第5章 リンパの流れが滞ると・・・?
5-3 リンパ浮腫をどう治療するか
●複合的理学療法(保存的リンパ浮腫治療法)
① 感染予防などのスキンケア
-外傷に注意して水虫などの皮膚疾患を初期に治療し、皮膚の状態を管理する。
② 用手法リンパドレナージ
-手のひらを利用した軽めのやわらかいマッサージである。軽く触れることが重要で触覚を刺激し、神経も鋭敏に反応する。流れの悪いリンパ管から正常な働きのリンパ管に向かってリンパの流れを誘導する。
-ドレナージには「排液」という意味がある。リンパドレナージは1995年に国際リンパ学会で採用された。
-リンパ管網は皮膚の浅いところに分布しているので、筋肉ではなく皮膚を全体的にずらすように刺激すると組織液の吸収がよくなる。あくまで軽くやわらかくゆっくりと、そしてリズミカルにマッサージを行う。
③圧迫療法(バンデージ)
-弾性包帯やストッキングを用いた圧迫などによって、逆流防止のみならず、静脈やリンパ管の筋ポンプ作用を活発にすることで患部の鬱血を防止する。
-注意すべきは圧迫の強度によって、痺れや痛みが出ないこと、手足の動きに支障がないこと、足先が白くなったり(動脈閉鎖)、鬱血したり(静脈閉鎖)しないように気をつける。
④圧迫したうえでの運動療法
-リンパ管は主に筋膜と皮下組織に存在するため、圧迫することで筋肉の動きがリンパ管に作用を及ぼすことができる。
第6章 リンパと免疫のふしぎな関係
6-1 リンパとリンパ球
●ヒトのからだは体表(皮膚)を介して外界と接している。そして、消化器系や呼吸器系はからだの内部ではあるが、“内なる体表”として外界と接している。そのため、いずれも常に多くの微生物や異物にさらされており、その侵入を防ぎ恒常性を維持するために、生体防御のシステムが備わっている。生体防御のしくみには非特異的な反応と特異的な反応があり、後者が「免疫」であるが、この免疫に関わっているのがリンパである。
●リンパ(リンパ液)には血液の血漿に相当する液体成分(リンパ奨)と細胞成分(主としてリンパ球)が含まれている。
●胸管やリンパ節の輸出リンパ管内のリンパは、免疫担当細胞である多数のリンパ球を含んでおり、全身をめぐって局所の臓器における免疫反応を担っている。
6-2 ミクロの戦士・リンパ球の働き
●胸腺やリンパ節、脾臓、骨髄はリンパ球を産生し、分化・成熟させる機能をもつことから中枢性(一次)リンパ器官とよばれている。一方、リンパ節や脾臓、消化器・呼吸器の粘膜に付属したリンパ組織(扁桃や虫垂、パイエル板など)は、末梢性(二次)リンパ管とよばれている。
●『抗原がどんどん増えてリンパ節の中のリンパ球などを攻撃し、「免疫戦争」が拡大すると、リンパ節内の免疫担当細胞が分裂・増殖し、リンパ節が肥大していきます。このとき、リンパ節の腫れに伴って痛みや発熱が生じる場合もあります(リンパ節炎)。風邪やのどの病気(感染症)の診断の際には、頸部の触診によってリンパ節の腫れ(ぐりぐり)が確認できます。』
※武勇伝?
『49年前の高校3年生の冬、高校サッカー選手権県予選決勝戦の翌日、とあることから救急搬送。救急車の中で「〇〇〇[近所の悪名高い病院]だけはやめてください!」との懇願も却下され、無情にもその恐ろしい病院へ連れていかれる。幸い点滴が効いて翌日には完全復活。一点残った問題は頸部リンパ節の直径2~3cmのぐりぐりとした腫れ。
「こりゃ~くるな!?」と身構えていると、「リンパ腺を取りましょー」との担当医からのかるい一言。
予想通りの展開に用意していた質問をぶつける。「切らなければならない理由を教えてください」。しかし、具体的な理由は皆無。「理由がないなら、絶対切らせない!!」と瞬時に決意を固める。
という展開で押し問答へ、そして… ついに、先生からの怒りの「勝手にしろ!!」。待ってましたとばかり、即、自主退院。徒歩約10分、自宅に帰りお金をもって病院に行き支払いを行う(多分。記憶はあやふや)。それ以降、頸部のリンパの腫れ(リンパ節炎)は一度もなく今日まで暮らしてきた。幸い、今のところこれといった持病もなし。』
という経験談を思い出し、AIに「リンパ節炎の際、リンパ節を摘出する場合はどんな場合ですか?」と質問しました。以下がその回答です。

画像出展:「AI(Perplexity Pro)が作成」
『リンパ節炎は保存的治療で改善するため、摘出は最後の選択肢として考慮されます。』
(49年前の“高校3年生 vs 医師”との対決は自分自身の身を守る適切な行動だったと思います)
●リンパ球のほとんどは細胞質の占める割合が極めて小さく、「免疫現象」(細胞性免疫能)が研究される以前の1950年代の頃は、リンパ球は「すでに分化し終えた終末の細胞」と見なされ、機能不明の“謎の白血球”だった。1960年代に感染症などに対する複雑な免疫反応のメカニズムが調べられることになり、リンパ球は“ミクロの戦士”として「免疫反応」という劇場の主役に躍り出た。
●胸腺は未熟なリンパ球を成熟させる「免疫学校」である。胸腺の発生の早い時期に、すでに骨髄でつくられていた未分化・未熟なリンパ球が、リンパ管のない骨髄から血管に入り、循環血液に乗って一部、胸腺に入る。胸腺内では、そこにある特殊な細胞や液性因子の働きによって骨髄から来たたくさんの幼い未熟なリンパ球を“教育”し、免疫担当能力をもつリンパ球へと分化・成熟させる。
●リンパ球のもう一つの集団であるB細胞は、胸腺で成熟するT細胞とは異なり、他のリンパ組織である骨髄で成熟する。
6-3 さまざまなリンパ組織たち
●脾臓は腹腔の左上隅で横隔膜の直下にあり、腹膜に包まれた臓器である。骨髄と同様、血液をつくる造血器であり、リンパ組織として免疫機能に重要な役目を果たす。
●脾臓内には白血球が集合するリンパ組織である「白脾髄」がある。これは血液中の異物や細菌など(抗原)を取り込んで処理するとともに、生体防御のための抗体産生を行なう。
●赤みを帯びた「赤脾髄」は多量の血液を貯蔵し血液量を調節している。ヒトでは600~800mlもの血液を貯蔵できる。
●脾臓は病的や老化した赤血球を手際よく解体処理する。さらに、赤血球と結びついて酸素を運ぶヘモグロビンの鉄やタンパク質などを再利用するために貯蔵し、骨髄での造血に役立てている。
●右下腹部の激痛は“盲腸”とよばれてきたが、近年では虫垂の炎症として「虫垂炎」として理解されている。虫垂の特色はよく発達した集合リンパ組織であり、あたかも扁桃(アーモンドの形をし、粘膜上皮の下層に形成された粘膜関連リンパ組織)のようであり、“腸の扁桃”とされている。古くから退化性の有害無益な器官とみられていたが、近年ではリンパ器官としての免疫学的意義が見直されている。
6-4 リンパ流の関所
●「リンパ節」はリンパ管の走行途中にあるリンパの濾過装置である。これは関所のような存在で、ここでリンパの中の異物(タンパク質)や細菌などの抗原がせき止められ、マクロファージや樹状細胞などに取り込まれて抗原情報としてヘルパーT細胞に伝えられる。
●リンパ節はやや扁平なソラマメ状で、直径1mmから2.5cmぐらいまで、体の部位によって数も様々である。脂肪細胞に埋まって鎖のように連なり、ヒトでは平均650個、特に胃や腸など消化器周辺に約200個と多く分布している。
感想
ブログ“氣とは何だろう4(東洋医学概論編)”で、「広義の気」については、「精・気・神」の三宝が特に重要ではないかとのことを書いています。また、精・気・神の「精」は消化器系・代謝系、「気」は呼吸器系・循環器系、「神」は神経系とイメージしたいとも書きました。これはあくまで私個人の考えです。
「系」とつくものには、他に内分泌系、運動器系、泌尿器系、生殖器系などがありますが、免疫系もその一つです。すべてが重要なのは言うまでもないことですが、全身に隈なく存在し、日常的な健康維持に直結するという観点から考えると、免疫系も決して外すことのできない重要な機能です。さらに付け加えると免疫系はリンパ系を含んでいます。
東洋医学の津液は、「血液以外のすべての体液」と定義されていますが、その代表的存在として、全身に展開され血液と密接な関係のリンパ液に注目したいと思います。
1.血液とリンパ液の違い

YouTube:「リンパ系の解剖生理~リンパ循環、免疫機能、脂質輸送、リンパ管の走行など~」(15分57秒)
こちらは、“ネコかん【ネコヲの解剖生理学】”さまのサイトからお借りしました。
リンパの働き
①リンパ循環
②リンパ機能
③脂質輸送
血管とリンパ管という循環系が二系統あることによるメリットは以下になります。
リンパ循環は血管から外に出た白血球や血漿を集め静脈に戻しています。もし、これらが血管の外に出ていくことがなかったならばリンパ管は不要なのではないか。その場合、人体にどんな影響があるのか?その疑問をAIに聞いてみました。
血管外に出ていくのは白血球だけでなく血漿も出ていきます。そして、この働きによって免疫力は増強されます。「気」は「血」を推動するとされており、相互作用の強さから「気血」と呼ばれることもあります。一方、「気・血・津液」の「津液」について、第二の循環系であるリンパ液を狭義の津液とするならば、「気・血」を「気血」とするように、「気・血・津液」を「気血津液」と一体的に捉え、「気血津液は免疫と密接に関係している」と言っても良いのかもしれません。
それは以下の2つの図の血管(動・静脈)とリンパ管の密接な関係(左)および働き(右)からも想像できます。津液を限定的、そして主観的に断言することは適切ではありませんが、津液と気血の結びつきを考える一つの見方のように思います。
内臓をコントロールする自律神経は血管の太さを調整し、それにより血液の流れは変わります。リンパ管はどうなのか、この疑問も質問したところ、リンパ管も自律神経にコントロールされていることが確認できました。