ブロックチェーン

ビットコインなる仮想通貨には全く興味はなかったのですが、そのビットコインの仕組みに使われている“ブロックチェーン”というテクノロジーは、画期的なものらしいということ知りました。「インターネット以来の最大の発明だ」という人までいるようです。

約29年勤めていた会社はHP(ヒューレット・パッカード)というIT企業です。もっぱら営業担当だったため、技術そのものにはほとんど興味はありませんが、IT業界の動向については今も関心がありますは、これにはIT企業の株式を少々保有しているという裏事情もあります)。

そこで、このような新しいビジネスチャンスに対し、明確な戦略メッセージを周知徹底されるIBM社のホームページをのぞいてみることにしました。そして、この“ブロックチェーン”が極めて有望なものであるということを理解しました。これは“中抜き”によるコストと時間と多様性に対するビジネスチャンスということだと思います。

知りたいことは、「ブロックチェーンの何が優れているのか」と「どんなビジネス機会が想定されるのか(実現可能性)」の2つです。

思っていたとおり、数多くの本が出版されていたのですが、この本は著者の中島先生が中央銀行である日本銀行に長く勤務され、特に「決済システム」にも関わっていたという点に惹かれました。発行が2017年10月と他の本に比べるとそれ程新しくないためか、中古本価格が安かったのも助かりました。

著者:中島真志
アフター・ビットコイン

著者:中島真志

出版:新潮社

発行:2017年10月

大きな目次は以下の通りです。

序章 生き残る次世代通貨は何か

第1章 謎だらけの仮想通貨

第2章 仮想通貨に未来はあるのか

第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術

第4章 通貨の電子化は歴史の必然

第5章 中央銀行がデジタル通貨を発行する日

第6章 ブロックチェーンによる国際送金革命

第7章 有望視される証券決済へのブロックチェーンの応用

「はじめに」の後半に、著書である中島先生の経歴のお話が出ていますので、最初にそれをご紹介します。

『著者は、長らく日本銀行に勤務し、リサーチ関連の仕事を多く経験しました。その中で「決済システム」に出会い、大学教授への転身後もライフワークとして調査研究を続けてきています。日本銀行時代には、金融研究所で「電子現金」の研究に携わり(詳しくは本論でどうぞ)、国際決済銀行(BIS)に出向の際は、決済に関するグローバルなルール作りに携わりました。この間、資金決済、証券決済、外為決済、SWIFTなどについての著書を刊行し、いずれも金融関係者に広く読んで頂いています。こういった経歴から、わが国における決済分野の有識者の一人として、金融庁の審議会や全銀ネットの有識者会合などにも数多く参加してきました。』

ブログは「第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術」からになりますが、その第3章の中にある、“③ブロックチェーンが主役の世界へ” の説明に使われている図を見て、今後の目指す方向性が見えました。

ビットコインとブロックチェーンの関係
ビットコインとブロックチェーンの関係

画像出展:「アフター・ビットコイン」

以下は図の説明です。

『ビットコインなどの仮想通貨が、従来の金融の本流から少し離れた、いわば周辺部分におけるイノベーションであるのに対して、ブロックチェーンは、金融の中核を成すメインストリームの業務のあり方を大きく変えようとしているのです。

ここに来て金融業界では、「ブロックチェーンが主役になる」という認識が共有されつつあり、この技術をどの分野に応用していくかが中心的な課題となっているのです。ビットコインは、あくまでもブロックチェーンの最初の実用例であって、また特殊な適用例の一つにすぎないとの見方に変わってきています。すなわち、「ビットコイン中心の世界」から、「ブロックチェーンが主役の世界」へ移行してきており、当初のビットコインの導入段階からは、主客が完全に逆転しているのです。

ブロックチェーンの応用分野は、幅広い分野が想定されており、このうち、①仮想通貨に応用する場合を「ブロックチェーン1.0」②金融分野(仮想通貨以外)に応用する場合を「ブロックチェーン2.0」③土地登記、資産管理、商流管理、医療情報、選挙の投票管理などの非金属分野に応用する場合を「ブロックチェーン3.0」として分類するようになっています(図表3-1)。』

次も第3章からになります。ポイントと感じた部分を書き出しました。

1.ブロックチェーンとは

●ビットコインを支える中核技術として開発され、“オリジナル・ブロックチェーン”と呼ばれている。

●新たな進化系のブロックチェーンを総称して“ブロックチェーン技術”と呼んでいる。

データベースを保管するデータベースの技術である。

●“ブロック”と呼ばれる取引データの固まり一定時間ごとに生成し、時系列的に鎖のようにつなげていく。

過去の取引データを改ざんするためには、過去から最新のブロックまでをすべて改ざんする必要があり、二重使用や偽造などの不正取引を防止できる。 

画像出展:「経済産業省」

2.分散型台帳技術(DLT:Distributed Ledger Techonology)とは

“分散型台帳技術(DLT)に関して、中島先生は次のように補足されています。

『IT技術者以外の一般の方にとっては、そこまで[ブロックチェーンとDLTを]厳密に区別する必要は必ずしもなく、ブロックチェーンと分散型台帳管理(DLT)とはほぼ同義のものと捉えておけばよいでしょう。ブロックチェーンとDLTとは、「同じ技術を別の側面から呼んだもの」と考えておけばよいものと思います。』

●「ブロックを鎖状につなげて管理する」という技術面より「所有権データを分散型で管理する」というユーザ側の視点の方が金融業界では親しみやすく、その結果、金融業界では“分散型台帳技術(DLT)”という用語が前に出てきている。

中央型帳簿と分散型帳簿のイメージ
中央型帳簿と分散型帳簿のイメージ

画像出展:「アフター・ビットコイン」

3.ブロックチェーン/分散型台帳技術の特性

1)改ざん耐性(改ざんが困難であること)

●改ざんするためには、現在までのすべてのブロックを作り直す必要があり、かつその作り直しを正規のチェーンよりも早く成立させなければならない。これは事実上不可能である。(この重要なメカニズムは“ハッシュ値”というものに因る)

2)高可用性(低障害であること)

●ネットワーク上のコンピュータが同じデータを持ち合い、分散してデータを管理している。

●ネットワーク上のコンピュータが1台でも稼働していれば全体としてのシステムを維持できる。

クライアント・サーバ型とネットワークとP2P型ネットワーク
クライアント・サーバ型とネットワークとP2P型ネットワーク

右側のP2P(Point to Point)型がブロックチェーンの一般的なシステム構成になります。左側はサーバーが故障すると、システム全体が止まります。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

3)低コスト(劇的なコスト削減ができること)

●取引や顧客に関する膨大なデータベースの維持、管理などに関わるコストを大幅に削減ができる。

●各金融機関どうしの帳簿の残高照合作業が不要になる。

●ユーザ側においても仲介者が不要になるため、迅速かつ低コストでの取引が可能になる。

4.ブロックチェーンの種類

●ブロックチェーンには誰でも参加できる「オープン型」と特定の参加者のみの「クローズド型」がある。

●「オープン型」は「パブリック型」とも呼ばれている。ビットコインは「オープン型」である。

●「クローズド型」は「プライベート型」や「許可型」とも呼ばれている。

●「クローズド型」は参加を許可する段階で、参加者の身元は明らかになっている(匿名性なし)。

●「クローズド型」には全体を管理・運営する中央の管理主体が存在する。

オープン型とクローズド型のブロックチェーンの比較
オープン型とクローズド型のブロックチェーンの比較

画像出展:「アフター・ビットコイン」

5.コンセンサス・アルゴリズム

●「コンセンサス・アルゴリズム」とは「合意形成の手法」と言われており、分散したデータベース上に多数存在する台帳情報を、ネットワーク上の全員で共有するための手法である。

●「コンセンサス・アルゴリズム」の方法は、オープン型とクローズ型で異なるが、これはオープン型が「悪意の参加者」の存在を前提にする必要があるのに対し、クローズド型では「許可された参加者」だけが対象になるからである。

●主なコンセンサス・アルゴリズム

主なコンセンサス・アルゴリズム
主なコンセンサス・アルゴリズム

表の上から3つ(プルーフ オブ ワーク[PoW]、プルーフ オブ ステーク[PoS]、プルーフ オブ インポータンス[PoI])は悪意のある参加者がいることを前提に、厳格な方式で不正を排除している仕組みになっています。

画像出展:「アフター・ビットコイン」

6.代表的なブロックチェーン

1)リナックスが進める「ハイパーレッジャー・ファブリック」

●「ハイパーレッジャー・ファブリック」は“リナックス・ファウンデーション”が開発しているブロックチェーンであり、金融業界向けのブロックチェーンとしての標準化を志向している。

●独自のコンセンサス・アルゴリズム(PBFT系)やメンバーシップ管理の仕組みを含んでいる。

●金融以外にも、製造、保険、不動産契約、IoT、ライセンス管理、エネルギー取引などでの応用を志向している。

●オープンソース(無償で一般公開)のため、誰でもそのソフトウエアの利用、改良ができる。

こちらは“リナックス・ファウンデーション”のサイトにあるものです。

Forbes Blockchain 50”の半数がHyperledgerを使っているということが書かれたページです。

こちらはForbesのサイトです。アルファベット順に50社が紹介されています。

 

こちらは“ブロックチェーンオンライン”さまのハイパーレッジャーに関するご説明です。

『Hyperledgerは、ブロックチェーンの技術を仮想通貨に限らず最大限に利用することを目的として生まれたブロックチェーン技術の推進コミュニティーです。プロジェクトの立ち上げにあたってLinuxOSの普及をサポートする非営利の共同事業体であるLinux Foundationが中心となり、オープンソースの理念から世界中のIT企業が協力して、ブロックチェーン技術の確立を目指しています。』

こちらのブログの中に、少し古いですがLinuxに関する現状が載っていました。一部をご紹介します。これを見るとLinuxはOSS(Open Source Software)のリーダーという感じですね。

●In 2018, Linux ran on 100% of the world’s 500 supercomputers.

●In 2018, Android (based on Linux) dominated the mobile OS market with 75.16%.

85% of all smartphones run on some version or derivative of Linux.

上記の”WEBSITE PLANET"は”Find a solution for your website”となっており、”Website Builders"もありました。

2)R3コンソーシアムが進める「コルダ」

●R3は米国の技術系企業である。

●金融業界向けに特化した分散型台帳管理技術を開発する。

こちらはコルダのサイトですが、参加企業のロゴが全て掲載されています。数えてみたら178社でした。(2019年5月3日時点)

7.金融分野におけるブロックチェーンの実証実験

1)国際送金における応用

『国際送金は、これまで相手先への着金までに時間がかかることや、手数料が高いといった問題点があったため、ブロックチェーンの技術を使ってこれらを克服し、国際送金を「早く、安く」行おうとする動きがみられます。』

国際送金システム「SWIFT」がブロックチェーン企業R3と提携 XRP対応の決済アプリ「Corda Settler」統合へ”という2019年1月31日付けのBD by BITDAYSさまの記事です。

なお、SWIFTとは Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略で、国際銀行間通信協会になります。 

私自身の話になりますが、HPの営業時代に銀行さまを担当していたことがあり、このSWIFTという用語は国際決済の代名詞のように使われていました。「思い出します。懐かしい」。(日本語サイトです)

2)証券決済における応用

『国際送金と並び、証券決済の分野もブロックチェーンの応用として脚光が当たっています。株式や債券といった証券の決済は、現状では、多くの当事者が関係する複雑なプロセスになっていますが、ブロックチェーンを利用することによって、こうしたプロセスを大幅に合理化し、コストを削減できるのではないかとの機運が盛り上がっています。』

付記1:総務省 自治体ポイントに関する検討会 2018年4月11日 資料3

クリック頂くと、PDFの資料がダウンロードされます。こちらの資料、”ブロックチェーンの将来性と応用分野” は中島先生によるものです。今回ご紹介した『アフター・ビットコイン』がベースになっていますが、書式がスライドタイプなので見やすいと思います。ご参考にして頂ければと思います。

付記2:HPE opens new headquarters in north San Jose

日本では『平成』最後の日となった2019年4月30日に、HPE(旧HPから分社した会社で主に企業むけのシステムやサービスを提供。辞めていなければHPではなく、こちらのHPE側にいたというところです)の新しい本社がオープンしたそうです。グッドタイミングだったので貼りました。

Hewlett Packard Enterprise
Hewlett Packard Enterprise

すいません。英語のままです。

Hewlett Packard Enterprise employees gather next to the new HPE headquarters at 6280 America Center in San Jose. Hewlett Packard Enterprise on Tuesday unveiled a gleaming new office building in north San Jose, bringing a world-class tech company's headquarters into the Bay Area's largest city.

画像出展:「mercurynews

Hewlett Packard Enterprises CEO Antonio Neri
Hewlett Packard Enterprises CEO Antonio Neri

左から2番目がCEOのAntonio Neriです。

Hewlett Packard Enterprises CEO Antonio Neri (L), San Jose City Councilman Lan Diep (C) and San Jose Mayor Sam Liccardo (R), take a selfie with Hewlett Packard Enterprises employees during the grand opening of the new HPE headquarters in north San Jose. Hewlett Packard Enterprises on Tuesday unveiled a gleaming new office building in north San Jose, marking a new tech headquarters for the Bay Area's largest city.