オートファジーとパーキンソン病

大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞の栄誉に輝きました。特に単独受賞は1987年の利根川進博士以来ということで快挙とのことです。
私がオートファジーの話を出すのは、明らかに無理があるのですが、オートファジーが特に家族性パーキンソン病の原因に関係しているということだけは知っていました。
かなり乱暴ですが、私が理解しているパーキンソン病との関係は次の2点です。
①細胞の中でエネルギーを作り出す、工場のようなミトコンドリアが鍵を握っている。
②不良なミトコンドリアを掃除し、品質維持を担っているのがオートファジーである。

この内容は、「医学のあゆみ」という雑誌のバックナンバーを読んで知りました。
その雑誌には、大隅教授の受賞について感想を語る姿が、度々テレビに映し出されていた水島昇教授が、その冒頭の「はじめに」を書かれていましたので、ご参考として、その内容を引用させて頂きたいと思います。

 

『オートファジーによるミトコンドリア分解、すなわちマイトファジーの研究がこれほどまでに活発になるとは10年前にはとうてい予想できなかった。もはやオートファジー研究とミトコンドリア研究にまたがる融合的研究領域というレベルをはるかに超え、それぞれの領域の主要研究テーマに成長した。
大きなきっかけは、2008年にアメリカNIH(アメリカ国立衛生研究所)のYoule研究室によって家族性パーキンソン病原因遺伝子であるPARK2/ParkinおよびPARK6/PINK1が不良ミトコンドリアの分解に関与することを示したことである。それ以前にもオートファジーがミトコンドリアを比較的好んで分解すること、パーキンソン病とミトコンドリア異常が関係することは知られていたが、ついに分子レベルでの実体が急浮上したのである。

以降、日本を含めて世界的にParkinとPINK1の詳細な分子機能の研究が怒涛のごとく推進され、本特集で紹介するようなモデルに到達している。しかし、マイトファジーに関する多くの研究は培養細胞で行われており、マイトファジーの異常が真にパーキンソン病の病態を説明できるかどうかはまだ十分とはいえない。

これは実際の脳でのマイトファジーを評価することが困難であることや、Parkinのマイトファジー以外の機能(ミトコンドリア外膜蛋白質分解など)の貢献が十分解析されていないことなどが理由である。
一方、パーキンソン病と関連しない分野でもマイトファジーの研究の進捗は著しい。出芽酵母では、ミトコンドリア認識に関するレセプター分子Atg32が発見された。しかし、これは哺乳類には保存されておらず、哺乳類ではp62などのアダプター分子や他のレセプターによる認識に加え、オートファジー因子に依存しない認識機構も提唱されている。

一方、ミトコンドリアの母性遺伝という生物学の大問題についても、少なくても線虫ではマイトファジーの関与が明らかになっている。
さらに、ミトコンドリアの品質管理は上述したパーキンソン病のような神経変性疾患だけでなく、がんをはじめとする多くのヒト疾患とも密接に関連することが予想される。基礎から応用に至る幅広い分野でマイトファジーから目が離せない状況はまだ続くと考えられる。本特集がその一助となることを期待したい。』

こちらは、目次になります。