デンマークのスマートシティ2

著者:中島健祐

発行:2019年12月

出版:学芸出版社

目次は”デンマークのスマートシティ1”を参照ください。

3.共生と共創の精神

資源と産業のない貧しい国

・デンマークは1950年以前、北ヨーロッパの田舎で、天然資源は少なく、土壌も痩せて農業には適さないなど、かなり過酷な条件の揃った国であった。寒さと飢えで亡くなる人々も多く、アンデルセンのマッチ売りの少女さながらの現実が19世紀にはあった。デンマークで共生と共創の精神が根づいているのは、こうした厳しい環境と関係している。

画像出展:「マッチ売りの少女

 ・現在のデンマークは小資源国であっても十分大国と渡りあえることを証明している。ソフトウェアや人工知能、量子コンピュータの開発で、物量ではアメリカや中国には適わないが、質の面では世界トップクラスの水準となっており、マイクロソフトは2017年に量子コンピュータの研究センターをコペンハーゲン大学のニールス・ボーア研究所に開設している。

画像出展:「デンマークのスマートシティ」

ニールス・ボーア研究所 

 ・デンマークは既に再生可能エネルギー大国である。既に国内の消費電力のうち約40%が風力発電により賄われ、2050年には脱化石燃料の国家を宣言している。

※ご参考:“デンマーク、2050年までに化石燃料脱却を目指す「エネルギー戦略2050」を発表

・デンマークの国教は福音ルーテル派だが、日常生活と宗教は密接に結びついておらず、日曜日に礼拝に行く慣習は特にない。宗教より「ヤンテの掟」のように、倫理や道徳の教育がデンマーク人の精神に根づいている。

北欧の気候風土とヒュッゲ

・デンマークは北緯55度に位置し、北海道の稚内(北緯45度)より北に位置してるが、暖流であるメキシコ湾流の影響で高緯度の割に気候は穏やかで、寒い日でも氷点下10℃程である。また、比較的四季もはっきりしている。

・夏の日没は午後10時、冬は日の出が午前8時半過ぎ、日没は午後4時前なので、通勤、通学時は日が落ちて真っ暗である。

・こうした気候風土の中で育まれた文化が「ヒュッゲ」である。これは日本では正月に家族や親戚が集まり、お節料理やお酒を飲んで、ゆっくりとくつろぐ時間のようなものである。

画像出展:「デンマークのスマートシティ」

 4.課題解決力を伸ばす教育

教育システムのしくみ

・デンマークは先進国の中で教育費支出が高い国の一つである。

・デンマークにおける教育の目的は、「人格形成を平等に行い、社会の一員として責任を持ち義務を遂行し社会に貢献できる能力を育むこと」とされている。また、生徒の社会的背景、特に経済的かつ身体的状況に配慮し、差別をなくして1人1人の個性を尊重し、個々の能力を伸ばすことに力を入れている。

※ご参考:“世界の公的教育費対GDP比率 国別ランキング・推移” (先進国以外も対象)

 ・デンマーク:21位

 ・日本:121位

教えるのではなく、導く教育

・重視しているのは知識より、社会を作る上で必要な人格形成、人間性の向上など、日本では大人になってから考え始めるような人生哲学に力を入れている。これはニコライ・F・S・グルントヴィの思想が大きく影響している。学ぶ者には学ぶことへの内側から湧き出る動機が必要であるとしている教師は生徒との自由な対話によって、若者に気づきを与える教育が大切であるとした

直観力の育成

人間力育成に加えて、課題解決力の育成にも力を入れている。これには問題の本質を見極めて効率的にかつ公平に、最短で解決策を見出す教育に保育園から取り組んでいる。

・「森の幼稚園」では、自然と触れ合うことは人間としての感性と直感力を育て、国際的に重視されているSTEM教育(科学・技術・工学・数学教育の総称)の基礎となる自分で考え理解する力を養うことになる。

『全ての子ども達にたっぷりの愛と自然とのふれあいを。子育てを支え合い、喜びに満ちあふれた社会の実現を目指します。子ども達よ、命の根っこを輝かそう。森で、海で、里で、この空の下で。』

 問題解決力の育成

問題解決力は、対話によるコミュニケーション力と、自ら目標をたて実行する自立力がベースになっている。

・コミュニケーション力を養う教育としては、中学生の生徒同士で議論してコンセンサスを得る能力を磨く機会がたくさんある。そのために必要なことは、異なる価値観を持つ仲間と共同作業を行う力、得られたコンセンサスを皆の前で発表し共感を得る力、必要な情報を自分で収集できる力で、その方法を学習していく。

・デンマーク人は学校でも家庭でも生まれた時から1人の個人として尊重され、自分の考えで物事を決めることを求められる。こうした特性は小学生の間に培われるが、中学生になると個人と社会との関りを学び、また複雑な関係を調和されることが問われる。

 5.働きやすい環境

非学歴社会

・デンマークでは学歴を問われることはない。そもそもデンマークでは日本のように一斉に行われる大学入試や就職試験はない。大学を卒業するのも、社会に出るのも人によってバラバラで、各個人の価値観、人生計画に応じて組み立てられる。

企業においても日本の会社に見られるような、有望な部下を意図的に引き上げることはなく、ポストは広く内外に募集されるので、派閥がつくられることもない。個の自立を重視してきたデンマークでは、日本のように同質性の社会システムにみられる閉鎖的な決定プロセスはなく、フラットで公平なしくみが息づいている。

生産性の高い働き方

・デンマークでは先進国の中でも労働時間の少ない国の一つである。一般的には8時に出社し16時には退社する。大抵の職場でフレックス制度が導入されているので、自由度がとても高い。

・デンマーク人は家庭で過ごす時間を大切にしているので、仕事を効率的に仕上げて自宅に帰る人が一般的である。デンマークの企業で毎日18時まで職場に残っていると、能力のない人材と思われてしまうだろう。

・労働時間の縛りはないが、仕事のパフォーマンスが厳しく問われる。与えられた目標を達成することは当たり前で、職種によってはそこに付加価値と革新性が加えられているかが評価のポイントになる。パフォーマンスが低い者はすぐに解雇されることもある。

会議では、議題を事前に設定し参加者全員が意見を述べる。基本的に持ち帰ることはしないで、参加している者のコンセンサスをまとめてその場で意思決定をすることが求められる。参加しているものが決定権を持っているので、たとえ役員の代理で新入社員が参加して最終決定をした場合でも、その社員の決断が尊重される。

フレキュシリティ

「フレキュシリティ」とは、「flexibility」(柔軟性)と「security」(安全性)を組み合わせた造語で、柔軟な労働マーケットと労働に対する社会保障を組み合わせた政策のことである。

・デンマークでは仕事の成果が出ないとすぐに解雇されることもある。しかし、労働者が慌てることがないのは、このフレキュシリティ政策があることも背景の一因である。

・フレキュシリティモデルは、①労働市場の柔軟性、②所得補償、③効果的な労働市場政策を組み合わせた形でゴールデントライアングルとも呼ばれている。

※ご参考:“フレキシキュリティとは?意味や効果、デンマークやオランダの事例を詳しく解説

画像出展:「デンマークのスマートシティ」

 

・労働市場の柔軟性は、雇用主が雇用と解雇をやりやすくすることで、労働力の構成を柔軟に変更でき、経済情勢や産業構造の変化に迅速に対応した組織を再構築することができる。従って、デンマークでは産業としては衰退しているにもかかわらず、雇用を守るために存続するゾンビ企業はほとんどない。

・簡単に解雇されるリスクがあるということは労働者にとっては不安要因である。そこで、失業者には最長2年間の所得補償が失業保険ファンドから支給される。特に低所得者層への支援は厚く、最大で前職給与の90%が支給される。

・効果的な労働市場政策は、社会保障制度の中でも特に重要な位置づけにあり、本政策に関する政府の支出はGDP比3.7%(2012年の実績値)にも達している。目的は、柔軟な労働市場が機能するための施策を打つことであり、失業者の再教育、転職の支援など多岐にわたっている。この失業者の再教育システムは実にうまく機能している。

・再教育は進捗状況を含めてかなり細かくかつ定時的にレポートを提出することが求められ、内容も逐次精査される。このため多くの人は再教育よりも企業で働くことを望むことになる。

デンマークの格差を是正するシステムは、単に手厚い支援を提供するだけでなく、国民の税金を使うだけの義務と厳しさが緻密に組み込まれていることが、うまく機能している理由の一つである。

6.格差がないからこそ起こること

高齢者は尊敬されない

・首相や大臣経験者、大企業の社長でも引退してしまえばただの高齢者になる。日本のように引退後に名誉顧問になり会社に残ることもなければ、財界活動に参加して過去の栄光で影響力を及ぼすこともない。デンマークでは高齢者という理由では特別尊敬もされない。

女性の方が強い

・女性の進出が進む社会では、生活するうえで男性に依存する必要がないので離婚がかなり多い。

・デンマーク人の結婚に至るパターンは、女性が男性をつかまえて、まず同棲しお互いの相性が良いと結婚するが、離婚する場合は女性が男性を捨てることが多い。

難民増加による右翼化の動き

・デンマークは移民を受け入れてきたが、最近は右寄りの論調が増えてきている。中東からの移民増加の影響もあり、人口に占める移民の比率は12.39%(2020年)になっている。

・人々の間では移民は仕事をしないで北欧の福祉制度にタダ乗りしているとの不満が高まっている。

北欧諸国は民主主義、平等、博愛という理念のもとに福祉政策を進めてきたが、移民の増加と社会保障支出の問題が複雑に絡みあい、今のところすべての利害関係者を納得させる解決策を見出せてない。将来的に格差のない社会システムを維持する上で、デンマークも大きな課題を抱えている。

2章 サステイナブルな都市デザイン

1.2050年に再生可能エネルギー100%の社会を実現

脱炭素化が加速する要因

・2050年までに世界で保有している化石燃料の80%を燃やせないというカーボンニュートラルが大きく関係している。

再生可能エネルギーの発電コストが大幅に低下している。2010年~2017年の7年間で太陽光は73%、陸上風力は23%低下した。洋上発電も欧州のセントラル方式による入札、開発プロジェクトの大型化、風力発電の大型化、技術力の強化などにより大幅なコストの低下と開発リスクの低減を実現している。

エネルギー戦略2050の策定

・デンマークは2011年、2050年までに化石燃料からの完全な脱却を目指す「エネルギー戦略2050(Energy Strategy 2050)」を公表した。

・エネルギー戦略の背景として、近い将来、アジアを中心とした新興国の経済発展に伴うエネルギー需要の増加から、石油や石炭などの化石燃料の価格が上昇することが見込まれていたことがある。資源のないデンマークでは価格高騰や自国では制御が難しい外部リスクを取り除く必要があった。

社会に実装するための緻密なデザイン

・エネルギー戦略2050について、小国ゆえに策定できたのだろうとの見方があるが、たとえ小規模でも国家が方向性を大転換し、新しいイニシアチブを発揮することは容易なことではない。そのために、数年かけて政治家、行政関係者、研究者が戦略の実行可能性について検討を重ねてきた。

・エネルギー戦略2050は、①再生可能エネルギー、②エネルギー効率、③電化、④研究開発と実証、の4つから構成されており、それぞれ詳細な分析に基づく行動計画が定められている。また、戦略を確実に実行するための原則としくみが組み込まれている。

1970年代からのエネルギー政策

・デンマークでは1973年の第一次オイルショックをきっかけに、1985年に原子力発電に依存しないエネルギー計画を国会で決議し、風力発電による再生可能エネルギーを導入するなど段階的に取り組んできた。

2.サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進

EUで加速する循環型経済

・サーキュラ―エコノミー(循環型経済)とはリサイクルや産業廃棄物削減を狙った施策であるが、デンマークはEUと連携して積極的な取り組みを行っている。

デンマークのポテンシャル

・サーキュラ―エコノミーの定義は次のようなものである。

「サーキュラーエコノミーは、デザインにより再生、再利用するしくみであり、製品とそれを構成する部品、原材料を技術的なものと生物学的なサイクルとに区別しながら、その価値と利用可能性を最も高い水準で維持すること」

民間主導のビジネスモデル

・デンマークでは、民間企業が政府を引っ張る形で積極的にサーキュラーエコノミーに対応したビジネスを展開している。サーキュラーエコノミーを収益力もあり、持続可能な解決策にするためには、製品のデザイン段階からサーキュラーエコノミーの原則を組み込んだアプローチが重要であり、若手のデザイナーを中心にサーキュラーデザインの活動が進んでいる。

※ご参考:“DANSK SYMBIOCENTER

※ご参考:“サーキュラーエコノミーとは

画像出展:「デンマークのスマートシティ」

 

3.世界有数の自転車都市

コペンハーゲンの自転車政策

・デンマークはオランダと並んで自転車大国として知られている。コペンハーゲンの市民の通勤・通学の41%(2017年)が自転車を利用している。

・コペンハーゲン市は技術・環境市長が主導し、サイクリストにとって世界で最も優れた都市になることを目標にしている。

自転車スーパーハイウエイの整備

・総延長467㎞(2018年時点)の「自転車スーパーハイウエイ」が整備された。コペンハーゲンでは5㎞未満の移動では60%の市民が自転車を利用するが、5㎞を超えた途端にその比率は20%以下に下がる。この数値を引き上げるためハイウエイの新線が追加された。

※ご参考:“グリーンな社会目指すデンマーク 自転車ハイウェイとIoT

※ご参考:“海外事例研究 | コペンハーゲンのサイクリング都市化における交通データ利活用

画像出展:「デンマークのスマートシティ」

 

自転車走行速度を統一するグリーンウェーブ

・高性能な信号機を導入し、時速20㎞で走行すれば赤信号で止められることはない。これにより、子供を乗せている母親も高齢者も安心して自転車を利用できる。

多面的な包括的アプローチ

自転車政策は環境エネルギー、都市交通の課題解決に加えて、市民の健康管理、社会保障コストの削減、投資誘致と産業の発展、家庭の幸福にもつながっている。これはよくデンマークで取り上げられる「包括的アプローチ(holistic approach)」と言われるもので、物事を多面的に捉えて問題の本質に迫り、多様性の中で解決策を探る方法である。

・包括的アプローチは自転車以外にも再生可能エネルギー、医療や福祉、スマートシティなど多くの分野で取り入れられている。

・自転車=移動手段という単純な発想ではなく、自転車を多面的にしたたかに利用する包括的なアプローチこそ、デンマークの政策デザインの特徴でもある。

4.複合的な価値を生むパブリックデザイン

良いパブリックデザインとは

・デンマークの世界的都市デザイナーであり建築家のヤン・ゲール曰く、「良いパブリックデザインとは、魅力的な都市をつくりだす。魅力的な都市とは子供たちと高齢者がストリートに見られることだ」(インタビュー「都市の魅力を構成する要素とはなにか?」より)

2009年に「世界で一番素晴らしい都市になる」と宣言したコペンハーゲンのパブリックデザインが優れている要因の一つは、もう50年も前から人間中心のまちづくりを推し進め、自転車道を整備し、パブリックスペースから自動車や駐車場を減らして、市民に開放してきたことである。

もう一つの要因は、市が2025年に「世界で初めてのカーボンニュートラル首都になる」と宣言したことを、政治家や行政の公約と考えるのではなく、市民1人1人が日常生活の中で目標達成に向けて取り組み、街の未来をつくろうとしていることである。

・パブリックデザインとは快適性を追求することだけでなく、都市の課題を解決したり、未来のイノベーションを実現したりするためのデザインでもある。

アマー資源センター:廃棄物施設を都心のスポーツリゾートへ

・世界的な建築家であるビャルケ・インゲルスが率いるBIG(ビュルケ・インゲルス・グループ)が手がけ、2017年3月にオープンした廃棄物発電施設「アマー資源センター」はデンマークのパブリックデザインを象徴する公共建築である。

・屋上には斜面450mの人工スキーコースが設けられ、夏はトレッキングを楽しみ、頂上ではコペンハーゲンの眺望を楽しみながら小さなカフェで寛げる。

・CHP(熱電供給)廃棄物発電は、コペンハーゲンのCPH2025気候プランを支える重要な機能の一つであり、コペンハーゲン市で年間扱う40万トンの固形廃棄物を燃やすことができる。0~63MWまでの発電能力により6万2500世帯に電気を、157~247MWの地域熱供給能力で16万世帯に熱を供給可能となっている。エネルギー効率は90%以上で、世界で最もクリーンな焼却施設である。

 施設の煙突は排ガスだけではなく、大きなリング状の煙(実際は水蒸気)が排出され、夜になるとレーザーで明るく浮かび上がる。この煙突から出されるリング状の煙一つで、1トンの二酸化炭素の量を表しており、市民に1トンの二酸化炭素量とはどの程度のものかを考えてもらうきっかけにしようとしている。さらに内部は見学できるようになっており、市民の環境知性の育成にも一役買っている。つまり、アマー資源センターは、廃棄物発電による電力と熱供給施設×リゾート施設×教育施設ということになる。

画像出展:「HILLS LIFE

『2019年10月、デンマークの首都、コペンハーゲンの海辺の工業地帯、アマーに出現した、まさに「都会の丘」をイメージさせる巨大施設〈コペンヒル〉。』

 

ハーバース:水質を改善した、都心の海のプール

・コペンハーゲンの夏の人気スポットは、イスラン・ブリゲにある市民プール「ハーバーバス」。コペンハーゲン港内の海の中にあるプールで短い夏を楽しむ人々の光景は夏の風物詩にもなっている。

・このハーバーバスもBIGが設計している。一見すると奇抜なアイデアが印象的だが、そこには緻密な計算に基づいた設計がなされている。デザインには、「連続性」「安全性」「アクセス性」「特別な景観」の4つのポイントがある。連続性は、埠頭のエッジから港の海水まで見えるように設計することで、利用者はプールという区切られたスペースに入るのではなく、海に直接入水する特別な体験を得られる。

・安全性は、各プールの外枠角度が中央のライフガードの位置から一目で確認できるようにライフガードの視野に合わせて決められている。このプールは最大で600名が利用できる。しかし無料で運営されているため、複数のライフガードを配置することは難しく、運営経費と安全性のバランスを考えた設計になっている。

・アクセス性は、障がい者を含めたすべての市民が楽しめるように配慮されている。たとえ車椅子であっても奥のプールサイドまで行ける。親が障がい者でも子供はプールで遊べ、子供が障がい者でも親子でプールサイドで楽しむことができる。

・景観はビーチにいる感覚を感じられるよう、ウッドデッキ、埠頭、ボートなどを象徴的に設置することで、都会リゾートとしての特別感を演出している。

画像出展:「Copenhagen Harbour Bath

 

 

スーパーキーレン:多様な住民の交流を育む公園

・コペンハーゲン中心部の北に位置するノアブロ地区に、2012年につくられた公園で、総面積約3万㎡(新宿中央公園は約8万8千㎡)、縦750mの細長い施設である。公園は3つの区画に分かれており、赤の広場(スポーツとアクティビティのエリア)、黒の広場(交流のエリア)、緑の広場(住民の庭のエリア)となっている。地面が赤、黒、緑に色分けされ、広場の特徴が誰でも一目でわかるようになっている。

画像出展:「NEKKI MESSE

 

『デンマークのコペンハーゲン市内に2012年6月に完成した、ユニークな公園がある。その名は「Superkilen(スーパーキーレン)」。市内中心部から北に伸びるノアブロゲーテ通りとテインスヴァイ通りの間となるノアブロ地区に位置し、広さは約3万㎡にも及ぶ。」』

・北欧は移民を積極的に受け入れてきた経緯があり、コペンハーゲンでもアジア系を含めて多国籍化が進んでいる。公園があるノアブロ地区には安い集合住宅があった関係で、多くの外国人が移り住んでいた。このように国籍が異なる住民が多く集まるこの地区は、住民間のコミュニケーション不足、生活様式の違いから起きる些細なトラブルや犯罪が多発するようになった。将来スラム化するリスクを抱えたこの地区の改善は、コペンハーゲン市にとって課題となっていた。

・コペンハーゲン市は同地区にあった国鉄の車庫跡地を公園につくり変えることを決め、競争入札を実施した。その結果、BIGとアーティストユニットのスーパーフレックス、都市デザイン事務所のトポテック1が選出された。

・彼らが取り組んだのは、住民と徹底的に話し合い、住民主導で公園のアイデアをつくりあげることだった。住民との議論を通じて採用されたのは、多国籍の住民の多様性を尊重しながらも住民同士のコミュニケーションを改善し、ノアブロに新しい価値を創出することであったその方法として、約60カ国に及ぶ住民の出身国の遊具、照明、ベンチなどの設備を集めることで、自分の故郷の記憶を辿ると同時に、他国出身の住民の文化に触れて自然と彼らとコミュニケーションがとれるようにするというアプローチをとった。

・コペンハーゲンに世界の遊具を集めた公園ができたとの評判はすぐに広まり、休日になると地元住民に加え他の自治体からも親子連れが訪れるようになった。

・この地区に人が集まることで、新しいカフェ、レストランもオープンして人気のホットスポットとなり、治安も改善されるなど当初の目的を達成しただけでなく、新たな地域再生の成功事例として注目を集めることとなった。

このプロジェクトでは、住民間のコミュニケーションの改善+治安の改善+ノアブロ地区の価値創出など、複合的な成果を生み出すことに成功している。

画像出展:「デンマークのスマートシティ」