臨床動作法3

今回は【肢体不自由動作法】の中から、リラクセイション治療訓練法 をご紹介します。

なお、『臨床動作法の理論と治療』の目次は”臨床動作法2”をご覧ください。

編集:成瀬悟策

出版:至文堂

発行:1992年10月

 

肢体不自由動作法

3.リラクセイション治療訓練法 

(1)催眠によるリラクセイション

リラクセイションの方法としては、禅やヨガなどの東洋医学的アプローチをはじめ、薬物や脳手術などの医学的方法、漸進弛緩法、自立訓練法など、古来から多くの方法が工夫されてきた。しかしながら、肢体不自由児に適用できる範囲は極めて限られたものがあり、その適用の是非を含めた検討によって、催眠法の適用による効果が注目を引いた。覚醒中は困難であった脳性マヒ児の動作が、催眠中に変容し、手が動いたり、立つことができたり、動かない足が動き、歩行が可能になる事例も見られた。こうした変化の基礎は、慢性緊張や過度緊張、随伴緊張のような不当緊張の除去・軽減によることが推論されるが、実際に筋活動を指標とした一連の研究で、不当な筋緊張が催眠手続きを適用することによって劇的に消失することが明らかにされた。

ところが、催眠は、どの障害児・者に対しても効果的適用が可能かというと、障害の種類や程度、精神発達のレベル、コミュニケーションの可能性など、種々の制約があり、そのままの形では限界を指摘せざるを得なかった。しかし、催眠の繰り返し効果の検討や追跡的事例研究などによって、脳性マヒ児自身がある種の気付きに基づく自己調整の仕方を獲得した場合には、その効果が持続することがわかった。この自己弛緩をもたらすために開発された動作訓練の技法を次に述べる。 

(2)リラクセイションの基本的手続き

リラクセイションの課題は「自分で自分の緊張に気付き、その緊張を自分で緩めること」である。そのためには、「意図した身体部位で弛緩した感じがわかる」とか、「入っている力を抜く」「力を入れないでいられる」などの不当緊張を制御する手続きが必要である。また、日常の生活動作にも役立つように訓練を進めていくためには、「意図した部位に力を入れても、それ以外の部位には力を入れていないでいられる」という差動弛緩ができるように援助することが重要である。

そのための基本的手続きは、次の通りである。まず、緊張がなるべく少ない状態にした状態、すなわち仰臥位から訓練を始める。ある程度、自己弛緩できるようになった段階で、坐位(あぐら坐位、又は楽坐)、膝立ち、片膝立ち、立位、歩行などの条件下で弛緩できるようにする。弛緩が進んだ部位には、その部位に関する単位動作に関する訓練を導入し、正しい動きを実現する過程で、一層自己弛緩能力を高めていく。

このリラクセイションの訓練は不当緊張が存在する主要な身体部位に適用する。訓練時間は、普通1時間を単位とし、条件の許す範囲で繰り返し行い、自己弛緩機能が形成されるまで繰り返し行う。1時間の訓練時間が確保できなければ、許される範囲で必要な訓練を行うことも可能である。リラクセイションの基本的手続きは次の通りである。

①他動弛緩

訓練者は、被訓練者の不当緊張が存在する関節部位に、その部位を少しずつ動かすように他動的な緊張を与え、そこに発生したより高い緊張を自己解消し、消去するように援助する。効果的な援助を行うためには、緊張の種類や程度を把握するとともに、訓練者の働きかけによって被訓練者がどのように対応するかということを心得ておく必要がある。他動的援助によって被訓練者に緊張の高まりが生じたときには、訓練者はその状態を保持したままで、被訓練者が自己努力で緊張の高まりを制御するのを待つ。緊張の高まりが解消されれば、さらにその部位を他動的に動かしていき、次の緊張の高まりに備える。この訓練者と被訓練者の間の一定の「やりとり」によって、緊張と弛緩を繰り返し体験しながら、自己弛緩ができるようになる。

②追随弛緩

訓練者は、被訓練者に他動的に関節運動させながら、その動きに追随させることによって弛緩させる。不当緊張のため、身体を動かそうとしても、動かす部位が分からなかったり、動かすことができたとしても、誤った動きになる。そのような場合、訓練者が被訓練者の当該部位に手で接触しながら、あるいは軽く持ったりしてゆっくり先導すると、比較的容易に不当緊張を引き起こすことなく、正しく動かすことができる。

③自己弛緩

訓練は他動弛緩から追随弛緩の段階をとるが、いずれの段階においても、自己努力で弛緩を実現するという能動的弛緩を目指すことが大切である。不当緊張の高まりを制御しながら、動きに必要な緊張を残して適切な緊張パターンに変換する過程で、自分で弛緩している感じがわかり、自分で弛緩できるという能動弛緩へと移行する。

(3)リラクセイションの方法

リラクセイションの基本手続きを肢体不自由児・者に適用し、自己弛緩の実現を目指すが、その手順は、弛緩させることによって動きを引き出す方法と重力に対応させる姿勢(坐位姿勢等)を取りながら弛緩を体得させるものとに大別できる。一般に、前者の方が弛緩の状態を作り、自己弛緩できるように援助することは比較的に容易であり、弛緩と緊張の違いや自己弛緩していく感じを味わうのに適した方法と言える。しかし、その条件で自己弛緩を達成できたとしても、応重力姿勢では再度不当緊張が出現することもしばしばである。なぜなら、仰臥位での緊張体系と応重力姿勢で自己弛緩できるようになることも重要であり、それによって心身の調和的基盤を培ったり、弛緩の感じや自分で弛緩する体験を活かした自己制御機能の確立のために役立つと言える。また、そうして獲得された機能が日常生活動作に対しても好影響を与えるので、動作困難な障害児に広く効果的に利用できる。それらの具体的方法は以下の通りである。

①リラクセイションの基礎技法

伸展仰臥のゆるめ

首のゆるめ

肩まげのゆるめ・肩反らしのゆるめ

胸反らせのゆるめ・胸まげのゆるめ

背反らせのゆるめ・背まげのゆるめ

躯幹ひねりのゆるめ

腰伸ばしのゆるめ・腰反らせのゆるめ

股伸ばしのゆるめ・股開きのゆるめ(深まげ・浅まげ)・股外回しのゆるめ・股内回しのゆるめ

手首反らしのゆるめ・手首まげのゆるめ・手握りのゆるめ・手伸ばしのゆるめ

足首まげのゆるめ・足首伸ばしのゆるめ

仰臥位でのリラクセイションに関する主な項目は以上の通りである。一般に、弛緩が必要とされる項目について頭部の方から下部の方へ、あるいは躯幹部から末端部の方へ進めて行くのが一応の原則となっている。訓練の実施にあたっては、他の臨床面接と同じように受理面接の過程で、主訴病歴、発達経過、動作や姿勢の特徴・不当緊張の状態(仰臥位・坐位・立位等)などを把握し、援助方針やその計画をあらかじめ設定することが必要である。訓練開始の際には、まず仰臥位姿勢を取らせて身体全体の調整を図りながら、緊張部位を確認し、同時にその状態でできるだけ弛緩できるように援助する。

躯幹ひねりのゆるめ方の例が図1に示されている。

画像出典:「臨床動作法の理論と治療」

図のように、訓練者は自分の手足を使って、被訓練者を側臥位にさせ、腰部が床に垂直になるように援助する。腰部以下が動かないように支えて、訓練者は、被訓練者の肩部を片方の掌で押さえ、少しずつ他動的に力を加えながら、被訓練者がその都度緊張を緩めていくのを確かめながら、肩がある程度床に着くまで(可能な範囲で)、弛緩のための援助をする。この場合、動かしていく過程で、緊張が発生したら、すぐに動かすのを止め、「はい、力を抜いて」と声かけしたり、緊張が解消するのを待ったりする。自己努力により緊張を制御できそうな状態が感じられたときに、「そうそう、その調子」と励ましたりしながら、被訓練者が十分に弛緩できるように「やりとり」を続ける。参考までに、胸まげ(図2)、胸反らせ(図3)の例を示す。

画像出典:「臨床動作法の理論と治療」

画像出典:「臨床動作法の理論と治療」

②応重力姿勢でのリラクセイションの技法

意図と身体運動を一致させるように努力の仕方を変えるためには、必要な部位を緊張させ、不必要な部位を弛緩させるという差動弛緩を実現しなければならない。これは仰臥位における自己弛緩だけでは不十分であり、坐位や膝立ち、立位等の応重力姿勢での訓練を必要とする。基本的には、先の訓練で自己弛緩が可能な状態になっているために、適切に援助さえすれば、応重力姿勢を取ることは可能である。そのことを確かめるためには、あぐら坐位や膝立ち姿勢で、身体を他動的に屈方向に動かしたり、反方向に動かしたりして、その被訓練者の動き方を見るとよい。被訓練者が、訓練者を信頼して、訓練者の意図に合わせるように、姿勢を変えたり、身体を動かしていれば、準備状態が整ったと見なすことができる。そうでない場合には、応重力姿勢時に発生する不当緊張の処理をしなければならない。そのためには、①で述べた基礎技法の中で、胸反らせのゆるめ・胸まげのゆるめ・背反らせのゆるめ・背まげのゆるめ・腰伸ばしのゆるめ・腰反らせのゆるめ等の中から必要な訓練を選択し、再度実施する。また、脳性マヒ児は、股関節部では屈方向の、腰部では反方向にそれぞれ強固な慢性緊張を有していることが多いため、基礎技法の腰伸ばしのyるめ・腰反らせのゆるめは重要な訓練であるが、この腰伸ばしゆるめを両膝を床につけた姿勢で行い、肩、背、腰、膝まで、直の姿勢になれるように、弛緩訓練を実施する。

そうした準備条件を整えた段階で、あぐら坐位を取らせ、まっすぐになるように形作りをする(図4)。

画像出典:「臨床動作法の理論と治療」

被訓練者は上体を反らせたり、まげたりするので、そうした誤った姿勢にならないように留意しながら、まっすぐ垂直方向に入力できるような援助をする。尻を後ろに突き出し、腰を反らせた状態であれば、それらの部位の緊張を低減させるように援助しながら、真の姿勢を作る。緊張の高まりが見られた場合には、形作りのために動かしている他動的援助を停止し、緊張がやわらぐのを待つ。こうしたやりとりをしながら、最終的には、大地にしっかり体重をかけ、上体をまっすぐに保持でき、身体を左右や前後に動かしても、安定できるようにする。その段階になれば、適切な自己弛緩が可能になったことを意味し、上体の動きだけでなく、認知等の精神発達も活発になり、環境への対応能力も向上する。さらに、膝立ちや立位等の訓練を加えることによって、それらの効果をより実りあるものに成長させることが可能であり、脳性マヒ児をはじめとする肢体不自由には欠くことのできない訓練だと言えよう。

付記リラクセイション訓練票

下記の票はこちらの本の中に掲載されていたものです。

注)ご説明

2020年4月7日までここに”訓練票”を掲載していましたが、この票は現在使われておらず、「ボディダイナミクス」を使っているとの貴重なご意見を頂きましたので、削除させて頂きました。

一方、”動作法・ボディダイナミクス”で検索してみたところ、下記の本がヒットしましたので、ご参考でご紹介させて頂きます。

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