筋緊張

脳血管障害による体の異常のことを「痙縮」といいますが、時に「痙直」という言葉を使うこともあります。また、パーキンソン病などでみられる体に現われる異常の一つに「固縮」がありますが、これについては「強剛」あるいは「筋強剛」なども使われており、更に「強直」、「硬直」といった言葉も出てきます。一方、ギックリ腰は痙縮や固縮とは異なり、中枢神経が関与しない「筋スパズム」の問題とされています。「筋スパズム」は日本語では「筋攣縮」となり、痙攣性の収縮のことです。筋肉と関節の関係では「拘縮」という言葉もよく耳にします。
これらの似て非なるものを分かりやすく分類しようと思うと、例えば、筋緊張の強さと弱さ、関節と軟部組織(筋、腱、靭帯、結合組織)、神経性要素と機械的要素、疾患との関連性、特徴的な症状などがモヤッとして整理整頓困難な印象があり、その手間と難しさから着手できずにいました。

ところが、先日ネット検索している時に、「筋緊張に挑む」という本を偶然見つけ、今までモヤモヤしていた所がクリアになりそうな気がしたため、思い切って商品券を使って購入することにしました。

 

こちらは「理学療法士」の方向けの本です。

 

常任編集:斉藤秀之・加藤 浩

出版:文光堂

目次は3層の見出しのうち、大中の2層に関しては次の通りです。
PartⅠ 理学療法から見る筋緊張
1.理学療法における筋緊張の再考
2.運動・生理学からみた筋緊張
PartⅡ 筋緊張の測定・評価
1.一般的評価や検査手技について
2.動作レベルでの筋緊張評価の診かた
3.歩行分析における筋緊張の診かた
4.セルフケアにおける筋緊張の診かた
5.頸部・体幹および顎・口腔の筋緊張の診かた
6.筋緊張に影響する要因
PartⅢ 疾患別の筋緊張の特性と治療
1.脳卒中における筋緊張の特性と治療
2.脊髄損傷における筋緊張の特性と治療
3.痙直型脳性麻痺における筋緊張の特性と治療
4.二分脊椎における筋緊張の特性と治療
5.低酸素脳症(脳損傷・意識障害を含む)における筋緊張の特性と治療
6.パーキンソン病における筋緊張の特性と治療
7.筋強直性ジストロフィーにおける筋緊張の特性と治療
8.呼吸器疾患における筋緊張の特性と評価・治療
9.運動器疾患における筋緊張の特性と治療
10.慢性疼痛症候群における筋緊張の特性と治療

下の図は「筋緊張の概念図」です。今回はこの図をベースにネットで確認した情報を付け足して、一覧表を作りました(クリックすると拡大されます)。情報源が混在しているため、正確性と見やすさに課題があると思いますが、何かご参考になればと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「筋緊張に挑む」

動かないことによって生じる骨格筋の線維化の原因を探索

損傷に対する修復だけでなく、【不動】でも線維化するという記事です。

高草木 薫先生の論文「大脳基底核による運動の制御」がダウンロードされます。

こちらは「筋緊張亢進と動作障害に関する機能因子の連関サイクル」です。筋緊張の関係性、全体像を把握するのに役立つ図だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「筋緊張に挑む」

運動器疾患における筋緊張、筋スパズム、筋硬結については詳しくご紹介したいと思います。なお、これらは全て本の内容に基づいています。

 

運動器疾患における筋緊張の特性と治療
運動器疾患における筋緊張の異常とは?
持続的な筋緊張の亢進は局所の循環不全を引き起こし、発痛物質や疼痛増強物質などを誘導し、侵害受容器の興奮を惹起する。さらに、疼痛の持続は、交感神経の活動を上昇させることから、末梢血管収縮による局所の循環不全を引き起こす。循環不全による酸素欠乏状態は、アデノシン三リン酸(ATP)産生を抑制するなど筋の弛緩不全を引き起こすような悪循環に至ってしまう。退行性変性疾患であれば、慢性疼痛や罹患関節に対する代償作用が隣接関節だけでなく全身へと波及する結果、固定化あるいはパターン化された姿勢・動作が形成される。固定化あるいはパターン化された姿勢・動作は、偏った筋の持続的な過緊張へとつながり、日常生活において習慣化される。それは、無意識に罹患関節への力学的ストレスの増加や他関節への障害を惹起する可能性がある。 


筋緊張が亢進する理由は!?
・中枢神経系に器質的異常のない運動器疾患において、筋緊張が亢進する理由は何であろうか。それは主に脊髄反射が関与していると考えられる。脊髄反射は、伸張反射と屈曲反射に大別される。「伸張反射は、外力に抗する力を発生することで関節を固定して姿勢を保持することにある。すなわち、重力に抗して姿勢を保持するための、筋の持続的な収縮である。屈曲反射は、皮膚、筋その他の深部組織が傷害されるような刺激に対して、肢節を屈曲させるような反応である」。例えば、術後の疼痛が持続することで、屈筋群の持続的な筋収縮により、股関節が屈曲・内転・内旋位で固定化されやすい状態になることは臨床上よく経験することである。これらの反射は無意識的に調整されているため、患者自身はどこに、どの程度の力が入ってるかを認識することは困難なことが多い。

運動器疾患において筋緊張が亢進する原因は?
・神経原生因子は、脳の障害の損傷箇所およびそれに関与する神経系路による問題で、痙縮、固縮、クローヌス筋肉や腱を不意に伸張したとき生じる規則的かつ律動的に筋収縮を反復する運動)の障害の損傷箇所およびそれに
などさまざまな筋緊張の異常を呈する。非神経原生因子には、①筋・皮膚などの軟部組織のバイオメカニカルな変化およびそれに起因する疼痛など。②過剰動作による代償および誤動作による関節・筋などの炎症、合併症の出現および増悪。③環境・人格(生活、家族背景、趣味など)・その他、精神面に作用する要素を挙げている。このように個人要因や環境要因、社会要因などさまざまな要因により筋緊張は影響を受けることが考えられる。

筋緊張は連鎖する
・四肢遠位の体節の筋緊張が高まると、その筋緊張は近位の体節を構成する筋へ連鎖するような現象が筋の収縮連鎖である。

上肢疾患における筋緊張の特性および治療
・術後の著明な疼痛や夜間痛による睡眠障害は、心理・精神的ストレスを増加させ肩関節・肩甲帯周囲筋の筋緊張の亢進につながることが少なくない。

筋スパズムとは?
骨格筋が急速かつ不随意に収縮すること、あるいは収縮している状態を表す。
・神経学の分野では「断続的に生じる一定の持続時間をもった異常な筋収縮状態」とされ、筋攣縮とも呼ばれる。
・理学療法領域においては「痛み刺激に対する防御作用の一環とした、反射的・持続的な筋緊張の亢進」を指していることが多い。
筋スパズムの原因としては、筋疲労や脱水、電解質異常、ホルモン・ビタミン欠乏、腎不全、薬剤の副作用、外傷や炎症などの要因が考えられる。
・筋スパズムが遷延化(長期化)することは骨格筋や関節機能障害の発生につながり、痛みを慢性化させる。
筋スパズムの発生機序
・筋や関節を構成する結合組織などが損傷すると、発痛物質(ブラジキニンなど)が放出される。また、組織修復の過程で炎症が生じ、腫脹による組織内圧の上昇や局所の発熱がみられる。それらの侵害刺激は自由神経終末(高閾値機械受容器とポリモーダル受容器)を刺激し、求心性に情報を伝導する。
損傷組織や炎症による各刺激が脊髄後角へ入力され、α運動ニューロンを興奮させることで筋活動が増加する。また、同時にγ運動ニューロンを興奮させ筋紡錘へ影響を与え、α運動ニューロンが興奮しやすい状況を作る。
筋スパズムによって生じる筋機能の障害
・筋スパズムが遷延化することで筋や関節の機能障害を生じる場合がある。特に筋の機能障害が進展することにより、疼痛が慢性化する可能性がある。
・筋緊張の亢進が持続することによりみられるもの
 ①筋内圧の増加と局所の循環障害
 ②ポリモーダル受容器の閾値低下
 ③発痛物質の血中濃度上昇
 ④相反抑制(主働筋が収縮する際に拮抗筋を収縮させない[弛緩させる]命令が出されるというような、互いに拮抗しあう筋の活動を抑制するメカニズム)によるスパズム筋の拮抗筋弱化
 ⑤痛みによる交感神経活動の亢進(末梢循環障害)が生じる
 ①~⑤によりさらに筋スパズムを強く生じさせ、疼痛を慢性化させる。加えて虚血状態の筋は収縮から弛緩への移行が障害される。
これらのことにより、筋や関節の結合組織の伸張性や粘弾性の低下が生じる。また、筋スパズムの期間が延長するのに合わせ筋短縮や拘縮が進行し、姿勢の悪化や関節アライメントの変位につながっていく。筋スパズムがある場合、過度な負荷を加えると、筋付着部や腱に微細な損傷や炎症を生じさせる可能性が高い。筋スパズムによる筋機能不全が痛みの原因となり、痛みの増悪が筋スパズムを増加させるといった悪循環を形成する(pain-spasm-pain cycle)。

 

「pain-spasm-pain cycle」で画像の検索をすると、表示されるpain cycleは一様ではなく、色々なバリエーションが出てきます。左の図はシンプルなのと、絵が気に入り拝借しました。

『筋緊張⇒循環障害⇒筋肉の炎症⇒可動域制限⇒疼痛⇒筋緊張⇒…』という感じだと思います。

筋スパズムに対する理学療法
・筋緊張が亢進が持続することにより、筋の機能不全(伸張性・粘弾性低下、拘縮、萎縮、循環障害、変位)を生じる。その状況で不適切な運動を行うと、筋や結合組織に新たな損傷を生じさせる可能性が高い。
・スパズムは関節運動のリズムを崩し、転がり運動滑り運動を破綻させる。
・無理に動かすことは周囲組織のインピンジメントを助長し組織損傷を誘発しかねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは「肩甲上腕リズム」を説明するものです。腕を高く上げるには、肩関節に加え肩甲骨が連動することが必要です。また、筋肉も動きに伴い働く筋肉が変化します。

※この画像は、「伊豆deマッサージ◇河津ハンズblog◇」さまより拝借しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは膝関節にみられる①「転がり」、②「すべり」です。スパズムはこれらの動きを抑制する可能性があり、関節可動域に悪影響を及ぼします。

※この画像は、「Adetto」さまより拝借しました。

筋硬結とは?
・「凝り」「こわばり」「しこり」の正体は筋硬結と呼ばれ、筋が硬く結節状になった状態である。
・発生の機序としては、筋損傷、過剰な筋疲労をきっかけに、筋小胞体損傷部からカルシウムイオンの放出、また筋線維細胞膜損傷により細胞外カルシウムイオンの細胞内への流入により、筋漿膜内のカルシウムイオン濃度が上昇し、局所的なアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの滑走が膠着する。膠着解除のためにATPが必要となり、代謝は亢進するが、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの膠着による局所循環障害は、酸素欠乏とエネルギー欠乏を招き、さらに膠着が持続し筋硬結が形成されるといわれている。
・筋硬結は局所の循環障害を起こしている筋の中に、収縮結節が残存している状態であるといえる。

その他
筋スパズム「spasm」は攣縮を意味し筋肉の線維が持続的・不随意的に収縮しつづける状態を指します。一方、生理学では「twitch」の訳として「単収縮」と「攣縮」が使われています。
この「spasm」と「twitch」の違いを調べたのですが、なかなか見つからず、やっと見つけたのは以下のように英語の記事でした。  
なお、twitchの最も分かりやすい例は、eyelidという「まぶたがピクピクする状態(無痛)」だと思います。

Muscle Twitching vs. Spasms:the Difference?
“A twitch is a brief phenomenon that affects a small portion of a muscle, whereas a spasm may be more prolonged and affects a large muscle group. A twitch does not tend to be painful, but a spasm can be quite painful.”