療育

『もしタイムマシンを使えたら、あなたは過去に戻ってみたいですか?未来に進んでみたいですか?
ある女の子は言いました「赤ちゃんからやり直したい」と。ある男の子は言いました「先生、時間を戻して!最初からやるから」と。二人とも小学校1年生でした。過去に戻りたいと願っていました。うまくいかない自分を抱えて、その理由もわからず、苦しんでいました。
私たちがその子たちにできることは、その子のありのままを慈しみ、発達を支えることなのです。「苦手があっても、かけがえのない存在」、そう子どもに感じてもらえる関わりを用意することなのです。子どもたちには、未来を見つめていてほしい。そう思います。自分のありのままを大切に、歩んでいってほしいと。』これは、著者である藤原先生の「あとがき」の前半部分です。

 

著者:藤原里美

出版:学研

そして、療育とは特別なスキルを要するものではないということを伝えています。

「療育」とは特別な場所や特別の人がするだけのものではなく、お母さん、お父さん、保育士さん、学校の先生など誰にもできる子供の発達と支援の方法論です。
例えば、よい行動をしたら褒めて子供のよい行動を増やすということや、集中できない場合は静かな環境の中で勉強させる、不安になったら好きなぬいぐるみに触れて落ち着かせるなど、その場に応じた適した方法を使って子供を指導することです。』

なお、この本は以下の6つのパートから構成されています。
漫画:発達障害のある子どもたちのエピソードを紹介する。
対応:エピソードで紹介した子どもの行動の理由や対応を紹介する。
子ども発達相談室:お母さんがよく抱えている子どもの悩みに対してアドバイスをする。
解説:発達特性についてより専門的に解説する。
大切なあなたへのメッセージ:子どもに読み聞かせして、子ども自身の特性を共通理解する。
コラム:子どもを理解し、よりよい療育のために知ってほしいことなど。

 

そして、目次は次の通りです。
第1章 完璧な子どもはいない
 どの子も発達の凸凹がある
 発達の凸凹をその子の特性と捉える
 その特性により生活に大きく支障をきたす場合、発達障害と診断される

第2章 多動と不注意
1.じっとしていられない
2.やるべきことを忘れる
3.先に考えずに行動する
4.忘れ物が多い
5.突然、怒りだす
6.イライラしやすい
7.小さな失敗で過度に落ち込む

第3章 こだわり・コミュニケーション・社会性
8.自分勝手にふるまう
9.相手の気持ちになれない
10.こだわりが強い その①
11.こだわりが強い その②
12.こだわりが強い その③
13.考えが極端にせまい
14.言葉の意味は一つだけ
15.二つのことが同時にできない
16.いじめられているのに気づかない

第4章 感覚と身体運動
17.自分の体はどこ?
18.力の入れ方がわからない
19.見えているけど正しく見えない

第5章 特性を生かす
20.ぼくはダメな子?
21.みんなと違っている
22.1番じゃなきゃやだ!

コラム
 診断は大切?
 立派な大人も小さいころは…
 理想の子ども
 子どもへ伝えるときのコツ
 お父さんも理解者になるために
 おじいちゃん・おばあちゃんを味方にするには

大切なあなたへのメッセージ
 失敗は成功のもと
 おなじということ
 いじめからあなたを守るために
 大人に伝えて相談しよう
 自分について

わたしのきょうだいへのメッセージ
 好きなところ・きらいなところ

 

私の発達障害児との関わりはマッサージと動作法になりますので、ブログでは子どもとの信頼関係づくりに関わる「コミュニケーション」と今までのブログで度々登場してきた「ボディイメージ」を、療育の視点から考えてみました。

コミュニケーション
1.シングルフォーカス(参照ページ:p42-p45)
シングルフォーカスとは興味あるものだけが頭を占領し、くぎ付けになってしまうことです。
本文では次のような「解説」が書かれています。
『子どもは少なからず、興味あるものを目の前にすると他が見えなくなる傾向があります。大人でも、恋愛すると「あなたしか見えない」などといいますが、シングルフォーカスを象徴した言い回しですね。
年齢や体験を重ねることで、やるべきことは意識して、順を追って行動できるようになります。いくつかのやるべきことが多画面のようになって、意識できるようになります。しかし、浩太くんのように、小学生になっても、興味のあることに出くわすとそのことが全画面表示になり、「今を生きる」状態にスイッチが入る子には、まだまだ大人のマネジメントが必要です。
まずは、自分のクセを理解させましょう。興味のあることに夢中になりやすいということを理解させます。そのうえで、複数の画面にする工夫をします。やるべき二つのスケジュールを同時に映像として提示するのです。ランドセルと学校、帰宅と手洗い・うがい、宿題というように。これも、習慣になると行動がつながるようになるでしょう。』

 

2.ストレスと怒り(参照ページ:p60-p63)
怒りとは、瞬間湯沸かし器のように急に怒りだすようにみえる場合でも、徐々にたまったストレスがコップからあふれ出す瞬間に起こるものとされています。また、怒りだすとなかなか止まらない、一度怒りが収まったと思ったらまた急にぶり返すなど、怒りのコント―ルができないところにも大きな問題があります。ストレスは個々の特性によって異なりますので、その子の傾向を知り、日常生活の中で注意深く観察して、生活の工夫を試みることが大切になります。
「解説」の内容は次のようなものです。
『私たちは誰でも「怒り」の感情をもちます。この感情はもってはいけないものではなく、もったうえでマネジメントするものと考えましょう。つまり、「アンガー(怒り)マネジメント(管理する)ということです。アンガーマネジメントでは、「怒り」は第二次感情といわれます。怒りの感情に至る前には第一次感情が影響しているのです。第一次感情とは負の感情で、不安や、ストレス、悲しみ、ねたみなどです。
私たちは日常生活の中で、さまざまな負の感情を抱きます。この感情が、コップの水のようにたまります。この水をじょうずに抜いていかないとコップの水はあふれ出します。このあふれ出した感情が、「怒り」として表現されます。
感覚の過敏さ、ネガティブな思考のクセ、こだわりを強くもつ、シングルフォーカスなどの発達特性をもつ場合、コップの水はたまりやすくなります。この水をためない、また、たまった水を抜くための工夫をしていくことが必要なのです。

 

3.言葉どおりにしか受け取らない(参照ページ:p106-p111)


「言葉どおりにしか受け取らない」ということは上記の漫画に出てくるような出来事です。
会話は前後の状況や場の雰囲気を理解して、言葉の裏の意味を直感的に解釈すること、「暗黙の了解」が求められますが、この抽象的な概念は発達障害児にとって非常に厄介なものです。「1を知って10を知る」は望ましいものとされていますが、発達障害児においては、まさに「1は1でしかない」というのが特性です。
これらは自然に身につくものではないので、まずは正確に伝えるという配慮が必要です。例えば、「お風呂見てきてね」→「お風呂にお湯がたまったかどうか見てきてね」。「お昼は何にする?」→「お昼ご飯は何を食べる?」という具合です。そして、その都度その言葉の背景を教えていくことが必要です。このフォローを地道に行うことにより、言葉の背景や暗黙の了解をつかむコツが分かってきます。

4.シングルタスク(参照ページ:p114-p118)
先生の話を聞きながらメモを取れない。テーブル上のお皿を持ち上げてテーブルを拭けない。このようなことは発達障害児の特性の一つです。お母さんからは「右手と左手がまるで別の生き物のように、協調して動かない。目と耳と口も同じです。一人の人間が操作していると思えない。そんな感じです。」といった思いを抱くことも多いようです。

これらは子どもたちの心の問題でも、意思の問題でもなく、脳の処理の問題です。子ども自身もそうしたくても、できないもどかしさを強く感じています。
私たちの脳は同時に複数のことができるものですが(マルチタスク)、1つのことしかできない(シングルタスク)という特性が発達障害児には見受けられます。この難しい問題に対し、著者の藤原先生は「解説」の中でこの問題に対しどのように向き合うのが良いのかについて語られています。
『私たちは、いくつかの作業を映像に描いて行動します。でも、その作業が1つしか描けない子どももいます。いくつかの作業を描いて行動できるには、作業を同時に処理していく能力が必要です。たとえば下の絵のように、朝のしたくでは「コップと、タオルとノートと……を入れて」というように進めます。

 

画像出展:「はじめての療育」

しかし、一つの作業しか浮かばないと、下の絵のような作業になります。

 

画像出展:「はじめての療育」

 

前者を「同時処理」、後者を「継次処理」といいます。
継次処理の方が効率が悪いのは否定できませんが、丁寧で着実であるという利点もあります。早くないけれど確実、そこがよさです。丁寧に一つずつこなしていけるようにします。こうした日ごろの支援が、一つから二つと同時にできる作業を増やすことにつながります。欲張らず、あせらず、子どもの情報処理の発達特性に合わせて、支援を考えましょう。』

 

5.「子どもへ伝えるときのコツ」(参照ページ:p170-p171)
こちらは「コラム」として掲載されているものです。発達障害の子どもと接するうえで、とても有効だと思いますのでそのまま掲載させて頂きます。
①脅かさない
『「〇〇しないと〇〇できない」、たとえば「勉強しないとおやつが食べられないよ」だと、おやつが食べられない状況のみが強調されて伝わります。否定的な言い回しの繰り返しではなく、肯定的にやるべきことを伝えましょう。「勉強したら、おやつです」と。』

②叱らずにアドバイスする
『「〇〇するとうまくいくよ」、たとえば「失敗は成功のもとと考えると、気持ちが楽になるよ」というようにしましょう。うまくいかないとき、イライラする場面なども「イライラしない」「もうあきらめなさい」などと叱らずに、「深呼吸してみよう」「楽しいことを考えて」など、肯定的に今やってほしい行動を伝えましょう。』

③よかったところを強調する
『「〇〇は失敗したけど、〇〇はよかったよ」のように言います。大人も子どももうまくいかなかったところに目を向けがちです。そんな考え方を切り替えるためにも、よかったところ、できたところを確認して伝えましょう。』

④共感する
『「なるほど、そういうふうに考えるんだ。おもしろいね。」「その感じ方は、苦しいよね。よくわかったよ」といったように、どんな考え方でも、たとえそれが間違っていると感じても、まずは共感しましょう。なぜなら、その考え方は本人にとって「大切な考え方」であるからです。そのうえで、ほかの意見を受け入れられるように導きましょう。』

⑤希望をもたせる
『「次はうまくいくと思うよ」、「きみを理解してくれる人にこれから出会えるよ」、「きみは成長しているよ」など。子どもが自分を信じて、頑張るためには将来に希望がもてなければなりません。今、つらい状況であっても、身近にいる大人が希望をもてるようなメッセージを伝え続けることが必要です。』

⑥味方だと伝える
『「いつでもあなたの味方だからね」「身近なサポーターだから忘れないでね」「きみのファンだよ」というように、一人じゃないということを感じられるようにします。心の支えになれるように、伝えたいですね。』

ボディイメージ
1.じっとしていられない(参照ページ:p32-p39)
「子ども発達相談室」の母と先生のやりとりは次のような内容で始まっています。
:うちの子は、とにかくじっとしていられません。
先生:そうですね。体の内側から動きたい欲求が出ているので、注意してもおさまらないですね。
:体の内側から……それはどういうことですか?
先生私たちは、体の中に感じる感覚を二つもっています。その一つが「固有覚」といって、筋肉や関節に感じる感覚です。鉄棒にぶら下がると手首が引っ張られる、物を持つときに重さを感じる…そんな感覚です。この感覚を頼りに、私たちは動作や運動をするときに適切な力の入れ方、自分の体の部位の動かし方を調整しています。この感覚をうまく受けとめないと力を入れすぎて、バナナやおにぎりを食べるときに握りつぶしてしまったり、体の動きがぎこちなく見えたりします。
また、「対応」では、子どもの欲求を満たす方法として、子どもの体に触れて筋肉や関節に感覚刺激を入れる関わりや遊びを取り入れることを推奨しています。
具体的には以下の事柄が紹介されています。
①座りながら感覚を満たす
手や腕など、ギュッギュッと握ってみよう
肩や背中、ひざなどトントンとたたいてみよう
頭を指でマッサージしてみよう
②運動遊びで感覚を満たす
・指相撲や腕相撲、鉄棒にぶら下がる、前回りをする、マットででんぐりがえし、木登り、ジャングルジム、うんてい
③道具を使った工夫
・バランスボールを座ってピョンピョン
・一人用のトランポリンで繰り返しジャンプ
・マッサージチェアで筋肉や関節をモミモミ
・回転いすに座ってくるくる回る
そして、「解説」では詳しい説明がされています。
『多動といわれる状態は、動きたいという身体の内側にある感覚的な欲求が働いていることが原因の一つといわれています。「お腹がすいてご飯を食べたい」という生理的な欲求と似ていて、「体の内側に入る感覚刺激が足りないから、感覚を入れたい」という行動です。私たちが、窮屈な乗り物に長い時間乗っていると動きたいという気持ちにかられますが、それに似ています。
体の内側に感じる感覚は「固有覚」(筋肉や関節に感じる感覚)と「前庭感覚」(体の傾きや動いているスピードを感じる感覚)があります。どちらも感じにくいと跳びたくなったり、走りたくなったり、回転したくなったりします。ですから、我慢させすぎることのないように、内的な感覚欲求を満たしてあげることを考えましょう。
外遊びで、跳びはねたり、回ったりするといった遊びが少ない現代、この内的な感覚が足りないことと、子どもたちの行動に落ち着きがないと感じることは関係が深いと考えられます。』

 

2.自分の体はどこ?(参照ページ:p128-p133)


「自分の体はどこ?」というものは、問題を持っていない人にとってはとても理解しずらいものです。本の中では「子ども発達相談室」の母と先生のやり取りがとても分かりやすいので、前半部分を引用させて頂きます。
:着替えはとにかく時間がかかります。そでにうまく腕が通せなかったり、かかとの位置を合わせられなかったりで、私の方がイライラしてつい怒る。本人はさらに体が動かなくなる……そんな繰り返しで。
先生:私たちはそでを通す時も、かかとの位置を合わす時も、最初はその部分を見ますが、その後は見ないで身体の感覚を使って着替えをします。見ないでできると、早いんですね。ところが、自分の体の位置や動かし方がわからないといちいち見ないといけない、そして見ても服のその部分に体を合わせるのに時間がかかるという二重苦です。自然に理解するのは難しいので、どうしてうまくいかないのか、お母さんがなんで怒っているのかもわからないということになります。
:見ないとできない? なるほど、私たちは見ないでそでを通したり、ボタンをはめたりしていますね。それができないのですね。
先生:ボディイメージを持てないということが大きいですね。自分の体の実感がうまくもてないということだと思います。体に意識が向きにくいのです。


そして、「解説」では支援の方法などについても言及されています。
『子どもは、3、4か月のころになると、自分の手を眺めながら動かすようになります。これは「ハンド・リガード」という行動で、自分の手を見つめることで自分に体があるということを知り、体が動く時の感覚をつかむのです。つまり「手を動かす」のを見ながら確認して、体の感覚と一致させ、その感覚を利用して、見ないでも体を動かせるようになっていきます。
しかし、この体の感覚、固有覚などの内的な感覚が育ちにくいと、見ないで体を動かすことが難しくなります。また、見えない部分を想像する力も弱いのでさらに動かすのは大変です。ですから、「ハンド・リガード」と同じ視点で、見て自分の体を知ることと、動く時の体の感覚をつかめるように、大人が支援します。その時は手取り足取りになることもありますが、繰り返すうちに体の感覚をつかめるようになります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乳児は「ハンドリガード」で身体感覚を学びます。そのプロセスは以下の通りです。
①脳が「指をしゃぶれ」という「動作信号」を発信する。
②指の動きが「体性感覚」として脳にフィードバックされる。

③指の動きを見たり、口に含んだり時の味覚などが「特殊感覚」として脳にフィードバックされる。
④動作信号・体性感覚・特殊感覚が脳の中で統合されて、身体感覚が学習される。

画像出展:「立命館大学映像学部

3.力の入れ方がわからない(参照ページ:p134-p139)


力の加減が分からないとどんな事が起きるのでしょうか。これについて、「対応」にいくつかの例や役立つ遊びが紹介されています。
ドアをバタンと閉める、物をドンッと置く、人を力強くたたく、どたどたと歩くなど、力を入れすぎる行動は、落ち着かない子、乱暴な子と誤解されやすく、本人も損をします。これは、力を緩める感覚をつかみにくいことが原因となっています。
力を緩める感覚を練習するための「紙風船」を使った遊びを紹介しましょう。「紙風船」を下からたたいて繰り返し飛ばします。力を入れてたたくとつぶれてしまうので、力のコントロールが必要です。いきなり「紙風船」が難しい場合は、「ゴム風船」でもよいです。なるべく数多くポンポンと手でついて繰り返せるようになるといいですね。
「風船」でのキャッチボールも楽しい遊びです。力強くキャッチすると、風船が弾んで逃げていくので、そっと捕るという感覚がわかります。
力を抜いて操作するのがわかったら、ドアを閉める時や物を置く時は「風船をつかむ力で」と伝えると、体験が生活にいきるようになりますね。』


また、「解説」でも、力を緩める感覚は言葉だけの説明では身につかないということが書かれています。
『力が入りすぎて、体の動かし方が不器用というのは、体の中に感じる固有覚の鈍感さがやはり原因だと思います。この感覚の中でも、物の重さや固さを感じる感覚がうまく働かないと無駄な力が入りすぎたり、逆に入らなかったりして、不器用な働きになります。
重さや固さが感じにくく、物をつかむ時や持つ時に指の関節や手首にどのくらい力を入れるのか、どれくらいの角度を保つのかがわかりません。また、筋肉の使い方の加減もうまく調整できません。「ゆっくり持つ」「そっと置く」など、言葉だけで説明するだけでは、いくら繰り返し練習してもできないということになります。
ですから、見て、感じて、具体的な力の入れ方を練習するということで、子どもが少しずつ変化していきます。ここでも、根気よくというのがキーワードになりますね。』

 

今回、「はじめての療育」を勉強させて頂き、特にボディイメージの理解(「じっとしていられない」、「自分のからだはどこ?」、「力の入れ方がわからない」)を深めることができたことは、とても良かったと思います。