線維筋痛症5

編者:リーダーズノート編集部

出版:リーダーズノート出版

発行:2014年7月

目次は”線維筋痛症4”を参照ください。

慢性痛にはセルフケアが重要

『「風を引いたら、みんなどうする?」と子供たちに聞く。10人中、10人が「薬を飲むー」と答える。明治国際医療大学の伊藤和憲准教授(臨床鍼灸学教室)は、これが日本の典型的な姿だと危惧する。医療保険の充実しない海外ではそうならない。「風呂にはいる。ハーブティーを飲む」そういった答えが返ってくる。幼少期の教育が大人になってからの痛みの対処法を決めると考える伊藤准教授は、日本の子供たちには、早期に、自分で身体をケアする教育が必要だと言う。「風を引いたら病院で薬をもらう」との発想のくりかえしでは、病気になったときに、自分では何もできない。』

・伊藤准教授は、鍼灸センター専門外来で線維筋痛症を担当されており、国内でもトリガーポイントの専門家として知られている。

・痛みは医療機関だけにまかせる受身的な治療ではうまくいかないことから、患者自らが痛みをコントロールするセルフケアを推奨し認知行動療法(痛み教育と考え方)、アロマテラピー、森林浴、ヨガ、ツボケア、笑い、運動の八つのプログラムによるセルフケアの効果の研究も行っている。

身体の機能を回復させる治療として数多くの東洋医学的アプローチがある中で、鍼治療のメリットについては、痛みがコントロールできること、副作用がほぼないこと、そして、治療中に患者と語り合えることの三つを挙げている。

鍼は、医師の治療や処方された薬を補っていく役割と位置づける。

・専門は筋肉のため、線維筋痛症や筋・筋膜疼痛症候群の患者との関りも多い。

・『「ストレスがかかると筋肉は硬くなり身体は丸まるんです。交感神経が高ぶる時は、体は丸まるようにできていて丸まる筋肉も決まっている。立ったり、バランスを取る抗重力筋はストレスに敏感。ほかの筋肉に比べ脳とのやり取りが密にあるわけです」 

・抗重力筋の中にある筋紡錘には交感神経が来ており、脳の影響を受けやすい。

交感神経が高ぶると、大胸筋、僧帽筋、肩甲挙筋、腓腹筋、ヒラメ筋などの筋肉が緊張しやすい。また同時に、目が乾いたり口が渇いたり、手足が冷えたり、不眠といった不定愁訴が起こってくる。

・『「私は選択的に、交感神経に影響のある筋肉のトリガーポイントを探して緩めてあげる。それが、副交感神経を優位にするんですね」鎮痛系に働く治療と、交感神経に働く治療と二つを合わせて治療する。それが伊藤准教授の考える鍼治療の理想。脳を介した痛みのメカニズム、自律神経を調節するための方法、局所の筋肉の対処という、立体的な医療概念からの話も魅力的だ。』

・線維筋痛症を含む慢性痛は、自分でも身体をメンテナンスしていかなければ治すのは難しい。そのためセルフケア医療への対策にも力を入れている。

鍼灸師は、痛みの専門家として、痛みに関する正しい知識を身につけ、ペインマネージャとして患者の痛みをトータルケアする必要がある。[注:このことは本に書かれていたものではありません。2014年冬に伊藤先生が講師をされた“トリガーポイントと鍼灸治療”というセミナーを受講したときに、最も印象に残ったことです。] 

画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」

伊藤先生の”セルフケア”のコラムを見つけました。

慢性痛患者のための セルフケアガイドブック” もありました。クリック頂くダウンロードされます(PDF24ページ)

機能回復、症状改善するポイントは血流にある

『身体の機能を高める=免疫力を高めるために、姫野医師のような「分子整合栄養医学」からのアプローチは極めて説得力を持っていた。また、伊藤准教授の説くセルフケアも重要に思えた。次に本書の取材班は、線維筋痛症の症状改善のために「血流」に焦点を当てて治療を行ってきた永田勝太郎医師を訪ねた。では、なぜ血流なのか。「どんなん病気でも、まず病院で血圧測りますよね。血圧が基本だからです。そして血圧は、血流、血行動態を表している」

血圧とは、心臓から出た血液が血管の中を流れ、全身をめぐり末梢にまで至り、再び心臓に戻ってくる過程、血行動態、すなわち血液循環の状態を表す数値。そして血圧は、心臓に収縮力と末梢の血管抵抗から成り立つものだ。

「この血行動態と線維筋痛症の痛みは、関係があるんです。たとえば、腕を強く押され続けると腕がしびれてくる。正座を続けると足がしびれ、痛む。それは神経を圧迫しているというよりも血液を途絶えさせているからです。血の流れを止めるとそこに発痛物質が溜まる。すると神経が刺激され、しびれたり痛くなる。結果的には神経だがもとは血流の問題です。だから血流、血圧の管理が重要」

・線維筋痛症は、筋痛がおもな症状で、筋は心臓から出る血液の約80%を使っている。

・筋の細胞は代謝してエネルギーを発生し老廃物をつくる。この老廃物には、痛みを発する物質であるカテコルアミンやサブスタンスP、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、プロスタグランジンなどが含まれており筋痛と深くかかわっている。

血流や血圧を正常化することは、老廃物を流し去り痛みから解放することを意味する。

『「私は、まず、血行動態を改善させたあと、温泉療法を試してもらう。線維筋痛症の患者さんは血圧が低いんですそしてこの疾患が女性に多いのは女性ホルモンが出ているから。ちなみに女性ホルモンは血管拡張剤でもあるから閉経前の女性は心筋梗塞にならないんですよ。温泉療法は、血圧の低い女性の血行動態を改善するんです」』

こちらは横浜市保土ヶ谷区にある“診療所スカイ”さまのサイトです。女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)について詳しくご説明されています。なお、血管については「血管では、血管拡張作用や抗動脈硬化作用を認めます」とのことも書かれています。

 

こちらは慶應義塾大学保健管理センターさまが2002年に発行された“エストロゲンと生活習慣”慶應保険研究(第20巻第1号、2002。PDF7ページ)です。こちらにも「エストロゲンは血管拡張に作用し、血管障害や動脈硬化を抑制する」とのことが記述されています。

湯あたりで、脳と身体をリセットする?

・永田医師が行う温泉療法は、症状などに合わせて数多くある。一例として、1日3回入浴。1回の入浴時間は最初は5分で徐々に増やしていく。入浴中、気分が悪くなったらすぐに出る。入浴中は温泉の中で、ゆっくりと自律訓練法を行う。この療法中は、入浴以外に何もしないこと。一日の終わりに、「からだへの気づき」と「こころへの気づき」の日記をつける。

・『「私の行っている療法は、温泉の温熱効果だけを期待するものではありません。温泉療法に心理療法(実存分析療法)を加えます。これは“温泉ロゴセラピー”と呼んでいて、究極の療法です」』

・温泉療法を行うと必ずといっていいほど「湯あたり」がある。湯あたりはこれまで温泉療法の副作用と考えられてきたが、永田医師は、この11年を振り返って検証すると、湯あたりがあったほうが効果が出ると考えている。

・湯あたりがひどいと、まず症状が悪化して痛みが全身に広がる。頭痛も出る。吐いて食事もできない。温泉は見るのも嫌になる。しかし、そういう状況を懸命に乗り越えると、ある日、ストンと落ちたように治る。

・脳波を調べてみると、湯あたりのあった患者ほど、脳波のアルファ波が減少し、シータ波やデルタ波が増加(座禅や瞑想しているときと同じ状況)する。

・心拍変動のスペクトル解析による自律神経系の反応は、湯あたり中は自律神経系に大きな乱れが生じるが、湯あたりのあとは交感神経の興奮はおさまり副交感神経の機能が高まる。これは音楽療法などによる効果と同様で、永田医師は、緊張から弛緩に移行した状態だと分析している。 

画像出展:「痛みが全身に広がる病気をとことん治す」

”日本自律訓練学会”という学会がありました。 

永田先生の“千代田国際クリニック”です。

機関誌『温泉』2019年冬号に掲載された。“ストレスと温泉”という投稿を見ることができます。

永田勝太郎先生のウェブサイト”というサイトもありました。

人間に本来備わっている自然治癒力を応用

・永田先生は在学中に「痛みをライフワークにする」ことを決意され、卒業後に心療内科、東洋医学、緩和医療、そして麻酔科に学ばれた。その後、高名なウィーン大学のヴィクトール・フランクル博士(実存分析学・人間学)と運命的に出会う。

・フランクル博士は、大戦中にアウシュヴィッツに収容された経験があり幸いにも生還したが、収容所では、死を前にして「譲りあう人と奪いあう人の姿」に直面し、その後の人生を「生きることの意味を問いつめる」ことに費やした学者である。

・『「ある患者さんが、痛みを取ってほしいと医者に頼んだ。さまざまな薬で痛みは7割取れたけれども、立てなくなってしまったという話があります。患者さんからすれば、痛みが取れたからいいだろうと言われていても納得できない。治療のエンドポイントはどこにあるか。それは、痛みの除去だけではないということです」

包括的、全体的な健康観にもとづいた全人医療を実践する立場から、西洋医学本位の治療に批判も呈する永田医師だが、温泉療法をはじめとして、人間に本来備わっている「自然治癒力」を応用する療法、生き方そのものから変えていこうとする哲学的なアプローチは、多くの専門家や患者から注目されている。 

こちらは、EARTHSHIP COUNSULTINGという、ヴィクトール・エミール・フランクル(Viktor Emil Frankl)のことが詳しく書かれたサイトです。

 

まとめ(鍼灸師として)

“線維筋痛症患者さまのペインマネージャになる”が目標です。そのための前提は線維筋痛症に対する知識と患者さまへの理解です。

特に“心”に向きあうことが第一です。その上で、“ストレス”を小さくすること、自律神経を整え、硬い筋肉をゆるめ血液の流れを良くすることに注力します。そして、低血圧であれば、その改善を目指します。

なお、「分子整合栄養医学」については、今後の宿題とさせて頂きます。

こちらのページは”参加医療機関マップ”です。埼玉県は3件(病院は2件、鍼灸院1件)、東京都は23件(病院は21件、鍼灸院は2件)で、姫野医師、永田医師も登録されていました。また、”学術集会”の冊子が閲覧できるページもありました。