経絡≒ファシア12(まとめ)

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

鍼治療とファシアの関係、また、鍼治療は体にどんな影響を与えるのか、という視点から整理したいと思います。

そこで、まずはブログ1から11までの内容をチェックし、特に重要と思ったものを“ファシアの概要”、“ファシアの機能”、“ファシアの構造”、“その他”の4つに分類しました。その中の“ファシアの概要”は下の2つの図の後にあります。

皮下組織
皮下組織

画像出展:「人体の正常構造と機能」

上から“表皮”→“真皮”→“皮下組織”になります。“浅筋膜”は皮下組織の部分です。

 

 

深筋膜
深筋膜

画像出展:「Tarzan」

深筋膜は浅筋膜(皮下組織)と筋(筋外膜)の間にあります。

また、図には書かれていませんが、深筋膜と筋外膜の間には、疎性結合組織の層が存在しています。

 

 

ファシアの概要

・筋膜は身体全体を通して広く分布して、不規則でさまざまな密度のコラーゲン線維を織り混ぜたもので構成される結合組織の形態を示す。

・筋膜は身体において複数の役割を果たす。大部分の構造物を覆い保護力は高く、また潤滑機能を提供する。

・筋膜は疎性結合組織によって分けられる重複層として配置されており、様々な層間での滑走性を可能にする。そして、神経と血管を保護し筋膜が被る牽引から緩衝する。

・内臓か身体かにかかわらず、身体の臓器系は高度に分化した組織から構成されており、維持のために複雑な支持機構を必要とする。この支持機構はコラーゲン線維およびエラスチン線維を含む結合組織ネットワークであり、すべて筋膜と称される。線維成分の密度は個体あるいは局所的に大きく変化する。

・筋膜は結合組織の様々な構成要素間にある任意の境界線を明確にしないという重要な特徴をもっている。

身体最大の系である筋膜系は他のすべての系と接する唯一の組織である。

筋膜は身体の織物である。つまり身体を覆う衣服ではなく、材料としての縦糸と横糸である。筋と骨、肝臓と肺、腸と泌尿器、脳と内分泌物といったその他の組織は、膜の織物の中に縫い込まれている。

上記の青字は、特に[経絡≒ファシア]を連想させます。私は[経絡≒ファシア]であると確信します。しかし、生まれも育ちも異なる“ファシア”と“経絡”を[=]とするのには抵抗があります。

なお、”経絡≒ファシア1”でご紹介した“経絡”とは次の通りです。

経絡とは、気血の運行する通路のことであり、人体を縦方向に走る経脈と、経脈から分支して、身体各部に広く分布する絡脈を総称するものである。』

ファシア(まとめ)
ファシア(まとめ)

上記の表内の青字は鍼治療を「ファシアに対する機械的ストレス」とみなしたときに、特に注目すべきと思った個所ですが、以下に抜き出します。

ファシアの機能

・肥満細胞はヘパリン、セロトニン、ヒスタミンを産生する。

・肥満細胞が活性化されると、顆粒を基質に放出して血流と免疫防御を活性化する。

・脂肪細胞はエストロゲンだけでなく、ペプチドやサイトカインも分泌する。

・筋膜の緊張調節と交感神経の活性化の間には、潜在的に緊密な関係がある。

・コラーゲン線維は、機械的ストレスに対して適切に調整する。

・組織の形状の変化は電気電圧の変化につながる。分子はこの圧電性活動を利用する。

ファシアの構造

・リンパ管と毛細リンパ管がある。 

・豊富な動静脈吻合を提供する。

・神経線維は全ての深筋膜内に存在し、神経線維は特に血管周囲に多い。

・疎性結合組織層(深筋膜と筋外膜の間)には多くの血管が存在する。

・結合組織と筋膜には神経が豊富に分布している。

・コラーゲン線維は種々の方向に緊張して変形するので網状組織が生じる。

・病的クロスリンクは網状組織の可動性を減少させ関節包の縮小や筋の短縮に至る。

・筋膜にはマクロファージ、肥満細胞や免疫細胞が存在している。

その他

・内受容は筋膜受容器、感情、自己認識の間の複雑なつながりにおける新しい相互関係である。

・内受容性神経終末への機械刺激は交感神経に関与し、局所の血流を増加させる。

・細胞の損傷は生物フォトンの生成を促進する。

まとめ

コラーゲン線維は、機械的ストレスに対して適切に調整するとあります。つまり、鍼治療がファシアに作用することは明らかです。また、「コラーゲン線維は種々の方向に緊張して変形するので網状組織が生じる」とあり、さらなる“病的クロスリンク”は「網状組織の可動性を減少させ関節包の縮小や筋の短縮に至る」とされています。

一方、ファシアは、神経線維、血管、リンパ管、動静脈吻合、マクロファージ、肥満細胞、免疫細胞、脂肪細胞、さらに各種受容器などを含んでいます。特に肥満細胞はヘパリン、セロトニン、ヒスタミンを産生し、脂肪細胞はエストロゲン、ペプチド、サイトカインを分泌します。また、筋膜(ファシア)の緊張と交感神経には緊密な関係があります。

さらに興味深いのは、組織の形状の変化は電気電圧の変化につながるとされ、また、細胞の損傷は生物フォトンの生成を促進するとされています。さらに、内受容(筋膜受容器、感情、自己認識の間の複雑なつながりにおける新しい相互関係)にも関与しています。

以上のことから、ファシアへの鍼治療(機械的ストレス)は、ファシアが有する機能や構造に加え、電気電圧、生物フォトン、そして、内受容などを通して心身に影響を及ぼします。

ご参考:生物フォトンと君火・相火

生物フォトンをご研究されている(”稲場フォトンプロジェクト”)、東北大学の稲場文男先生は、生物フォトンについて「生物活動の活発なありさまを教えている」、「生物活動をリアルタイムで知らせる光の情報である」と説明されています。

一方、””については東洋医学においても注目すべきものがあります。それは”君火”です。また、この君火と対比して存在しているのは”相火”であり、こちらは””を意味しています。

この”君火・相火”について、何か説明されているサイトがないか探したところ、「日本エネルギー学会」さまのホームページにそれはありました。

君火・相火
君火・相火

君火・相火

『陽火・陰火のことである。君火は明るさを特色とし、相火は温熱を保持することを本分とする。全ての火を観察するとその気と質に上下がある。そもそも明るさとは光であり、火の気である。位とは形であり、火の質である。一寸の燈明が室いっぱいに明るく広がるのは火の気によるものである。また、炉にみちた炭が熱があっても焔がないのは火の質によるのである。

焔も炭もみな火である。しかしながら、焔が明るい時は熱が弱く、焔が立ち上がらずにこもっている時は熱が強い。気が動ならば、質は静と云える。(出典 張介賓(明)撰「類経図翼」1624) 』

張景岳『類経図翼』
張景岳『類経図翼』

張景岳『類経図翼』

張景岳の”景岳”は、張介賓の”号”になりますので、同一人物です。

左の絵は、”九州大学附属図書館企画展 「東西の古医書に見られる身体」-九州大学の資料から-」”というサイトに出ていたものです。

また、”京都大学貴重資料デジタルアーカイブ”には「類経図翼」の膨大なデジタル資料が閲覧できるようになっていました。

経絡≒ファシア11

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

4.3 細胞外マトリックス

・細胞外マトリックスは基本的に3つの成分、結合組織線維(コラーゲン線維とエラスチン線維)、基質(グリコサミノグリカン〔GAGs〕とプロテオグリカン〔PGs〕からなる)、非コラーゲンリンク蛋白質から構成されている。

・マトリックスは様々な結合組織によって生成される。

・マトリックスと個々の成分間の構成は、それぞれのケースで細胞に影響をおよぼす機械的ストレスによって左右される。大量の水はマトリックスと関連している。その機能の1つは栄養素と老廃物の拡散という不可欠な過程を可能にする。

機械的ストレスによる結合組織の生成
機械的ストレスによる結合組織の生成

画像出展:「膜・筋膜」

 

コラーゲン線維

・コラーゲン線維の再構成期(“ターンオーバー”)は通常300~500日である。

・コラーゲン線維は結合組織の中で水に次いで2番目に豊富な構成要素であり、体内の蛋白質の約30%を示す。

・コラーゲンの型

-最も重要なコラーゲンの型は、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型である。これらが全てのコラーゲンの約95%を占めている。Ⅰ型コラーゲンはこれらの95%のうちの約80%を占める。

・コラーゲンの構造

-コラーゲンは、基本的に3つの長い蛋白質連鎖(ポリペプチド)で構成されており、各々が左巻きの螺旋構造を有している。これらは“αヘリックス”とよばれる。

コラーゲンは500~1,000㎏/㎠という鋼よりも強い抗張力を有するが、このコラーゲンの安定性は生理的なクロスリンクに依存している。生理的なクロスリンクはコラーゲン分子内の個々の蛋白質連鎖の間に存在しており、結果としてコラーゲン分子が互いに結びつく。クロスリンクの発生、特定のアミノ酸の生化学架橋の結果である。そしてクロスリンクの形成にとって重要な成分の1つがビタミンCである。

・コラーゲン網状組織の構造

コラーゲン細線維とコラーゲン線維から形成されたコラーゲン分子の三次元組織は、機械的ストレスに対して適切に調整する。組織の形状の変化は、電気電圧の変化につながる。分子は組織の体系に編成するために、この圧電性活動を利用する。

ストレス(応力)が常に同じようにかかっている場合、コラーゲン線維は常にその力の方向に応じて向きを合わせ、結果として平行に走行することになる。この場合、緊張した結合組織がその形状に関連する。このように形成された結合組織は、腱、靭帯、腱膜などに発生する。

ストレスが常に色々な方向からかかっている場合、結果として織り交ぜられた格子状になる。これは、まだ形をなさない緊張した結合組織として知られている。これは関節包、筋膜、神経内、筋内の結合組織にみられる。

-基質は交差したコラーゲン線維の間にみられる。線維は水が結合することによって、互いに摩擦なく動くことができる。

基質が減少するといった病理的状況では、コラーゲン線維は互いに接近し病理学的なクロスリンクを形成する。このような病理学的な連結は、コラーゲン網状組織の広がる能力を低下させる。

-組織内の病理学的なクロスリンクを緩めるために、セラピストは間欠性の伸展刺激を用いて移動性をもたせる。この刺激は線維芽細胞を刺激してコラゲナーゼ(病理学的なクロスリンクを再び壊す酵素)の合成を増やす。

エラスチン線維

・エラスチン線維は主に疎性結合組織、弾性軟骨、皮膚、血管壁、腱、靭帯内にみられる。

基質

・基質はGAGs(グリコサミノグリカン)、およびPGs(プロテオグリカン)と凝集体からなる。GAGsは細胞内と細胞外空間の両方に存在する。PGsとPG凝集体は、細胞、コラーゲン線維、エラスチン線維と結合し、それ自身を水に結合する。

・機能

PGs(プロテオグリカン)とGAGs(グリコサミノグリカン)は、コラーゲン線維とエラスチン線維、細胞と水を結合することによって、結合組織を安定させる。

PGsとGAGsはまだ形を成さない組織に作用する力を吸収し、過度のストレスからコラーゲン網状組織を保護する。

-基質は中心部にある軟骨、椎間円板などにかかる圧縮力を吸収する。

PGsとGAGsにかかる強い負の負荷は、水の結合する能力をもたらし、その粘弾性によって組織は元の形に戻ることができる。結合した水によって、コラーゲン線維は摩擦なく互いに動くことができる。同時に、蓄えられた水は栄養や老廃物の輸送経路としても機能する。

-PGsとGAGsは弾性と安定性を有しているだけでなく、バリア機能と保護機能を有している。

非コラーゲン・蛋白質

・リンク蛋白質は、非コラーゲン・蛋白質とよばれる。リンク蛋白質の主な役割は、コラーゲン線維を細胞膜に結合することである。

・人体の60~70%は水である。このうち、約70%は細胞内、約30%は細胞外に存在する。細胞外の水の約67%は間質液として細胞間に存在し、最高で約20%は血管の血液成分である。残りの13%は脳脊髄液、神経系の軸索原形質液、眼、関節、腹腔内などの細胞に存在する。

・水は輸送手段や溶媒として機能し、摩擦の軽減し、熱緩衝剤として機能する。

・水は酸化と還元が可能である(体内の化学反応の99%は水を必要とする)。

・水は組織に容量を与え、機械的機能を有している。

疼痛に起因する交感神経反射活動の増加によって灌流が減少した場合、筋膜の液体の生成が減少する。そして次に可動性が損なわれ、制限が増加する。

要約

マトリックスは非常に強い機械的な力から保護する。

・コラーゲン線維とエラスチン線維から成る網状組織と基質への力は、リンク蛋白質を経て細胞膜へ伝達される。これらのシグナルは細胞を刺激し新しいマトリックス成分を合成する。これはマトリックスの生理学的な分解を調整し、組織の安定性と可動性を維持する。

負荷や刺激の減少は細胞の合成活動を減少させ、マトリックス成分の喪失につながる。これにより、病的なクロスリンクが形成され、低レベルの安定性や可動性の制限が生じる。

・セラピストの重要な任務は、治療と再生過程を促進して、可動性と安定性を回復するために疼痛を引き起こすことなく、徐々に増加する力の大きさに適用させていくことである。

4.4 筋膜の特性に関するpHと他の代謝因子の影響

pH調整と筋膜組織への影響

細胞内と細胞外のpHは、体内のすべての生化学反応の重要な決定因子の1つである。

・pHはラテン語のpotentia Hydrogeniiと関係があり、酸性の強さ、つまり陽子(プロトン)である水素イオン濃度を表す指標である。

・身体の器官、免疫系、凝固および他のすべての系は、最適なpHである特定の環境で機能する必要がある。

・血液の正常pH値は7.36~7.44と狭い。7.0より低いあるいは7.7より高い病態生理学的状態になると、ヒトは臓器不全により死亡する可能性が高くなる。

腎臓と肺は、血液中の緩衝成分に作用することによって、血液をpH7.4に維持するために共同で働く。

筋膜機能へのpHの影響とは?

・『これまでに筋膜機能に対するpHの影響を検討した十分な研究はない。しかしながら、Pipelzadehらはラットの背面下部の浅筋膜を用いた実験を行った。彼らはクレブス液(pH6.6)を含んだ乳酸を浅筋膜に還流させると、アデノシンもしくはメビラミンによって誘発されることを示した。(Pipelzadeh & Naylor 1998)。対照的に、アルカリ性の状態は筋線維芽細胞における作動薬誘導性の収縮に影響をおよぼさなかった。本研究は、サンプルサイズが小さいということと、追加の調査によってまだ結果を検証していない(反証をあげていない)ということに留意する必要がある。しかしながら、著者らは、このpH現象は、成長因子や他の因子と比べて創傷収縮や治癒の重要な因子になる可能性があると結論づけている。』

“pHってなんだ?”
“pHってなんだ?”

画像出展:「東邦大学医療センター

東邦大学医療センター 大森病院 臨床検査部さまのサイトにpHに関して、分かりやすい説明が出ています。

なお、画像は大塚将秀先生の『Dr.大塚の血液ガスのなぜ?がわかる 基礎から学ぶ酸塩基平衡と酸素化の評価 学研メディカル秀潤社2012』からです。

 

●成長因子

・コラーゲンは腱の線維芽細胞で生成される。張力の主な方向に沿って並列に配列される。

・腱の線維芽細胞は腱を維持するために重要な役割を担っている。恒常性の変化に適応し、腱組織に障害がある場合に再構築を行う。

・線維芽細胞は重要な機械受容細胞である。

・コラーゲン合成を刺激するいくつかの成長因子は、機械的負荷に反応して発現する。最も重要なのは、トランスフォーミング増殖因子-β1(transforming growth factor-β1:TGF-β1)、結合組織増殖因子(connective tissue growth factor:CTGF)、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor-1:IGF-1)である。

・靭帯では負荷により誘発されるコラーゲンⅠ、Ⅲ型の発現は、TGF-β1活性が影響すると考えられている。

●レラキシン

・レラキシンは二量体のペプチドホルモンであり、ペプチドのインスリンファミリーと構造的に関連している。これは、ほぼ80年前に発見された。おもに妊娠中の卵巣および胎盤で生成されて、当初は妊娠ホルモンとみなされていた。そのレラキシンはコラーゲンのターンオーバーにおける重要な介在物質であり、いくつかの器官を線維症から保護しているというエビデンスが提示された(Samuel et al. 2005a,b)。そして、レラキシンは将来の抗線維化薬剤として浮上している。慢性炎症に伴う線維化によって生じる筋膜拘縮の薬剤となる可能性がある。

●コルチコステロイド(副腎皮質ステロイド)

・『コルチコステロイドはコラーゲン産生を抑制することでデコリン遺伝子の発現を減少させ、腱細胞の増殖および活性を阻止する可能性がある(Chen et al. 2007)。そのうえ、コルチコステロイドの注射後、腱治癒のために重要な腱細胞の移動が遅延する(Tsai et al. 2003)。腱細胞の代謝に対するこのようなコルチコイド関連の障害は、腱の構造的健全性に影響をおよぼし、その機械的特性を弱める可能性がある。』

4.5 筋膜組織における流体力学

・間質液中の塩分(NaCl:塩化ナトリウム、KCI:塩化カリウム、CaCl₂:塩化カルシウム)と海水の塩分の濃度比率がほぼ同じである。我々の細胞は間質液の海の中にあるゲル状構造を泳いでいるようなものである。

・結合組織は、細胞(線維芽細胞と白血球)、間質液、線維(コラーゲンとエラスチン)とマトリックス分子(糖蛋白質とプロテオグリカン)からなる。

・間質液は栄養素、老廃物、伝達物質を輸送するための空間をつくり、実際に細胞外領域と細胞内領域の間の恒常性を促している。

・リンパ系では供給物を間質液の海の外へ濾過し、静脈系に排出する。

・機械的情報伝達の機械的シグナルは、細胞核や他の細胞小器官に伝達されており、遺伝的な“調整”を可能にしている。

間質液の特性

・水の構造は完全に理解されていない。水は小さな分子で形成され、非常に汎用性がある。Szent-Gyorgyi(1975)は、水を“生命のマトリックス”とよんだ。そして水は複雑で緻密、かつ必要不可欠な方法で細胞と分子に相互作用する。

・水分子は強固な水素結合によって、20の表面をもつ“正二十面体”を構築しているようにみえる。しかし、水は静止していない。水素結合はフェムト秒からピコ秒の周期で絶えず成形と破壊を繰り返している。水分子の再配列は超高速である。

・水分子は水素結合を壊すことなく、膨張した形態と崩壊した形態に変形することが可能である。

間質液の形態学的な質

・細胞マトリックスの分子と線維は、間質性のゲルの特性を左右する。

・線維芽細胞、マトリックス分子、酵素、酵素阻害剤は結合組織のゼラチン基質の組成を調整する。

・間質性マトリックスの組成は、結合組織の機械的性質と同様に、毛細血管と実質細胞の間の栄養素と老廃物に対する輸送を左右する。

細胞間の伝達媒体としての間質液

・マトリックス分子のように、コラーゲンと水分子の両者は導電特性と分極特性を有しており、分極波が可能である。

・陽子は電気信号が神経によって伝導されるより非常に速く、コラーゲン線維に沿って“跳ぶ”ことができる。

・水分子は双極子を構成するので、水の流れはエネルギーと情報の流れを意味する。

結合組織の伝達の手がかりには、多くの要素があると考えられる。

1.機械的:線維、マトリックス分子、水分子のジオメトリー(幾何学的配置)によるコラーゲン網状組織のテンセグリティー構造。

2.電気的、電磁的:溶解物質のイオンの電荷のある電子伝達、水架橋、水素結合、生体分子の疎水性および親水性の特性。

3.化学的:ホルモン、ニューロン、免疫、修復と成長の特性、そして機能を有するアミノ酸、炭水化物、脂肪酸の相互作用、間質液の流れは生化学的機序を可能にする重要な推進力である。

4.エネルギー的:結晶水は信号を伝達し、情報を流すことが可能である。

経絡≒ファシア10

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

3.6 皮下および腱上膜組織の多微小空胞滑走システムの作用

力学的観察

・多微小空胞コラーゲン吸収システム(MVCAS:multimicrovacuolar collagenous absorbing system)は、腱とその周辺組織とのあいだに位置する。

MVCAS:多微小空胞コラーゲン吸収システム
MVCAS:多微小空胞コラーゲン吸収システム

画像出展:「膜・筋膜」

 

生体内微小解剖観察

・多微小空胞コラーゲン吸収システムは、何十億もの動的な、微小空胞、多方向性フィラメントからなる連結構造としてみなすことができる。

・多微小空胞コラーゲン吸収システムは、絡み合いながら空胞形状を取り囲む仕切りを作り、分散して編成し、フラクタル(次元分裂図形)で、偽性幾何学的な特徴を有している。

微小空胞の観察

・微小空胞は数~数十μmの直径をもち、数μm~数mmの長さまで変化する。このように、全体としては無秩序で混沌とした外見を与える。空胞は種々の方向にいくつかのレベルで編成されており、そのパターンは偽性幾何学的、多角形、二十面体となる傾向がある。

・階層的に配列されフラクタルの形状をとり、いくつかの部分的なサブユニットにわたる可能性がある。 

MVCASの電子顕微鏡像
MVCASの電子顕微鏡像

画像出展:「膜・筋膜」

 

動的役割の外観

・多微小空胞コラーゲン吸収システムは、構造機能に応じて異なっているようである。

・コラーゲン枠組みと内部の空胞隙は形状と安定性を与えている。

・ゲルは、容量は一定のままで運動中の形状が容易に変化することを可能にする。構造がより長い距離を移動すればするほど、空胞はより小さく高密度になる。

・微小空胞構造は形態の一貫性を有し、多くの形状をとることが可能であり、それが受ける物理的制約に適応し、最初の位置に戻ることを可能にする形状記憶を有している。

・コラーゲン枠組みの主要な役割は、その周囲で何かを動かすことなく構造が自由に動けることを確認することである。

・全体の立体配置は非常に効率的であり、熱力学的エネルギー保存とともに大きな機械的強度と軽さが組み合わされ、簡単に変形し摩擦を減少させる。 

コラーゲン性ゲルの機械特性
コラーゲン性ゲルの機械特性

画像出展:「膜・筋膜」

 

・多微小空胞コラーゲン吸収システムは、その中に包埋される構造の栄養にとって重要であり、血管やリンパ管のための枠として作用する。

外傷と脆弱性

・多微小空胞コラーゲン吸収システムの反応性と弾力性は、病状(浮腫、外傷、炎症、肥満、加齢など)に応じて変化し、それらすべては微小空胞の形状において、識別可能で固有の変化を生みだす。浮腫はさらなる膨張と運動を制限している原線維の離開以外では、いかなる器官の組織も破壊することなく空胞内圧の増加とコラーゲンの膨張によって適応する。浮腫の縮小に応じて原状回復が行なわれる。 

MVCASと生理病理学
MVCASと生理病理学

画像出展:「膜・筋膜」

 

・開放性の外傷は、多微小空胞コラーゲン吸収システムの精密な相互作用を無効にする。出血、浮腫、充血は機械的なバランスを乱し、滑走システムは抵抗に対してより多くの力を必要とするため、運動は困難になる。組織は直接的な外傷および運動の欠如から癒着したようになり、さらに可動性を乱す。

・炎症は原線維の断裂によって、空胞内圧の増加を引き起こす。そして、小さな多くの空胞を生成し、完全に運動を混乱させる。そして、外傷反応と同様に組織は破壊され、原状回復は決して得られない。その結果として、永続的な機能的な後遺症が残る。

・肥満によって空胞内のグリコールと脂肪細胞の置換。空胞と線維の膨張の両者が始まる。この段階はゆっくりで体重減少することでまた元の形状にもどると考えられる。第2段階では空胞は極度に膨張し、線維の膨張はさらなる脂肪細胞によって次々に満たされ、身体形状を変化させ多くの空胞に形質転換を生じさせ引き裂いてしまう。

・加齢は多微小空胞コラーゲン吸収システム内部のプレストレスにおける局所の運動よりも、むしろ重力が優位となり、人の組織内部の力の物理バランスへの緩徐性および進行的な変化を意味する。

MVCAS(多微小空胞コラーゲン吸収システム)とグローバル化

MVCASは身体の至るところに起こると考えられる。そして、それは構造が内部の制限や外部の環境のどちらにも適応することを可能にする。

身体の全体構造は巨大コラーゲン・ネットワークとみなされるが、遂行すべき役割と耐えなければならないストレスに応じて変わる。

結論

・MVCASのすべての要点は、生体内ネットワークの基礎単位となり、種々のレベルで機能し以下の3つの主要な機械的役割を遂行することである。

1.高い適応力と省エネルギー法で、どんな機械的刺激にも反応すること。

2.構造を保護し、作用のあいだに情報を提供し、その最初の形状に跳ね返ること。

3.さまざまな機能単位の相互依存と自律性を保証すること。

パート4 筋膜組織の生理学

4.1 膜・筋膜の生理学

運動器官の結合組織

体性機能障害は疼痛、関節の可動性の問題、他の組織(皮膚、皮下組織、筋膜、靭帯、筋など)の変化として現れる。これは損傷に起因する結合組織の変化が、主に影響を受けた構造に限定されず広範囲に及ぶということを意味する。

・全身の生理機能は疼痛の結果として変化する。神経内分泌系の活動と内臓の機能は変化する。

・筋緊張、自律神経系の活動、覚醒-睡眠リズム、そして少なからず行動と行為も、疼痛の結果として変化する。

構造と機能

・徒手療法に関連する結合組織は、硝子関節軟骨と未発達で緊張した線維性結合組織である。後者は関節包、筋膜、筋内、神経内の結合組織にみられる。

網状組織はコラーゲン線維によって構成され、これらは種々の方向に緊張して変形するので網状組織が生じる。そして、これらの構造に特有な可動性を生みだす。網状組織で交差したコラーゲン線維の間に、病態生理学的状況下で更なる連結(病的クロスリンク)が発生する可能性がある。これらは網状組織の可動性を減少させ、関節包の縮小や筋の短縮に至る。

・未発達で緊張した線維性結合線維は、腱、靭帯、支帯、腱膜などにみられる形成された結合組織とは明確な違いがある。後者の組織は常に同じ方向で緊張させられるため、コラーゲン線維は各々と平行に走行する傾向がある。

・結合組織は細胞と細胞外マトリックスからなる。細胞膜は機械的安定性を持たないので、細胞は機械的ストレスから保護するための細胞外マトリックスを形成する。

牽引または張力負荷vs圧力

・組織に掛かる力が主に牽引である場合、結果として線維芽細胞はⅠ型コラーゲン線維と、ほんの少量の弾性線維と少量の基質を生成する。基質はコラーゲン線維間での運動中の摩擦を減らし、水の貯留によって組織の拡散を可能にするのに役立つ。

関節包に障害がある場合、組織または細胞を徐々に増加する伸張(疼痛を伴わない頻繁な動き)を加えるべきであり、それによって関節包本来の構成や安定性を得ることが可能になる。一方、関節軟骨あるいは退行変性がある場合は牽引ではなく、圧迫によって生理的な力に適用するような治療を行うべきである。

生理的刺激

椎間板の損傷(通常は牽引に対する線維輪の病変)の後であっても、生理的ストレスを治療に含むべきである。これは屈曲や回旋動作を行うべきであるということである。しかしながら、実際は再生のために重要なこの刺激は禁じられている。

創傷治癒と徒手療法

・組織に対する刺激の種類は、組織学と生理学から知ることができるが、生理学的に必要な力・負荷・刺激の強さについては創傷治癒の段階によって異なる。

創傷治癒は3つか4つの段階に分けられる。

創傷治癒
創傷治癒

画像出展:「膜・筋膜」

 

炎症期

炎症期は通常5日間続き、血管期(外傷から2日目)細胞期(外傷から3~5日)に分けられる。通常、組織では受傷後すぐに出血が起きる。この出血は、血管期に凝固および創傷治癒の過程を開始させる重要な物質を放出する細胞を活性化する。

その後の細胞期では、移動性の線維芽細胞が周囲から損傷部位に遊走する。同時にこれらの線維芽細胞は創傷収縮を促進して、創傷を安定させる役割を果たす。

両方の期(血管期、細胞期)において、機械的な組織への応力による治療より、さらなる出血を回避することが重要である。

・運動と荷重は疼痛を伴わず運動できる範囲に限定されるが、患者の的確な疼痛認知が大前提である。

増殖期

増殖期(5日目から21日~28日)では、細胞期に始まったマトリックス合成が強化される。

・創傷閉鎖はⅢ型コラーゲンの網状組織によってなし遂げられる。このⅢ型コラーゲンは比較的薄くて、組織の機械的安定性には関与しない。

Ⅲ型コラーゲンの網状組織が本来の組織にもどるためには、創傷治癒のこの期に正常な生理的応力を受けなくてはならない。

・腱、靭帯、半月、椎間円板といった灌流の乏しい組織では、増殖期が6週間まで続くと考えられるため、セラピストは荷重負荷量に注意しなければならない。

硬化期

再建期の最初の60日間が硬化期(21日~28日目から60日間)とされている。

再建期(再構築/成熟期)

増殖期終了後に創傷がⅢ型コラーゲンで閉じられると、再建期(21日~28日目から360日間)が続く。

・不安定なⅢ型コラーゲンが安定したⅠ型コラーゲンに再建されるためには、組織に対する応力を徐々に増やすことが求められる。

創傷治癒の条件

・薬物

生理的な創傷治癒の出発点は炎症である。

論理上、炎症を抑制したり除去したりする薬物は創傷治癒にとっては逆効果である。特に腱、靭帯、付着部は血管分布がわずかであり、出血もほとんどなく炎症は軽度である。しかしながら、創傷治癒後の予後は悪い。創傷治癒に対する抗炎症薬の負の影響は、すでに多くの研究で証明されている

-基本的な治療は深部摩擦である。組織へ刺激を与えることによって炎症伝達物質の放出が増加し、灌流と創傷治癒を改善する。

鎮痛薬は創傷治癒の阻害要因となる。特に患者自身の治癒力が隠されてしまうため、生理的応力の限度を超える恐れがあり、新たな損傷を引き起こす可能性がある。また、損傷治癒過程は炎症期を繰り返すことで停滞してしまう。

・栄養

-結合組織は主に蛋白質で構成されるため、栄養として蛋白質を摂取することは非常に重要である。

動物性蛋白質は酸を産生するので、間質のpH値を低下させて問題となる。pH値が6.5以下に減少すると、線維芽細胞は正常な合成機能を行うことが難しくなり、結果として、組織は退化し治癒は進まない。

脂肪については不飽和オメガ3とオメガ6脂肪酸が重要である。損傷後に重要となるプロスタグランジン2はオメガ6脂肪酸から生成される。オメガ3脂肪酸はプロスタグランジン1と3の形成に関わる。この1と3はプロスタグランジン2に拮抗して炎症を抑える。

-ビタミン、ミネラル、微量元素は結合組織の安定性のためにも不可欠である。これらの物質はコラーゲンで結合する架橋を安定させる。

・灌流

-組織の灌流は非常に重要であるが、組織灌流に最も悪いのは、喫煙、アテローム動脈硬化症、交感神経反射活動の増加である。

・ストレス

精神的ストレスはコルチゾールなどのストレスホルモンの放出量を増加させる。コルチゾールはコラーゲンの合成を阻害し、治癒と再生を遅延もしくは阻害する。

-交感神経反射活動はストレスによっても増大する。

・内臓

-消化には咀嚼が重要である。また、食事中の飲水は胃液を希釈化してしまい、小腸に完全に消化されていない小片を送ることになる。これにより小腸での栄養素の摂取は減少する。

非ステロイド系抗炎症薬を服用している場合、胃および小腸の粘膜は弱くなり、栄養素の摂取が制限される。

解毒器官は肝臓、大腸、腎臓、肺、皮膚である。解毒過程には水が重要であり十分な量の水の摂取が必要となる。

・免疫系

-免疫性の低下は栄養失調、大腸の機能低下、頻回は抗生物質の摂取などにより進行し、炎症の慢性化などにつながる。

4.2 膜・筋膜は生きている

筋膜の細胞集団

・細胞は筋膜組織の体積量のわずかであるが、筋膜組織の体系や硬さを調整する重要な役割を担っている。特に線維芽細胞とその系統に付属する細胞は筋膜にとって最も重要な細胞系統である。

・線維芽細胞は細胞マトリックスの大部分(大量に含まれている水を除く)の成分の前駆体を分泌する。さらに、組織を分解する際に役立つコラゲナーゼ様の酵素の前駆体を分泌するので、それらの組織の損傷回復において重要な役割を担う。

通常、筋膜にはマクロファージ、肥満細胞や若干の散在性リンパ球のような免疫細胞がわずかに存在している。肥満細胞はヒスタミンやヘパリンが豊富な顆粒を含んでおり、炎症過程で重要な役割を果たす。肥満細胞が活性化されると、速やかに顆粒を基質に放出して、血流と免疫防御を活性化する。

・単胞性肥満細胞は筋膜組織のせん断とすべり運動が頻繁に生じる領域、特に疎性結合組織に豊富に存在する。また、張力負荷に加えて頻繁な圧にさらされる足踵部のような領域にも存在する。

・脂肪細胞はエストロゲンだけでなくペプチドやサイトカインを分泌し、これらにより、食欲調節、インスリン/グルコース調節、血管形成、血管収縮、血液凝固に影響し、体内において炎症促進性の状態を発現させる。

・肥満は大部分が肥満細胞のペプチドやサイトカインを通して引き起こされる。

・美容外科による脂肪吸引は、局所的および全体的な生理機能を乱すと考えられている。従って、体内の他の内分泌器官を部分的に除去することと同じように注意が必要である。

筋膜の緊張性

ヒトの下腿の深筋膜を対象とした実験において、平滑筋様細胞の存在が証明され、その周辺に交感神経線維が存在することも発見された。これにより交感神経の活性化と筋膜の緊張調節の間には潜在的に緊密な関係があると考えらえる。

・緊張筋の硬さの増加は筋周膜の筋線維芽細胞の密度の増加と関係があると考えられている。

・全身の関節可動性と組織の硬さは、筋膜の筋線維芽細胞の密度に影響されている可能性がある。

線維芽細胞の収縮から組織拘縮へ

・大部分の筋線維芽細胞は、通常の線維芽細胞から発達したものであると考えられている。この移行は機械的緊張の増加や特定のサイトカインによって生じる。 

筋線維芽細胞分化の2つの状態
筋線維芽細胞分化の2つの状態

画像出展:「膜・筋膜」

 

筋線維芽細胞は創傷治癒の過程で重要な役割を果たしており、多くの病理学的な筋膜拘縮、例えば、肥厚性瘢痕や凍結肩などとも関与している。

・筋線維芽細胞は高密度のα平滑筋アクチン張力線維束を所有しているため、通常の線維芽細胞の4倍の収縮能力がある。

筋膜収縮力の調整

炎症性促進性の生化学的環境が筋膜硬化の増加を促進する傾向があると考えられている。

自律神経系との相互作用

・心理的ストレスや不安といった交感神経の活性化は、免疫系のT3細胞の活性化に重大な影響をもつ傾向がある。そして、自律神経系と免疫系との間には正確な伝達経路、もしくはサイトカインによる伝達がある。この経路のサイトカインはTGF-β1であり、このTGF-β1は筋線維芽細胞の収縮に対する最も強力な刺激物質として知られている。

・下記の図は、自律神経系活性と筋膜の緊張性の間に存在する可能性のある双方向の相互作用を示している。  

自律神経系と筋膜の緊張性の間に提唱された相互作用
自律神経系と筋膜の緊張性の間に提唱された相互作用

画像出展:「膜・筋膜」

 

『自律神経系と筋膜の緊張性のあいだに提唱された相互作用。交感神経系の活性化は、TGF-β1の発現(おそらくほかのサイトカインと同様に)を活性化する傾向がある。TGF-β1は、筋線維芽細胞の収縮に刺激性の影響をおよぼし、筋膜の硬さの増加に至る。加えて、自律神経系の変化はpH値の変化を引き起こす。これは同様に、筋線維芽細胞の収縮に影響をおよぼす。』

 

 

筋膜組織への周期的振動に対する適応は?

・『結合組織は、細胞はコラーゲン格子とともに細胞培養液に包埋されると、周期的な振動を生じる傾向がある。とくにこれらは、周期的カルシウム振動と表現され、これらの振動は隣接した環境にある細胞の収縮を伴うことが示されている(Salbreux et al. 2007)。Follonierらによる研究(2010)では、互いが機械的に接触している場合、筋線維芽細胞が時間的同時発生としてそのような環境で振動する傾向があることを明確に実証した。

本研究は、観察された収縮の同期が細隙結合を経てではなく、付着結合部を経て媒介されることを証明することもできた(細胞結合は、細胞間の化学的シグナリングに特化していることに注意すること。一方、付着結合部は、筋線維芽細胞の典型的特徴である細胞膜内の肥厚である。これは細胞が細胞マトリックスのインテグリン線維を経て機械的信号を交換することにより生じる)。観察された筋線維芽細胞の振動は、99秒の周期長(標準偏差±32s)を有していた。』 

自律神経系と筋膜の緊張性の間に提唱された相互作用
自律神経系と筋膜の緊張性の間に提唱された相互作用

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

 

 

経絡≒ファシア9

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

パート3 筋膜の力伝達

3.2 筋膜の力伝達

筋膜の力伝達の筋肉基質

・筋内領域に限定される筋膜の力伝達は、筋内における筋膜の力伝達とよばれている。また、“筋膜の力伝達”は筋内膜または筋周膜の管内に作用する1つの筋線維または線維束の力伝達の際にも使用される。

筋外における筋膜の力伝達とその基質

筋膜の負荷(筋膜組織からの反力)が筋におよぶ場合、力は筋外膜を経て筋内の支質上に伝達される。従って、そのような伝達は、“筋外における筋膜の力伝達”とよばれている。そのような伝達を可能にする経路は2つある。

1.筋間における筋膜の力伝達:直接隣接した2つの筋間。

2.筋以外における筋膜の力伝達:筋、若干の筋外構造(神経血管路のように、血管、リンパ管、神経が包埋されてコラーゲンで補強された構造)、筋群間の筋間中隔、骨間膜、骨膜、一般的な筋膜の間など。

筋外における筋膜の力伝達の影響

・近位と遠位の力の違い

-加えられた筋膜の負荷によって、筋の起始部と停止部にかかる力は等しくない。

・筋およびその筋線維内の筋節長の分布

-筋膜の負荷は筋線維内で直列に配列した筋節長の分布をもたらす(連続して分布)。

-付加された力のほとんどは、能動的な筋節や筋の間質結合などによって伝わる。

・筋間における筋膜の相互作用

-筋間の機械的な影響は、筋外の筋膜の力伝達の2組の事象を介して存在している(筋から筋外の組織へ、そこから他の筋へ)。

・筋の相対的な位置は筋活動にも影響を及ぼす

-筋は一定の長さに保たれ、自然な筋膜のつながりが発揮する近位または遠位方向への腱の力を通じて機能する。

-近位または遠位方向への腱の力は、相対的な位置の変化の影響を受ける筋膜の負荷状態によって変化する。

筋の筋膜負荷の複雑性

統合された筋膜系の中で、筋群の負荷は非常に複雑である。

筋の長さおよび位置の変化によって、筋膜網の負荷の方向が変化する可能性がある。

筋の筋膜負荷は身体分節のすべての筋から生じている可能性がある。

隣接した分節における筋間の筋膜の力伝達は、身体分節をめぐっている神経血管路の硬さにより生じている可能性がある。

考慮すべきさらなる要因

・関節運動

-関節運動は筋膜の構成要素の硬さに影響する。

-神経血管路の張力は関節の位置に依存している。

・感覚器の機能的な影響

3.3 筋膜連鎖

以下に示すモデルは神経学的、生理学理論を組み合わせた各筆者の個人的経験に基づいている。それらに共通していることは、全体として機能する1つの単位である運動系と筋膜組織を示していることである。そして、その機能を遂行するために、筋群には安定した基礎がなければならない。この基礎は他の筋群により与えられ、更に他の筋群などによって支持されている。

Kurt Tittel:筋スリング(筋索)

・Kurt Tittel博士は協調運動を起こす筋群の協力を説明するために、“筋スリング”という用語を使用している。

・筋連鎖はスポーツ活動で活発になる。

・様々な運動による筋連鎖の活動は筋に変化や適応を生じさせる。

・博士の筋スリングはスポーツ活動を例として言及されている。

・対角線での筋スリングは、運動やサッカー、テニス、やり投げ、砲丸投げなどの広範囲にわたるスポーツのために非常に重要である。

Kurt Tittelの筋スリング
Kurt Tittelの筋スリング

画像出展:「膜・筋膜」

筋スリングはスポーツ時に活動する筋連鎖を示している。

 

Herman Kabat:固有受容性神経筋促通法(PNF)

・Margaret Knott, Dorothy Voss, Herman Kabat博士らは、共同でポリオ患者の麻痺筋に対する治療法を発展させた。この方法の特殊性は筋連鎖に麻痺筋を統合させるという考え方である。患者は、弱いもしくは麻痺した筋を含めた特別な運動パターンを形成する手助けをされることになる。

・Kabatのモデルの興味深い点は、より強い筋連鎖に弱い筋を統合し、神経学の原理を尊重しつつ運動パターンを実行していくことである。焦点は筋連鎖の活性化にある。

Leopold Busquet 

Leopold Busquetは筋骨格系がどのように内臓障害に順応するかについて述べている。

Leopold Busquetは静的筋膜連鎖と4つの動的筋連鎖について説明している。また、内臓障害に関して2つのシナリオを紹介している。

1.『筋は臓器を適切に機能させるために十分なスペースを与えるよう活動している。

2.『臓器は支持を必要とする。または、有痛性組織は緩和されなければならない。つまり、筋は張力を軽減したり臓器を支持するといった方法で運動器系に影響するであろう。

Paul Chauffour:“オステオパシーにおけるメカニカルリンク(機械的連結部)”

・Paul Chauffourは著書であるLe lien mecanique en osteopathie(オステオパシーにおけるメカニカルリンク)において、人体の筋膜を非常に明確に説明している。特に筋膜の付着に注目している。

・Paul Chauffourは人体の4つの主要パターン(屈曲、伸展、前方ねじれ、後方ねじれ)で、運動器系の性質を述べている。

Richter-Hebgenモデル

筋は必要に応じて姿勢を順応させ、できるだけ痛みのない方法で身体を機能させるために、緊張や圧迫を回避しようとする。

・病理学的に優位な筋連鎖は、その筋連鎖自身が運動器系に負担をかけている。

・筋緊張のバランス不良は、側弯、胸椎後弯腰椎前弯などの不良姿勢の原因になる。

筋バランスを正常化することで、緊張は減少して血流やリンパの流れが改善する。そして治癒過程を可能にする。このモデルは、以下の前提に基づく。

1.身体のあらゆる半分は、屈曲連鎖と伸展連鎖をもつ。

2.2つの運動および姿勢パターンがある。

■屈曲+外転+外旋

■伸展+内転+内旋

3.身体はいくつかの運動単位に分割される。これらは機能的および神経学的に説明される。

4.屈曲と伸展は1つの運動単位から次へと交替し、“筋スリング”もしくは連珠系を形成する。

5.後弯と前弯は屈曲連鎖と伸展連鎖の両方の異常な優位性の結果生じる。側弯は屈曲または伸展連鎖の優位性、そして拮抗筋の反射抑制(拮抗筋抑制と交差性伸張反射)の結果である。

6.不良姿勢の原因は、神経学的機能不全の結果としてのバランス不良である。静的障害、器質的機能不全、身体的外傷、情動的外傷は、髄質への感作と結果として生じる筋のバランス不良につながる。

7.筋膜構造は常に連鎖として反応し、それゆえ全体として反応する。優位なパターンは、頭蓋と内臓領域に続いており、器質的あるいは頭蓋機能障害を引き起こす可能性がある。

3.4 アナトミー・トレインと力伝達

序論-メタ膜として細胞外基質

身体は常に何か活動しており、受胎から連続的に調和を保ちながら常に一緒に機能してきたということを深く理解し、臨床の際に心に留めておくべきである。

・『発生学的な発達が約14日で始まると、細胞が増殖し分化するにつれて、それらが細胞外基質(extracellular matrix:ECM)を作る。この繊細な網のような細胞間ゲルは、ほとんどの細胞、線維の混合比率変化、にかわ状のプロテオアミノグリカン、そして多様で循環代謝物質、サイトカイン、ミネラル塩を含む水の当面の環境を供給する。多くの結合組織でほとんどの“組織”容積を供給しているのはこの細胞外基質である。というのは細胞が骨、軟骨、靭帯、腱膜、その他の部分を形成するために細胞外基質を変化させるからである。

細胞外質は細胞自身とともに成長し、それらは細胞外基質によって結合し、接続し、ともに保持する1つの有機体を形成する。細胞外基質は細胞膜へ深く結合しており、細胞表面の何百または何千のインテグリン結合を経て細胞骨格へと通じている。細胞外からの力は、細胞の内部に作用するため、粘着性結合を経て伝達される。』

結合組織細胞は細胞外基質の働きを助け維持する。

・細胞外基質は生物のために“メタ膜”として作用し、生体の限界をつくりだし、動きを抑制および管理し、繊細な組織を保護し、そして認識可能な形状を維持している。

分割不可能なものの分割

・細胞外基質は3つに分けることができる。

1.背側腔の組織:多数のグリア細胞、脳と脊髄周囲の髄膜、そして身体の残りの部分への神経周囲の拡張。

2.腹側腔の組織:臓器を分離し、腸間膜、縦隔、腹膜を含む体壁を保持する索、シート、包。

3.運動器系の組織:骨、関節、関節包、靭帯、筋膜、腱膜、そして骨格筋を取り囲んでいる全ての組織(筋内膜、筋周膜、筋外膜、そしてそれらの腱拡張)

・細胞外基質は統合されているため、分割は明確なものではなく、始まりも終わりも不鮮明である。そして、機能的にはそれらは全て互いに関与している。

筋の分離

・解剖学者にとって便利な分類である筋は、明瞭な生理的単位なのかどうかという点には疑問が残る。

・筋の神経支配単位は有用な分類かもしれない。もしくは、より大きなパターン(後述)が、人の動きや機能的安定性に関して重要であると考えられる。

・損傷のような全身の機能不全の原因として、筋や特定の筋膜に注目するのではなく、機能全体や外層内の相互結合パターンに注目する。

アナトミー・トレイン

アナトミートレインは筋膜の外層を通じて、機能的な力伝達の経路を説明する。 

アナトミートレイン
アナトミートレイン

画像出展:「膜・筋膜」

右をクリック頂くと、”Anatomy Trains”のサイトが表示されます。

 

・筋膜連結には明瞭で解剖可能な整合的なラインがある。このラインは身体前面、背面、側面、体幹とアーチ下の周囲、腕に沿っており対側の肢帯と連結して下肢と体幹の中心を通る。

・ラインには関与する膜および筋膜の軟部組織構造がある。

・ライン上にある個々の筋の付着部は、アナトミートレインでは“ステーション”とよばれている。

・ラインは連結部で骨膜や靭帯の“インナーバッグ[二重構造の内側] ”と結合される場合であっても、力伝達は筋付着部を超えて筋膜を経て続くが、力伝達の程度、タイミング、明確な機序はまだ測定されていない。

・アナトミートレインのラインを越えて伝わる力の伝達の程度は、科学的に検証されておらず、定量化もされていない。

・アナトミートレインは治療法ではないが、理学療法、リハビリテーション、徒手療法、トレーニングにおいて様々なアプローチがなされている。

・『足趾先から乳様突起に至って身体を上行している浅前線は、驚愕反応のような慢性的恐怖感によって短縮していることがよくある。科学的に検証されていないが、このパターンはわかりきったものとして多くの場合、観察される。そして、強いもしくは慢性的な恐怖感情は、浅前膜の筋(そして筋膜)に短縮として現れ、身体の姿勢および運動パターン構成のなかで識別可能な特徴を残す。』 

驚愕反応
驚愕反応

画像出展:「膜・筋膜」

右をクリック頂くと、”Anatomy Trains”のサイトが表示されます。

 

・上記のパターンの場合、浅前線の組織を伸張させ開放することは、効果的な治療となる。一方、全身的、全節性を考えない局所だけの治療では、改善は短期的なものになりがちである。

・『浅後線は、胎児の一次弯曲から、一次および二次弯曲のあいだでバランスが関与する成人の立位へと成長させるために短縮して強くならなければならない。この発達過程の障害は、一次および二次弯曲のあいだでインバランスに帰着する結果である。  これらのインバランスは、次々に筋の代償を慢性化する方向へ身体を導いてしまう傾向がある。慢性的な筋の状態は、時間をかけて筋膜の拘縮へとつながる。』

線後線と筋膜の連続体としての解剖図
線後線と筋膜の連続体としての解剖図

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

3.5 バイオテンセグリティー

序論

・『膜・筋膜は身体の織物である。つまり身体と覆う衣服ではなく、材料としての縦糸と横糸である。筋と骨、肝臓と肺、腸と泌尿器、脳と内分泌物といったその他の組織は、膜の織物の中に縫い込まれている。膜のベッドと組織から、その他の組織をすべて取り除くと、まるで幽霊のようにではあるが、身体の構造と形状は残り明確な境界が存在する。膜系は連続しており、1つの胚細胞から生物へと階層的に進化した組織で、生体の構造的必要性に応じて常に新しい負荷に順応しているGuimberteau, J.C., Bakhach, J., Panconi, B., et al., 2007. A fresh look at vascularized flexor tendon transfers: concept, technical aspects and results. J. Plast. Reconstr. Aesthet. Surg. 60(7), 793-810

・膜は張力ネットワークである。すべてのコラーゲンは生物組織の“プレストレス”とよばれる本質的な応力を加えられている。

バイオテンセグリティーの起源

・バイオテンセグリティーが生じるためには、医学の原則により規定され、ゲノムによって影響されるいくつかの進化の構造過程がなければならない。

バイオテンセグリティーは“テンセグリティー”構造に関連した物理法則を組み込んだ構造モデルである。 

テンセグリティーモデル
テンセグリティーモデル

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

バイオテンセグリティーは、骨格はフレームであり軟部組織で覆われているという何世紀も前の概念を覆し、張力を掛けられた成分の間隙に巻き込まれ、“浮遊”圧縮成分(脊椎動物における骨)と一緒に統合された膜の織物であるという概念に置き換えた。

・生物構造(表層の張力によって接続した成分と柔軟な軟部組織)は、それらが存在するために三角構造でなければならない。もし三角形でなかったら崩れないようにするための硬直した関節か、絶え間なく続くような決して得ることのできない筋肉が必要になる。

・三角構造の中で生物学的モデリングとして最も適しているのは二十面体である。二十面体は大きい体表面積を有しており全方向性である。また、最密充填能力と内骨格および外骨格構造を有している。そして圧縮成分は外殻および構造内部のどちらにも組み込まれている。 

外骨格と内骨格の二十面体
外骨格と内骨格の二十面体

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

・以下の表は、生物学的構造特性について、レバー[テコ]力学、テンセグリティー正二十面体力学を比較したものである。 

テンセグリティー正二十面体力学
テンセグリティー正二十面体力学

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

・レバーシステムは3世紀以上にわたり標準となっていたが、生物学的モデリングに必要とされる特性とは一致しない。それに比べテンセグリティー正二十面体システムは生物学的システムに一致している。

・泡の中の気泡、蜂の巣の中の巣室のように、生物学的細胞はそれらを取り囲む圧に適応しなければならない。個々の細胞は外力に押しつぶされないようにしなければならない。

・1930年代初期に提唱された細胞内骨格(細胞骨格)は、約20年後に電子顕微鏡によって実証された。

・Ingberは、細胞骨格は細胞健全性を支持する機械的な構造フレーム枠によるテンセグリティー構造であると提唱し、これらのテンセグリティーを二十面体としてモデル化した(Ingber, D.E., Madri, J.A., Jamieson, J.D., 1981. Role of basal lamina in neoplastic disorganization of tissue architecture. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78(6), 3901-3905)

・Wolfの法則によると、細胞骨格は押しつぶすような圧縮負荷に抵抗する方法で自身を整列配置し、細胞骨格の剛性チューブリン(細胞内の微小血管の構成蛋白質)は“骨”になる。また、Levinは同じ機序が、筋骨格系、階層的テンセグリティーの階層的進化で構築されると提唱している(Levin 1982, 1986, 1988, 1990)。

バイオテンセグリティーモデルの張力器としての筋膜

この概念の中心となる膜は、システムへの絶え間ない張力を伝えると解釈されている。

・膜はすべての生物学的組織において非線形特性を示す。非線形組織において、ストレス/過労関係は決してゼロにならない。そして、システムにおいて常に固有の張力がある。それはテンセグリティーの不可欠な構成要素である生体の緊張を整えるための“絶え間ない張力”を与える。

膜には能動的収縮要素があり、膜ネットワークは筋と緊密に結びつく。また、筋は固有の“緊張”を有し決して完全に弛緩していない。

膜ネットワーク全体は、“調整”することができる固有の緊張と能動的収縮の両者によって絶えず緊張している。

・レバー[テコ]力学と異なり、階層的テンセグリティー構造は張力と圧縮の要素だけを備えている。そこには、せん弾力やトルク、屈曲モーメントはなく、空間内の向きは構造機能に影響を与えない。運動は蝶番の屈曲ではなく、テンセグリティーの即時的な再配置は、三角網が形状と機能の安定性を与えている間、関節が自由に動くことを可能にする。

バイオテンセグリティーは情報の島々に架橋する統合された機械的な構造概念である

経絡≒ファシア8

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

2.4 侵害受容:感覚器としての胸腰筋膜

序論

胸腰筋膜には広背筋および腹筋群を脊柱と腸骨稜につなぐ機械的役割があると考えられている。それは、頭側は頭蓋骨まで、尾側は下肢の筋膜まで続く、実際には胸腰筋膜は広背筋を殿筋群に連結し、それにより機能的に上肢と下肢を連結している。

・他に4つの機能がある。

1.動作中の摩擦を軽減するために筋周囲に鞘[筋鞘のこと。骨格筋繊維を包む細胞膜]を形成する。

2.心臓への静脈還流の促進。

3.筋が付着する外骨格を構築する。

4.血管と筋を機械的損傷から保護する(例えば、上腕二頭筋腱膜や手掌腱膜、足底腱膜)。 

2.5 全身伝達システムとしての筋膜

序論

・人体における伝達を考えるとき、通常、神経とシナプスのことを考える。では、ゾウリムシのような単細胞生物は神経機能を用いずにどのように生きている餌を捕らえ、光、音、匂いに反応し、複雑な動きを示すのか。

・哺乳類ではグリア[神経膠細胞:神経細胞と神経細胞の間を埋める、それらの保護・栄養・電気的絶縁に働く細胞である。中枢神経系では星状膠細胞、希突起膠細胞、小膠細胞、上皮細胞があり、末梢神経系ではシュワン細胞と外套細胞がある]とよばれる結合組織細胞が脳容積の約50%を構成する。グリア細胞は形態学的、生化学的、生理学的に脳を介してニューロンと影響し合い、ニューロン活動を調整し行動に影響を及ぼす。

・神経科学と筋膜の両研究において、結合組織細胞と神経細胞突起の関係の基礎をなす新しい最先端分野が誕生した。筋膜を研究している学者は、身体において最も重要な関係の1つは結合組織と神経系との関係であると思っている。

中枢神経系を構成する細胞
中枢神経系を構成する細胞

画像出展:「人体の正常構造と機能」

茶色で星状膠細胞希突起膠細胞小膠細胞上皮細胞が書かれています。

 

筋膜

筋膜は結合組織の様々な構成要素間にある任意の境界線を明確にしないという重要な特徴をもっている。

身体最大の系である筋膜系は他のすべての系と接する唯一の組織である。

・『鍼経絡系のように、筋膜は、1つの器官、統合された全体、すべての身体系が機能する環境として見られている可能性がある。筋膜への治療アプローチと鍼治療のあいだには実質的に1対1の対応がある。たとえばPischinger(2007)は、針穿刺がすべての細胞間-細胞マトリックス全体に反応を引き起こすと述べている。鍼治療に反応する状態の多様性は、近年明らかになった筋膜の特性に関する報告によって説明できる可能性がある。』 ※Pischinger, A., 2007. The extracellular matrix and ground regulation.

The extracellular matrix and ground regulation.
The extracellular matrix and ground regulation.

amazonで販売されていました。

日本語に翻訳したレビューには、次のような説明書きがありました。

『鍼治療が細胞外マトリックスをどのように調節するかについての大きなセクションがあり、心と体のつながりが探求されています。』

 

筋膜体系の調節

・“機能的圧力”(張力と圧縮力)と解剖学的構造の関係はどういうものか? その問いは筋骨格系の力学の域を超えて重要である。

・『ChenとIngberは、どのように機械的な力がその系を通して伝達し、最終的に細胞骨格と核基質に到達するのか、どこでそれらが機械化学的変換によって生化学的な転写変化を引き起こすことができるかを説明する(Chen, C., Ingber, D., 2007. Tensegrity and mechanoregulation: from skeleton to cytoskeleton. )

さらにいくつかの付加的な信号伝達機序が、“機能的圧力”と組織構造との関係を説明するために探求されている。これらの信号伝達メカニズムはそれぞれ、生体マトリックス(living matrix)および/または関連する結合組織内の水分と流体相を通して伝達するエネルギーの特定の形態に関係する。われわれは電場の役割から話を始め、光と音の運動へと進める。』 

生体マトリックス概念
生体マトリックス概念

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

・電場と圧電効果

-筋膜系のコラーゲン線維と線維束は大きな抗張力と柔軟性をもたらすと同時に、高い結晶化度を付与する平行配列に高く関連している。筋膜系に含まれる有機結晶は、アクチン、ミオシン、コラーゲン、エラスチンといった長く、薄く、柔軟なフィラメントで構成される。それらは柔軟な結晶、液晶として説明されることが多い。

-液晶のもう1つの重要な特性は圧電気である。圧迫または張力下におかれると電場を発生させる。骨、歯、腱、血管壁、筋、皮膚の変形はすべて弱い電場を生じさせるが、それは圧電効果の結果であると考えられる。

-結合組織の変形によって発生する電場が完全に圧電効果によるものかに関しては意見の相違がある。電気特性に影響しうるもう1つの機序は流動電位である。

・光

光や生物フォトン[生命を意味するbioと光子を意味するphotonの造語で、生物発光のうち非常に強度が小さい場合や、そのとき放出される光子を意味する言葉]は、身体内で発生する。そして、生体マトリックスを介して移動するエネルギーのもう1つの形態という性質がある。

現在ではヒトを含むすべての生物は非常に微弱で肉眼では感知できないが、弱い信号を数百倍に増幅する光電子倍増管で精密に測定できる光を放つことが分かっている。

-生物フォトン光の強度は1秒間に1平方センチメートルあたり数万光子である。Bischof(2005)によると、この光は約24km離れたところから見られるロウソクの光に相当する。

-生物フォトンの波長は200~800nmで、紫外線から赤外線までの可視スペクトルの範囲に当たる。なお、全く異なる特性と発生源である化学的生物発光と混同してはいけない。

生物フォトンの放射は細胞死の前に数百倍から数千倍に強度が増大し、細胞死に終わる。細胞の損傷は生物フォトンの生成を促進する。

-生物フォトン光は一定ではなく、生物のあらゆる活動性の変化に伴って変化する。

生物フォトンの生成は細胞周期中に変化し、生体の生理学的状態のあらゆる変化に影響を受ける。

『最近の研究結果によると、鍼師が行う種々の方法で点を刺激すると、生物フォトンが鍼経絡から放射されるとのことである。』Schlebusch, K.P., Maric-Oehler, W., Popp, F.A., 2005. Biophotonics in the infrared spectral range reveal acupuncture meridian structure of the body. J. Altern. Complement. Med. 11(1), 171-173

-生物フォトンの研究は1974年、ドイツのFritz-Albert Poppらの研究から始まった。現在、およそ12カ国に約40グループがあり、生物フォトンそしてPoppは長年にわたる生物フォトンの研究をGestaltbildungの概念(細胞協調と伝達)を用いて、まとめの理論と実用的応用を研究し、その技術を利用している。

-Fritz-Albert Poppは形態形成に関する疑問の答えを示した。

1.光子伝達はすべての細胞に他のすべての細胞で起こっていることを伝達する。

2.微弱光の放射は身体を組織化する。

3.放射は量子レベルで起こる。

-結合組織内の液晶領域は生物フォトンの強力な放出体とセンサーである。

ご参考:”生物フォトン”

東北工業大学
東北工業大学

バイオフォトン(biophoton;生物フォトン)とは,生物がその生命活動に伴って自発的に放射する極めて弱い自然発光です。発光強度はおよそ10-16W/cm2以下であり,ホタルなどの発光と違い肉眼では見ることのできないフォトン(光子)レベルの発光です。呼吸など生体内の様々な代謝過程におけるタンパク質や脂質等,生体構成物質の酸化反応によって生じる励起状態に由来するものであり,発光メカニズムが主に活性酸素と関連することから,生体の酸化ストレス計測に応用することができます。その発光スペクトルは可視波長域全般に及びますが,発光種や発光メカニズムに依存した特定のスペクトルパターンを示します。バイオフォトンの高感度イメージング技術や,高感度分光分析技術を駆使し,酸化ストレスの新しい定量計測法の開発を目指しています。』

科学技術振興機構
科学技術振興機構

『生体組織や細胞などから生じ、肉眼や通常の光検出器では検地できないような極めて微弱な光(生物フォトン)に着目し、その特性を精密に測定、分析する手法を探索し、生物フォトンの発光機構や役割を探求するとともに、得られた手法を用いて生物を無侵襲で計測する技術について研究しました。

研究により、世界でも最高感度の光子計数装置、2次元発光画像システムを試作しました。次いで、それらを用いてヒトの呼気や喀痰、受精前後の卵、創傷自然治癒過程の細胞・組織などから生物フォトンの検出に成功し、生体内部情報の無侵襲計測の基礎を確立しました。さらに、極微弱光の検出、測定技術を総合し、世界で初めて生体試料の光断層像(光CT)計測に成功し、生物フォトン分野を切り拓く手掛かりを得ました。』

・筋音

-収縮している筋はマイクで容易に録音できる音を出す。

-筋音図の記録は筋疲労のモニタリング、人工器官の制御、小児筋疾患の診断に利用できる。骨格筋に対し非侵襲性の携帯機器を用いて測定する。

-お風呂で仰向けになり鼻を出し、耳を水中に沈め顔面筋や頸部筋を動かすと筋音を聞くことができる。特に高感度の聴覚をもつ人であれば、身体の他の部位の随意収縮によって生じる音も聞こえる可能性がある。

重要なことは、筋収縮は組織を通じて伝達される音を生むということである。

-音や他のあらゆる形態の機械的振動は、圧電効果によって音と同じ周波数の振動電場を結晶性結合組織に引き起こす原因となる。それゆえに、電気と音という2つのエネルギー形態を考慮すべきである。

結論

・『本章にまとめられた情報は、読者に人体における非神経系のエネルギーと情報の伝達の可能性と、これらの現象における筋膜の役割の一部を伝えることを目的としている。これらの現象に対する根拠の多くは状況的である。そして、科学は法律とは異なり、状況証拠によって確定的結論には達しない。従来の測定方法は適用できないため、ここで論ずる現象を研究することは困難である。神経系とは対照的に、微小電極を筋膜に挿入したり、行われている情報処理の特性を立証したりすることは簡単にできない。著者(James L.Oschman PhD、Natures’s Own Research Association)は、筋膜系における情報処理を探求し、結果として筋膜と徒手療法に関するまったく新しい見解を得るのにそれほど時間はかからないだろうと考える。』

経絡≒ファシア7

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

1.10 横隔膜の構造

序論

・横隔膜は筋線維構造である。役割は呼吸だけでなく腹部運動と筋膜伝達に関係する。

構成

・横隔膜の高さによって、3つの部分に分かれる。

・中央部

-横隔膜中心は三つ葉のような形をした線維性の層であり、横中隔から生じて3つの小葉を含む。

-前小葉は最も広範囲でリンパ管が非常に豊富である。そして、左右それぞれに1つずつ小葉が存在する。

・末梢部

-末梢部は筋性の組織であり、横隔膜中心部から胸郭周辺領域全体へと放射状に広がる。

-前筋膜と外側筋膜という2つの重要な筋膜に区別される。

・後部

-後部は横隔膜の脚と弓状靭帯から形成される。

-横隔膜脚の右脚はL1-L3椎体とその間の椎間板に付着し、左脚はL1-L2とその間の椎間板に付着する。これらの脚は総前縦靭帯に沿って広がり、後頭骨と仙骨間の連続性を形成する。

-内側弓状靭帯はL1横突起からL1椎体へ走行する。大腰筋の前側面上で交差し、その筋膜で膜連続を構成する。

-外側弓状靭帯はL1横突起から11および12肋骨端へおよぶ。それは横の腱膜と調和し、それ自身が骨盤筋膜に沿って進み、横筋筋膜を経て腹部で筋膜の連続性を形成する。

関係と役割

横隔膜は上方では心膜、胸膜と肺に関係し、下方では右肝弯曲部、肝臓、胃の大結節、脾臓、左肝弯曲部に関係する。また、後方では十二指腸1/3、膵臓、大内臓神経と小内臓神経においても関係が認められる。

横隔膜は肺換気だけでなく、胸部と腹部を分割しこの2領域間の感染拡大を防ぐという重要な働きを担っている。さらに血行循環を促進するポンプ機能により血行動態にも関与している。

他の身体に対する相互作用

・腔内道

-横隔膜によって伝達された力は、生理学的視点として力学的に活動する機能的結合体を形成しながら、頭側および尾側へ移動する。

-尾側へ:横隔膜は胸内筋膜および胸膜に対する中継点を構成する。腹膜は骨盤隔膜を構成し、下行性筋膜連続を形成し、主として肛門挙筋および骨盤筋膜によって構成される。

-頭側へ:横隔膜は中継点である胸内筋膜と胸膜を介して肩甲帯と関連している。中央では心膜、咽頭および咽頭周囲腱膜を経由して舌骨とつながり、これを経由して頭蓋底へ至る。

・末梢道

肋骨、胸骨、椎骨などの多くの付着によって、横隔膜の収縮は頭側および尾側へ伝達する。

-吸気のあいだ弯曲は減少し、頸部から仙骨領域の脊柱全体が可動している。この伝達は主として後頭部から仙骨に走行する棘上靭帯と、横隔膜脚に沿って走行する前縦靭帯によって行われる。この靭帯は脊柱のスタビライザー(安定器)であり、呼吸を通して恒久的に動員される。

横隔膜の収縮における共同作用

・呼気のあいだ、胸内筋膜、壁側胸膜、靭帯は胸郭の垂直径を増加させ肺を満たすための固定点をつくりだす。また、この頸胸横隔膜との関連は、多くの局所構造の連続的な活性化を引き起こす。つまり、横隔膜は呼吸筋だけではなく、身体全体の活性化にも関与している。 

横隔膜の相互作用
横隔膜の相互作用

画像出展:「膜・筋膜」

矢印は筋膜連結を示しています。

 

パート2 コミュニケーション器官としての筋膜

2.2 固有受容(固有感覚)

固有受容、機械受容と筋膜の解剖

筋膜と筋膜構造は固有受容の処理過程において重要な役割を果たす。

・固有受容は神経生理学的に全身および各部の肢位と位置、方向、そして運動を感知する能力である。

・固有受容は外界と結びつける外受容と内臓や代謝について情報を伝達する内受容を区別しなければならない。

連結性と連続性

・身体の主要な結合組織は胚体中胚葉である。その中胚葉はマトリックスとその内部で身体の器官と構造体が分化し、それらが“包埋された”環境を意味する。

・主要な結合組織の機能的発達と分化には2種類の“連結”の型がある。

-1つ目の型は、滑走する空間として機能する裂隙を表す“細胞間隙”の発達である。これは体腔、関節腔の形成内や隣接した腱や筋腹間の滑液包様の滑走空間にもみられる。この型は空間的に完全に分離しており、可動性を有する。

-2つ目の型は、結合媒体を有する形成である。それは線維性(骨間膜や靭帯など)または間質性基質とマトリックス(軟骨性連結など)である可能性がある。

-この連結性の2つの型は、筋膜の解剖にも適用できる。通常は筋骨格系における筋膜は2つの異なる機械的、機能的側面を示す。

疎性結合組織(“滑走組織”)と脂肪組織で満たされた腔に隣接した筋膜これらは筋(と腱)が互いに、あるいは他の組織に対して滑走する。そして、間隙にあって圧迫により引き起こされる球形か卵円形の機械受容器は、筋膜組織とそれに関連する構造の変位と動きについて、脳に伝達することを可能にする。

筋線維を骨に伝える役割(付着)を担う筋間膜と筋外膜これらは筋間中隔や浅筋膜として認められる。伸張感受性受容器は筋膜層に起こる筋膜組織の緊張についての情報を伝達する。

体系はさまざまで解剖学的構造以上である

連結、緊張の伝達、そして固有受容における筋膜の役割の機械的、機能的な詳細を理解するには、標準的な解剖学より結合組織と筋組織の構造を知っておくことが重要である。筋膜がどこに位置していて(解剖学的構造)、どのように連結し、連結されているのか(構造)を知らなければならない。

機械受容の基質

結合組織と筋膜には神経が豊富に分布している。

機械受容器は特殊な終末器官の有無に関わらず自由神経終末であり、そのような受容器に対する主な刺激は変形である。

・筋受容器は無意識または反射レベルで行われる運動機能を担い、関節受容器は位置覚と運動覚として関節の肢位と運動を監視する過程で主要な役割を果たす。

固有受容における機械受容の分類

・運動器官における筋組織と密性規則性結合組織構造の直列構造が同定された結果、機械受容器の3種類の構造型が確認された。

-筋紡錘、ゴルジ腱器官、ルフィニ小体、自由神経終末、そして層板小体は筋組織と密性規則性結合組織との間の領域にみられる。

-層板小体と自由神経終末は、密性規則性結合組織が滑走する腔である網様結合組織と隣接する領域にみられる。

-自由神経終末だけは骨格の付着部(骨膜)への移行部に存在する。

筋膜層の密性規則性結合組織内または近傍のほとんどの神経叢は、Ⅲ群とⅣ群の神経線維を含む。Ⅲ群の神経線維(またはAδ群)は機械受容器からの求心性線維であり、Ⅳ群の神経線維(またはC群)は侵害受容性または機械感覚性(緊張)の自由神経末からの求心性線維である。 

機械受容器の種類
機械受容器の種類

画像出展:「膜・筋膜」

A.自由神経終末

B.ルフィニ小体

C.層板小体、またはパチニ様終末

D.ゴルジ腱器官

E.筋紡錘

 

神経線維の分類と感覚神経線維の分類
神経線維の分類と感覚神経線維の分類

画像出展:「人体の正常構造と機能」

 

 

体性感覚の受容器
体性感覚の受容器

画像出展:「人体の正常構造と機能」

 

 

2.3 内受容

筋膜受容器、感情、そして自己認識のあいだの複雑なつながりにおける新しい相互関係。

序論

19世紀には身体および器官の正常な機能に関する無意識下の感覚の神経モデルとして、セネステジア(体感)とよばれていた。それが最近、“内受容”という用語で再び注目を集めた。この感覚系の解剖学的、生理学的、そして神経学的な新しい見識が科学的な注目と探求につながった。

内受容とは?

内受容性感覚
内受容性感覚

画像出展:「膜・筋膜」

 

官能的な感触

・内受容性感覚の一覧に加えられた新しくて意外なものに官能的、あるいは気持ちの良い感触の感覚がある。

・『この発見のきっかけは、有髄の求心性神経が欠如している珍しい患者の検査において、柔らかいブラシで皮膚をゆっくり擦ると、その患者は擦っている方向をまったく認識できなかったが、ぼんやりして曖昧な心地良い感触の感覚(と一般的な幸福感)が生じたことだった。機能的磁気共鳴画像により、この曖昧な感覚は島皮質の明らかな活性化に付随して起こり、一次体性感覚皮質の活性化はみられないことが明らかになった。

ヒトの内受容性受容器の発見
ヒトの内受容性受容器の発見

画像出展:「膜・筋膜」

『ヒトの皮膚内の内受容性受容器の発見。固有性神経終末のほかに、ヒトの皮膚には、一般的な幸福感を引き起こす内受容性のC線維の終末がある。これら伝導速度が遅い受容器の接続は、脳内の固有受容性領域に向かう通常の錐体路の経路はたどらない。それらはむしろ、内受容の調整の中心的存在である島皮質に伝達される。』

ご参考:ブログ ”スキンシップケア(C触覚線維)

 

新しい系統発生的な変化

・内受容に関係する求心性ニューロンは第一層(脊髄後角で最表層)で終わる。この層は自律神経系の交感神経節前細胞が起こる胸腰髄の交感神経細胞柱へ伝達する。そしてそこから、脳幹にある主要な恒常性統合部へと情報を伝達する。

・脳幹領域の傍小脳脚核は、扁桃体と視床下部との間に密接な相互連絡があり、加えてそれらは島皮質に情報を伝達する。 

内受容に関する新しい短絡路
内受容に関する新しい短絡路

画像出展:「膜・筋膜」

『霊長類の内受容に関する新しい短絡路。哺乳類では、内受容の主要な経路は自由神経終末に始まり、脊髄の第一層へ伝達される。ここから、脳幹の傍小脳脚核へ伝達され、さらにその傍小脳脚核からのみ視床を経由して島皮質へ伝達される。しかしながら、霊長類には、それに加えて第一層から視床を経由する島皮質への直線的な伝達がある。したがって、霊長類には、新しい系統発生学的獲得として脊髄の内受容性感覚の求心性領域と島皮質とのあいだにより直線的な経路がある(黒矢印)。』

 

 

・島皮質自身は階層的な様式で組織化されている。内受容性感覚に関係する一次感覚入力は島皮質後部に伝達される。その後、島皮質中間部と前部の様式全体で徐々に精密化して統合される。最終的には、前帯状皮質と密接な連結がある島皮質前部で最高レベルの統合が行なわれる。同時にそれらは情動性のネットワークを形成し、そこで辺縁系の島皮質要素が感覚受容と意識的な感情に関与したり、帯状皮質が情動性要素と運動性要素として感情の行動面での表出に関与したりする。

内受容と体性情動障害

・体内感覚の過程を調整する特有の神経構造である内受容の発見(19世紀のセネステジアを考慮すると再発見というべき)は、内受容と健康との関連を研究のきっかけとなった。

体性情動的要素をもつ複合障害の多くは内受容の変化と関係しているが、これは新しい精神生物学的医学の研究分野である。しかしながら、多くの内受容性疾患において正確な体系的変化をさらに解明する必要がある。例えば、本態性高血圧症では、この疾患の初期から高まった内受容性認識が観測されており、心臓血管症候群の予後への関与が議論されている。Koroboki, E., Zakopoulos, N., Manios, E., et al., 2010 Interoceptive awareness in essential hypertention. Int. J. Psychophysiol. 78, 158-162

内受容性器官としての筋膜

・筋骨格組織においては、筋紡錘、ゴルジ腱器官、パチニ小体、ルフィニ終末などの少数の感覚神経終末だけが固有受容に関する有髄の機械受容器である。

・約80%の求心性神経は自由神経終末に終わる。

・自由神経終末の90%は伝導速度が遅いC線維ニューロンに属する。

・“間質性筋受容器”とよばれるそれらの受容器は、筋内膜や筋周膜などの筋膜組織内にあり、無髄の求心性ニューロン(Ⅳ群あるいはC線維)や有髄の軸索(Ⅲ群あるいはAδ線維)と連結する。

C線維ニューロンの興奮は、内受容性を示唆する島皮質の活動の結果として生じる。

・筋肉組織内の内受容性受容器の数は固有受容性終末の数をはるかに上回る。具体的には固有受容性神経終末に対し、内受容器として分類される神経終末は7倍以上と予測される。

・自由神経終末の中には温度受容器や化学受容器、あるいは複合的機能を持つものもあるが、大多数は機械受容器として機能し、機械的な張力、圧力または剪断変形に反応する。これらの受容器には高域値のものもあるが約40%は低閾値の受容器に分類され、軽い接触、筆の接触でさえも反応すると考えられている。

徒手療法と内受容

・筋組織を治療するとき、非神経組織の生体力学的効果や筋紡錘、ゴルジ腱器官などの特殊な固有受容性神経終末に注目するが、これに加え内受容性受容器を意識する必要がある。

筋組織内の内受容性神経終末の一部は、エルゴレセプター[骨格筋の働きに敏感な求心性神経]として分類されており、それらは局所の筋の作用の情報を島皮質に伝達する。それらの機械刺激は交感神経に関与し局所の血流を増加させる。

内受容性神経終末の興奮は血漿血管外遊出を促すことにより、マトリックスの水和反応を増加させる。

・徒手療法では常に患者の自律神経反応と辺縁系-島皮質(感情部)の反応(温度・皮膚色・呼吸の変化・四肢の微細な動き・瞳孔拡張、そして表情など)に注意を払うことは極めて重要である。

腸壁神経系に関する知見から、“腹部の脳”は1億以上のニューロンを含んでいることが分かっているが、これらの多くは外筋層の結合組織内(アウエルバッハ神経叢)か、粘膜下組織の密性結合組織内(マイスナー神経叢)にある。これらの内臓神経終末の多くは内受容と直接関係しており“第一層-脊髄視床皮質路”を経由して島皮質と連絡する。 

小腸壁の組織構築
小腸壁の組織構築

画像出展:「人体の正常構造と機能」

 

中央に粘膜下神経叢(マイスナー神経叢)、下部に筋層間神経叢(アウエルバッハ神経叢)が出ています。

 

 

 

・『過敏性腸症候群などのいくつかの複合障害が内臓刺激に対する島皮質の反応の異常をきたした調整と関係があることを考慮すると、患者の安全性と留意点に注意を払いながらであれば、ゆっくりと注意深い内臓組織への徒手的な力の適用は、正常な内受容性の自己調節を促進するためのアプローチとして理想的とはいえないまでも、有用であると考えらえる。』

※ご参考:内受容感覚と島皮質

内受容感覚
内受容感覚

こちらは理学療法士の“万由子”さんという方のブログです。“内受容感覚”に関する説明が大変分かりやすく書かれています。

『~これまで内受容感覚というのは内臓感覚だけに重点が置かれていましたが、最近の概念では身体の生理学的状態の感覚として内受容感覚が説明されています。この内受容感覚では空腹感や口渇感、心拍を感じるなどの内臓の感覚だけでなく、筋肉がどのくらいの活動をしているかも含まれています。~』

島皮質
島皮質

こちらは図は「脳科学辞典」さまから拝借しました。

右大脳半球のシルビウス裂に沿って、頭頂・前頭弁蓋と側頭弁蓋を切り開いたところ。図の右が前頭部、左が後頭部。ピンクに着色してあるのが島。』

 

 

 

 

経絡≒ファシア6

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

1.8 内臓筋膜

序論

・内臓か身体かにかかわらず、身体の臓器系は高度に分化した組織から構成されており、維持のために複雑な支持機構を必要とする。この支持機構はコラーゲン線維およびエラスチン線維を含む結合組織ネットワークであり、すべて筋膜と称される。線維成分の密度は個体あるいは局所的に大きく変化する。

内臓筋膜

頭蓋底から骨盤鉢までの体腔の裏打ちする内臓筋膜は、4つ(浅筋膜、深筋膜、髄膜、内臓筋膜)の主たる筋膜の中でも群を抜いて複雑である。

・発生学的に筋膜層は間葉と称される。

・筋膜層は内臓組織から派生し、その疎性基質内にあり胸膜、心膜、腹膜の大きさに広がる。この拡張が起こるとき、内臓筋膜は正中に沿って内側に統合されるのと同様に、身体壁に対して外方へ圧縮される。

・内臓筋膜は身体の正中構造に対して被膜組織を供給する。

正中筋膜は頸部を通って縦隔を占有する胸郭内へ入り込み、その付着部から頭蓋底へと広がる支柱を形成する。この支柱は横隔膜において腹部へ入り、大動脈と食道裂孔を通過し骨盤鉢へ入り込む。

・正中筋膜は縦隔の延長を形成する。

縦隔領域は大動脈、下大静脈、胸管のような主要脈管構造を含む。これらの構造と各々の分枝は筋膜層で包まれる。そして、それらが個々の臓器系に達するために外方へ広がるにつれて神経血管束を伴う。

・頸部内臓筋膜

-内臓筋膜は頭蓋領域では、咽頭と頭蓋底付着部を取り囲む。

-内臓筋膜は頭蓋領域上方では、咽頭脳底および咽頭頬筋筋膜を含み、上咽頭収縮筋の付着部を取り囲む頭蓋底と融合する。

-頸部内臓筋膜は頸部下方に延びて、鼻咽頭、口腔咽頭と残りの頸部内臓を取り囲む。

-内臓筋膜は頸部では、甲状軟骨および甲状腺を取り囲む筋膜、気管前筋膜、咽頭後筋膜、鼻翼(頸動脈鞘)筋膜などの局所性筋膜と結合する。

-内臓筋膜は舌骨筋の内側、頸長筋の前方の継続した垂直の袖のように胸郭内へ広がる。 

頸椎縦隔(頸部内臓筋膜)
頸椎縦隔(頸部内臓筋膜)

画像出展:「膜・筋膜」

脳蓋底(セクション22)から頸胸椎移行部(セクション86)までの頸椎横断面。

 

・胸部内臓筋膜

-内臓筋膜は胸郭内に入ると同時に2つの胸膜腔へ収容させられる。それらは胸壁に向かって平坦化することで、胸内筋膜とよばれる。中央では臓筋膜が全体として拡大し縦隔を包み込む。 

胸部内臓胸膜
胸部内臓胸膜

画像出展:「膜・筋膜」

胸膜嚢開口部の胸内筋膜の広がり。

 

-内臓筋膜は縦隔において心臓の大血管を取り囲み、前方では線維性心膜となるため厚くなる。後方では大動脈、食道、気管と気管支、胸管を取り囲む疎性基質を形成する。

・腹部内臓筋膜

臓壁板は腹膜を取り囲むため外方へ広がり、後方は腹壁内筋膜、前方は横筋筋膜とよばれる。

-腹壁内筋膜は後方の正中に沿って著しく厚くなり、胸郭の縦隔に類似した垂直柱を形成する。

内臓縦隔(内臓筋膜)
内臓縦隔(内臓筋膜)

画像出展:「膜・筋膜」

胸郭から腹部、骨盤を含む横断CT像。なお、左下隅の写真は、84歳女性の腹膜器官をすべて取り除いた身体後壁を示しています。

 

 

内臓筋膜は正中で顕著に厚くなる体壁を覆うカーテンを形成し、腹部大動脈と下大静脈などの主要血管や神経通路を覆う。

腹部縦隔筋膜の延長は腹部の内臓に到達し、胃間膜、腸間膜、結腸間膜へと移る。この延長は血液供給、神経支配、リンパ管が腹部の腹膜器官に到達する経路に沿っている。なお、これは胸郭の縦隔に見られるものと極めて類似している。

-内臓筋膜は肺組織の中を深く通過するにつれて肺根で構造物を包み、これらの構造物に同行する。

身体後壁上では、筋膜の特に厚い塊は腎臓を取り囲む。この腎筋膜はジェロタ筋膜とよばれる。

-腎筋膜は腎血管系に従って正中から離れ、腎被膜を取り囲む大きな塊の高密度な脂肪細胞を形成する。

腎筋膜は後方では大腰筋と腰方形筋の体軸(被膜)筋膜と混ざりあう。

・骨盤内臓筋膜

-腹壁内筋膜は骨盤鉢において、腹膜の下方領域を取り囲む骨盤内筋膜につながる。

-骨盤内胸膜の下縁は骨盤隔膜であり、肛門挙筋と尾骨筋からなる。

-骨盤隔膜は体壁から派生する体軸または被膜筋膜で裏打ちされている。

-骨盤隔膜の下方は皮下脂肪の筋膜で満たされている坐骨直腸窩である。

-骨盤内筋膜の前下縁は膀胱底を取り囲みながら恥骨後隙を埋める。

-内臓筋膜(腹膜筋膜)は仙骨岬角の高さで下腹神経叢を取り囲みながら正中ヒダを形成し、さらに総腸骨血管と関連するリンパ通路を取り囲みながら2つの細い外側ヒダを形成する。正中ヒダは仙骨岬角の下方において外側ヒダ内の血管と合流しながら下腹神経叢を外側へ一掃するように分ける。これにより内臓筋膜(骨盤内筋膜)は、直腸、生殖器、膀胱などの正中器官を取り囲む。

-内臓筋膜(骨盤内筋膜)は胸部と腹部と同様に、正中で厚くなりこれらの器官を取り囲む縦隔を再び形成する。

-女性では、内臓筋膜の骨盤縦隔成分の延長は子宮広間膜の核を形成し、この内臓筋膜の凝固体は子宮頸横靭帯を形成する。

-男女とも、内臓筋膜の凝固体が直腸間膜と称されている直腸を取り囲む。 

骨盤内臓筋膜
骨盤内臓筋膜

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

・要約

内臓筋膜は頭蓋底から骨盤腔内へと追跡することができ、体壁を圧迫する体腔を取り囲む包装物を形成する。それはまた、内臓周辺で包装物を形成しそれらの多くが腸間膜二重層の腹膜からなる膜。腸管を腹腔)後壁に固定している]のような提靭帯に沿って進み到達する。

内臓筋膜は特定の臓器に到達するために、胸郭、腹部、骨盤縦隔から外方に放散して、神経血管およびリンパ束の導管としても機能する。

内臓靭帯

内臓靭帯は身体各部位に存在する靭帯とは全く異なるものである。

・身体各部位の靭帯は骨と骨を結合する高密度で規則的な結合組織構造であり、被覆筋膜が薄い周囲靭帯によって囲まれており、概して体軸または四肢の筋膜の一部である。

内臓靭帯は一般的に身体各部の靭帯ほど強固ではなく、解剖学上はっきりと定義されるものではない。

内臓靭帯の主な機能は、血液供給と神経支配を臓器系へ運ぶこと、臓器を体腔に緩く固定することである。

・内臓靭帯は刺激作用や炎症によって作り出される線維性癒着と区別しなければならない。

癒着

線維性癒着は慢性炎症の領域から生じる。

・修復過程において活性化された免疫細胞が、線維芽細胞を刺激するサイトカインを放出し、新たなコラーゲンを生成する。生成されたコラーゲン線維は配列が不規則であり、構造は筋膜に類似している。

・生成されたコラーゲンが過剰な場合には癒着をつくり、病的な状態に発展させる場合がある。

癒着は内臓性、身体性のいずれにおいても生じる可能性がある。腹部と骨盤では癒着は腸管を包み、その腔内での運動を妨害し生殖機能を妨げる。また、手根管では滑膜鞘の内外に形成される癒着は、手指屈筋腱の運動を妨げる。

1.9 頭蓋内における膜性構造と髄腔内の空間

頭蓋内膜系 

・軟膜(硬膜システムの軟らかい内層)

-血管を含む軟膜は3層の髄膜のなかで最も内膜にあり、多量の弾性に富むエラスチン線維を含む薄い結合組織である。脳実質とは融合はしていない。

-血管は軟膜から脳に入り。さらに軟膜は大血管ネットワークである脈絡叢を構築し、それは脳室に入って脳脊髄液を産生する。

髄膜の構成
髄膜の構成

画像出展:「人体の正常構造と機能」

『軟膜は、脳の実質および血管の表面を覆う薄い膜である。クモ膜と軟膜の間をクモ膜下腔と呼び、髄液で満たされている。膠原線維からなるクモ膜小柱が、クモ膜と軟膜を架橋している。クモ膜下腔には、脳実質に出入りする血管が存在する。』

 

 

 

ご参考:”日本脳神経外科学会 第72回学術総会 ランチョンセミナー:流れない脳脊髄液 ─Time-SLIP法 CSF dynamics imagingからの観察─”

上記は2013年10月16日、横浜パシフィコで開催された脳脊髄液に関するセミナです。

・クモ膜(髄膜の中間層)

-クモ膜にはガーゼ様の海綿質構造があり、2層に分化している。

-硬膜を越えた外層は薄い裂け目(硬膜下腔)によって分けられる。

硬膜には若干の静脈と神経を含む。内層は小柱のフレームワークからなる。

-クモ膜と軟膜の間には、クモ膜下腔がある。

-クモ膜と軟膜はクモ膜下腔において小柱のフレームワーク枠により結合している。それは脳脊髄液で満たされており脳脊髄外腔を形成する。

-脳脊髄液で満たされた腔は槽とよばれる。

-クモ膜の増殖物であるクモ膜絨毛は、頭蓋内の静脈排液路であるこれらの腔の中、特に矢状静脈洞の中に突き出る。これらの絨毛を通して、脳脊髄液は静脈系へ流出することができる。  

頭蓋内の静脈と矢状静脈洞
頭蓋内の静脈と矢状静脈洞

・硬膜

-硬膜は高密度で不規則で非常に強固な多くのコラーゲン線維を含む結合組織からなる。隙間なく脳脊髄液に対する透過性は認められない。

-硬膜とクモ膜の間の移行部である硬膜境界は骨膜層(外板)と髄膜層(内板)に分けられる。

-髄膜層(内層)は硬膜層、クモ膜層に比べ線維構造が弱いため、頭蓋内硬膜と脊髄内硬膜に種々の力を伝達することを可能にする。これらの“力の伝達のための経路”は硬膜の線維構造によって自分の道を見つけだすので、“張線維”とよばれる。

頭蓋外膜系

・脊髄軟膜

-この軟膜は神経と血管を含む。

-脊髄の両側で軟膜から結合組織板と歯状靭帯が脊髄硬膜へとつながる。それは脊髄を固定して2つの神経根を分ける。軟膜は脊柱の内側へと続き、尾骨背面において細長い終糸で終わる。   

脊髄とその周囲構造
脊髄とその周囲構造
髄膜は外側から、硬膜→クモ膜→軟膜となっています。
髄膜は外側から、硬膜→クモ膜→軟膜となっています。

・脊髄クモ膜

-クモ膜は血管および神経供給が極めて乏しい。

-クモ膜は脳脊髄液を満たし神経根へと硬膜に伴行する。両膜は椎間孔へと神経を続き、脊髄神経節を包む。そして、クモ膜は脊髄神経の神経周膜へと続く。

・脊髄硬膜

-脊髄硬膜は密接したコラーゲン線維管を形成する。

-脊髄硬膜は後頭骨大後頭孔に固定され、そこから仙骨管まで続きS3の高さで終糸へと切り替わる。

-脊柱の縦方向の運動によって発生する縦方向のストレスは、ほとんどの部分が縦方向のコラーゲン線維によって伝達され、これはさらに上方または下方の隣接構造に波及する。

-脊椎硬膜は頭蓋および尾側の付着部を除き脊柱管に緩く付着しているだけであり、脊柱管に対して硬膜の運動が可能になる。

髄膜の血管新生

・頭蓋内血管新生

-硬膜系はとりわけ内外頸動脈の終枝である髄膜動脈によって動脈血管が新生される。それらは硬膜と骨の間にある。

髄膜の神経供給

・頭蓋内神経支配

-硬膜系の上部は主として三叉神経の分枝によって神経が分布される。

-硬膜系の下部は第1~第3頸神経と迷走神経によって神経が分布される。

-すべての髄膜神経は直接的あるいは間接的に上頸神経節内に起始する節後交感神経線維を含む。

-副交感神経支配は大錐体神経(第7脳神経の副交感神経から起こる)、迷走神経と舌咽神経の分枝によって提供される。

・脊椎内の神経支配

-脊髄神経の硬膜枝および後縦靭帯の神経叢に加え、根動脈の血管周囲神経叢も脊椎内神経支配を形成する。

硬膜系の役割

・脳脊髄液ともに脳の構造を維持する。

・力学的損傷からの保護。

・頭蓋骨に加えられた力学的な力を衝撃吸収する。

相反性緊張膜

・硬膜は頭蓋骨の靭帯機構を形成する。

・垂直および水平の張力は、頸部筋群と胸鎖乳突筋の緊張によって維持される。

・脳および脊髄の相反性緊張膜は、頭蓋骨の可動域を誘導および制限する。

すべての膜の構造連結を用いることで、系のいかなる部分の張力も他のすべての部位に影響を及ぼすことができる。

硬膜は頭蓋骨および仙骨へのそれらの付着により、不随意的な頭蓋骨および仙骨の運動を調節している。互いに相反的に運動しているこれらの膜は、最適なバランスを恒久的に探索している。膜の一端のいかなる緊張も完全な単位を変化させ、新たなバランスを引き起こす。 

ロベットリアクター
ロベットリアクター

画像出展:「アプライド キネシオロジー シナプス」

『アプライド キネシオロジーの中で、脊椎の運動の関係について、歩行時にアトラス[C1]とL5の同側への回旋が起こることを示している。この関係はC2とL4、 C3とL3の同側への回旋のように脊柱全域に続く。しかし、回旋は、C4とL2、C5と L1の間で反対に起こることになる。この逆方向への回旋は、上部脊柱と下部脊柱の移行部であるT5とT6に至るまで続く。この関係は“ロベットリアクター”と呼ばれる。』

 

 

 

 

・呼吸状態の変化も頭蓋内の緊張を変化させると考えられる。

・サザーランド支点

膜はあらゆる方向への動きと張力のバランスを維持するために支点あるいは安定した点に基づいて作動しなければならない。これらの点は外部張力などの変化に応じ、頭蓋骨の運動が安定するように自動的に動く必要がある。

-頭蓋内膜系の中心は、小脳テント、大脳鎌および小脳鎌の結合点に位置する仮想の点であり、サザーランド支点または自動移動浮遊点として知られている。膜に影響を及ぼす動的な力は、ここのバランスをもたらす。全頭蓋内および脊椎内硬膜緊張膜は、この点の周囲で動いて組織化される。 

脳硬膜と硬膜静脈洞
脳硬膜と硬膜静脈洞

画像出展:「人体の正常構造と機能」

この図の中には仮想の点、サザーランド支点(自動移動浮遊点)は出ていませんが、小脳テント(中央部)、大脳鎌(上部)、小脳鎌(下部)は明記されています。

 

 

 

 

・硬膜緊張異常による潜在的影響。

-静脈洞による頭蓋の静脈排液機能障害。

-脳の排液減少。

-脳組織の血液供給障害。

-脳脊髄液の変動障害。

-頭痛、硬膜の感知する神経供給(第5、10脳神経と第1~3頸神経)による頭蓋内および眼窩後の疼痛。

-顔面痛および硬膜ストレスに対して脆弱な三叉神経節による咀嚼筋群の異常緊張。

-脳神経および神経節の機能障害

-頭蓋骨、仙骨、尾骨の運動および可動域制限。

-脊髄神経の機能障害

-筋膜付着と脊髄神経の神経上膜による硬膜緊張の伝達。

-脳下垂体(鞍隔膜)の障害。

経絡≒ファシア5

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

1.7 頸部と体幹腹側の深筋膜

序論

・初期胚発生において、本来単一の体腔は将来、横隔膜となる横中隔と胸腔と腹膜腔に二次的に分ける胸膜心膜中隔の発達によって分割される。

・心膜腔は胸腔の中に形成される。これらの腔はそれぞれの内容物(肺、心臓、腹部器官)と少量の漿液で完全に満たされている。

頸部筋膜

・内臓索は、神経および血管束と頸部臓器から構成される頸椎前方に位置する。第1気管軟骨の高さの横断面は、内臓索が正中に位置し後縁は直接頸椎上にあることを示す。それは、3つの筋膜と、気管前筋群、椎前筋群、密性被膜からなる結合組織筋層によって囲まれている。

頸部の第1気管軟骨レベルの水平面
頸部の第1気管軟骨レベルの水平面

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

3つの頸筋膜の配置

・浅頸筋膜(頸筋膜浅葉)

-皮膚と広頸筋の直下にあり広い領域を伸張する。

-咬筋筋膜の延長として下顎骨と口底から舌骨の中間を尾側へと走行し、鎖骨と胸骨柄に付着したのち胸腰筋膜へと続く。

-浅頸筋膜は胸骨に付着しているため呼吸中に有意に移動する。

-浅頸筋膜は胸鎖乳突筋周辺で外側鞘を形成し、この被膜内を自由に滑走する。

-浅頸筋膜は背部では、外側頸三角(後頸三角)の脂肪体を覆って僧帽筋へと続く。

-浅頸筋膜は後上方へは、乳様突起を横断してそこから上項線まで延びる。

-浅頸筋膜は種々の領域により異なった構造をしている。顎二腹筋、僧帽筋前部、胸鎖乳突筋の下1/3はきめ細かい。頭側1/3においては、浅筋膜は極めて強靭で皮下組織に対してほとんど動かない。外側頸三角の下部においては、鎖骨上神経とその伴行血管が通過するためザルのようである。それは隣接する構造の多数の連結によって永続的な緊張下にある。 

3つの頸筋膜
3つの頸筋膜

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

・中頸筋膜(頸筋膜の気管前葉)

-中頸筋膜は舌骨下筋の筋膜被膜からなり、頸部臓器の前方で安定した三角形のスカートを形成する。

-中頸筋膜は頭側方向では、それは舌骨に固定されるように発達し、尾側方向では、胸骨の後方で上胸郭開口部を通り、胸骨舌骨筋と胸骨甲状筋の被膜として走行し胸骨柄に停止する。

-中頸筋膜は外側方向では、鎖骨の後方に固定され、肩甲切痕内側より起こって弧を描くように舌骨へと走行する肩甲舌骨筋の筋膜被膜によって後外側に接している。

-中頸筋膜は頸動脈鞘の形成にも含まれており、その牽引によって内頸静脈の管腔は開放されたまま保たれる。この原則は、頸部および上肢帯領域から走行してくる深静脈と頸部の皮静脈にも当てはまる。 

頸動脈鞘
頸部横断の上面(C7レベル)

左の図では、右側の上から3番目に“頸動脈鞘”が書かれています。これを見ると頸動脈鞘は総頚動脈、内頸静脈、迷走神経を取り囲んでいるのが分かります。なお、この図は“Blog cocokara”さまの「頚部の筋膜【ノート】」より拝借しました。

 

 

 

・深頸筋膜(頸筋膜の気管前葉)

-深頸筋膜は頸椎の前縦靭帯に固定されており、椎前筋群(頸長筋群)および頸部外側筋群(斜角筋群)を覆う結合組織を供給する。

-深頸筋膜は頭側では、深頸筋膜は頭蓋底に固定される。

-深頸筋膜は外側では、肩甲挙筋、項筋膜、頸筋膜と結合している。

-深頸筋膜は尾側では、胸内筋膜の中へと走行する。

-深頸筋膜は中斜角筋から鎖骨に到達し、前斜角筋とともに胸郭外面に到達する。そして、この領域より上方で、深頸筋膜は上肢への神経および血管束である腕神経叢と鎖骨下動脈を覆う。

胸郭の筋膜 

・胸郭上口は頸部との連結を示し、1対の第1肋骨、胸骨、第1胸椎に接している。

・胸郭への付着は対角線的であり、呼吸の中間時には胸骨上縁は第2胸椎の高さに位置する。

・胸部臓器[心臓・肺・食道・気管・気管支・胸腺など]は、頸部の臓器腔と連結している結合組織の中間層と縦隔に位置する。

・胸郭内に配置された胸内筋膜と壁側胸膜は、筋膜派生物として機能的単位を形成して、横隔膜、心膜、気管と他の構造物とともに縦隔に連結する。

・胸内筋膜

-深層の後方および中間前方頸筋膜は、上胸郭開口部において胸内筋膜に直接付着している。

-胸壁、胸膜項、横隔膜領域の胸内筋膜は、胸骨および脊柱において縦隔の結合組織内を通過する。

-胸内筋膜は、胸壁において肋骨筋膜、肋骨、胸筋膜(肋間筋と胸横筋の筋膜)の間へ広がる。

-肋間神経と血管は、胸内筋膜の後方部分に走行し、前方部では胸動静脈が第3肋骨の上方へ走行する。

・胸膜腔

-漿液性胸膜腔は、両側で縦隔に接しており嚢状の臓側胸膜(肺胸膜)によって完全に覆われる肺を含む。

-胸腔内において臓側胸膜は壁側胸膜に対して動くが、それは2~3㎖の漿液で満たされた細管間隙によって分けられる。

・壁側胸膜

-壁側胸膜は肋骨胸膜として胸壁を裏打ちする。

-壁側胸膜は縦隔胸膜として縦隔の外側面を裏打ちし、横隔胸膜として横隔膜を裏打ちする。

-壁側胸膜はその膜上に機械的牽引が生じるため、臓側胸膜よりもしっかりとその周辺組織に固定されている。

-肋骨筋膜は胸内筋膜に強固に付着している。

-横隔胸膜は横隔胸膜筋膜に強固に付着している。

・胸膜項/頸部筋膜

-鎖骨下動静脈は胸膜項の上でアーチ状になる一方で、横隔神経がその内側を走行する。

頸部の構造
頸部の構造

画像出展:「人体の解剖」

左の図では、気管の外側に総頚動脈-迷走神経-横隔神経-鎖骨下動・静脈-腕神経叢が確認できます。

 

 

 

・縦隔の筋膜構造

-縦隔は胸骨後面と接している肋骨から腰椎前面に拡がり、外側縦隔胸膜によって両側が区切られている。

-上縦隔は上胸郭開口部からおよそT4下縁まで広がり、尾側方向で下縦隔となる。ここから前後方向に3つの部分に区分けされる。

1.前縦隔:結合組織で満たされた胸骨と心膜の間の平坦な腔である。

2.中縦隔:心膜と心臓を含む。

3.後縦隔:胸郭と頸部の間を接続する腔であり、食堂、胸部大動脈、奇静脈および半奇静脈、胸管、交感神経幹を含む。

-心膜は漿膜腔を囲む、そして心臓を完全に取り囲む。

-心膜は外側の線維性心膜と内側漿膜性心膜からなる。漿膜性心膜は心筋の内臓シートの周囲を取り囲み、心筋を漿膜性の皮膚で覆う心外膜となる。漿膜性心膜と心外膜の間は漿液で満たされた腔である。

-線維性心膜は高密度な十字に交差したコラーゲン線維からなり、それは弾性のある格子様の網により散在している。この構造は心膜が動く間に心臓の生理的再構築を可能として、同時に心膜の過伸展を防止する。

-線維性筋膜は横隔膜と下大静脈周囲の中央索にしっかりと固定されている。

-心膜は縦隔胸膜によってほぼ完全に覆われており、結合組織によって縦隔胸膜へ付着している。

-横隔神経は心膜横隔血管とともに結合組織の中を横隔膜へと走行する。

上胸郭出口への頸部筋膜の連結
上胸郭出口への頸部筋膜の連結

画像出展:「膜・筋膜」

体表側の頸内筋膜、および脊柱側の深頸筋膜とも胸内筋膜に移行します。

 

 

腹壁の筋膜

・腹壁は構造的に3層からなる。

・腹部筋膜浅層は一般的な筋膜の一部として、皮膚と皮下脂肪組織の下部領域に存在する。

・中間層は平坦な腹筋群およびそれらの腱膜状に形成された筋膜に極めて密接した構造組織からなる。

・深層は後部の腹膜後隙を囲み、強力な結合組織層を含み壁側腹膜によって腹腔膜まで区切られる。

・浅層

-尾側では、胸筋筋膜が身体筋膜の浅層と腹部筋膜浅層の一部となって、外腹斜筋の筋腱シートの中へと続く。それは部分的に大腿筋膜に移行する。そして、外腹斜筋とともに白線領域、および鼡径靭帯とともに鼡径部に固定される。

・横筋筋膜による中間層

-平坦な外側の腹筋群(外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)、直線的な前方部の筋(腹直筋)、後方部の筋(腰方形筋)から成り立つ。

-平板筋(胸腹壁の筋など)は、それらの筋の筋膜によって各々が分けられ、その間には薄いもつれた結合組織層がある。

-腹直筋は非常に強固な結合組織鞘(腹直筋鞘)によって位置を固定される。

-横筋筋膜は内側の腹部筋膜であり、腹腔の筋腱膜壁の前外側内面を覆う。それは壁側腹膜の漿膜下結合組織に接合し、部位によっては緩く可動性があるが、他の場所では固定されていて不動である。

腹壁の深層
腹壁の深層

画像出展:「人体の正常構造と機能」

図の右側下から4つめに“横筋筋膜”が出ています。

 

 

-横筋筋膜は弓状線領域では白線の内輪に付着するまで続く。

-横筋筋膜は頭側では横隔膜の腹部表面を覆う。

横筋筋膜は後方では腰方形筋および大腰筋筋膜の薄い層として続く。

横筋筋膜は前尾側部では鼡径靭帯に固定されており、腸骨筋筋膜へと変化する。

-横筋筋膜は鼡径靭帯上方では精索、睾丸および副睾丸を内精索筋膜として取り囲む(内鼡径輪)

・深層

-壁側腹膜の後方部では、結合組織腹膜後隙を区切る。その内部の起伏は正中面と両側の大腰筋筋腹の内部に突出する腰椎によって特徴づけられる。

-腸腰筋の外側では腎臓と副腎を含む腎床へとより深い経路に広がる。  

腹膜後隙の筋膜境界
腹膜後隙の筋膜境界

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

 

第2腰椎の高さの横断面
第2腰椎の高さの横断面

画像出展:「人体の正常構造と機能」

『腎臓と周囲との関係:腎臓の周囲には腎筋膜と呼ばれる線維性組織があり、腎臓の表面を覆う腎被膜との間には脂肪被膜が挟まっている。脂肪被膜は腎門のところで腎洞の脂肪につながる。腎筋膜の外側には腎傍脂肪があり、腎臓の後方でよく発達している。腎臓は脂肪被膜および腎傍脂肪に包まれ、その中で動くことができる。』 

経絡≒ファシア4

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

1.5 下肢の深筋膜

序論

深筋膜は骨、腱、靭帯に混ざる。

・下肢深筋膜の機能の多くは、筋付着のための外骨格としての役割を含む。

下肢深筋膜は静脈灌流、緊張ストレスが集中する腱付着部でのストレス消失、下方構造物の保護シートとしての役割も認識されている。

深筋膜は様々な筋を連結するために、関節と中隔の上を通過する架橋のようにみなされている。

深筋膜は筋膜の固有機械的特性と高密度な神経支配により、運動の認知と協調における役割が認識されている。

骨格筋の構造と筋膜
骨格筋の構造と筋膜

画像出展:「病気がみえる vol.11 運動器・整形外科」

右端に“筋上膜”とありますが、筋上膜は”筋外膜”とよばれることも少なくありません。

『膜・筋膜』では”筋外膜”が使われています。

 

 

肉眼解剖学

下肢の筋膜は、3つの基本的構造(浅筋膜、深筋膜、筋外膜)で形成されている。

浅筋膜は皮下組織を3つの異なる層に分けるコラーゲン層である。表層は脂肪組織、中間層は膜性中間層または真の浅筋膜、そして深層の脂肪組織である。

・表層と深層の2つの脂肪組織の厚さは肢節の様々な領域で異なり。浅筋膜と皮膚間および浅筋膜と深筋膜間の特定の局所的関係により決まる。

・深筋膜は通常、下肢の筋と上層の浅筋膜から容易に分離可能な結合組織層からなる。

深筋膜と筋外膜に囲まれた筋間を滑る連続的な面は、間に存在するわずかな疎性結合組織が滑走性を高めている。この疎性結合組織は柔軟なゲル様の膠様質であり、この組織内に線維芽細胞が広く分散し、コラーゲン線維とエラスチン線維が不規則な網目状に配置していることを示す。

・いくつかの筋間中隔は下肢の深筋膜内面から起こり筋腹間に延びる。そして、大腿をいくつかの区画に分け一部の下肢筋の起始部となる。

・大腿の下肢深筋膜は大腿筋膜、下腿は下腿筋膜と呼ばれているが構造は同じである。この筋膜は腱膜に似た平均1mmの厚さの白い結合組織層である。

・外側領域では腸脛靭帯によって補強される。なお、腸脛靭帯は解剖によって深筋膜と分離できないため、大腿筋膜側面の補強物とみなされる。

・膝、足関節周囲では深筋膜は支帯とよばれる線維束によって補強されている。

支帯

支帯は深筋膜が局所に肥厚したものであり分離は不能である。

・支帯は平均1372μmの厚さでコラーゲン線維が十字形の配列をした強い線維束である。

・支帯は多くが骨に付着し、付着部は線維軟骨である可能性がある。付着部以外の部位では、疎性結合組織が支帯と骨間膜へと入り込むため骨上を滑ることができる。

・足関節支帯は固有感覚として働く。例えば、足関節内反による腓骨筋支帯の伸張は、腓骨筋の反射性収縮を引き起こす。

膝蓋大腿関節のアライメント不良や膝前部に痛みのある患者では、膝支帯の厚さや神経支配、血管新生をMRIによって評価ができる。

線維展開と筋の挿入

腸脛靭帯は大腿筋膜張筋と大殿筋の腱とみなされる。また、大腿筋膜の補強材である。

・腸脛靭帯は大腿の外側筋間中隔への広範囲な付着をもち、外側広筋の多くの筋線維も中隔から生じている。

・縫工筋、薄筋、半腱様筋は膝関節内側部に鵞足を形成するが、それらは下腿筋膜の内側面へ展開する。 

膝窩筋膜内部の力線の略図
膝窩筋膜内部の力線の略図

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

 

・半腱様筋の遠位腱は膝窩部で2つの展開をする。1つは膝関節包の後壁に達して斜膝窩靭帯を形成し、もう1つは膝窩筋の筋膜に達する。遠位部では腓腹筋近位部がこの筋膜に直接に入り込む。そのため、これらの筋線維は筋膜の張筋とみなすことができる。

・下腿前部では脛骨筋と長母趾屈筋が、その上の筋膜と筋間中隔に入り込む。このように膝関節周囲では、下の筋と腱から深筋膜を分離することはとても難しい。

顕微解剖学

・下肢と支帯の深筋膜はわずかに波打った配列のコラーゲン線維によって形成されている。

コラーゲン線維は筋膜総量の20%未満である。

・支帯では線維束は高密度に包まれ、疎性結合組織は少ない。線維束は2層か3層の平行コラーゲン線維束の異なった層で規則正しく配列されている。

・コラーゲン層は平均277.6±86.1μmの厚さである。線維層内ではコラーゲン線維は平行に配列しているが、線維層ごとに方向が異なる。 

肢節の深筋膜模式図
肢節の深筋膜模式図

画像出展:「膜・筋膜」

 

 

 

疎性結合組織は種々の構造の保護をしたり分離したりする。また、組織を取り囲むための水と塩の重要な貯蔵庫であり、様々な分解産物を蓄積できる。

疎性結合組織は水、イオンまたは他の物質の含有量の変動が起こると生体力学的適正が変化し、様々な筋膜層の滑走メカニズムを阻害する可能性がある。

・関節周囲や脛骨陵に沿った下肢の深筋膜は関節包および骨、またはその一方に特定の付着を示すことは興味深い。これらの部位は、張力ストレスが集中する部位であり、硬い組織と軟部組織のあいだの合流点である。特に筋膜が骨と連結する部位では、腱付着部はこのストレス集中を減少させるようになっている。

血管の多くは平均口径102.15μmで、下肢深筋膜のさまざまなコラーゲン層を通過し、かなり蛇行した経路をたどる。

神経線維もまたすべての深筋膜内に存在する。神経線維は特に血管周囲に多く存在し、線維成分全体に均一に分布する。

・筋膜内神経はコラーゲン線維に結合しており、多くの場合コラーゲン線維に対して垂直方向になっているため、コラーゲン線維の伸張によって刺激を受けると考えらえる。

自律神経の典型的な特性を示す小さな神経線維が存在する。これはアドレナリン作用性であり局所血流量の制御に関与していると思われる。

・肢節の深筋膜は大血管と神経の特定な関係を示し、保護鞘形成に寄与する。

筋膜は疎性結合組織によって分けられる重複層として配置されており、様々な層間での滑走性を可能にする。そして、神経と血管を保護し筋膜が被る牽引から緩衝するこの防御機構が変化するとき、神経または血管構造のいずれでも圧縮症候群を生じさせる可能性がある。 

1.6 胸腰筋膜

序論

・運動系の機能解剖学は生体力学(バイオメカニクス)との関連が強い。

・機能解剖学は骨、靭帯、筋が系としてどのように機能するかを説明しようとするものである。

生体力学と神経生理学観点から脊柱と骨盤は完全に統合される。

背部の筋の一部は仙腸関節をまたぐ。ヒトでは多裂筋が仙骨と腸骨稜へ広範囲に付着する。

脊柱-骨盤-下肢のメカニズムは統合されている。そして、このメカニズムが適切に機能するためには、骨盤に結合される3本のレバー(脊柱と左右の下肢)が効率的に働き、骨盤(骨盤の外部運動)、仙腸関節と恥骨結合(骨盤内の内部運動)の安定性を必要とする。

・仙腸関節をまたぐ効率的な荷重の伝達には、種々の筋の特定の作用を必要とする。

・大腿二頭筋と大殿筋は仙結節靭帯(一部が仙棘靭帯)に付着し、機能的に仙腸関節をまたいでいる。仙腸関節の痛みは局所の問題とは限らず、荷重伝達系の不具合による症状という場合もある。

体幹から両下肢への荷重伝達には、強力な胸腰筋膜が使用される。

・胸腰筋膜の後葉と中葉は筋と多数の連結を有しており、この筋膜の張力を受けた筋が、脊柱・骨盤・両下肢・両上肢間において効率的な荷重伝達に助力しているかどうかは重要である。

胸腰筋膜後葉は仙骨領域から胸部領域を経て項筋膜まで、背部の筋を覆っている。

胸腰筋膜後葉はL4-L5と仙骨の高さでは、浅層と深層の間に強い連結を認める。

・腹横筋と内腹斜筋は胸腰筋膜の中葉と後葉の融合によって形成される高密度縫線を通して、胸腰筋膜に間接的に付着している。

胸部および腰部の水平断
胸部および腰部の水平断

画像出展:「人体の正常構造と機能」

『固有背筋を包む筋膜で、後葉は棘突起から、前葉は横突起から外方に伸びる。胸部では肋骨角に付着する。腰部では固有背筋の外側縁で2葉が合わさり、腹横筋・内腹斜筋の起始腱になる。この部の後葉は広背筋・下後鋸筋の起始となるため腱膜様に肥厚し、胸腰腱膜ともいう。』

腹部の水平断面
腹部の水平断面

画像出展:「病気がみえる vol11. 運動器・整形外科」

こちらの図の胸腰筋膜(左下部)には、前葉も記載されています。

浅層

胸腰筋膜後葉の浅層
胸腰筋膜後葉の浅層

画像出展:「膜・筋膜」

A:大殿筋筋膜

B:中殿筋筋膜

C:外腹斜筋筋膜

D:広背筋筋膜

E:広背筋と大殿筋の筋線

1:上後腸骨棘

2:仙骨稜

LR:外側縫線の一部

 

 

 

・胸腰筋膜の後葉は、広背筋、大殿筋、腹部の外腹斜筋と僧帽筋の一部と連続性を有している。

・腸骨稜の頭側で浅層の外側縁は、広背筋との接合部として注目されている。

・浅層は大菱形筋の下縁に様々な厚さで付着しているとの報告がある。

・浅層線維は頭外側から起こり尾内側へ向いており、浅層のわずかな線維だけが外腹斜筋と僧帽筋の腱膜と連続している。

・浅層の大部分の線維は広背筋腱膜から生じて、L4までの棘上靭帯と棘突起の頭側に付着する。

・L4-L5の尾側で浅層は、棘上靭帯、棘突起、正中仙骨稜のような正中組織に通常は緩く付着する(または全く付着しない)。

・浅葉は反対側へ交差し、仙骨、上後腸骨棘、腸骨稜に付着する。この現象が生じる高さは様々である。通常はL4の尾側であるがL2-L3で起こっているものもある。

・仙骨の高さでは、浅層は大殿筋筋膜と連続している。これらの線維は頭内側から尾外側へ走行し、大部分の線維は正中仙骨稜に付着するものが多い。

深層

胸腰筋膜後葉の深層
胸腰筋膜後葉の深層

画像出展:「膜・筋膜」

B:中殿筋筋膜

E:深層と脊柱起立筋筋膜間の結合

F:内腹斜筋筋膜

G:下後鋸筋筋膜

H:仙結節靭帯

1:上後腸骨棘

2:仙骨稜

LR:外側縫線の一部

 

 

 

・深層線維は下位腰椎と仙椎レベルで、頭内側から起こり尾外側へ走行する。仙椎レベルでは浅層線維と融合する。ここで深層線維が仙結節靭帯と連続するため、仙結節靭帯と浅層との間にも間接的な連結がある。

・骨盤領域では深層は上後腸骨棘、腸骨稜、長後仙腸靭帯と結合している。長後仙腸靭帯は仙骨から起始して上後腸骨棘に付着する。

・腰椎領域では深層線維は棘間靭帯より生じる。それらは腸骨稜とより頭側の内腹斜筋が停止する外側縫線に付着する。

・正中仙骨稜と上後腸骨棘と下後腸骨棘の間の陥凹部で、深層線維は起立筋筋膜と融合する。

・腰部領域では、より頭側で深層線維は更に薄くなり、背部筋上を自由に可動する。

・下位胸椎領域では、下後鋸筋とその筋膜線維は深層線維と融合する。

結論

・『本章では、われわれは“筋膜”の観点から、胸腰筋膜と、脊柱・骨盤・下肢力の力伝達における胸腰筋膜の役割、下部腰椎と仙腸関節の安定化に関して検討した。』

大殿筋と広背筋は後部層を経て、反対側へ力を伝達することが可能なため、特に注目に値する。

胸腰筋膜後部層の深層前面に、最長筋と腸肋筋の腰部線維の両方と、より深部にある多裂筋を覆っている非常に強い脊柱起立筋腱膜が存在する。

脊柱起立筋腱膜は背骨背面と腸骨の一部に多裂筋とともに融合する。脊柱起立筋と多裂筋がともに収縮することにより、直接的な牽引または間接的に胸腰筋膜の後部層を拡張させることで深層の緊張が増加し、また中間層の緊張にも影響を与える。

股関節による骨盤の外部運動や体幹の屈曲や伸展(側屈や回旋の有無にかかわらず)は、胸腰筋膜に影響を与える。これらの動きは筋膜包膜の外的・内的力学、すなわち力と圧を変える。 

外部運動による筋膜の外的・内的力学
外部運動による筋膜の外的・内的力学

画像出展:「膜・筋膜」

Ⓐ筋収縮により胸腰筋膜の張力が増加する

EOA:外腹斜筋

ES:脊柱起立筋

IOA:内腹斜筋

LD:広背筋

PM:大腰筋

QL:腰方形筋

SP:棘突起

TA:腹横筋

TP:横突起

Ⓑ胸腰筋膜に付着する筋系の後面図(筋膜へ発生する力に注意)

1:上方から広背筋

2:下方から大殿筋

3:前方から内腹斜筋

4:前方から腹横筋

大殿筋は下肢を寛骨と胸腰筋膜に連結させる。

胸筋筋膜内では筋群は疎性結合組織、腱、腱膜、筋膜という拡張力が様々な結合組織により包膜されていると認識すべきである。よって、胸腰筋膜が筋組織で満たされている結合組織包膜と考えることは適切ではなく、胸腰筋膜は収縮要素で満たされた機能的連結結合組織単位である。

・特定の筋群を上肢や体幹、下肢のいずれかに属する筋であると分類することは、筋膜間の連結を考慮すると、十分に注意しなければならない。

脊柱と骨盤、下肢間において力が伝達する際、胸腰筋膜は十字形の役割を果たし、力を頭側や尾側、または斜めに伝達する。 

※閉鎖力

-『本章の初めに、脊柱と骨盤の閉鎖力について記載した。』とあります。“閉鎖力”で検索しましたがそのような用語を見つけることはできません。本文を読み返したところ、この“閉鎖力”はforce closureを訳した言葉であることが分かりました。また、“閉鎖位”という用語も書かれていましたが、こちらはform closureを訳したものでした。この“force closure”と“form closure”は骨盤の安定化に関し、とても重要な働きを有します。調べたところ、これらについて図解入りで説明された素晴らしいサイトがありましたので、ご紹介させて頂きます。 

骨盤の安定化機構
骨盤の安定化機構

こちらは、理学療法士のLeeさんのサイトより拝借しました。

経絡≒ファシア3

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

1.3 浅筋膜

序論

表皮と真皮の下にある浅筋膜(皮下組織)は高密度に包まれた層と疎性結合組織、脂肪が存在する。

皮膚と同一の広がりをもち、血管や神経を外皮へ、また外皮から運ぶという非常に重要な組織を構成する。

浅筋膜(皮下組織)は皮膚とその下にある深筋膜とを結びつける。深筋膜は全身の筋と腱膜を覆う。

皮膚と浅筋膜は骨格筋フレーム枠の上を滑り、保護するクッションになる。エラスチンと連結するコラーゲン線維シートはこの可動性を促進する。

・血管と神経は浅筋膜内で捻じれているため、伸長への適応が可能である。 

皮下組織
皮下組織

画像出展:「人体の正常構造と機能」

上から“表皮”→“真皮”→“皮下組織”になります。“浅筋膜”は皮下組織の部分です。

 

 

深筋膜
深筋膜

画像出展:「Tarzan」

深筋膜は浅筋膜(皮下組織)と筋(筋外膜)の間にあります。

 

 

肉眼的構造と分布

・線維束(皮膚支帯)は、真皮から深筋膜までそれらの連結を強化しながら皮下層を横断する。

・健常成人男性で体重の約20%、女性で約25%が白色脂肪である。

・皮下脂肪は身体の全脂肪貯蔵の約50%を占めるが、貯蔵は動的で細胞内で2~3週間ごとに入れ替わっている。

・成人では脂肪細胞の数は一定であり、幼児期と思春期のあいだに遺伝によって確定する。

・成人では脂肪細胞の約10%が毎年入れ替わる。

構成要素と機能の関係

間質液

皮下組織にはリンパ管と毛細リンパ管の豊富な網状組織が存在する。

・間質液には毛細血管からの組織液の産生と皮下リンパ管への吸収の動的な釣り合いがあり、下に存在する筋の収縮によってドレナージ[血液・膿・滲出液・消化液などの感染原因の除去や、減圧目的で患者の体外に誘導、排泄すること]が助けられている。

力吸収

・“線維脂肪組織”の皮下への混合物は、身体表面への圧縮力と剪断力に耐える圧力吸収装置として機能する。

断熱

・皮下脂肪は身体を熱損失から断熱する。

エネルギー源

・皮下脂肪は貯蔵エネルギーの非常に重要な蓄えになる。

・エネルギー源はトリグリセリドである。

血管配列

・下肢の伏在静脈は筋膜下よりも筋膜間に存在している。

・静脈は深部の筋膜と表層の膜様の2つの筋膜で区切られた区画内に存在する。その区画の中で、静脈は結合組織によって固着される。

皮下脂肪はすぐに使用できるエネルギー源であるため、非常に豊富な血液供給がある。また、体温調節の役割も果たす。

・小さな動脈は2つの網状組織を供給する。乳頭下血管叢が最も表層にあり、皮下組織の近くの真皮に存在している。第2の網状組織は皮膚網状組織であり皮下組織に存在する。2つの網状組織は自由に通じ合う。

より小さな静脈は動脈に伴走し、2つの網状組織に同じように配列される。この配列は皮膚の中を流れる支配血液の吻合を可能にするので、豊富な動静脈吻合を提供する。 

あたらしい皮膚科学
あたらしい皮膚科学

“乳頭下血管叢”をネットで調べていて見つけたものです。これは以下にご紹介した皮膚科医の清水宏先生のオフィシャルサイトにあったものです。著者である先生が本1冊、しかもとても分かりやすい見出しをつけてアップされています。

 

 

 

・四足動物では皮下組織の深い部分に皮筋層という皮筋の広範囲なシートがあり、虫などの皮膚刺激物を取り除く保護機能を有するが、人ではこの層はただの痕跡にすぎない。

線維

皮膚への張力特性と弾性特性を制御している。

皮下には3種類の線維が存在する。主にコラーゲンとエラスチンだが、レクチン(一種のコラーゲン)も存在する。

・コラーゲンは皮膚が伸長されるときに抗張力を示す。種にⅠ型だがⅢ型とⅤ型も存在する。

・線維は脂肪細胞を取り囲み小葉にグループ化する。また、真皮と深筋膜を結びつける。

・エラスチンは真皮と表皮の伸長と弾性反跳に関係する。

細胞

・皮下組織にある線維芽細胞は、コラーゲン線維とエラスチン線維と他の基質蛋白質で形成される蛋白質を合成することに加え、それらはコラーゲン線維と他の線維の分解にも関与する。

・血液単球から生じるマクロファージは食細胞である。

・好中球は通常、炎症反応に関与することなく間質液を循環する。

肥満細胞は血中好塩基球の特徴を有し、ヘパリン、セロトニン、ヒスタミンを産生し、毛細血管に作用して浸透性に影響を与える。 

肥満細胞(炎症のメディエータ)
肥満細胞(炎症のメディエータ)

画像出展:人体の正常構造と機能」

 左下に肥満細胞(マスト細胞)が出ています肥満細胞は粘膜下組織や結合組織などに存在します

この図を見ると、”炎症”のプロセスにおいて、”肥満細胞”が非常に重要な役割を担っているのが分かります。そこで、細かいですがご紹介させて頂きます。

『感染症や外傷によって組織が傷害されたとき、細菌などの有害因子を排除し、組織を修復するために起こる治癒過程を炎症という。具体的には、①局所の血流が増加し、②血漿および白血球が血管外に移動し、③血漿成分と食細胞が協力して有害因子を除去し、④組織が再生される。

上記の経過中、主として血流量の増加や血漿の漏出のために組織に現れた変化を、肉眼的にあるいは自覚症状としてとらえられたものが「炎症の4徴候」すなわち発赤、腫脹、熱感、疼痛である。炎症反応は種々の化学伝達物質によって調節されている。血漿キニンや、細菌によって活性化された補体成分、炎症巣において白血球が放出する種々のサイトカインなどがこれに含まれる。これらを総称して炎症のメディエータという。

肥満細胞は補体やIgE抗体で刺激されると脱顆粒を起こし、ヒスタミンやセロトニンを放出する。これらのアミン類は、毛細血管の内皮細胞を収縮させ、細胞間隙を広げることにより血管透過性を亢進させる。肥満細胞は次いで、プロスタグランジンE₂(PGE₂)、ロイコトリエンB₄(LTB₄)、血小板活性化因子(PAF)といったアラキドン酸代謝物を産生・放出する。これらも血管透過性亢進作用を持つ。

血漿の漏出により組織間液が増加し、組織は腫脹する。また、組織圧の上昇により、あるいはブラジキニンによって痛覚受容体が刺激され疼痛を覚える。

ブラジキニン、プロスタグランジンE₂は細静脈を拡張させ、局所の血流を増加させる。血流によってより多くの酸素と栄養素が運ばれ、組織の代謝が亢進し再生修復を促進する。局所の血流増加と代謝亢進は、発熱と熱感として観察される。

炎症が始まって数分以内に、組織内のマクロファージが到着し貪食を開始するとともに、TNF-α、IL-1、IL-6を産生する。これらのサイトカインは炎症局所のみならず全身的に幅広い作用を持つ(①接着分子の発現 ②好中球の動員 ③急性期蛋白質(CRPは代表的な物質)の誘導 ④発熱)。

細胞外マトリックス-基質

・基質は糖蛋白(エラスチンの伸張と反跳特性のために必要。また、コラーゲン線維の沈着と定位を制御している)、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチンとデルマタン硫酸を含む。

他の成分

・らせん状の汗腺の深部は皮下組織に広がる。毛包根もまた皮下組織にある。

皮下組織の加齢変化

・皮膚と下に横たわる浅筋膜は弛緩して伸びる。そして、下垂軟部組織、偽性脂肪沈着変形、セルライトに帰着する。また、発汗と皮脂腺が衰退し、上にある皮膚を乾燥させるようになる。

1.4 肩と腕の深筋膜

肩の深筋膜

・肩の深筋膜は体幹と四肢両方の筋膜に似た特性を有している。

・大胸筋、三角筋、僧帽筋、広背筋の筋膜は固有の層を形成し、これらすべての筋を包み込み前鋸筋の上を通過し、強い筋膜層を形成する。

・大胸筋、三角筋、僧帽筋、広背筋の筋膜は、比較的薄いコラーゲン線維層である。

・大胸筋、三角筋、僧帽筋、広背筋の筋膜は、筋膜内面から延びている一連の筋内中隔[筋肉と筋肉の間を隔てる厚い結合組織]により各筋にしっかりと付着しており、筋自体を多くの束に分けている。

・筋外膜(筋上膜)は深筋膜と下に横たわる筋の間で識別不能である。多くの筋線維はこれらの筋膜の内側や、直接に筋内中隔から起因する。

・胸筋筋膜は鎖骨から起こるが、胸筋筋膜深層だけは鎖骨骨膜に付着し、浅層は上方の深頚筋膜の浅層へと続き、胸鎖乳突筋と僧帽筋を取り囲む。

・胸筋筋膜深層は内側では、胸骨骨膜に入り込む。

・胸筋筋膜浅層は胸骨を越えて、反対側の胸筋筋膜へ延びる。

・胸筋筋膜は遠位では、腹直筋鞘や反対側の外腹斜筋筋膜から起こる若干の線維展開によって補強される。

・胸筋筋膜は平均151μmの厚さである。そして、頭尾側方向で厚さが増し、乳房部では平均578μmの厚さに達する。

・胸筋筋膜は剣状突起状上にて交差した線維パターンを形成する。

医学の発展のために
医学の発展のために

今度は“胸筋筋膜”で検索したところ、またまた凄いサイトを見つけました。

『13th NNACで私の仕事を紹介する機会を頂きました。脳神経外科(脳血管の機能解剖)がメインの研究会ですが、脳神経外科領域のみならず、内科、専門科を含めた領域で解剖学変異(破格、バリエーション)の知識を共有できるホームページがあれば、稀な疾患への治療方針が迅速に立てられるようになり、患者さんの命を救うのに少しでも役に立たつのではないかと考え、協力してくださる医師・研究者と日本を代表する医学教育サイトを目指すことにしました。私が慶應義塾大学医学部解剖学教室に勤務するようになって33年ほど経過しました。このホームページは、医学生のために役に立ちたいという思いでつくりましたが、医学生のみならず、医師、患者さんとの情報共有ができればと考えています。

・三角筋筋膜はその下の筋肉の大きさに関係なく、人によって筋膜の厚さは様々である。筋膜は筋に強く付着し、三角筋の種々の部分と結合する。

・三角筋は3つの部分(前部、側部、後部)に区別できる。

・三角筋筋膜は僧帽筋を覆っている筋膜に続く。

・三角筋筋膜の表層筋膜層は連続している。

・三角筋筋膜の深層は肩甲棘や鎖骨に入り骨膜と連続する。

・三角筋と胸筋筋膜は波状コラーゲン(多数のエラスチン線維が不規則な網目を形成している)で、その下の筋に対して多少横断して配列している。

・鎖骨胸筋筋膜は浅層の筋層を剥離すると見える。

・鎖骨胸筋筋膜と大胸筋との間には疎性結合組織があり、そのため大きな分割面が存在する。それにより胸筋筋膜深層が鎖骨胸筋筋膜に対して独立して滑ることができる。

・鎖骨胸筋筋膜は鎖骨から生じて、鎖骨下筋と小胸筋を囲むために遠位に広がる強い結合層である。

・鎖骨胸筋筋膜は外側では腋窩筋膜と烏口腕筋筋膜へ続く。

・鎖骨胸筋筋膜は2部位に分かれる。1つは小胸筋を覆っている部分、もう一方は小胸筋の上縁と鎖骨間の三角形の形状層である。

・鎖骨胸筋筋膜は胸動脈、神経、橈骨皮静脈が通過する。

・肩甲下筋筋膜は肩甲骨周囲の種々の中で最も薄いが明確な層である。

・肩甲下筋筋膜は外側には腋窩筋膜と棘下筋筋膜、そして頭側は棘上筋筋膜へ続く。

・棘下筋筋膜は棘下筋と大円筋を覆う。

・棘下筋筋膜は一部を広背筋と三角筋に覆われる。一方、広背筋、僧帽筋、三角筋の接合する筋膜だけは浅層面にある部分を覆う。この部分において、2つの筋膜が各々に固着し、強い筋膜プレートを形成する。

・棘上筋筋膜は棘上筋を覆って肩甲挙筋の筋膜へ続く、厚さは様々で時に脂肪組織を含む。

・棘上筋筋膜と棘下筋筋膜の遠位1/3は肥厚が常に認められ、この肥厚が肩甲上神経の動的な圧迫となり、症例の15.6%に関与していると考えらえている。なお、肩甲上神経の症例の殆どは下肩甲靭帯に由来するものである。

・腋窩筋膜は、浅筋膜と深筋膜の結合によって形成される。

・腋窩筋膜は外側では腕の浅筋膜と上腕筋膜、内側では大胸筋筋膜と鎖骨胸筋筋膜、後方では広背筋筋膜と肩甲下筋筋膜へと続く。

・腋窩筋膜は多数のリンパ節を含んでおり、多数の神経と血管が通過し線維組織と脂肪の栓で満たされている。

腕の深筋膜

・上腕筋膜と前腕筋膜は、腕の深筋膜を形成する。

・腕の浅筋膜は皮下脂肪組織の範囲内に存在し、容易に深筋膜から分離できる。

・上腕筋膜は強力であり、腕の筋を覆っている半透明の層状結合組織である。

・上腕筋膜の厚さは平均863μmであり、前部は後部より薄い。この筋膜内では様々な方向へのコラーゲン線維束を容易に確認できる。コラーゲン線維束は腕の長軸に対して横走するだけで、縦走あるいは斜走する。

・上腕筋膜は外側・内側筋間中隔と上顆に付着しているが、下の筋から容易に分離できる(プレート1.4.1)。

・上腕筋膜は近位では腋窩筋膜と大胸筋、三角筋、広背筋の筋膜に連続する。

プレート1.4.1
プレート1.4.1

画像出展:「膜・筋膜

上腕前面の解剖、上腕二頭筋から上腕筋膜を剥離している。

 

・前腕筋膜は結合組織の厚い白っぽい層の外観を呈し、屈筋と伸筋区画を包み、その内側面からそれらの間の中隔へと延びる。

・前腕筋膜の厚さは平均0.75mmであり、手関節領域で増加し(平均1.19mm)、手関節の屈筋・伸筋支帯を形成する。

・前腕筋膜は様々な方向に走行している線維束より形成される。

・手関節では線維束は内外側方向と外内側方向へ多重層となって近位から遠位へ配列する。

・前腕筋膜は橈側手根屈筋と尺側手根伸筋の上にあるが、遠位では腱鞘が筋膜と融合し、手関節では筋膜は腱鞘を包み込んでいるように見える。

・前腕筋膜は尺骨動脈と尺骨神経が通過するギヨン管の屋根を形成する。

・前腕筋膜は外側と内側では母指球筋膜、小指球筋膜へと続き、隆起間に厚い横断的線維束が張る。

・3層の平行なコラーゲン線維束は、互いに疎性結合組織の薄い層で分けられ、腕の深筋膜を形成する。これらの束の配列は各線維内では平行であるが、層ごとに異なっている。

多くの血管は浅筋膜(皮下組織)内の疎性結合組織層に存在し、線維束と混ざる。

筋膜展開

筋膜展開は腱付着部近くに集中するストレスを減少させると同時に動きも減少させる。

・上腕三頭筋内側頭は遠位で前腕筋膜へ、尺側手根伸筋は小指球筋群へ腱展開があり、最後に小指外転筋は腱展開を伸筋腱膜へもたらす。上肢全体の前方運動の間、大胸筋鎖骨部線維の収縮は、上腕筋膜前部を引っ張る。上腕二頭筋の同時収縮は、その上腕二頭筋腱膜によって前腕筋膜の前部を引っ張る。一方で、長掌筋が屈筋支帯、手掌腱膜、母指球筋筋膜を引っ張る。このように、これらの筋膜連結は上肢の屈曲に関与する様々な筋成分間に解剖学的連続性を形成する。

上肢の筋膜展開
上肢の筋膜展開

画像出展:「膜・筋膜

上肢の深筋膜と下に横たわる筋のあいだの連結を示した略図。

 

筋膜には神経分布が豊富であり、この神経支配は、ほとんどの場合、固有受容型(機械受容器、自由神経終末など)であるため、筋膜の特定の領域の伸張は固有受容の特定のパターンを活性化する。筋の骨への付着は機械的な動きに作用するが、筋膜の付着は固有感覚の役割を担い運動知覚に関与する。 

腕の深筋膜弾性

・筋力計を用いた腕の深筋膜弾性研究では、筋膜が筋収縮で発生した力を伝達することができることを示した。上腕二頭筋腱膜と上腕三頭筋の伸張は、それぞれ5.63㎏と6.72㎏の平均牽引力を示した。大胸筋と広背筋の伸張力は約4㎏であった。手の腱における伸長力は弱く、約2.5㎏の牽引力である。弾性は筋の量と力に関連があるように思われる。

経絡≒ファシア2

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

目次は”経絡≒ファシア1”を参照ください。

 

序論

筋膜の世界にようこそ!

・第1回国際筋膜研究学術大会は2007年10月、ハーバード大学医学大学院の会議センターで開催された。

『本書の目的は、研究者と身体構造を治療している専門家のために、身体の結合組織マトリックス(筋膜)に関連した情報を系統化することである。』

臓器を包んでいるだけではない

・解剖において筋膜は“何かを見るため”最初に切除しなくてはならない白い包みである。

・筋から腱を通じて骨へ力が直接に伝わることはほとんどなく、筋は筋膜シート上に収縮力や緊張力を与えることに関与している。この筋膜シートは拮抗筋と共同筋に力を伝える。そのため1つの関節ではなく、それ以上のいくつかの関節に関与する。

・『筋膜組織は1つの大きなネットワーク器官であり、たくさんの袋やロープのような局所の高度化を何百と有しており、ポケット内に何千というポケットを有し、また頑丈な隔膜や疎性結合層によりすべて相互に結合している。』

筋膜とは?

・『軟部結合組織内の解剖学的区別は重要であるが、細部にこだわると大きなスケール上で認識されているだけの重要な組織の連続性については無意識に排除されかねない。たとえば、頸部斜角筋の筋膜は胸郭内の心膜と隔膜に連続しているという臨床上の重要性について、われわれと議論する整形外科医には驚きであるが、オステオパシーや一般外科医にはそれほどでもない。』

2009年の筋膜研究学会(Huijing & Langevin 2009)において、膜という用語は、“人体に広がっている結合組織系の軟部組織成分”とされた。また、人体全体の張力伝達システムである線維性コラーゲン組織であるとも記述された。 

筋膜と考えられている異なった軟部組織
筋膜と考えられている異なった軟部組織

画像出展:膜・筋膜

・筋膜組織はコラーゲン線維の密度と方向によって異なる。

・浅筋膜は低密度でほとんどは多方向か不規則は線維アライメントであり、腱や靭帯より密度が高く一方向性である。

・筋内の筋膜(隔壁、筋周膜、筋内膜)、内臓筋膜(体網や心膜のようなより強固な軟部組織を含む)は、さまざまな方向と密度を有する。

・固有筋膜は二方向から多方向配列である。

・支帯や関節包は示していないが、靭帯と腱膜、固有筋膜の間でさまざまである。

 

・『膜組織の広汎な定義における大きな有用性の記載がある一方、より伝統的な著者は筋膜という用語を腱膜や靭帯のような規則的な組織と区別して、“不規則”な結合組織の高密度化層と限局して使用していることも認識している。ある分野においては、そのような区別はほんとうに可能であり、臨床において有用である(例として腰部の筋膜と腱膜)。そこで本書には可能なところに12の特定用語を追加し筋膜組織の詳細な記述をした。この特定用語はHuijing & Langevin(2009)によって提言された以下の用語である。

密性結合組織、疎性結合組織、浅筋膜、深筋膜、筋間中隔、骨間膜、骨膜、神経血管路、筋外膜、筋内および筋外腱膜、筋内膜。しかし身体の多くの重要な部位はそのような形態上分類間の緩やかな変化やさらに局所のコラーゲン構造の幾何学的種類(主要な線維方向、組織の厚さと密度の観点から)により特徴づけられるため、詳細な組織特性を理解することは非常に有用である。

・『本書は、筋膜学会のように、科学者と臨床家の両方に向けるという困難な役割を果たしている。第1部で筋膜の解剖学と生理学、第2部では臨床状態と治療について、第3部では近年の研究成果を紹介した。われわれは研究者が直面している筋膜周囲組織の定義の努力について目を向けた。どの組織か? どの線維方向か? 何が何に結びついているか? 臨床治療においてどの組織が損傷し、どの方向への力がかけられているかを定義する一助となるよう、研究手段により、いっそう臨床分野についての議論を展開しなくてはならない。臨床家と科学者が一緒にそして別々に、筋膜の基礎的理解と臨床治療についてさらに進めることに挑戦していくことがわれわれの希望である。』 

第1部 科学的基盤

パート1 筋膜体の解剖

1.1 筋膜の一般解剖

序論

・筋膜は三次元的基質を形成し、すべての器官に連続しており、線維と束間を分けているというよりはむしろ結合している。

●筋膜の一般構造と構成 

骨格筋の筋膜図
骨格筋の筋膜図

画像出展:膜・筋膜

・筋外膜は筋の周りを取り巻いているもの。[筋外膜は筋上膜とも呼ばれています]

・筋周膜は筋線維束を分けているもの。

・筋内膜は筋線維を分けているもの。

・各筋線維内には収縮性筋原線維が存在する。

 

筋内膜の機能解剖学

・筋内膜は筋線維を筋束につなげる唯一の組織である。

・筋内膜ネットワークは連続的な構造であるため、線維管内の終末線維で発生した張力は筋内膜ネットワークを通して伝達する。

筋周膜の機能解剖学

・筋周膜の量と空間分布は身体の筋間において異なる。

筋周膜は張力により簡単に形を変える。

・筋周膜は張力下において高張力剛性を示し、張力の大きな力を伝達するが、それは筋の作用する長さ以上に伸長された状況においてである。

筋周膜-筋内膜の接合領域

・筋線維を取り巻いている筋内膜は、筋周膜接合板(PJPs)にて断続的に筋周膜と結合していると考えられている。

筋周膜と細胞内下位領域

・筋線維の主細胞質構成要素間において、核とミトコンドリアが重要である。それは、筋線維の代謝とエネルギー算出をコントロールするためである。

・筋周膜のⅣ型コラーゲン成分の欠乏は、筋線維核とミトコンドリアのアポトーシス(細胞消滅)と関係する。

・筋が収縮するストレス下においては、筋周膜ケーブルの最終分岐が機械的情報伝達において重要な役割を果たす。

結論

筋膜は隣接筋線維が筋束内できつく結びついて力が伝達することにより、過伸長下における力の協調と損傷部位の保護を可能にする。

・力の伝達は少なくとも連続した線維筋では収縮力伝達の主要経路である。

・筋周膜と筋外膜が筋膜での力伝達経路としても作用するという根拠が多数存在する。

・動筋の機械的役割に連続的に適合するために、筋膜は合成と再構築(リモデリング)間で連続的な動的バランスをとっている。

1.2 体幹の筋膜

身体の筋膜の包括的組織

身体における体幹の筋膜の組織概説

全ての体幹組織は、身体の実質を包み込んでいる筋膜という軟部組織の中に存在する。

・筋は結合組織基質内で成長し、成体組織は筋外膜に覆われる。

・骨は間葉と呼ばれる胚筋膜基質から起こり、成体形では骨膜となる。

・間葉は肥厚化して関節包を強固にし、最終的に関節包の高密度層を覆っている筋膜を形成する。

体幹組織を包んでいる筋膜シートは、各組織を取り囲むことで直接的摩擦から保護している

・結合組織である筋膜は体幹系組織を取り囲むことにより、複雑で連続的な面やシートを結びつける。

・筋膜には多面的にゆがむと同時に、速やかに元の形に戻る能力がなくてはならない。この特徴は線維性成分が織り混ぜられている不規則性結合組織の筋膜によくみられる。

固有筋膜は線維要素が不規則に分布する結合組織と定義され、組織が平行に並んでいる腱や靭帯、筋膜、関節包とは対照的である。

筋膜の線維成分密度は局在と機能により非常に様々である。

皮下にある筋膜は動きやすいようにコラーゲン線維密度は低い。一方、筋や靭帯、腱、関節包を覆う筋膜は、コラーゲン線維の密度は高く、強固な支持が可能である。

・体幹系(筋、腱、靭帯、腱膜)は分化した構造ではないため、筋膜面の明確な境界域は存在しない。

リンパ管は筋膜面の不規則組織内に分布しているため、境界域組織に力がかかってもリンパはリンパ管の中を容易に流れる。

筋膜の体系―4つの主要な層

一般的アプローチ

・本章では不規則結合組織または、“固有筋膜”に焦点を当て、身体の軸を覆う主要な4層について述べる。この基本理念の修正が四肢に適応される。 

筋膜と考えられている異なった軟部組織
筋膜と考えられている異なった軟部組織

画像出展:膜・筋膜

固有筋膜は左の図の下部左端になります。

 

・体幹の4層は一連の同心性チューブとして配列している。

・筋膜の際外側部は層あるいは脂肪層と呼ばれる。

・脂肪層の深部に体幹の軸性筋膜がある。この層は体軸筋の筋外膜、歯根膜と腱や靭帯の周囲靭帯、骨膜となる。

・筋膜の軸層は四肢筋膜と連続している。

軸筋膜の内部は2層に分かれる。1つは神経組織を取り巻く髄膜筋膜、もう1つは体腔を取り巻く内臓筋膜である。

皮下脂肪組織層の下に、軸筋膜に類似した構成の筋膜層が四肢の筋を取り巻いており、四肢筋膜と呼ばれている。

四肢筋膜の内部には神経血管束を収容している筋内中隔がある。

筋膜の主要な4層

皮下脂肪筋膜

最外側層は皮下脂肪層筋膜で、浅筋膜とも呼ばれる。

・皮下脂肪層は脂肪細胞と同様に部位により様々なコラーゲン線維密度の著しい変化を伴って不規則結合組織で構成されている。

軸(体幹)筋膜

2番目の層は軸筋膜または深筋膜という。軸筋膜は層に末梢性に融合して身体の深部へ広がり、軸下(腹側)筋および軸上(背側)筋を取り囲む。

・軸筋膜は2つの平行した結合組織管により構成されていて、脊柱の前方と後方に走行する。発生的にこの2つの管は成人で脊柱となる脊索によって分けられる。前菅は軸下筋群を取り囲み横突起へ付着する。軸下筋群は頸部では頸長筋や斜角筋、胸部では肋間筋、腹部では腹斜筋と腹直筋を含む。軸筋膜の後管は軸上筋群を取り囲み横突起に付着する。各椎体の棘突起により、軸上筋膜管を2つの“半分の管”に分ける。後部の傍脊柱筋群は軸上筋膜の“半分の管”に含まれる。

脊柱の前方と後方を走行する軸筋膜
脊柱の前方と後方を走行する軸筋膜

(A)白い輪郭は軸筋膜を示している。

(B)筋区画の陰影

(C)軸上(背側)と軸下(腹側)筋膜円柱

軸(体幹)と四肢の境界には複雑な筋膜関係が存在する。

体壁の筋膜配列は肢節の連結によって非常に複雑になっている。

・胸筋や僧帽筋、前鋸筋、広背筋のような上肢の筋は、長い翼のように展開して体幹を覆い身体の正中の棘突起や、胸腰筋膜のように最終的に正中に附属する組織に付着する。

髄膜筋膜

3番目の筋膜層は神経系を取り囲む髄膜筋膜である。この層は硬膜ならびに下に横たわる軟膜を含む。

・髄膜筋膜は末梢神経を取り囲む神経上膜となり終わる。

・脊髄髄膜は壁側中胚葉から派生すると考えられる。

内臓筋膜

4番目の筋膜層は内臓筋膜であり、4つの主要筋膜層のうち非常に複雑な筋膜である。

発生学的に内臓筋膜は内臓組織から派生し、胸膜・心膜・腹膜として体腔を取り囲む。

身体の正中で内臓筋膜は、頭蓋底から骨盤腔まで延びる厚い縦隔を形成する。

要約

筋膜は身体全体を通して広く分布して、不規則でさまざまな密度のコラーゲン線維を織り混ぜたもので構成される結合組織の形態を示す。

筋膜は身体において複数の役割を果たす。大部分の構造物を覆い保護力は高く、また潤滑機能を提供することである。

・骨格成分間の相互接続ネットワークにより力の変換を制限する。

・細胞組成が免疫機能と感覚神経の役割を強く担っていることを示唆している。

・『特定の筋膜には多くの名称がついているにもかかわらず、本章では4つの主要筋膜層だけを表現することを試みた。最外側または皮下脂肪層(浅筋膜)は、おもに疎性結合組織と脂肪で構成されており、露出した開口部以外の体幹と四肢すべてを取り巻く。次に、筋や腱、靭帯、腱膜を覆っている、高密度な不規則性結合組織で構成された軸筋膜(深筋膜または被覆筋膜)の複合体配列がある。軸筋膜は四肢(四肢筋膜)に達し、軸(体幹)対照物と類似した構成と機能がある。この筋膜ネットワークは、骨格筋系要素の保護と潤滑に作用し、筋収縮時に力変換の伝達にも作用する。軸筋膜は脊柱で分けられる2つのそで(スリーブ)からチューブで配列され、そこから四肢筋膜が起こる。最終的な2層は軸筋膜内に包まれている。これらは、髄筋膜および内臓筋膜であり、両者はそれぞれ神経系と内臓を保護する役割を担っている。本章では、それらの小成分よりもむしろ主要層の提示に限定することで、身体の筋膜面の連続性を強調した。』

経絡≒ファシア1

私は2018年11月にアップしたブログ“閃く経絡(経絡と電氣)”で、[経絡≒ファシア]と考えるようになりました。

専門学校で学んだ「東洋医学概論」では、“経絡”、“経絡現象”、“経絡説”について、次のような説明がされています。

経絡

『経絡とは、気血の運行する通路のことであり、人体を縦方向に走る経脈と、経脈から分支して、身体各部に広く分布する絡脈を総称するものである。経絡の考え方は、古代中国人が、長い臨床観察を通じて得た一つの思考体系であり、蔵象とならんで東洋医学の根幹をなすものである。特に鍼灸医学にあっては、診断と治療に深く係わっており、きわめて重要である。』

経絡は縦方向の経脈が有名で、ゆえに“線”のイメージが強いのですが、正しくは身体に広がるもの、つまり“面”であるということです。このことは[経絡≒ファシア]を考えるうえでとても重要です。

経絡現象

『経絡現象は、特定の身体部位を指先で押したり、鋭利な石片(“砭石[ヘンセキ]”と呼ばれている)を刺したり、あるいは、刺して皮膚を傷つけて出血させたりする治療行為をする際に、おそらく発現していたのであろうと考えられる。日本で“針の響き現象”といわれている、針を刺したときに発生する特殊な感覚の伝達現象もその一つである。また、一定の部位に針を刺したときに、その部位の苦痛が緩解されるばかりでなく、遠隔部位にまで変化が波及することも含まれよう。』

経絡説

経絡説は、そのような経絡現象を基にして、その性質や現象の発現のルールを極めようとして考え出されてきたものである。したがって、経絡説は、それが形成されてきた時代の思考法や社会制度などに影響されざるをえない。』 

例えば、足少陰腎経と呼ばれる経脈は、「腎に属し膀胱を纏[マト]う」というように、経絡は体表のみならず体内の臓腑に働きかけるものとされています。しかしながら、私はこの“教え”を専門学校時代から疑っていました。

ところが、経絡≒ファシアと考えれば、この“臓腑に働きかける”ということも納得できます。さらに「ツボ(経穴)は皮下浅いところにある」、あるいは「“気至る”とは鍼を静かに丁寧に進めていって抵抗を感じるところ」なども、ファシアを連想させます。

そして、[経絡≒ファシア]と考えるならば、経絡を施術の柱としている私にとって、ファシアを深く知ることは極めて重要であり、もしかしたら、“新経絡”というような新たな道につながるかもしれません。

“閃く経絡(経絡と電氣)”の中で、『膜・筋膜 -最新知見と治療アプローチ』という本をご紹介しているのですが、熟読とは程遠くざっと目を通した程度でした。そこでファシアの基礎を学ぶため、この本を教科書として勉強させて頂くことにしました。

対象は「第1部 科学的基盤」になります目次は第2部、第3部も列記していますまた、 今回は自分自身の勉強が1番の目的であるため、大変細かくまた非常に長くなっています。そのため、ブログを12個に分けました。ご紹介している目次の黒字がブログの対象ですが、理解不足が顕著で書けない箇所など、全てを網羅してはいません。

人体の張力ネットワーク
人体の張力ネットワーク

監訳:竹井 仁

出版:医歯薬出版

発行:2015年6月 

2007年10月にHarvard Medical Schoolで開催された第1回国際筋膜研究学術大会(The 1st International Fascia Research Congress)において、「Fascia」は、「固有の膜ともよばれている高密度平面組織シート(中隔、関節包、腱膜、臓器包、支帯)だけでなく、靭帯と腱の形でのこのネットワークの局所高密度化したものを含む。そのうえ、それは浅筋膜または筋内の最奥の筋内膜のようなより柔らかい膠原線維性結合組織を含む」と定義づけられました。この定義をもとに、膜・筋膜に関する数多くの内容が本書に示されています。

本書では、膜・筋膜に関する最新研究とさまざまな治療アプローチに関して詳細に記載されています。第1部では、科学的基盤として、筋膜体の解剖、コミュニケーション器官としての筋膜、筋膜の力伝達、筋膜組織の生理学に関して詳細に記載されています。第2部は臨床応用として、筋膜関連の障害、筋膜の弾性に関する診断法、筋膜指向性療法として世界中の24の治療アプローチが記載されています。そして、第3部では、研究の方向性として、筋膜研究の方法論的な挑戦と新しい方向性が記載されています。』

こちらが原書の表紙です。発行は2013年2月です。

お伝えしたかったことは、日本語版に出てくる「膜・筋膜」は「Fascia(ファシア)」を意味しているという点です。 

 

ご参考

現在、ファシアについては以下のような書籍も出版されています。

その存在と知られざる役割
その存在と知られざる役割

こちらをクリック頂くと、医道の日本社さまのサイトに移動します。

 

筋膜の構造
筋膜の構造

こちらをクリック頂くと、医道の日本社さまのサイトに移動します。

 

日本では“Fascia”は“ファッシア”、または“ファシア”と表記されています。私は「日本整形内科学研究会」で勉強させて頂いており、こちらで使われてきたファッシアを用いてきました。しかしながら、Fasciaの広まりに伴いファシアの方の表記が一般的になりつつあるようです。従いまして、今後は“ファシア”とさせて頂きます。

米ニューヨーク大学医学部を中心とする研究プロジェクトは、2018年3月27日、科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に研究論文を発表しましたが、2日後にはニューズウィーク日本版が“ファシアは人体最大の器官であるとされました”との記事をアップしました。これによりファシアに対する認識は日本でも大きく前進したと思います。

目次

序論

●筋膜の世界にようこそ!

●臓器を包んでいるだけではない

●筋膜とは?

カラープレート

 

第1部 科学的基盤

パート1 筋膜体の解剖

1.1 筋膜の一般解剖

●序論

●筋膜の一般構造と構成

●筋内膜の機能解剖学

●筋周膜の機能解剖学

●筋周膜-筋内膜の接合領域

●筋周膜と細胞内下位領域

●結論

1.2 体幹の筋膜

●身体の筋膜の包括的組織

●筋膜の体系―4つの主要な層

●要約

1.3 浅筋膜

●序論

●肉眼的構造と分布

●構成要素と機能の関係

●皮下組織の加齢変化

1.4 肩と腕の深筋膜

●肩の深筋膜

●腕の深筋膜

●手掌腱膜

●筋膜展開

●腕の深筋膜弾性

1.5 下肢の深筋膜

●序論

●肉眼解剖学

●支帯

●線維展開と筋の挿入

●顕微解剖学

1.6 胸腰筋膜

●序論

●浅層

●深層

●運動学

●胸腰筋膜の解剖に関する議論

●結論

1.7 頸部と体幹腹側の深筋膜

●序論

●頸部筋膜

●3つの頸筋膜の配置

●胸郭の筋膜

●腹壁の筋膜

1.8 内臓筋膜

●序論

●内臓筋膜

●内臓靭帯

●癒着

1.9 頭蓋内における膜性構造と髄腔内の空間

●Blechschmidtによる硬膜の胚発生原動力

●頭蓋内膜系

●頭蓋外膜系

●髄膜の血管新生

●髄膜の神経供給

●硬膜系の役割

●相反性緊張膜

●今後の課題と未解決問題

1.10 横隔膜の構造

●序論

●発生学

●構成

●関係と役割

●横隔膜収縮の力学

●他の身体に対する相互作用

●横隔膜の収縮における共同作用

パート2 コミュニケーション器官としての筋膜

2.1 伝達器官としての筋膜

2.2 固有受容(固有感覚

●固有受容、機械受容と筋膜の解剖

●連結性と連続性

●体系はさまざまで解剖学的構造以上である

●機械受容の基質

●機械受容における結合組織と筋組織の体系の機能的役割

●動的なもの:靭帯や筋以上に

●固有受容における機械受容の分類

2.3 内受容

●序論

●内受容とは?

●官能的な感触

●新しい系統発生的な変化

●内受容と体性情動障害

●内受容性器官としての筋膜

●徒手療法と内受容

●運動療法と内受容

2.4 侵害受容:感覚器としての胸腰筋膜

●序論

2.5 全身伝達システムとしての筋膜

●序論

●筋膜

●生体マトリックスを介した運動連鎖の軌跡

●筋膜体系の調節

●結論

パート3 筋膜の力伝達

3.1 力伝達と筋力学

●筋腱の力伝達

●筋膜の力伝達

3.2 筋膜の力伝達

●筋膜の力伝達の筋肉基質

●筋外における筋膜の力伝達とその基質

●筋外における筋膜の力伝達の影響

●筋の筋膜負荷の複雑性

●考慮すべきさらなる要因

3.3 筋膜連鎖

●Kurt Tittel:筋スリング(筋索)

●Herman Kabat:固有受容性神経筋促通法(PNF)

●Leopold Busquet

●Paul Chauffour:“オステオパシーにおけるメカニカルリンク(機械的連結部)”

●Richter-Hebgenモデル

3.4 アナトミー・トレインと力伝達

●序論-メタ膜として細胞外基質

●分割不可能なものの分割

●筋の分離

●アナトミー・トレイン

●テンセグリティー

●結論

3.5 バイオテンセグリティー

●序論

●バイオテンセグリティーの起源

●バイオテンセグリティーモデルの張力器としての筋膜

●膜・筋膜のトレーニング

●運動の柱

●筋膜-骨格系の統合

●要約

3.6 皮下および腱上膜組織の多微小空胞滑走システムの作用

●序論

●力学的観察

●生体内微小解剖観察

●微小空胞の観察

●動的役割の外観

●結合、伝達、吸収されるストレス

●外傷と脆弱性

●MVCASとグローバル化

●結論

パート4 筋膜組織の生理学

4.1 膜・筋膜の生理学

●運動器官の結合組織

●構造と機能

●牽引または張力負荷vs圧力

●生理的刺激

●創傷治癒と徒手療法

●創傷治癒の条件

4.2 膜・筋膜は生きている

●筋膜の細胞集団

●筋膜の緊張性

●線維芽細胞の収縮から組織拘縮へ

●筋膜収縮力の調整

●自律神経系との相互作用

●筋膜組織への周期的振動に対する適応は?

4.3 細胞外マトリックス

●コラーゲン線維

●エラスチン線維

●基質

●非コラーゲン・蛋白質

●水

●要約

4.4 筋膜の特性に関するpHと他の代謝因子の影響

●pH調整と筋膜組織への影響

●筋膜機能へのpHの影響とは?

●成長因子

●性ホルモン

●レラキシン

●コルチコステロイド(副腎皮質ステロイド)

●乳酸塩

4.5 筋膜組織における流体力学

●間質液の特性

●間質液の形態学的な質

●細胞間の伝達媒体としての間質液

●組織の“呼吸”

第2部 臨床応用

パート5 筋膜関連の障害

5.1 筋膜関連の障害:序論

5.2 デュピュイトラン病と他の線維収縮性疾患

●序論

●本疾患で苦しんでいるのは誰か?

●デュピュイトラン病の基本的問題

●デュピュイトラン病の基礎解剖学

●手掌の小結節

●手掌の索状物

●特定の手指が他の手指より影響を受けるのはなぜか?

●筋線維芽細胞はすべて同じか?

●遠位手掌皮線の“くぼみ”を引き起こす細胞の起源は何か?

●腱膜上の細胞に収縮するように“指示する”のは何か?

●原因となる因子に関する知識をもつことによって合理的な治療を提唱することが可能か?

●ぺイロニー病

●レダーホース病

●結論

5.3 “凍結肩(五十肩)”

●序論

●概念と分類の確定

●疫学

●病因と病理発生

●臨床症状

●画像

●治療

●麻酔下での授動術

●要約

5.4 痙性不全麻痺

●序論

●上肢の痙性不全麻痺における外科的治療

●痙縮筋

●手術中の観察

●筋外の力伝達

●痙縮関連関節姿位の説明に対して

●結論

5.5 糖尿病足

●序論

●検査方法

●非酵素的糖鎖結合

●足底筋膜

●アキレス腱

●関節可動性の制限

●結論

5.6 強皮症と関連症状

●“強皮症”とは?

●徒手療法に関連する特殊な臨床像

●強皮症の種類と、全身性強皮症が調和する場所

●従来の医学的管理

●徒手療法(manual therapy:MT)は、強皮症関連の線維症変化を減少または後退させることができるか?

●科学的根拠:潜在的治療機序

●神経筋テクニックとマッスルエナジーテクニック

5.7 筋膜関連障害のトリガーポイント

●トリガーポイント

●筋膜とmTrPs

●治療結果

5.8 筋膜関連の疾患:過可動性

●序論

●EDSとマルファン症候群の臨床像

●EDSとマルファン症候群における神経筋の病変

●EDSマウスモデルの筋特性に対するTNX欠損の影響

●筋内変化:筋外への筋膜の力伝達の減少

5.9 足底筋膜の解剖学的構造

●足底筋膜の生体力学的機能

●足底筋膜の内的負荷

●足底筋膜炎

●要約

パート6 筋膜の弾性に関する診断方法

6.1 筋膜の弾性に関する診断方法

6.2 筋膜の触診

●自動的評価と他動的評価

●いつ診察しているか?

●触診に必要なもの

●何を触診しているか?

●セラピストがリラックスする必要性

●層

●クライアントとのコミュニケーション

●情報を得るための触診

●触診の目的

●考えるのではなく、“感じる”触診

●接触の生理学

●情報の選別

●オステオパシー的な触診の視点

●実際の触診

●触診の実践

●結論

6.3 過可動性と過可動性症候群

●序論

●病因

●過可動性と過可動性症候群に対する検査

●マルファン症候群

●過可動性性症候群の臨床症状

●管理の原則

●結論

●謝辞

パート7 筋膜指向性療法

7.1 包括基準と概要

●本章のトピックス包括の基準

●古い方法の更新と新たな方法の出現

●瘢痕

●鍼

●結合組織に対する幅広い影響

●筋膜アプローチを援助する道具

●神経モビライゼーション

●全身のエクササイズ

●運動系

●全身的徒手システム

●ストレッチング

●結論 

7.2 トリガーポイント療法

●序論

●トリガーポイント療法の原則

●トリガーポイント療法

●要約と結論

7.3 ロルフィング構造的身体統合法

●ロルフィングの前提

●ロルフィング構造的身体統合法における筋膜の重要な特徴

●統合された構造と機能の促進

●伝統的なロルフィング構造的身体統合法シリーズ

7.4 筋膜誘導アプローチ

●序論

●筋膜系制限をリリースするための神経生理学的メカニズム

●方法の説明

●筋膜アプローチの結果に関連した科学的根拠

●要約

7.5 オステオパシー徒手的治療法と筋膜

●序論

●OMTの観点における筋膜

●筋膜の理解に対するオステオパシーの貢献

●研究

7.6 結合組織マニピュレーション

●内臓-体性反射

●筋膜トリガーポイントの筋群に対する浅層

●CTMの生理学

●CTM

●評価

●治療

●禁忌

●臨床的有益性の根拠

7.7 筋膜マニピュレーション

●序論

●生体力学的モデル

●治療

7.8 機能障害性瘢痕組織の管理

●歴史

●軟部組織損傷の“活性瘢痕”モデル

7.9 筋膜指向性療法としての鍼治療

●序論

●手技

●乾燥穿刺

●根拠

●要約 

7.10 刮痧[カッサ]

●序論

●刮痧の用語

●刮痧の施術法

●適応

●禁忌

●生物学

●生理学

●安全性

7.11 プロロセラピー(増殖療法)

●序論

●歴史

●創傷治癒、修正と再生

●作用機序と注射に用いる物質

●適応、禁忌、合併症、リスク

●技術

●帰結と臨床的根拠

●今後の展望

●要約と結論

7.12 ニューラルセラピー(神経療法)

●序論

●神経解剖学

●方法

●適応、禁忌、合併症

●要約

●研究

●謝辞

7.13 動的筋膜リリース―徒手や道具を利用した振動療法

●序論

●筋膜に関連する徒手および機器を用いた治療の歴史

●Hebbの仮説、調和機能と振動

●律動的反射-緊張性振動反射と関連した効果

●打診バイブレーター

●ファシリティーテッドオシレートリーリリース(FOR)

●その他の機器

7.14 グラストンテクニック

●序論

●理論的根拠

●適用

●運動と負荷を伴うGTの使用

●局所と全身的アプローチ

7.15 筋膜歪曲モデル

●序論

●機械的感受性システムとしての結合組織

●専門家としての患者―Typaldos氏のモデル

●筋膜歪曲

●筋膜歪曲の診断

●筋膜歪曲の一般的な治療

●最後に

7.16 特定周波数微弱電流

●特定周波数微弱電流の歴史

●FSMと炎症

●FSMと瘢痕組織

●治療器

●筋膜痛治療に対する臨床効果

●FSM治療はどのように他の筋膜療法と異なるか

●特定周波数の効果を説明するモデル

●概念モデル

7.17 手術と瘢痕

●序論

●組織層の解剖学的構造

●手術

●治療

●基本的な手技

●結論

7.18 筋膜の温熱効果

7.19 ニューロダイナミクス:神経因性疼痛に対する運動

●序論

●末梢神経系の構造、機能と病態生理学

●重複性絞扼理論

●神経因性疼痛状態に対する運動

●臨床効果の根拠

●より大きな絵

7.20 ストレッチングと筋膜

●序論

●定義

●混在している根拠

●ストレッチング:組織変化の根拠

●結論

7.21 ヨガ療法における筋

●筋膜療法としてのヨガ(Yoga)

●ヨガと筋膜

●照会

7.22 ピラティスと筋膜:“中で作用する(working in)”技法

●序論

●東洋哲学と西洋哲学の混合

●さまざまな訓練の融合と統合

●生活様式によって制限された筋膜はピラティスによって変えることが可能か?

●ピラティスの原理と筋膜

●巧みな連結

●足部からコアへ

●内部からのアライメント支持

●“内部のごとく、外部もしかり”:内部から知覚した運動が外部で何が生じているかを考える

●専門機材:改質装置または変換装置

●リフォーマー対マシン

●要約

7.23 筋骨格および関節疾患の炎症抑制を目的とした栄養モデル

●炎症反応

●脂肪酸:抗炎症特性

●脂肪酸栄養補助食品:抗炎症特性

●料理用のスパイス(香辛料)とハーブ(香草):抗炎症特性

●果物と野菜:抗炎症特性

●飲料:抗炎症特性

●抗炎症食

7.24 筋膜の適応性

●序論

●筋膜の再構築(リモデリング)

●カタパルト機構:筋膜組織の弾性反跳

●トレーニングの原理

第3部 研究の方向性

パート8 筋膜研究:方法論的な挑戦と新しい方向性

8.1 筋膜:臨床的および基礎的な科学研究

8.2 画像診断

●序論

●筋外の筋膜構造の画像と付加的分析

8.3 生体内での生体力学的組織運動分析のための先進的MRI技術

●序論

●動的MRIと生体内運動分析

●模擬的徒手療法によって生じた変形量を計測そるためのMRI使用

●結果

●MRIの先進的動画ツール

8.4 筋のサイズ適応における分子生物学的な筋膜の役割

●序論

●生体内機械的負荷によって誘発される筋の適応

●筋のサイズ適応の分子機構

●筋線維サイズ調整における筋膜の役割

●成熟した単一筋線維の生体外培養

●要約

8.5 数学的モデリング

●序論

●有限要素法を利用した筋膜と筋組織のモデリング

●徒手療法に起因する変形のモデリング

ご参考:「臨床に役立つ生体の観察」

臨床に役立つ生体の観察
臨床に役立つ生体の観察

この「臨床に役立つ生体の観察」は初版が1987年6月であり、30年以上前に発行された書籍です。“筋膜”については、どんな説明がされているのだろうと思い、調べてみると興味深いものでした。また、Fascia(ファシア)が30年以上前から認識されていたということは意外でした。

『本書では筋膜(fascia)については北米式の慣習に従うが、北米式ではfasciaとは線維性結合組織(fibrous connective tissue)からなるsheetあるいはbandで、あるものは皮膚の深部に存在し、あるものは身体の種々の器官を被包し、またあるものは血管神経束(neurovascular band)を包むと定義されている。別に、筋を包むfasciaをinvesting fascia、「被包筋膜」 として区別する。』