筋膜について

『人間のカラダには、自ら守るための実にさまざまな機能がある。たとえば筋肉が切れないように筋紡錘が見張っていてくれたり、自由に活動できるように、筋膜が伸び縮みしてくれたり。何もなく生活できるのは、こんな安全装置のおかげなのだ。しかし、これらが過剰に働きだしたり、逆に機能不全に陥ると、安全は一気に危険へと変わっていってしまうのである。』

 

引用:「Tarzan」(マガジンハウス社)

筋膜は昨年9月に放送された、NHKの「ためしてガッテン」で注目度がアップしたように思います。腰痛・肩こりをトリガーポイントの視点から特集した雑誌「Tarzan」にあるように「筋膜が伸び縮みしてくれる」ことは健康な体の条件の一つです。
このブログでは、筋膜の構造および悪い状態とはどんなものかをご紹介します。また、「適応疾患」の内容と一部重複しますが、肩こり・首こりについて記述したいと思います。

筋膜の構造
筋膜はコラーゲン(膠原線維)とエラスチン(弾性線維)という2種類のタンパク質からなり、これらが縦横に織り込まれてガーゼのような膜を作っています。そして、これが何層にも重なることで筋膜に厚みと強さが生まれます。この2つのタンパク質は対照的で、コラーゲンは皮ベルトのように丈夫ですが伸縮性が4%と低く、一方、エラスチンは2~2.5倍に伸び縮む軟らかい性質をもっています。これらの異なる性質の線維を組み合わせることにより、伸び縮みを確保しつつ、丈夫なコラーゲンによって筋膜が広がりすぎて破れるということを防いでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「Tazan」(マガジンハウス社)

筋膜はボディスーツのように体全体を覆っていますが、1種類ではなく役割ごとに分かれています。皮膚に続く筋膜が浅筋膜でその下に深筋膜があります。さらに各筋肉を包んでいる筋外膜、その内側にあって筋線維を束ねている筋束を包む筋周膜、そして個々の筋線維もまた筋内膜と呼ばれる筋膜に包まれています。このように各筋膜により筋線維はバラバラになることはありません。 

皮膚に近く、体全体を包んでいる浅筋膜と深筋膜では、痛みが発生するとその痛みは離れた部位にも広がるという特性をもっています。


画像出展:「Tarzan」(マガジンハウス社)

皮膚に近い浅筋膜は脂肪組織と疎性結合組織という2つの組織から構成され、筋膜内に浅動脈・浅静脈・皮神経・リンパ管を持っており、体を守る重要な働きを担っています。

脂肪組織は断熱により熱の損失を防ぎ、また物理的な外傷から筋を保護しています。

疎性結合組織は半液状の基質が大部分を占め、その中にまばらな線維(膠原線維、弾性線維、細網線維)と比較的少数の細胞(膠原線維を産生する線維芽細胞、脂肪細胞、大食細胞、肥満細胞、形質細胞に加えて、しばしばリンパ球や好酸球など)を見ることができます。

浅筋膜の下にある深筋膜は不規則性結合組織で、筋あるいは筋群の表面を包む結合組織性の膜であり、状態は一様ではありません。深筋膜は筋をその位置に支持し、収縮を制限するため、線維の方向が筋線維に対し直角のものが多く、筋の起始あるいは停止となることもあります。

筋肉単体を包む筋上膜と筋線維束と呼ばれる束を束ねている筋周膜は、深筋膜と同じ不規則性結合組織ですが、1つ1つの筋線維を取り巻いている薄い膜である筋内膜は疎性結合組織になります。

注)引用:「国際筋膜研究会:筋膜・リンパ研究部門」http://ifri.blog34.fc2.com/category4-2.html

筋膜の障害
筋膜は運動不足や悪い姿勢を長期間続けること、あるいは強い負荷で反復動作を繰り返すことにより障害されます。これは細胞外基質の流動性が落ちてドロドロになり、ゼラチンのように固まり(これをゲル化といいます)、コラーゲンやエラスチンの新陳代謝を妨げることによって、筋膜の復元性が低下してしまうためです。復元性が下がると、細胞外基質の流動性はさらに低下し、コラーゲンに糖質がつくグリケーションという現象が発生します。ベタベタした糖質によってコラーゲンは絡み合い、エラスチンの復元性を邪魔します。

こうして筋膜にねじれや突っ張りが生じてくると、隣接する筋肉の動きが制限されて血液循環が悪くなり、ついには凝りや痛みとなって自覚されるようになります。
何故、血液循環の悪化によって痛みが伴うのかというと、血液の滞りによって酸欠になった組織の血流を回復させようと、循環の局所性調節が行われるのですが、そこに登場する化学物質の中に、発痛物質でもあるプロスタグランジンなどがあり、それらの発痛作用によって痛みが発生することになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画像出展:「細胞と組織の地図帳」(講談社)

この図は上から、表皮、真皮、皮下組織(浅筋膜)を表したものです。皮下組織(浅筋膜)には動脈、静脈、神経があります。右側に見えるファーター・パチニ小体は圧変化と振動を感知する感覚受容器です。

なお、この図では皮下組織(浅筋膜)と筋肉の間の動脈と静脈が通っている層が深筋膜になります。

肩こり・首こり
一般的に1本の腕の重さは体重の6.5%といわれていますので、体重60kgの人であれば、約4Kgということになります。例えば、パソコン作業などで腕を水平状態にしていると、重力が4kgに近い力で下から引っ張り続けているというイメージになります。
こうなると、肩周辺の筋肉は作業時間中、収縮した状態が続くことになり、やがて筋肉や筋膜は疲労し血行が悪くなります。さらに緊張状態やイライラ状態などの精神的ストレスが加わると、自律神経の中の交感神経が優位な状態になるため、血管は狭くなった状態が定常化します。こうして肩こりはつくられていきます。
一方、頭の重さは首を傾ける角度により負荷が増えていきます。これについての研究データによると、傾き0度のときは頭の重さとイコールで約5kgだそうです。これが15度傾けると12Kgに、傾き30度では18Kg、同じく45度で22Kg、そして60度になると27Kgまで増えるようです。このように、パソコンやスマホなどを長時間使い続けることは、首への負担も非常に大きく、首のこりとなって表れます。