら再結合を目指す軸索の果敢な挑戦は、失敗に終わる。』

グリアの二面性―麻痺の原因とも、治療ともなる

・『中枢神経系に末梢神経を接合するという実験は、麻痺の治療法を模索するうえで、貴重で有望な情報をもたらしたが、この技術は実用的な治療法とはなりえない。中枢神経系はきわめて繊細で微小なうえ、複雑なので、このような荒っぽい継ぎはぎ手法では修復できない。麻痺の治療に向けた最も合理的なアプローチは、軸索再生をシュワン細胞がどう支援しているのか、そしてミクログリアやアストロサイト、オリゴデンドロサイトがそれをどう阻害しているのかを解明することだろう。

Nogoだけでない

・科学者はニューロンだけに関心を向けていたが、現在では、学習や精神障害、情報処理、意識などに関する新しい洞察がミエリンから得られている。

酸素―虫が食い、さびが付く地上

・酸素は我々の細胞のタンパク質や酵素、DNAをゆっくりと蝕んで弱らせ、ついには崩壊させる―これが、これがいわゆる老衰死である。

・酸素は他の原子から電子を盗み取ることによって害を及ぼし、分子を奪われた細胞はダメージを受ける。この酸化を食い止める化学物質は抗酸化物質と呼ばれる。

・健康食品としても注目されている抗酸化化合物は、体内の酸化による燃焼の炎を、安全なレベルにまで冷却してくれるが、我々の体内には健康食品とは比べ物にならないような抗酸化物質がたくさん存在している。なかでも特に効果的な生体内抗酸化物質のひとつがグルタチオンで、細胞の命を救うこの化合物が最も高い濃度で詰め込まれているのが、グリア、とりわけアストロサイトである。

・アストロサイトから放出される抗酸化物質は、神経変性疾患や癌、老化に対する身体の主要な防衛手段のひとつである。

第6章 感染

プリオン病―ニューロンを超えた探索

・現在では、プリオン病はニューロンの病気であると同時に、グリアの病気であることが明確になっている。もし、グリアの関りが発見されていたら、プリオン病の原因と治療の探求ははるか先まで進んでいたであろう。

・アストロサイトはプリオン病による脳の損傷に対応する一方、ニューロン死の一因にもなっている。

・アストロサイトはプリオンタンパク質を複製して、プリオン病におけるアミロイド斑の形成に一役買っている。

・異常プリオンに感染したアストロサイトは、サイトカインをはじめとする神経毒性のある物質を放出するうえ、ニューロン周辺のグルタミン酸を正常レベルに維持する能力も損なわれる。その結果、ニューロン死が起こる。 

・アストロサイトはオリゴデンドロサイトとも相互作用する。オリゴデンドロサイトが侵されると、軸索を絶縁しているミエリン鞘が損傷を受ける。

・プリオン感染に応答したミクログリアは、ニューロンを死滅させる有害分子(サイトカイン、活性酸素、タンパク質分解酵素、補体タンパク質など)を産生する。

・異常型プリオンタンパク質で活性化された、ミクログリアはアストロサイトに損傷応答を引き起こす物質も放出して、アストロサイトの細胞分裂を促進している。したがって、プリオン病における病理的変化の開始には、ミクログリアが重要な役割を担っていると考えられる。

・『ミクログリアはさらに、プリオン病の診断にも活用できるだろう。プリオン感染に応答したミクログリアは、はっきりと識別できる細胞変化を起こすので、適切な診断技術を用いれば、このような形質転換を検出することができる。血球数の変化をモニターすることで、体内の感染症の種類と重症度を医師が判断できるように、ミクログリアの変化を注意深くモニターすれば、脳内の感染症に関する重要な知見が得られるだろうことは、容易に想像できる。』

現代の黒死病(ペスト)―HIVとグリア

・神経系を攻撃するウィルスの種類は多い。よく知られているのは、ポリオとヘルペスの二つで前者は麻痺を引き起こし、後者は口唇や性器周辺部に痛みを伴う水泡を生じる。

・ポリオウィルスは、脊髄の運動ニューロンに選択的に感染し、それを殺して、患者に麻痺を起こす。思考力や判断力は清明なままだが、神経を通した脳からの指令が筋肉に届かず、通信経路が切断されることによって、筋肉はやせ細ってしまう。脚へと伸びる運動ニューロンがポリオウィルスに侵された場合、患者は車椅子生活を余儀なくされる。

・ヘルペスは感覚ニューロンに感染する。ヘルペス感染も根治できず、このウィルスは感覚ニューロンに永久に居座り、患者の生涯を通じて尽きることなくウィルスを産生し、ときおり急に感染症状を引き起こす。単純ヘルペスウィルス2型は、下半身に発症し、単純ヘルペスウィルス1型は、よく知られた痛みを伴う水泡を口唇に生じさせる。

・『HIV患者のウィルスが感染するのは、どういった種類のニューロンなのだろうか? HIVウィルスはどのようにニューロンに侵入するのか? ヘルペスウィルスのように、神経終末から軸索伝いに細胞体に忍び寄るのだろうか、それとも、樹状突起や細胞体の表面だけにあるタンパク質を攻撃するのだろうか?

部検の結果、脳はHIVによる嚢胞でハチの巣状に破壊されていて、あとにはニューロンの荒れ地が残されることが判明した。ところがほどなく、研究者たちはHIVウィルスがニューロンにまったく感染していないことを見出した。HIVが感染するのは、グリアだったのだ。』

第7章 心の健康(メンタルヘルス)―グリア、精神疾患の隠れた相棒

統合失調症とうつ病―新たな理解

・『統合失調症は、正常脳とは物質的に異なっている場合がある。この相違の原因が、発達障害にあるのか、精神の乱れた活動パターンによる損傷にあるのか、あるいは精神のバランスを少しでも回復させるために何年も摂取していた薬物にあるのかは定かでないが、この三つの理由すべてが、統合失調症脳の物質的変化に関与している可能性がきわめて高い。

統合失調症患者の脳では、一部の領域における萎縮と、脳中心部にある髄液で満たされた脳室の拡大がしばしば認められる。消失組織の一部はニューロンだが、大半はグリアだ。この脳組織の減少は、精神疾患の結果なのだろうか、それとも原因なのだろうか?

統合失調症患者の多くの遺伝子異常が存在することを突き止めた最近の発見が、この問題にひとつの答えを提示している。この驚くべき発見は、ヒトゲノム配列の解読を進めるために開発された技術であるDNAチップ解析によって生まれた。この最新の手法を用いれば、一度に何千もの遺伝子を調べることができる。研究者はこれまで、ある病気に関係している可能性のある遺伝子を調べるためには、まずどの遺伝子かを推定してから、その遺伝子を個別に検査しなくてはならなかった。ところが今では、大きな集団の人々から得た何千もの遺伝子を一度に検査し、そのデータをふるいにかけて選別すると、患者間で共通する異常な遺伝子欠損を探し出すことができる。統合失調症とうつ病に関して、この無作為の検索から、思いがけない事実が判明した。

この広範な調査によって発見された遺伝子異常の一部は、理に適ったものだった。というのも、神経伝達物質の機能を制御している遺伝子だったからだ。しかし、探し当てられた異常遺伝子のなかには、まったく予期しなかったものも含まれていた。統合失調症や大うつ病で異常が見つかった遺伝子群のなかでも、大きな比重を占めるカテゴリーのひとつが、オリゴデンドロサイトの発達およびミエリン形成も調節している遺伝子だったのだ。

・『科学者たちが「もうひとつの脳」の探求を進めるにつれて、正常な脳の働きについての理解が拡大している。それと同時に、精神疾患に罹った脳で起こる機能不全に関するまったく新しい見識が、明確になりつつある。興味深いことに、こうした洞察は新発見ではなく、むしろ驚くべき再発見と言える類のものなのだ。』

グリアを標的とした精神疾患治療薬

・統合失調症患者で異常に発現する遺伝子のひとつは、成長因子であるニューレグリンをコードしている。この成長因子はミエリン形成グリアの発達を調節することは知られており、今では多くの神経科学者が統合失調症とグリアとの関連性について注目している。

・グリアが広範な精神障害における重要性は以前から認知されてきた。パーキンソン病やアルツハイマー病、ALS、ハンチントン病などの神経変性疾患はニューロンの死によって起こる。これらの疾患においてグリアは味方とも敵ともなると、現在では理解されている。

第8章 神経変性疾患

・アストロサイトは、精神疾患の相棒として強力な役割を果たしている。

・アストロサイトは、ニューロンの電力源(カリウムイオン)を調節し、シナプスから神経伝達物質を吸収しては放出し、成長因子を放出してニューロン損傷に応答し、ニューロン新生を促している。そして、こうした機能によって、アルツハイマー病やパーキンソン病、その他の神経変性疾患において、さらには脳損傷からの回復を支援する場合にも、ニューロンの生死を決する大きな影響力を発揮している。

筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリック病)

・ALSは運動ニューロンだけを狙い撃ちして麻痺を引き起こすが、そのメカニズムは謎である。

・ALSは何の前触れもなく襲ってきて、通常は成人になって突然発症する。

多発性硬化症―グリア戦争に伴う二次的な損害

・多発性硬化症の原因は、脳の通信回路がショートすることにある。感覚器官から発せられたインパルスは脳に届かず、脳からの指令は筋肉へと伸びる神経軸索の絶縁が途切れた場所を通過できなくなっている。

・多発性硬化症の機能不全は広範囲に生じる。脳回路のどの部分が損傷したかによって、現れる症状は千差万別である。

・多発性硬化症が致命的になることはまれであるが、寛解を繰り返すという特徴がある。また、症状は一時的なものから重篤な進行性のものまで幅広い。原因は自分自身の免疫の暴走と考えられている。

・多発性硬化症はニューロンではなく、脳炎症から最終的にミエリンの破壊につながる、そして病気が続けばミエリン生成細胞であるオリゴデンドロサイトが死ぬことになる。

心臓発作と脳卒中―不十分な配管システム

・脳には血流と脳細胞の間で特別に進化した細胞性インターフェースがある。この細胞性インターフェースは神経血管ユニットと呼ばれている。

脳と血液の間の分子交換はすべて、この神経血管インターフェースを介して行われる。脳細胞に送られる酸素量は、今まさに活動している特定の脳細胞で刻々と変化する需要に釣り合っていなくてはならない。また、脳の働きによって生じる老廃物は、過酷な状況下でどれほど速く蓄積するとしても、迅速に除去しなくてはならない。栄養や薬物、ホルモンは、適宜血液と脳の境界を通過する必要があるが、脳を浸している特別な細胞外液は、清掃な状態に維持され、全身の体液から隔絶されていなくてはならない。

・血液や脳の間の栄養や老廃物、酸素の移動を監視し、調節し、適正化するシステムを考案するには、精緻で複雑なセンサー群を組み込んだプロセッサーや交換器が必要である。これを実現するのが脳の血管壁に存在する細胞と、ニューロンの変動する需要を監視してそれに対応している細胞間における、微細な協力関係の上に成り立っている。後者は「血管周囲アストロサイト」と呼ばれている。

思考とは何か

・ここ二、三年の間に、アストロサイトが近傍のニューロンの神経活動を感知して、脳内の細い血管を拡張あるいは収縮させる分子を放出していることを示す発見が相次いでいる。ニューロン-アストロサイト-血管間のこうしたコミュニケーションが行われている様子を、生きたマウスやラットの脳で実際に見ながら研究することに、科学者たちは成功している。

ニューロン-グリア相互作用は、医療応用にとっても多くの重要な示唆を含んでいる。脳発作や多くの神経変性疾患に対する脳の応答には、血流の局所的変化が関与しており、このプロセスの重要な調整因子として働いている細胞がアストロサイトであることは科学者の間でよく知られている。

パーキンソン病治療におけるアストロサイト

・神経変性疾患には、必ずグリア応答が伴っている。しかし、グリア細胞をニューロンの使用人と捉える見解が支配的だったせいで、グリアがニューロン死に応答しているのではなく、その根本原因である可能性に多くの科学者は思い至らなかった。

第9章 グリアと痛み―恩恵と災禍

痛みが病気になるとき―慢性疼痛におけるグリア

ミクログリアとアストロサイトは、傷害後に多くの重要な機能を担っている。

ミクログリアの神経損傷を感知する仕組みや、損傷、治癒、さらには慢性疼痛発症の過程で、ミクログリアの多種多様な応答を制御しているメカニズムの詳細を明らかにすることができれば、新しい慢性疼痛の薬の開発につながるだろう。

ニューロンが損傷したときのシグナルの中に、フラクタルカインという物質がある。この分子はニューロンの表面にあり、傷害を受けると非常事態を知らせる。ミクログリアは、フラクタルカインによる非常事態を感知する特別な受容体を持っており、感知したミクログリアは損傷部位へと急行し、その領域にサイトカインを浴びせかける。この反応は通常、傷が治るのに伴って数週間で消えるが、ときにミクログリアがサイトカインの放出を止めない場合がある。この場合、傷は癒えても痛みを伴う炎症反応は続く。