不安障害1

高齢の患者さまの中には、「ちょっと心配しすぎではないかな」と思うことがたまにあります。もちろん、高齢ゆえに多くの不安材料が存在していることは十分に想像できます。

誰もが抱くような強い不安感と病的な不安障害との差はどんなものなのか、これを知ることは必要だろうと思い、いくつかあった候補の中から、今回の本を選択しました。

ブログは大項目(章)、中項目の目次のご紹介に引き続き、各章にある小項目の中で特にお伝えしたい小項目を選び、その一部を記述していますが、不安障害1(「はじめに」から「第4章」まで)と不安障害2(「第8章」「第9章」)に分けています(「第5章 不安と認知」「第6章 不安と行動」「第7章 不安とトラウマ」には触れていません)。なお、後者の不安障害2は次週になります。 

 

著者:水島広子

出版:技術評論社

初版発行:2010年10月

目次

はじめに

第1章 不安とは何か

不安は何のためにあるのか

解決すべき不安と感じるしかない不安

パーソナリティと不安

不安のさまざまな表現型

第2章 不安障害とは何か

不安障害という病気

なぜ不安障害になるのか

不安障害を維持する悪循環

不安障害を病気として扱うことの意義

不安障害の治療

第3章 不安と身体

不安のときに身体に起こること

パニック障害

呼吸に注意して身体感覚をコントロールする

身体からのメッセージを受け止める

不安に強い身体作り

第4章 不安と対人関係

対人関係に対する不安

社交不安障害

社交不安障害を維持する悪循環

不安をコントロールするコミュニケーション

相手の事情を考える

第5章 不安と認知

不安の時に頭の中で起こっていること

認知療法

バイロン・ケイティの「ワーク」

第6章 不安と行動

不安と回避の悪循環

強迫性障害

行動療法

第7章 不安とトラウマ

PTSDは不安障害

トラウマによる離断をつなぐ

人との関係の中でトラウマを位置づける

第8章 身近な人との不安とのつきあい方  ※次週

不安障害の人に接する基本姿勢

「治療者」ではなく「支え役」を引き受ける

身近な人がパニック発作を起こしたら

「怒り」という名の不安に対処する

不安の土俵に乗らない

第9章 怖れを手放す  ※次週

不安を単なる感情に戻す

現在に生きる

自分の歩みにコントロール感覚を持つ

不安障害から学ぶ

あとがき

はじめに 不安障害へのコントロール感覚を見につけよう

 不安障害の中にある二種類の不安

●『不安障害のときには不安がとても高まっているのですが、不安障害の方たちの苦しみは、病気本来の症状としての不安だけにあるわけではありません。むしろ、「自分に何が起こっているのかわからない」「自分がこのままどうなってしまうのかわからない」といった、「不安障害という未知なもの」に対する不安に苦しめられている要素も大きいのです。その二種類の不安は区別されることなく混ざり合って互いに増幅し合い、「とにかく不安」という苦しい状態が作り出されてしまいます。』

 人間の健康に必要な「コントロール感覚」

●『自分が事態をコントロールできている、という感覚は安心と自信をもたらすものです。日々の生活の中であまり意識することはないかもしれませんが、「いつも通りに暮らしていればだいたい大丈夫」「まあ、何とかなるだろう」というような感覚は、コントロール感覚を反映したもので、健康に暮らしていくためには必要なものです。』

 「不安障害への不安」は解消できる

●『病気についてよく学び、そこで起こっていることの意味を知ることは、大きなコントロール感覚につながります。苦しい症状は続くとしても、それがしょせんは症状にすぎないということを知るだけでも、実はかなりのコントロール感覚がもたらされます。』

 不安との主従関係を逆転させる

●『不安に対してコントロール感覚を身につけていくためには、不安という感情の機能をよく知ることが大切です。』

●『不安を感じたとしても、その不安に支配されなくなるのであれば、そして、その不安をプラスに生かしていくことができれば、世界の見え方が今とは全く変わることでしょう。』

第1章 不安とは何か

不安は何のためにあるのか

 感情には役割がある

●『感情は、「この状況が自分の心にとってどういう意味を持つか」を教えてくれるものなのです。』

 悲しみや怒りの役割

●『身体の怪我と同じように、心の傷も、安静にして大事にする時間が必要です。実際に、この時期に悲しまなかった人は後でうつ病になったりするのです。』

●『心の病になる人の多くは、怒りとのつきあい方が苦手です。怒りは「よくない感情」だと思ってしまうので、感じることも、表現することも、抑制してしまうのです。すると自分にとって不利な状況が改善されず、ストレスがたまっていき、何らかの病気になることもあります。』

 感情とのつきあい方の目標

●『状況の意味を教えてくれ、結果として適切な対処を可能にしてくれる感情は、私たちに自然に備わった自己防衛能力であると言えます。』

●『「悲しみや怒りを感じない人になろう」という目標を立ててしまうと、「熱いものに触っても感じない人になろう」と言っているのと同じくらいおかしなことになってしまうのです。』

●『感情をよく見つめて、状況の意味を学び、その中で自分がすべきことを考えられるようになる、ということが目標になります。

 不安の役割

●『「不安」は「安全が確保されていない」ということを知らせてくれる感情です。この先の安全が確保されていないので、不安を感じるのです。未知のものに不安を感じるのはそれが理由です。ですから、不安は安全確保のために重要な役割を果たします。』

 

『例えば、真っ暗闇で山道を歩いていたら、すさまじい不安を感じるでしょう。それこそ一寸先がどうなっているかわからないからです。』

画像出展:「正しく知る不安障害」

解決すべき不安と感じるしかない不安

 解決すべき不安

●『人との関係の中で、「あの人は私の言ったことを誤解したのではないか?」と思うととても不安になります。「自分の言ったことをきちんと理解して受け入れてくれた」という安全が確保されていないからです。このようなときには、相手に確認してみることで安全を確保することができます。』

 感じるしかない不安

●『新しい土地に引っ越すようなときには、どれほど準備しても不安をゼロにすることはできないでしょう。それは、新しい土地はやはり未知のものだからです。準備でカバーできる領域は限られていて、あとは、そのときになってみないとわからないことが残ります。そのような不安は、感じるしかない不安だということになります。』

 当たり前の不安

●『感じるしかない不安に対して、悪循環から抜け出すにはどうしたらよいかというと、不安であるということを「当然のこと」として受け入れるのが一番です。』

●『「新しい土地に引っ越すのだから、不安なのは当たり前」と思えれば、それ以上の意味はなくなります。』

●『「気にしないようにする」という対処法も軽い不安には有効ですが、不安がある程度以上の強い場合には逆効果になります。なぜかと言うと、「気にしないようにしよう」と思っても結局不安が出てきてしまい、状況をコントロールできない自分がますます不安になってしまうからです。』

 不安はストレスだと認める

●『不安に駆られているとき、私たちは「何とかしなければ」と焦ってしまうので、普段以上に動き回ってしまうのです。身体が動けずに固まっている場合でも、頭の中は大忙しです。ただでさえストレスの高まる時期なのに、さらに自分で負荷をかけてしまうので、結果として心身が受け取るストレスの量は相当なものになります。』

 自分の不安を周りの人と共有する

●『「当たり前の不安」を乗り越えていくためには、周りの人たちに、自分が今どういう不安を抱えていて、何に気をつけて生きているのか、その上でどういう協力をしてほしいのかを伝えて、理解したり共感したりしてもらうことが必要です。これは、事態をスムーズにするだけでなく、対人関係の質も向上させることになるでしょう。感情を打ち明け合ったときに人は最もつながりを感じるからです。また、自分が間違いなく相手の役に立てているという感覚は、人間にとって深い満足感につながるものです。』

不安を感じたときに、安全確保のためにできることがあれば、できるだけやってみる。それでも残る不安は、「当たり前の不安」として認める。そして、自分にとってストレスのかかる時期だということを認識して、普段よりも無理せず余裕をもって暮らすように心がける。さらに、それを周りの人に伝えて、理解を深めてもらい、協力してもらう。こんなふうにできれば、不安が立派に役割を果たしたと言えるでしょう。』

パーソナリティと不安

 人間の性格(パーソナリティ)の構造

●『不安はもともとのレベルにかなり個人差があります。』

 

『現在、精神医学の研究でよく用いられるものにクロニンジャーという米国人精神医学者が提唱した「七因子モデル」があります。』

『七因子モデルは、遺伝的な影響が強い四因子と、環境的な影響が強い三因子に分けて分類しているところに特徴があります。』

『基本的な「性格」は変えられないけれども適応力は上げられる、といったところでしょうか。』

画像出展:「正しく知る不安障害」

 不安を感じやすいパーソナリティ

●『不安と直接関係のあるパーソナリティ特性は、遺伝的な影響が強い因子の一つである「損害回避」と呼ばれているものです。文字通り、困ったことにならないように物事を避ける傾向のことで、一般的な概念としては、「心配性」「慎重」などが近いと思います。不安障害の人は、この「損害回避」が高いことが知られています。』

 「損害回避」を生かせる人と振り回される人

●『後天的な影響が強いパーソナリティ特性です。三つのパーソナリティー特性の中でも、特に「自己志向」が、さまざまな不安障害と関係することがわかっています。』

●『「自己志向」が高い人を、普通の言葉で言うと、「自分をしっかり持っている人」「安定した自信がある人」という感じになるでしょうか。』

●『「損害回避」が高く、「自己志向」が低い人は、不安に振り回されるようになってしまいます。自らの「損害回避」が知らせてくれる不安に対して、「こんなに不安でどうしよう」とパニックになってしまうのです。すると、本来は自らの特徴にすぎない「損害回避」に人生を振り回されるようになってしまいます。やりたいか、やりたくないか、ではなく、不安を基準に物事を決めるようになってしまい、自分の人生がかなり制限されて感じます。』

 不安に振り回されると「自己志向」が下る

●『不安に振り回された結果として、事態をコントロールできない自分にますます安心できなくなる。つまり、ますます「自己志向」が下る、という方向性です。』

 「自己志向」は高めることができる

●『自分が不安にうまく対処できるという自信をもつことは、「自己志向」を高めることにほかならないからです。』

 パーソナリティ特性から見る不安とのつきあい方

『以上のことをまとめると、生まれつき「損害回避」が高い人は、不安が強い人だといえますし、不安になりやすい人だと言えます。しかし、だから不安障害になるというわけではなく、後天的な要素、特に「自己志向」が低いと、不安に振り回されて不安障害になる、ということだと思います。』

不安のさまざまな表現型

 不安は不安として表現されるだけではない

●『不安は不安として対処するのが最もうまくいきます。』

 他人に過干渉になる

●『過干渉は、不安を反映したものであることが多いのです。』

 イライラする

●『イライラしている人も、それが不安の表現型であることが多いものです。』

●『自分自身の不安に築いていないことが多く、「自分をイライラさせる相手が悪い」と思っていることが多いのです。』

 攻撃的になる・暴力をふるう

●『ドメスティック・バイオレンス(DV:家庭内暴力)も、要は自らの不安に向き合えていないということがほとんどです。』

 

 原因不明の身体症状が出る

●『不安を不安として感じたり、表現できないと、めまい、頭痛、胸の苦しさ、しびれなど、身体症状に表れることがあります。』

 

画像出展:「正しく知る不安障害」

 

画像出展:「正しく知る不安障害」

 

画像出展:「正しく知る不安障害」

第2章 不安障害とは何か

不安障害という病気

 不安障害とは

●『不安を主症状とした病気のグループを「不安障害」と呼んでいます。』

 パニック障害

●『動悸、発汗、震え、息苦しさ、窒息感、胸部不快感、めまいなどを伴うパニック発作(強い不安発作)が予期しないときに繰り返し起こり、また発作が起こったらどうしようという恐怖のために行動パターンが変わってしまう病気です。』

 社交不安障害(社会不安障害、社会恐怖)

●『人との関りにおいて、自分が人からどう思われるかということについての不安が強すぎる病気です。』

 強迫性障害

●『「~したらどうしよう」「~するのではないか」という考え(強迫観念)が頭に浮かび、その不安に苦しめられるというのが強迫性障害の本質です。』

 全般性不安障害

●『多くのことについての、過剰でコントロールできない不安や心配が、起こる日の方が起こらない日よりも多いという状態が六カ月以上続いているという病気です。』

 健康な不安と病的な不安の違い

●『手を洗わないとばい菌に汚染されるというのは、間違っていません。そして、実際に、健康な人たちも同じ目的で洗っています。強迫性障害の人とどこが違うのかというと、「そこまでは気にしない」というところです。つまり、不安障害の人が抱く不安は、「わかるけれども、そこまで気にしていたら生活が成り立たないでしょう」という性質のものなのです。』

●『不安障害の不安は、病気の症状ですので、コントロールできないところも特徴の一つです。』

なぜ不安障害になるか

 きっかけが明らかでない不安障害

●『不安障害の中でも、社交不安障害や強迫性障害は、いつ始まったかが特定できない場合も多く、「気づいたらなっていた」という人も少なくありません。』

 きっかけが明らかな不安障害

●『パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、いつ始まったかを特定することができるのが一般的です。』

 子どもを不安障害にしないために

●『不安障害の人の家族に不安障害が起こりやすいということは、すべてが遺伝のためとは言えません。不安の強い人は、不安の強い子育てをするでしょうから、そこからも影響を受けることになります。』

●『子ども自身の不安にもよく耳を傾け、批判するのではなく一緒に対処してあげるようにすれば、「自己志向」はやはり高まるでしょう。その際、「代わってあげる」という過保護な対処ではなく、子どもが自分自身の力で安心して取り組めるようにしてあげることが必要です。

不安障害を維持する悪循環

 不安と思考の悪循環 

 

画像出展:「正しく知る不安障害」

 不安と回避の悪循環

●『不安障害の人は、自分の不安を刺激するような状況を避けるようになります。この「回避」は、不安障害の重要な症状の一つです。回避によって、日常生活がままならなくなったり、自分にとって明らかに有利なことや必要なことすら避けるようになったりしてしまうからです。

回避は、短期的にはよい選択に見えるかもしれませんが、長い目で見ると逆効果です。回避してホッとすると、「次の避けなければ」という思いが強まるからです。これは、実際に怖い思いするのと同じような効果を生み、「この状況は怖ろしいのだ」という信念を心身に植え付けます。

また、そのような状況を回避し続けている限り、「慣れる」こともあり得ません。実際に何が起こるのか、という現実観察もできないのです。

そして、人間は、何かを回避し続けている自分によい気持ちを持つことはありません。特に、周りからは理解してもらえないテーマの回避は、隠したくなります。隠すこともストレスですし、そんな自分はだめだという気持ちが強まります。自分はだめだという気持ちは、不安に対して前向きに取り組むことを難しくします。ですから、不安と回避も、終わりのない悪循環に陥ってしまうのです。』

 不安障害の治療

 対人関係療法

●「対人関係療法では、身近な人間関係と症状との関連に注目して治療を進める。発症のきっかけになった対人関係上の出来事や変化は何か、発症してから、症状によって身近な人間関係がどのような影響を受けているか、また、身近な人間関係によって症状がどのように影響を受けているか、ということに注目していきます。強迫性障害以外の不安障害に対して、効果が示されてきています。

第3章 不安と身体

不安のときに身体に起こること

 「修理」が必要なのはセンサー

●『「闘争か逃避か」反応が起こらない身体になったらよいのに、と思われるかもしれません。しかし、問題は「闘争か逃避か」反応にあるのではありません。その状況を「脅威」ととらえてしまうところに問題の本質があるのです。

「闘争か逃避か」反応は、火災報知器のサイレンのようなものです。ここで修理が必要なのは、センサーです。魚を焼いただけなのに火事だとみなしてサイレンが鳴ってしまっているのです。魚を焼いた程度ではセンサーが働かないように、修理すればよいのです。サイレンそのもの(「闘争か逃避か)反応」を鳴らなくしてしまうと、本当の火災のときに困ってしまいます。』

 パニック障害

 「苦しさ」と「意味づけ」の混同

●『どんな人にもパニック発作は起こり得ますし、特に初回のパニック発作はどんな人にとっても本当に怖ろしく感じられるものです。それまでに全く経験のない、異常な体験だからです。しかし、パニック発作で死ぬこともなければ、気が狂ってしまうわけでもない、ということは事実として残ります。この事実を前に、「パニック発作は苦しいけれど、命に関わるわけではないから」と考えることができれば、パニック障害にはなりません。パニック発作の苦しさと、その意味づけが、うまく区別されているのです。

パニック障害の人も、それまでのパニック発作で「最悪の事態」にならなかったことは認めています。しかし、次の発作が起こると、「今度こそは最悪の事態になるのではないか」と考えてしまうのです。この思考は強い不安を生みますから、もちろんパニックもひどくなります。そして、「こんなにひどい状態なのだから、やはり今度こそは最悪の事態になるのだ」とさらに思うという悪循環に陥ってしまうのです。

ここでは、パニック発作そのものの苦しさと、その意味づけが混同されていると言えます。そして、パニック障害の悪循環から脱するためには、この二つを区別していくことが重要です。これは、パニック発作に対してコントロール感覚を持つということに他なりません。パニック発作そのものはコントロールできなくても、それがなぜ起こるのか、どう対処することが最も適切なのか、ということを知れば、コントロール感覚を持つことができ、パニック障害を治すこともできます。』  

呼吸に注意して身体感覚をコントロールする

 呼吸は自律神経に影響を与える

●『呼吸というは面白いもので、自律神経にコントロールされる部分と、自律神経をコントロールする部分があります。』

●『自分の意思で細く長く呼吸すると、副交感神経優位の状態、つまり、リラックス状態を作り出すことができます。』

 過呼吸のときに起こること

●『精神的な要因による過呼吸で死ぬことや後遺症を残すことは決してなく、どんなに強い発作でも、時間とともに必ず軽快していきます。身体はまたきちんとバランスをとって、通常の状態に戻るようにできているからです。』

●『パニック発作のときには、「息苦しい」と感じる人が多く、呼吸が足りないと感じられるものですが、実際には呼吸しすぎの状態になっていることがほとんどです。そもそも、「闘争か逃避か」反応のときに呼吸数が増えるのは、すぐに走って逃げられるように酸素吸入量を増やすためですが、私たちは不安反応が起こったときに必ずしも走って逃げるわけではないので、そんなに酸素は必要ないのです。すると、酸素が余った状態が作られてしまい、それが過呼吸の症状につながっていきます。』

●『パニック発作は、過呼吸によって誘発することができるということが知られています。治療の場以外では試さないでいただきたいのですが、過呼吸を続けると、パニック発作が起こるのです。「脅威」を認識すると「闘争か逃避か」反応で過呼吸になるというのも一つの事実ですが、同時に、過呼吸によって不安反応が誘発されているという側面もあるのです。』

 呼吸をコントロールする

『一分間に十二回以上呼吸をしていたらおそらく過呼吸です。』という記述が本書にはあります。

そこで、自分自身の呼吸回数を数えてみたところ、16回だったので「え、過呼吸ってこと?」と疑問に思い、ネット検索から日本呼吸器学会のサイトを見つけ確認しました。すると、そこには約12回~20回が一般的、25回以上を“頻呼吸”と言い、“過呼吸”とは呼吸の深さが増加することと書かれていました。

また、同サイトには病名としての“過換気症候群”の説明の中に「肺や心臓の検査を行っても異常が認められず、何も認めないにもかかわらず発作的に息苦しくなって呼吸が速くなるような状態をきたすことがあります。このことを過換気と呼びます。」とありました。つまり、正常とは言えない呼吸には“頻呼吸”“過呼吸”というものがあり、我々が日常的に耳にする”過呼吸”の現在の正式名は”過換気”であり、病名としては”過換気症候群”であるということが分かりました。 

『換気とは、呼吸運動によって空気を肺胞へと運ぶ働きのことです。呼吸は、無意識な状況で規則正しく1分間に約12から20回行われています。呼吸が速いとは、1分間に25回以上行われる状況で、「頻呼吸」と言います。「過呼吸」とは、呼吸回数に変化はないが、呼吸の深さが増加することを言います(通常、呼吸回数も多くなると考えられています)。』

 筋肉の緊張をコントロールする

●『呼吸のコントロールと共に、筋肉の緊張をコントロールする筋リラクセーション法を覚えると、さらに効果が増します。リラクセーション法にもいろいろありますが、力を抜こうとしてもかえって緊張してしまう人の場合には、まず筋肉に力を入れてから抜く、という方法をとるとリラックスしやすいです。なお、息を吐くときに筋肉はゆるみます。筋肉を弛緩させるときには、息を同時に吐くと、リラックス効果が高まります。』

身体からのメッセージを受け止める

 症状よりも先にストレスに気をつけるように

●『パニック発作は心身のストレスのもとに現れるということをお話ししましたが、睡眠不足や過労、かぜ、二日酔いなどはパニック発作を起こしやすい状況を作ります。このようなときには、「パニック発作が起こってしまった」というところに注目するよりも、「パニック発作が起こりやすいコンディションにあったのだ」というところに注目した方がはるかに有益です。』

不安に強い身体作り

 定期的に運動する

●『「闘争か逃避か」反応に襲われて苦しくなってしまったときには、とりあえず身体を動かすことによって抜け出すこともできます。』

 食べ物に気をつける

●『低血糖もパニックの引き金になります。ダイエット中の低血糖からパニック発作を起こす人もいますので、パニック発作を起こしている人は基本的にダイエットは避けるべきです。健康上の理由で体重を減らす必要がある場合は、医師の指導のもとで行ったほうがよいでしょう。』 

 

画像出展:「正しく知る不安障害」

 

画像出展:「正しく知る不安障害」

第4章 不安と対人関係

対人関係に対する不安

 対人関係に対するコントロール感覚

●『自分が周りの人とうまくいっているという感覚と、自分が周りの人に受け入れられているという感覚が持てると、心の健康度は大幅に高まります。そのときに感じる「自分に何があっても、人の関係の中で何とかなるだろう」という感覚が対人関係に対するコントロール感覚ということになります。』

 対人関係療法

●『対人関係療法は、身近な対人関係と症状との関連に注目していく治療法です。そこで目指していくことは、対人関係に対するコントロール感覚を高めて、症状を改善していくことです。』

 「役割期待のずれ」というものの見方

●『あらゆる対人ストレスを、「役割期待のずれ」と見ることができます。「ずれ」は、自分が相手に期待したことをやってもらえないときだけでなく、相手が自分に期待していることが、自分がやりたくないことだったりできないことだったりする場合にも生じます。

対人ストレスを「役割期待のずれ」として見ると、解決も可能になりますし、何よりもコントロール感覚を持つことができます。

 コミュニケーションに注目する

●『役割期待は、それを伝え合うコミュニケーションが貧弱だとずれてしまいます。

不安が強い人は特に要注意なのですが、不安のあまり、曖昧なコミュニケーションをしてしまうと、それだけずれる可能性が高くなります。自分の気持ちと、相手にやってもらいたいことを、直接、純粋に伝えるコミュニケーションが最も効果的です。』

 「役割の変化」という視点

●『不安障害の発症のきっかけには「それまでのやり方から切り離されて、自分のやり方を見失う」というテーマが共通していますが、これは、対人関係療法で「役割の変化」として治療の焦点とされるものです。変化に伴う感情や、身近な対人関係の変化に注目して治療を進めていきます。』

社交不安障害

 社会不安障害という病気

●『社交不安障害の本質は、人からネガティブな評価を受けることへの不安だと言えます。』

●『社交不安障害のもう一つの特徴は、そんな自分をネガティブな目で見ているというところにあります(子どもの場合を除く)。自分は「気にしすぎ」だと思っているのです。そう思っているからこそ、ますます自分がだめに思えて、人の評価が気になる、ということになります。』

社交不安障害を維持する悪循環

 身体反応による悪循環

●『社交不安障害では、不安に直面する状況で、不安反応が起こります。「闘争か逃避か」反応が起こるのです。すると、胸がドキドキしたり、声がうわずったり、手が震えたりします。これらは、もともと「恥ずかしい思いをするのではないだろうか」という不安を抱えている人にとっては、不安を強めることにほかなりません。声がうわずったり、手が震えたりすることは「恥ずかしい」ことだからです。これが、社交不安障害を維持する一つの悪循環になります。』

 「自分」に注目することによる悪循環

●『人前で話すときには多くの人が緊張しますが、場数を踏んでいくとだんだん慣れてきます。毎回不安を維持するというのは、案外エネルギーを使うものなので、人間は基本的には慣れる体質になっています。 ~中略~ 社会不安障害の人の場合は、そうはいきません。常に、人前で話すときの「自分」に目が向いていますので、観察するのは常に「自分」です。もちろん相手の反応もよく見ていますが、常に、「自分の話し方をどう思っているか」というポイントに絞られてしまうので、相手の事情などは視野の外になってしまいます。』

 センサーを修理して悪循環から脱する

●『社会不安のセンサーを修理するためには、現実の人と触れ合う必要があります。社会不安障害は、人とのやりとりにおける不安障害のように見えますが、実際にはそこに現実の「やりとり」はほとんどありません。社会不安障害の人は「他人」を気にしていますが、そこで見ているのは「自分の話し方をどう思っているか」という部分だけであり、いろいろな事情を抱え、いろいろな気持ちを持って生きている相手そのものではありません。

実際に相手とやりとりをして、受け入れられる体験をしたり、相手にもいろいろな事情があることを知ったりすることによって、だんだんと「脅威」のセンサーが修正されてきます。

 自分の「対人関係の常識」を見直してみる

●『社会不安障害になると、自分自身をさらけ出すことができなくなるため、ますます「本当の人間関係」を学ぶ機会が減ってしまいます。治療の中で、実際に人とのやりとりをしていくと、外面の評価以外の人間関係の要素を体験していくことができます。社会不安障害の治療とは、自分の「他人関係の常識」を見直していくプロセスだ、と位置づけておくと、新たなチャレンジをしやすくなります。』

不安をコントロールするコミュニケーション

  自分のコミュニケーションのクセを知る

●『自分のクセを知るために、「コミュニケーション分析」という技法を使ってみましょう。不安やストレスにつながったやりとりを振り返って、それぞれが何と言ったのかを、シナリオのように再現してみるのです。そのセリフを言ったとき、自分はどんなふうに思っていたか、何を伝えたかったのかも書いてみます。そして、その言い方で相手にそれが伝わっただろうか、と考えてみます。そして、今度は相手の立場に立って、他の解釈がないかを考えてみます。

不安が強い人の場合、コミュニケーションの量も少ないと思いますが、それでも書いてみるといろいろなことがわかります。』

 「ずれ」を作らないコミュニケーション

●『不安が強い人は特に、直接的な表現をするのが怖いと思いますので、安全なコミュニケーションのコツを紹介しましょう。それは、「私」を主語にして、気持ちを中心に話す、ということです。「私は、不安であることをわかってもらえないと思うと、ますます不安になるの」と言えば、相手を怒らせる心配はまずないでしょう。これはすべてが、自分側の話であることが明確になっているからです。

ところが、同じことでも、「あなたは本当に人の不安に鈍感なのね」と言ってしまうと、相手は怒りだすかもしれません。少なくとも、役割期待の調整のために前向きに協力してくれることにはならないでしょう。』

相手の事情を考える

●『不安が強いときには、私たちは一般に、自分のことしか目に入らなくなります。そして、何でも自分に関連づけるようになります。例えば社会不安障害のときには、「相手がネガティブな反応をした」イコール「私がだめな人間だからだ」ということになります。このような認識はもちろん、大変なストレスと対人不安を作り出します。 ~中略~ 不安障害になると、自分以外の人は完璧であるかのような気になることもありますが、実際には完璧な人などいないという当たり前のことを思い出す必要があります。』