官能的感触と成長 

今回のブログは、“スキンシップケア(C触覚線維)”という以前アップしたブログに関係する内容であるため、そのブログに「追記」としてご紹介することを考えていたのですが、あらためて読み返してみると、同じく過去ブログの“医療マッサージ研究”にも載せたいし、そもそもこの本の存在を教えてくれた“アナット・ダニエル・メソッド”にも追記したいという気持ちが強くなりました。そして、それであればとの思いから、短い内容ですが新しいブログとしてアップすることにしました。

なお、“アナット・ダニエル・メソッド”とは、脳の可塑性に着目した小児障害へのアプローチが有名です。私は小児障害児と向き合うときに、このメソッドを意識するようにしています。

ブログは『脳の中の身体地図』の「10章 心と身体が交わる場所」にコラムとして掲載されていた「官能的感触の大切さ」から抜き出しています。 

著者・サンドラ・ブレイクスリー、マシュー・ブレイクスリー

出版:インターシフト

発行:2009年4月

痒み、くすぐったさ、痛み、温度……官能的感触? 官能的感触は、この感覚のリストの中では浮いているように思える。情動面から見て重要な触覚と言えば、総じて一種の軽い触覚で、覚えておられると思うが、これは固有感覚情報や高分解能の触覚情報と同様に、脊髄にあるはるかに新しいほうの経路を介して脳に伝達される。ところが、官能的感触は、痛みや痒み、くすぐったさ、温度のように、いにしえから存在する経路を経て脳に流れ込む。官能的感触はそんな仲間に入って、いったい何をしているのだろう?

愛情のこもった触れ合いやじゃれ合いは、ほ乳類の身体意識と脳の発達の中核をなす。成獣になると群れを作らずに単独で行動するようになるほ乳類でさえ、母親や兄弟姉妹との親密で愛情深い接触の中で生のスタートを切る。ほ乳類は授乳し、親密な絆を深めるために舐め合い、鼻をすり寄せ合い、生きていく上で何が起きても困らないようにボディ・マップに磨きをかけるために、手加減したけんかごっこに興じる動物である。要するに、ほ乳類の正常で健全な脳の発達には、幼少期に官能的感触に頻繁に触れることが不可欠なのだ。数億年前、ほ乳類時代以前、は虫類時代以降のほ乳類の祖先にも、きっと同じことが言えたはずだ。そこ頃、ほ乳類は恐竜の影に怯えながら、結束の強い家族という生存様式を発達させつつあった。つまり、この官能的感触という特徴は、ほ乳類誕生の頃までさかのぼることができるのだ。新しい感覚経路を使わず、古い感覚経路に留まっている理由もそこにある。

 

画像出展:「GAHAG

 

ネズミの母親は子どもたちを舐めて落ち着かせる。母親に舐めてもらうという官能的感触を頻繁に味わうことがなかった赤ちゃんネズミは、せっせと舐めてもらったネズミよりも不安が強く、神経質なネズミに育つ。しかも、この循環は自然に増強していく。情動面に障害が残ったネズミが成長して母親になると、普通のネズミほど子どもを舐めようとしない。こうして情動的な問題が次世代へと受け継がれていく。モントリオールにあるマギル大学で行動・遺伝子・環境研究プログラムの責任者の任にあるマイケル・ミーニーが数年前に実施した画期的な研究で、この子育てパターンの背後に潜んでいる正確な神経・遺伝メカニズムが解明されている。

官能的感触は霊長類と人類にとってはとりわけ、決定的に重要な意味を持つ。これは、スキンシップに飢えた子どもたちが大人になってから情動面の問題を抱えるようになるということだけのことではない。それも非常に重大な問題だが、もっと深い、身体の成長や健康、恒常性のレベルにまで影響が及ぶのだ。霊長類の赤ん坊にとって官能的感触がどんな役に立つか、考えてみよう。頻繁にやさしく撫でさすられると、最低限の世話しかしてもらえなかった場合に比べて、体重が倍の速度で増加する。呼吸や心拍も健康的になるし、敏捷になり、気むずかしさがなくなり、よく眠るようになる。授乳期を過ぎてよちよち歩きを始めるまで、こうしたよい影響が続くのである。

愛情のこもった触れ合いは、栄養を摂取したり、音楽を聴いたり、おもちゃで遊んだりするのとは異質に思えるかもしれないが、確かに同じ類のことなのだ。』

画像出展:「GAHAG

まとめ

1.やさしく撫でさすられると情動面だけでなく、身体の成長や健康、恒常性のレベルにまで影響を及ぼす。

2.官能的感触とは食事や睡眠に匹敵するくらい大切な行為である。