がんと自然治癒力6

T・コリン・キャンベル博士は40年余りにわたり栄養学研究の第一線で活躍され、1982年にはアメリカ政府の依頼を受け、NAS(全米科学アカデミー)の報告書「食物・栄養とがん」をまとめました。また、同時期に中国において、チャイナ・プロジェクトと呼ばれる大規模な疫学調査を開始しました。

700ページを超える大作は目次の項目数も極めて多いのですが、この本の全体像をイメージして頂くのに有効であると考えますので、非常に長くなりますがご紹介させて頂きます。

出版:グスコー出版

日本合本版発行:2016年1月初版(原書初版:2005年1月)

 

『第一のマクガバン報告』に関しては前回のブログを参照ください。

58ページの冒頭には、

食べ物について知らない人が、どうして人の病気について理解できようか」ヒポクラテス医学の父。紀元前460~357年

という印象的な言葉がありました。

 

※医学の進歩は早いので、原書の初版が2005年1月という点に注意する必要があると思います。

はじめに―「新たな発見」がもたらす、すばらしき人生

第1部 「動物タンパク神話」の崩壊

第1章 私たちの体は、病気になるように作られているわけではない

●心臓発作の父を救えなかった悔しさ

●病気になる人のサイン

●医療制度は私たちの体を本当に守ってくれているだろうか

●医療費世界一を誇るアメリカの寂しい現状

●「特定の栄養成分で健康になれる」という幻想

●健康を手に入れるために知っておくべきこと

●すべての研究は、「人々の健康」のために

●遺伝に優る栄養摂取の影響

●膨大な研究結果が示す「病気予防の結論」

●「父の悲劇」を繰り返さないために 

第2章 「タンパク質神話」の真実

●「タンパク質神話」成り立ちの秘密

●「肉への崇拝」を支えた学者たち

●「良質=健康に良い」という、大きなる誤解

●「低質の植物タンパク」こそ最もヘルシー

●「良質タンパク」による飢餓根絶プロジェクト

●栄養失調の子供たちと発ガン物質

●肝臓ガンになるのは、裕福な家庭の子供たちだった

●研究人生における「究極の選択」

●結論に至るまでの科学的プロセス

●「食生活と病気」を結ぶ、相関関係と因果関係の捉え方

●偶然を否定する「統計的有意」の信頼性

●真実の可能性が最も高い証拠とは

第3章 ガンの進行は止められる

●「発ガン性」という言葉に敏感な国民

●マスコミによる誇大報道の危うさ

●ガン発生の真犯人を見つけた!?

 ※動物実験について(動物愛護との狭間で)

●ガンはこうして作られる 

(1)イニシエーション(形成開始期)―きっかけは発ガン物質

(2)プロモーション(促進期)―成長は食べ物しだい

(3)プログレッション(進行期)―致命的なダメージの始まり

●タンパク質の摂取量とガン細胞形成の関係

●「ガンの病巣の成長」に与えるタンパク質の影響

●ガンをコントロールすることは可能か

●ガンの促進要因は、「カゼイン(牛乳タンパク)」だった

●「ネズミによるタンパク質研究」に関するQ&A

●「100対0」という結果が示す信頼度の高さ

●「カゼイン」が発ガン物質を刺激する

●発ガン物質の量よりも重要なもの

●新たなる研究チャンスの訪れ 

第4章 史上最大の疫学調査「チャイナ・プロジェクト」の全貌

●幸運がもたらした「ガン分布図」の入手

●アメリカと中国では何が違うのか

●大型研究プロジェクトのスタート

●「中国農村部の食習慣」を徹底分析する

●「貧しさが原因の病気」か「豊かさが招く病気」か

●コレステロールはどのようにして病気を招くのか

●「コレステロール値が低いとガンのリスクが高くなる」というまやかし

●血中コレステロール値の改善により回復していく病気

●血中コレステロール値を改善する食習慣

●脂肪に関する多くの疑問

●遺伝子リスクよりも優先すべきもの

●中国農村部で乳ガンが少ない理由

●「乳ガンと動物性食品」の深い関係

●食物繊維はなぜ必要なのか

●食物繊維をたくさんとれば、コレステロールは減っていく

●抗酸化物質は自然界からの美しき贈りもの

●サプリメントより丸ごとの果物・野菜

●アトキンス・ダイエットの致命的欠陥

●「セールスへの貢献システム」が支えるダイエット法

●「炭水化物の健康価値」を正しく学ぶ

●体重はこうして増えていく

●人体の複雑なメカニズムが教える「正しい減療法」

●「動物タンパクでなければ大きくなれない」という嘘

●プラントベースの食事のすばらしさ

●動物実験と人を対象とした研究データの一致

●「チャイナ・プロジェクト」の成果を阻害するもの

●明日への道を照らすもの

●自らの人生を一変させた「真実」の力

「チャイナ・プロジェクト」の調査方法について

第2部 あらゆる生活習慣病を改善する「人間と食の原則」

第5章 傷ついた心臓が甦る

●心臓病は100年変わらぬナンバーワン・キラー(死因第一位)

●誰にでも訪れる心臓病発症のリスク

●心臓発作はプラークの堆積から

●「フラミンガム心臓研究」のはかりしれない恩恵

●限られた地域での頻発発症の理由

●モリソン博士が示した治療のヒント

●希望を遠ざけた「動物性食品」擁護

●男らしい男だけが心臓病になる?!

●心臓病の死亡率低下のからくり

●結局は期待はずれに終わるテクノロジー治療

●エセルスティン博士の大いなる功績

●「食事改善後の患者トラブル」はゼロ

●「ライフスタイル転換」を導入したオーニッシュ博士の成果

●一人当たり三万ドルの医療費削減

●政府の指導に従うか、自分で希望をつかむか

第6章 肥満の行き着く先

●自分の体格指数(BMI)を知る

●増え続ける子供の肥満問題

●肥満を助長している社会システム

●ベストの減量法は長寿につながる

●やせられない人には理由がある

●肉食者より多く食べてもスリムでいられる理由

●一日わずかのエクササイズが及ぼす相乗効果

●肥満原因の解消は誰にも可能

第7章 糖尿病追及への道

●糖尿病の持つ二つの顔

●なぜ糖尿病はお金がかかるのか

●糖尿病は食生活次第で消えていく

●研究が明かす本当の「原因と結果」

●「糖尿病協会の推奨食とベジタリアン食」の対照研究

●食習慣を変えることは、非現実的なのか

第8章 ガン対策はどのように改善されるべきか

●乳ガン、大腸ガン、前立腺ガンを語ることの意義

●「乳ガン遺伝子発見」の報道が招いたもの

●乳ガン発症、四つの危険因子

●既存の「乳ガン対策」を再検証する

(1)遺伝子に対する考え方

(2)乳ガン検診に対する考え方

(3)予防薬と切除手術に対する考え方

(4)環境化学物質に対する考え方

(5)ホルモン補充療法(HRT)に対する考え方

●現状の「乳ガン治療」に対する結論

●大腸ガン罹患率の地域格差

●「結腸ガンと肉の摂取」の関係

●食物繊維の効能は、どこまで明かされているのか

●今わかっていることだけで、大腸ガンは防げる

●カルシウムに富む食事はガンと闘えるのか

●運動の効能と検査に対する姿勢

●前立腺ガンの発症パターン

●文献が証明する「乳製品と前立腺ガンの関係」

●前立腺ガン形成のメカニズム

(1)成長ホルモンに関するメカニズム

(2)「ビタミンDの代謝」に関するメカニズム

●現代医療への挑戦

第9章 自己免疫疾患根絶のために

●自己免疫疾患は一つの壮大な「病」である

●侵入物に対する驚くべき免疫力

●免疫システムについてわかっていること

●1型糖尿病発症のプロセス

●一卵性双生児が「二人とも1型糖尿病になる」確率

●「牛乳は危険な食品」を裏付ける研究

●「牛乳否定」すりかえのための論争

●多発性硬化症患者に起こっていること

●スワンク博士の追跡調査

●遺伝の心配よりも食習慣の見直し

●自己免疫疾患すべてに共通すること

●「タブーの打破」から始まる根絶への道

第10章 食が改善する「骨、腎臓、目、脳の病気」

●食習慣が左右する「老化現象」

●骨粗鬆症発症のメカニズム

●骨折率と食べ物の相関関係

●乳製品は強い骨を作れるのか

●骨粗鬆症予防のためのアドバイス

●腎臓結石を患う人の特徴

●ロバートソン博士の結論

●眼疾患の改善

(1)黄斑変性症予防の切り札は濃い緑葉野菜

(2)白内障の手術を回避するために

●認知症、アルツハイマー病も改善

●植物に含まれる抗酸化物質が脳を守る

●果物と野菜でリスクを除く

●最良の食習慣が「最良の健康」へと導く

【補項】「ビタミンDの働き」について

◎「体内ネットワーク」が教えてくれるもの

◎二つのビタミンDの活躍

◎日光浴がベストの「ビタミンD摂取法」

◎カルシウムのとりすぎが招くもの

◎ガンを増殖させるもの

◎「生命ネットワーク」の驚異

第3部 科学が導き出した「究極の栄養摂取」

●真実を覆い隠す最悪情報の洪水

第11章 私たちの健康と食べ物に関する「八大原則」

●食習慣が与えてくれる恩恵

●【第1の原則】栄養の正しい定義とホールフードの価値を知る

●【第2の原則】サプリメントへの警鐘を知る

●【第3の原則】植物性食品の意義は甚大である

●【第4の原則】遺伝子の働きは栄養次第である

●【第5の原則】有害な化学物質以上に有害なものがある

●【第6の原則】正しい栄養摂取が回復をもたらす

●【第7の原則】正しい栄養は体全体に貢献する

●【第8の原則】体はすべてつながっている

●自分の問題から、地球への貢献へ

第12章 「食べ物の基本」を学ぶ

●良いものはシンプルである

●肉はどこまで排除すべきか

●肉食はやめられる

●新しい「食の発見」を知る

●食生活改善時のアドバイス

●ある食事改善の実践記録

第4部 「正しい情報」はいかにして葬られるのか

●「どうして知らなかったのか」という素朴な疑問

第13章 癒着の支えられている「科学」の暗部

●イカサマ商法と健康詐欺

●「科学の砦」の中での役割

●政府系“栄養委員会”新設の裏側

●業界支持派メンバーとの対立へ

●インチキ扱いされた『マクガバン報告』

●「公衆栄養情報委員会」の廃止と再結成

●『食物・栄養とガン』への風当たり

●「米国ガン研究協会」の創設と「米国ガン協会」の反発

●「米国ガン研究協会」への組織的中傷

●裏切り者キャンベルの追放運動

●真実と欺瞞の判別

第14章 消費者に届く情報、届かない情報

●サプリメント・メーカーのいかがわしい主張

●特定の栄養素だけをとり上げることの愚かさ

●恥ずべき悪例「ナーシーズ・ヘルス・スタディー」

●研究対象の看護師は平均的米国人女性より肉食中心だった

●低脂肪食の落とし穴

●脂肪と動物性食品の無意味な比較研究

●一億ドルをかけた研究でわかったこと

●疑問の多いハーバード大学の研究結果

●「ハーバードの結論」に対する反論

●ハーバード大学の犯した過ち

●「オーシーズ・ヘルス・スタディー」の致命的欠陥

●「要素還元主義」の危険性

●栄養学研究者が心すべきこと

第15章 業界の発信する情報は、はたして「科学」なのか?

●巨大食品企業のマネーパワー

●スパイ活動を行う科学者たち

●学校現場における牛乳普及活動の実態

●乳業協同組合が指導する栄養教育とは

●「牛乳は体に良い」という思い込み

●業界が作り出す「健康効果」の真偽

●巧妙な実験とメディアの責任

●どのようにもアレンジできる「業界の科学」

●自然との調和より「加工」というテクノロジー

●「オレンジはビタミンCの王様」と誰が言ったのか

第16章 政府は私たちの味方なのか?

●マッチポンプの元凶

●政府が決める推奨量は誰のための数値か

●タンパク質の推奨量はどのように設定されたか

●砂糖の制限量を増加させた脅迫

●業界が政府組織に介入していくからくり

●政府が決めた推奨量が及ぼす波紋の大きさ

●国立衛生研究所の「栄養関連予算」は3.6%

●「生物医学研究」という名の新薬開発

●人々の犠牲の上に成り立つ「栄養政策」

第17章 医学は誰の健康を守っているのか?

●「食の改善」を治療にとり入れた二人の名医

●全米を代表する外科医の苛立ち

●ドクター・スプラウトの誕生

●食事療法を否定する医者の心理

●医者の治療に勝るもの

●栄養教育の欠如が招く危機的状況

●マクドゥーガル博士の挫折と挑戦

●卒業の日に告げられた言葉

●製薬業界からの甘い誘い

●「薬を使わない治療法」が存在しない理由

●食事療法と心臓病科の衝突

●患者の回復を望まない病院

●全快した理由を聞こうとしない主治医

●拒絶されたエセルスティン博士の提案

●現状の医療は、私たちの健康を守ってくれない

第18章 歴史から学ぶもの

●驚くべき血縁

●先人たちが知っていたこと

●プラントが予測した未来

●「食べ物と健康」の結論―すでに私たちは証拠を握っている

●未来への希望

次なる使命をめざして(「訳者あとがき」にかえて)―松田麻美子

それでも私はあきらめない(日本のみなさんへ)―T・コリン・キャンベル

合本版「訳者あとがき」―松田麻美子

 

 

「本書を讃える人々」に続き、本編に入る前のページに、次のような注意点が記されています。

 

本書に記されている事柄はいずれも、しかるべき医療に代わるものと考えるべきではありません。

また、まずかかりつけの医師に相談せずに、食事や運動のパターンを変えるべきではありません。現在、心臓病や高血圧、あるいは2型糖尿病などと関係する何らかのリスクファクターのために治療を受けている場合には、特に注意してください。』

(T・コリン・キャンベル、トーマス・M・キャンベル)

ブログでは目次の中の青字個所である、“はじめに―「新たな発見」がもたらす、すばらしき人生”

『第3章 ガンの進行は止められる』の中から“ガンはこうして作られる”  以降の部分

『第4章 史上最大の疫学調査「チャイナ・プロジェクト」の全貌』の中から“幸運がもたらした「ガン分布図」の入手”  と  “アメリカと中国では何が違うのか”

『第8章 ガン対策はどのように改善されるべきか ― 前立腺ガン形成のメカニズム』の中から、“成長ホルモンに関するメカニズム”  と  “「ビタミンDの代謝」に関するメカニズム”

これらについては、それぞれ全文をご紹介しています。

そして、“第11章 私たちの健康と食べ物に関する「八大原則」”に関しては一覧表にしたものを載せています。

なお、文章内の太字はすべて著者によるものです。(私の方で太字にしたものはありません)

最後に、「牛乳消費量と発ガンとの関係性について」という、自分なりに調査検討したものを添付させて頂きました。

はじめに―「新たな発見」がもたらす、すばらしき人生

「真実」は有害情報の山の中に隠されている

学究生活のすべてを「栄養と健康に関する研究」に捧げてきた私でさえも、今日、人々が栄養情報を求める熱意には驚くばかりである。

ダイエット本は絶え間なくベストセラーに名を連ねているし、大衆雑誌を開けば、どれも栄養のアドバイスを特集している。新聞にはいつも健康関連記事が掲載されているし、テレビやラジオでは、必ずダイエットと健康関連の番組が放送されている。

しかし、こうした大量の情報を手に入れることで、はたして健康改善のためになすべきことを理解した、と確信できるのだろうか。例えば、次のような問題について、あなたはどう判断するだろうか。

 

・農薬をとり込まないために、オーガニックのものを買うべきだろうか。

・環境化学物質はガンの根本原因だろうか。あるいは、健康は生まれたときに受け継いでくる遺伝子によって、あらかじめ決められてしまっているものだろうか。

・炭水化物は本当に太る原因なのだろうか。

・脂肪の摂取量について、もっと気をつけるべきなのだろうか。あるいは、飽和脂肪とトランス脂肪の摂取だけに気をつければ大丈夫なのだろうか。

・ビタミン剤をとるとしたら、どのビタミンをとるべきなのか。

・食物繊維を追加した強化食品を購入すべきだろうか。

・魚な食べるべきか、もしそうだとしたら、どのくらいの量を食べればいいのだろうか。

・大豆食品を食べると、心臓病を予防できるのだろうか。

 

あなたはおそらく、こうした疑問への回答にあまり確信が持てないのではないか、と私は思う。しかし、そうであったとしても、それはあなた一人だけではない。

いくら情報が洪水のようにあふれていても、健康向上のために何をすべきか、本当にわかっている人はごくわずかしかいないのだ。

その理由は、研究が行われてこなかったからではない。研究は行われてきている。我々科学者は、「栄養と健康の相関性」について、膨大な情報を持っている。

しかし、科学が解明した「真の情報」は、不適切で有害といっていい情報の山に埋もれてしまっているのである。すなわち、論理的根拠の乏しいジャンク・サイエンスや一時的なダイエット法、食品業界の宣伝、といった価値のないものの下に隠されてしまっているのだ。

私は、この状況を変えていきたい、と切に願っている。私は本書の中で、「栄養と健康についての新しい考え方」をみなさんに提供するつもりだ。それは迷いをなくし、病気を予防・改善し、今よりもっと充実した人生を送るのにきっと役立つはずだ。

本書が提示する「真実」

私はこの「栄養と健康」についての研究組織に50年近く在籍している。しかもその上層部にいて、大きなプロジェクトを企画・指揮したり、研究が資金援助を受けられるかどうかを検討したり、また膨大な量の科学的調査をまとめ、全米専門委員会に報告するといった仕事をこなしてきた。

研究と政策決定といった分野で長年経験を積んできた私は、今なぜ、アメリカ国民が健康に関して悩んでいるのか、その理由がよく理解できる。

国民には、自国研究費や健康政策費を負担している一納税者として、「食べ物、健康、そして病気に関してこれまで聞かされてきた考え方は間違っている」という証拠を知る権利がある。本書の核ともいえる「真実」は次のとおりだ。

 

・環境や食品の中の化学合成物質は、たとえどんなに問題があったとしても、ガン発症の主たる原因ではない。

・両親から受け継いだ遺伝子は、病気の犠牲になるかどうかを決定する最も重要な要素ではない。

・「やがては遺伝子研究の成果が薬による病気治癒を可能にするだろう」といった期待は、今すぐ可能で強力な解決策を無視したものだ。

・炭水化物、脂肪、コレステロール、オメガ3脂肪酸などの栄養摂取をうまくコントロールしても、それは長期にわたる健康につながらない。

・ビタミン剤や栄養剤のサプリメントは、長期にわたる病気予防の効果を与えてはくれない。

・薬や手術は、アメリカ人を死に追いやるほとんどの病気を治すことはない。

・あなたの主治医は「あなたが最も健康になるために必要なこと」を、おそらく知らないだろう。

身を守るための最も強力な武器

私は、「人々が体にとって良い栄養だと思っているものは何か」をもう一度考えみよう、と提案しているにほかならない。

有名な資金提供機関からの援助を受け、27年の間に築いた研究の成果をはじめ、私の40年以上にわたる研究の結果が答えになるだろう。今までの生物医学の研究に対して物議をかもすような結果だが、間違いなく「正しく食べることこそが、あなたの命を救う」ことを証明している。

書き方にある種の工夫をこらす著書もいるようだが、私は個人的な意見に基づいた結論を読者に信じてもらえるような書き方をするつもりは毛頭ない。本書には750余りの参考文献が用いられている。

しかもこれらの大半は、私以外の研究者によるガンや心臓病、脳卒中、肥満、糖尿病、自己免疫疾患、骨粗鬆症、アルツハイマー病、腎臓結石、失明などに関する情報である。科学雑誌、とりわけ病気を減らす方法を提示している何百もの情報源である一流科学雑誌に掲載された研究結果の中には、次のようなものがある。

 

・糖尿病患者は食習慣を変えれば、薬をやめることができる。

・心臓病は食習慣だけで回復させることができる。

・乳ガンは、食べるものによって決まる「血中女性ホルモンのレベル」と関係している。

・乳製品の摂取は、前立腺ガンのリスクを高める。

・果物や野菜に含まれる抗酸化物質は、高齢者の知的能力の維持と関係している。

・腎臓結石は、ヘルシーな食習慣で予防できる。

・子供にとって最悪な病気の一つである1型糖尿病は、間違いなく授乳習慣と関連している。

 

こうした研究結果は、「より良い食習慣こそが、さまざまな病気から身を守る最も強力な武器である」ことを立証している。

したがって、この科学的証拠を認知することは、健康改善のために重要であるばかりか、私たちの社会全体にとっても、大変深い意味がある。

なぜ誤った情報が広く蔓延し続けているのか、そして「食習慣と病気に関する調査法」「健康状態を向上させる方法」「病気の治療法」などが皆、誤った方法であるのはなぜなのか、ということを私たちはきちんと知っておくべきなのだ。

アメリカ国民の悲惨な現状

莫大な金とあらゆる手段を使っているにもかかわらず、アメリカ国民の健康状態は悪化する一方である。私たちアメリカ人の一人当たりの医療費は、世界中のどの国よりもはるかに多い。それなのにアメリカ人の3分の2は過体重(体格指数=BMI25以上)で、15%余りは糖尿病だ。近年、この数字は急激に増加してしまった。

30年前よりずっと多くの人が心臓病の犠牲になっているし、1970年代に始まったガンとの闘いでは、惨めな失敗を繰返している。

アメリカ人の半数が健康上のトラブルを抱えており、週ごとに医者から薬の服用を命じられている。そして、1億人以上が高血圧症なのだ(人口の約33.3%)。

さらに悪いことに、わが国の子供や青少年たちを若いうちからますます病気の道へと導いている。彼らの3分の1は過体重か、あるいは過体重になるリスクを抱えている。

かつては大人だけに限られていた糖尿病も、年々子供たちに広がっている。こうした子供はこれまでとは比べものにならないほど多くの薬を飲んでいるのだ。

「健康神話」の原点

問題はすべて、次の三つの習慣に行き着く。すなわち、朝食昼食、そして夕食だ。

40年余り前、私が仕事を始めたばかりの頃、食べ物が「健康上のトラブル」とこれほどまで密接に関係しているなどとは思いもしなかった。

何年もの間、「どの食べ物を食べるのが自分の体にとってふさわしいか」などということは決して考えることがなかったのである。皆が食べているものを同じように安心して食べていた。すなわち、私が食べていたものは、「良い食べ物だ」と信じていたのである。

私たちは誰もが、「おいしいもの」「簡便なもの」、もしくは「両親が作り方を教えてくれたもの」を食べている。ほとんどの人の食べ物の好みや食習慣は、与えられた環境の中で教えられ身につけたものだろう。

私の食習慣も、私の人生とともにできあがったものだ。私が育ったのは、牛乳が暮らしの中心となっている酪農家の家だ。私たちは学校で、「牛乳は、強くて健康な骨や歯を作ってくれる」と教わった。「牛乳は、自然が与えてくれた最も完璧な食品だ」とも教わった。

また、私の家ではほとんどの食べ物を自分の畑か牧場で作っていた。

大学へ行くように言われたのは、家族の中で私が最初だった。私はペンシルベニア州立大学で予備獣医学を学び、一年間ジョージア大学の獣医学部に通ったところで、コーネル大学が私を招聘してくれた。動物栄養学について大学院で研究するための奨学金付きだった。

ある意味、私は自分が学校に授業料を払うのではなく、学校が学費を支給してくれるという理由のために転学したともいえる。

私はそこで修士課程を終えた、私はネズミの寿命を延ばす研究(通常の食事より量を少なく与えることで発見)で有名なコーネル大学教授、クリーブ・マッケイ博士に最後の教え子としては学んだ。

コーネル大学で私が行なった博士課程の研究は、牛や羊を早く成長させる方法を発見することにあった。私は「動物性タンパク質の生産力」を向上させようとしていたのである。私が栄養学で習った基本は「より良質の栄養摂取」にあったからだ。

私は肉や牛乳、卵の摂取をもっともっと推奨することによって健康改善を促進する。という道を一目散に歩んでいたのである。明らかにそれは、幼い頃の農家での体験の延長であったし、アメリカ人の食事は世界で最もすばらしいものだ、と相変わらず信じていたからだった。

人格が形成される頃、私は「アメリカ国民は正しい食事をしている。それは高品質の動物性タンパク質を十分にとっているからだ」という言葉を繰り返し繰り返し聞かされたのである。

肝臓ガンの真相

研究生活に入ったばかりの頃、私は最も有害な化学物質として知られる「ダイオキシン」と「アフラトキシン」について調べることになった。

私は初め、マサチューセッツ工科大学で仕事をしており、ニワトリのエサ関するテーマを与えられた。毎年何百万羽ものニワトリが未知の有害化学物質のために死んでいくため、エサに含まれる化学物質を発見し、その構造を解明する仕事を任されたのだ。

二年半後、私は化学物質として最も有毒といえるダイオキシンを発見するのに貢献した。以来、この化学物質は広く注目を集めた。それは、この化学物質がベトナム戦争で森林を枯らすのに用いられた除草剤(別名、エージェント・オレンジ。俗に、枯れ葉剤といわれているもの)の一要素だったためだ。

 

その後私はマサチューセッツ工科大学を辞め、バージニア工科大学で教授の職を得た。そこでフィリピンの栄養失調の子供を救うための「全国プロジェクト」を援助する仕事を始めた。

このプロジェクトでは、通常は成人の病気である肝臓ガンがフィリピンの子供に異常に多いということを研究する課題も含まれていた。ピーナツやコーンに含まれるカビ毒のアフラトキシンを大量に摂取していることが原因である、と考えられていた。

今まで発見された化学物質の中では、アフラトキシンは最も強力な発ガン物質の一つである、といわれてきた。

最初の10年間、我々はフィリピンの貧しい子供の栄養失調を改善することを第一の目標とした。このプロジェクトはアメリカ政府国際開発機関の資金提供によるもので、最終的には、フィリピン全土のほぼ110か所に「栄養摂取のための自助教育センター」を設置した。

我々の目標は、子供たちができるだけ多くのタンパク質をきちんととっているかどうか確かめる、という単純なものだった。

「世界中の多くの子供たちが栄養失調なのは、タンパク質、特に動物性食品からのタンパク質が不足しているためだ」というのが、当時の一般的な捉え方だった。

そのため、世界中の大学や政府が、発展途上国で予測される「タンパク質不足」を補う取り組みを行っていた。

ところが、このプロジェクトで私は大変な秘密を知ってしまったのである。それは、最も高タンパクの食事をしている子供たちが、肝臓ガンになるリスクが最も高い、という事実だった。ガンになっている子供は、裕福な家庭の子供たちだったのである。

異端者への道

同じ頃、フィリピンの現象と関連のあるインドからの研究報告書を発見した。これにもまた、物議をかもすような研究結果が含まれていた。

インドの研究者は、ネズミを二つのグループに分けて実験していた。一方にはガンを引き起こすアフラトキシンを投与し、そのあとタンパク質が総摂取カロリーの20%というエサが与えられた。この比率は欧米社会に住む成人たちの多くが摂取している量に近い。

もう一方のグループにも同量のアフラトキシンが投与されたが、そのあとのエサはタンパク質の比率がわずか5%というものだった。

20%のタンパク質を与えられたネズミは、どれも皆、肝臓ガン形成の形跡があったが、5%のグループでは、すべてのネズミが肝臓ガンを免れていたという。

なんと「100対0」の結果だったのである。そのため、「適切な栄養摂取を続けていれば、非常に強力な発ガン物質さえ打ち負かせる」ということは疑う余地はなかったのだ。

この情報は、これまで私が教えられてきたことをすべて否定するものだった。「タンパク質は健康に良くない」などと言うのは異端とされていたからだ。ましてや、「タンパク質はガンの成長を促進する」などと口にするのはとんでもない行為だった。しかしそれは、私のその後のキャリアを決定づける瞬間となったのだった。

研究生活を始めたばかりなのに、このような物議をかもすような問題について研究するのは、あまり賢い選択ではなかった。

タンパク質や動物性食品について疑問を投げかけることは、たとえ研究結果が「正統の科学」で認められたとしても、「異端者」というレッテルを貼られる危険を冒すことになるからだ。

しかし、私はもともと、命じられた指示だけ遂行するようなタイプではなかった。

農場で馬や牛を追い立てるのを初めて学んだとき、あるいは狩りや魚釣りや畑仕事を習ったとき、自分独自の方法をためしてみたい、と思った。そうしなければ自分で納得できなかったのである。

もし畑でトラブルに直面したとき、次にどうすべきか自分自身で考えなければならなかったからだ。

農家の子供なら誰でも言えると思うが、子供の頃の経験は実に偉大なる学びの場だった。そのとき身につけた独立心は、今でも失っていない。

発ガン物質をコントロールするもの

こうして難しい決断に直面した私は、ガンの発生における栄養摂取、とりわけタンパク質の役割について、徹底的な研究プログラムを始めてみよう、と決断したのである。

同僚と私は慎重に仮説を立て、研究手順が厳密に、そして研究結果の解釈に関してはきわめて慎重に行った。

私はこの研究を、「ガン形成における生化学研究」として、科学の基本レベルで行うことにした。

タンパク質がガンの成長を促進するかどうかという点だけでなく、どのようにして促進するのかを知ることが重要だったからである。そうした進め方が最も適切な方法だった。

結果的に、「正統の科学」のルールに従い、新発見に対して興奮するようなこともなく、この物議をかもすようなテーマに没頭することができた。

最終的にこの研究は最も綿密に審査が行なわれ、資金援助源としては最も競争率の高い機関(ほとんどが国立衛生研究所、米国ガン協会、米国ガン研究協会など)から27年間にもわたって、十分な資金援助を受けることができた。

こうして我々の研究結果は、一流とされる多くの科学雑誌に公表されるため、二度目の審査を受けることになったのである

我々の発見は、まさに衝撃的だった。

低タンパク質の食事は、どれだけアフラトキシンをネズミに投与したかには関係なく、この発ガン物質によるガンの発症を予防したのである。

ガンの発症が確認されたあとでも、低タンパク質の食事はそれに続いて生じるガンの増殖を劇的に阻止した。

言い換えれば、このきわめて強力な発ガン性化学物質による影響力は、低タンパクの食事によって、取るに足りないほどのものに変えられてしまったのだ。

要するに、食事に含まれるタンパク質は、ガンに及ぼす影響があまりにも強いため、タンパク質の摂取量を変えるだけで、ガンの増殖を「ON」にしたり「OFF」にしたりすることができたのである。

そのうえ、実験でネズミに与えたタンパク質の量は、私たち現代人がいつも摂取している比率量だったのである。発ガン物質の研究でよく行われるような、並外れた量のタンパク質を与えたわけではないのだ。

しかも、これが研究結果のすべてではない。我々は、すべてのタンパク質にこの作用があるわけではない、ということも突き止めている。「絶えずガンの発生・増殖を強力に促進させるものの存在」がわかったのである。

それは「カゼイン」だった。これは牛乳のタンパク質の87%を構成しているもので、ガン形成・増殖のどの過程でも作用していたのである。

また、大量に摂取しても、ガン形成・増殖を促進させないタイプのタンパク質も発見した。この安全なタンパク質とは、小麦や大豆など、植物性のものだった。

史上最大の疫学調査

こうした事実が見えてきたとき、私が最も大切にしてきた「動物性タンパク質は最も良質なタンパク質である」という仮説は、木っ端微塵に打ち砕かれ、新しい挑戦が始まったのだ。

動物による実証研究は、そこで終わったわけではなかった。私は次に、人間の「食習慣」「ライフスタイル」、および「病気」に関して、かつて行われたことのないような生物医学研究史上最大規模の調査を指揮する仕事にとりかかったのである。

それはコーネル大学、オックスフォード大学、中国予防医学研究所の合同で行われた壮大な調査研究だった。のちに『ニューヨーク・タイムズ』紙はこの研究を「疫学研究のグランプリ」と称賛した。

このプロジェクトでは中国農村部、および台湾におけるさまざまな病気と食習慣やライフスタイルについて調査した。

一般的には「チャイナ・プロジェクト」として知られるこの研究で、現在までに、数々の食習慣因子と病気との間には8000余りもの統計的に有意な関係があることが明らかになったのである。

このプロジェクトが特に注目された理由は、食習慣と病気に関するほかの調査でも多くのものが同じ結果を示していた点にあった。

すなわち、動物性食品を最も多く食べていた人たちは、最も多く慢性の病気を発症していたのだ。

比較的少量しか食べていなくても、動物性食品は有害な影響を及ぼしていた。

一方、植物性の食べ物を最も多く摂取していた人たちは、健康で、慢性の病気から免れる傾向にあった。

この研究結果は無視することができないものだった。最初の動物性タンパク質の影響に関する実証研究から、食習慣に関するこの大規模研究までに判明したことは、見事なほどどれも一致した内容だったことを証明していた。

すなわち、動物性の栄養を摂取するか、それとも植物性の栄養を摂取するかによって、健康にもたらされる影響は著しく違っていたのである。

だが、「動物研究」と膨大な「人を対象とした研究」のこの結果がどんなにめざましいものであったにしても、私はこれらに満足していたくはなかったし、また、ここで止まるようなことはしなかった。

なぜ正しい情報が発信されないのか

次に私は、ほかの研究者や臨床医学者の別の研究結果を探し始めた。そうした個人の研究結果はといえば、過去50年間において最も興奮させる科学的発見といえるものだったのである。

この研究結果では、「心臓病、糖尿病、肥満は、ヘルシーな食習慣によって改善できる」ということが、証明されている(第2部に掲載)。

また、そのほかの研究では、「各種ガン、自己免疫疾患、骨や腎臓の健康、高齢者の視力や脳障害(認識機能障害やアルツハイマー病など)は、間違いなく食習慣に影響されている」ことが証明されている。(第2部に掲載)

最も重要なことだが、これらの病気を回復、そして予防することが再三証明されている食習慣とは、「プラントベース(植物性食品中心)の、ホールフード(未精製・未加工の食べ物)で構成された食事」のことである。これは、最良の健康を促進するため、研究室や「チャイナ・プロジェクト」で私が発見したのと全く同じものだ。

これらの研究で明らかにされたことは、どれも一致していた。しかし、この情報の信頼性にもかかわらず、そしてまた、この情報が大きな希望を与えてくれているにもかかわらず、さらには、この事実を国民が早急に知る必要があるにもかかわらず、人々は依然として知らない状態のままなのだ。

私には心臓病をわずらっている友人が何人もいる。友人たちはこの病気はもう避けられないと考えている様子で、落胆したままでいる。

乳ガンを極度に恐れ、「切除」こそ乳ガンのリスクを最小限する唯一の手段ででもあるかのように信じている女性と話したこともある。自分の乳房ばかりか自分の娘の乳房さえ、手術で取り除いてもらいたいと願っているのだ。

私の出会った多くの人が病を得て、健康を維持するためにはいったいどうすればいいのかわからず、悩んでいた。

多くの人が迷ったままでいるが、私にはその理由がよくわかる。それは、「健康情報はいかにして生まれ、どのように伝えられているのか」「誰が健康問題への取り組みをコントロールしているのか」といった疑問が生じてしまうからだ。

長年、健康情報を生み出す側にいたため、舞台裏で何が起こっているのかを見つめてきた。そして今、この「情報発信」のどこが間違っているかを世界に知らせるつもりだ。

皮肉を込めて言えば、「政府と業界」「科学と医学」の境界は不鮮明なのだ。「利益を生み出すこと」と「健康増進」の境界線もはっきりしなくなっている。情報発信を操作しているこの問題は、ハリウッドで作られる映画の中の話のように、不正行為のような形では現われない。

問題はもっと捉えにくく、複雑で、もっと危険を生み出す性格を持っている。その結果、膨大な誤った情報が発信され、一般のアメリカ国民は、この情報に対して二重に代償を払うことになるのである。

すなわち、研究のための税金を国民として提供し、次に、本来は予防可能な病気の治療のため個人の医療費としてお金を使うことになるのである。

良き人生航路をめざして

本書は、私の個人的な経験から始まり、「栄養と健康に関する新たな発見」で終わる。

6年間、私はコーネル大学に「ベジタリアン栄養学」という新しい選択科目の講座を設け、教鞭を執るようになった。

この種の講座はアメリカの大学では最初の試みだったが、想像以上に好評で、大成功を収めている。講座では「プラントベースの食事」がもたらす「健康な人生の価値」に焦点を合わせた。

マサチューセッツ工科大学やバージニア工科大学での研究生活のあと、30年前にコーネル大学に戻ってきた私は、そこで「栄養学の上級講座」として化学・生化学・生理学、そして毒物学を統合した講義を求められた。

わが国における最高レベルの科学的な研究、教育、政策決定に40年間携わってきたが、私は今、科学のこうした専門分野を統合し、納得できる講義を実現したい、と願っている。それが、この講座において私がめざしてきたことなのである。学期の終わりには多くの学生が、「人生が良い方向へ変わった」と報告してくれる。

そう、これこそが、本書刊行の願いであり、私がみなさんのより良き人生のためにお手伝いしたいことなのである。

読者のそれぞれの人生航路もまた、より良き方向に針路変更できることを心から願っている。 

 

236ページの一部です。これは「チャイナ・スタディ」の根幹の一つだと思います。

 

『食事中のカゼインの量を調節することによって、ガンの増殖を刺激したり、止めたり、また1Aクラス(100%ガンを引き起こす可能性があるクラス)の発ガン物質であるアフラトキシンによるガンの誘引作用を無効にしたりできる。しかし、この研究結果は事実として確認されたにもかかわらず、人間ではなく、なおも実験動物のみに当てはまるものだった。

したがって、人間の肝臓ガンの原因に関する証拠を突き止めるために、私は「チャイナ・プロジェクト」に大きな期待を寄せていた。』

 

第3章 ガンの進行は止められる

ガンはこうして作られる

ガンはイニシエーション(形成開始期)、プロモーション(促進期)、プログレッション(進行期)の3つの段階を経て進行していく。これはちょうど、芝生の成長過程に似ている。

画像出展:「GAHAG

 

(1)イニシエーション(形成開始期)…きっかけは発ガン物質

たとえて言えば、「イニシエーション」が芝生の種を土に蒔くときであり、「プロモーション」は芝が種から成長し始めたときであり、「プログレッション」は、芝生がドライブウェー(車道から自宅の車庫に通じる私道)や生垣・歩道にまで侵入して、完全に手に負えなくなってしまった状態といえる。

「そもそも芝生の種を地中にうまく植え付けるしくみ、すなわち高度の発ガン性細胞になり始めるきっかけとは何なのだろうか」

この推進役といえるものが発ガン物質なのである。

この化学物質はアフラトキシンの場合のように、少量は自然界で形成されることもあるものの、ほとんどの場合は廃棄物焼却の過程の副産物である。

一般にこれらの発ガン物質は、正常細胞を高発ガン性の細胞に変形させる。すなわち突然変異を引き起こす。突然変異は細胞のDNAにダメージを与え、遺伝子に永久的な変質を生じさせることになる。

完全な「イニシエーション」(図5参照)は、非常に短い間に生じる可能性がある。数分ということさえある。これは、発ガン物質が摂取され、血液中に吸収され、細胞の中に運ばれ、活発な物質に変わり、DNAと結合し、その「嬢(娘)細胞」に伝えられるのに要する時間である。

新しい「嬢細胞」が形成されたとき、プロセスは完了する。この「嬢細胞」と、その「子孫細胞」は遺伝子的にダメージを受けていて、ガンを引き起こす可能性がある。

稀な例を除いて「イニシエーション」の成立は「不可逆的である(もとの状態に戻せない)」とみなされている。

 

図5

画像出展:「チャイナ・スタディー」

(2)プロモーション(促進期)…成長は食べ物しだい

先ほどの芝生のたとえで言えば、この時期は芝生の種が土の中に蒔かれ、発芽の準備ができているところである。この段階は、「プロモーション(促進期)」と呼ばれる。

葉を伸ばし、緑の芝生に変わる準備ができた種のように、新たに形成された高度の発ガン性細胞は、発見可能なガンになるまでに確実に成長し、増殖する用意ができている。

促進期は「イニシエーション(形成開始期)」よりずっと長く、人間の場合だとたいてい何年もかかる。

この時期は新たに作られ始めたガン細胞群が増殖し、次第に大きな塊に成長し、目に見える腫瘍が形成されるときである。

しかし、土の中の種と同じように、初めのガン細胞は、適切な条件が満たされない限り、成長し増殖するようなことはない。

例えば、土の中の種は完全な芝生になるまで、好ましい量の水や日光、そしてほかの栄養分が必要である。

これらのうちのどの要素でも与えられなかったり、欠けていたりすると、種は成長しない。成長を始めたあとで、これらの要素のどれかが欠けると、欠けている要素が与えられるのを待つ間、新しい苗は「休眠状態」に入る。

これが「プロモーション」の最も著しい特徴である。

プロモーションは、初期のガンが成長に最適な条件を与えられるかどうかによって、停止させることができる。

食事が重要となるのは、このときである。食事因子は「プロモーター(促進物質)」と呼ばれ、ガン増殖のための食べ物となるのである。「アンチ・プロモーター(抗促進物質)」と呼ばれるもう一つの食事因子は、ガンの増殖を遅らせる。

「プロモーター」が「アンチ・プロモーター」より数で優ると、ガンの増殖は活発となる。反対に、「アンチ・プロモーター」が優勢であるときには、ガンの増殖はゆっくりになるか、あるいは止まる。これは、一方が押すように働くと、他方が引くように働くプロセスなのである。この可逆的な特徴はきわめて重要なので、強調しておきたい。

 

(3)プログレッション(進行期)…致命的なダメージの始まり

第三段階となる「プログレッション(進行期)」は、進行したガン細胞群が体に決定的なダメージを与えるくらいまでガンの増殖が進行したときに始まる。

これはちょうど伸び切ってしまった芝生が、庭やドライブウエー、歩道など至る所を覆ってしまった状態と似ている。

同様に、発達中のガン細胞は最初の場所からさまよい出て、近隣やはるか遠くの組織を侵略する。そのガンが致命的な力を持つようになると、それは「悪性」とみなされる。

最初にあったところから抜け出してさまよっているときの状態が「転移している」ということになる。これはガンの最終段階で、死に至る結果となる。

我々が研究を始めた当初、「ガン形成の段階」についてはぼんやりとした輪郭しかわかっていなかった。しかし、やがてこの問題についてもっと明らかにさせる方法がわかってきた。

まず、疑問点を列挙していった。例えば…

・「低たんぱくの食事は腫瘍の成長を抑制する」というインドの研究結果を証明することができるだろうか。

・タンパク質の摂取量がガンの成長に影響するのだろうか。

・ガン発症のメカニズムは何なのか。すなわちタンパク質はどのように作用しているのか。

解決すべき多くの疑問を抱え、我々は厳密な審査にも耐えられる結果を得るため、徹底した実証研究にとりかかったのである。

タンパク質の摂取量とガン細胞形成の関係

タンパク質の摂取はガンの発症にどのような影響を及ぼしているのだろうか。

我々の最初の検証は、タンパク質の摂取が主にアフラトキシンの代謝に関与する酵素(混合機能オキシダーゼ〈MFO〉)に影響を与えるかどうかの確認だった。

この酵素の働きは非常に複雑だ。なぜなら、アフラトキシンのほかに医薬品やほかの化学物質も分解・代謝するからだ。皮肉なことに、体にとって味方になる場合もあれば、敵になる場合もある。すなわち、この酵素はアフラトキシンの解毒と活性化の両方を行う驚くべき形質転換物質なのだ。(図6参照)

 

図6

画像出展:「チャイナ・スタディー」

我々は研究を開始したとき、「私たちの摂取するタンパク質は、肝臓内に存在する酵素によるアフラトキシンの解毒のされ方を変えることによって、腫瘍の増殖を変える」という仮説を立てた。

当初、タンパク質の摂取量が、この酵素の活動を変えるかどうかを研究し、実験の結果(図7参照)、答えが出た。タンパク質の摂取量を変えることによって、酵素活動は容易に変更することができたのだ。

 

図7

画像出展:「チャイナ・スタディー」

インドで行われた最初の研究のように、タンパク質の摂取量を20%から5%に減少させると、酵素の活動が大幅に低下したばかりか、低下に至るスピードも非常に速まった。

この現象は、「低タンパクの食事によって酵素の活動が低下すると、DNAを突然変異させる危険性のあるアフラトキシン代謝産物(図5の③危険物質AF★のこと)に転換されるアフラトキシンが少なくなる」ということを示していた。

我々はこれが意味することを検証することにした。すなわち、「低タンパクの食事は、アフラトキシン代謝物がDNAと結びつくのを減少させ、その結果、DNA付加体が少なくなる」かどうかの検証だ。

私の研究室にいる大学生のレイチェル・プレストンがその実験を行ない(図8参照)、「タンパク質の摂取量が少なければ少ないほど、アフラトキシン-DNA付加体の量は少ない」ことを証明した。

 

図8

画像出展:「チャイナ・スタディー」

こうして我々は、「低タンパクの摂取は、酵素活動を著しく低下させ、危険な発ガン物質のDNAへの結合を妨げる」という見事な証拠を得たのである。

これは確かに衝撃的な研究結果である。そして、「少量のタンパク質摂取がいかにガンの形成を減らすか」を説明するのに十分な情報に違いはないだろう。

我々は、さらにこの影響について研究を深め、二つのことを確信したかった。そこでさらにほかの説明を探し続けることにしたのだが、時が経過するにつれ、実に驚くべき事実を知ることになった。

タンパク質がその影響を発揮するための方法やメカニズムを追究するたびに、我々は毎回同じ現象に遭遇したのである。

例えば、低タンパクの食事やその同等物は、次のようなメカニズムによって、腫瘍の形成を減少させることを発見したのである。

 

・細胞に入るアフラトキシンが少ないことによって。

・細胞の増殖の速さがもっと遅くなることによって。

・酵素複合体の中で、その活動を減らすための変化によって。

・関係した酵素の必須成分の量が減少されることによって。

・「アフラトキシン-DNA付加体」の形成が少ないことによって。

 

低タンパクの食事がもたらすメカニズムをいくつも発見できたことは、意外なことだった。これはインドの研究者らの研究結果に重みを加えた。

このことはまた、次のことも示唆していた。

生物学的作用は一つの反応を通して影響する、とみなされることが多いのだが、今回のケースはほかの反応と連動する可能性がきわめて高く、さまざまな同時発生的な反応を通して作動することが多かった。

これは、一つのメカニズムがなんらかの方法で回避されてしまったときのために、体には別のバックアップシステムが多く存在している可能性があることを意味しているのではないだろうか。

その後の数年間、研究の進展とともに、この仮説はますます確かなものになり、我々の広範な研究から、「タンパク質の摂取量を減らすと、腫瘍形成を劇的に減少させる」という見解は明白に思われた。

十分な裏付けがあるにもかかわらず、多くの人にとって、この結果は納得のいかないことだったろう。

「ガン病巣の成長」に与えるタンパク質の影響

芝生のたとえ話に戻ると、「イニシエーション(形成開始期)」は種を蒔く時期に該当する。我々は膨大な実験を通して、低タンパクの食事は、種が植え付けられる段階で、ガン体質の芝生の種を減らすことを発見した。これは実にすばらしい発見だったが、次のような疑問解決のため、さらに実験を重ねる必要があった。

・重要な段階である「ガンの促進期」では、はたしてどうなのか。

・「形成開始」段階で発揮された「低タンパク食の効果」は、「ガンの促進期」を通して続くのだろうか。

 

実はこの段階まで、研究は時間と金銭的理由で難問を抱えていた。腫瘍が完全に形成されるまでネズミを生かしておくには、費用がかかる。このような実験はそれぞ2年以上(ネズミの標準的な寿命)を費やし、優に10万ドルの費用がかかるのだ(今日ではもっとかかる)。

我々が抱いていた多くの疑問のために、腫瘍が完全に形成されるのを確認して研究作業を続けることはできなかった。それをしていたら、35年後もまだ私は研究室にいることだろう。

これは、ほかの研究者らによって発表された「ガンの形成直後に現われるガン様の小さな細胞群の測定法」を示す研究について知った頃のことである。

このごく微小の細胞群は「病巣」と呼ばれていた。「病巣」はやがて腫瘍に成長していく前駆細胞群である。

ほとんどの「病巣」は本格的な腫瘍細胞にはならないが、腫瘍の成長を予測するものである。

我々が発見したことは実に注目に値する。「病巣」の成長を観察し、「病巣の数がいくつあるか」「どれだけ大きくなるか」を測定することによって、「腫瘍がどのように成長しているか」「タンパク質はどのように影響しているか」ということも、知ることができたのだ。

腫瘍の代わりに、「病巣の成長」にタンパク質がどう関わっているかを研究することによって、我々は研究のための数百万ドルと一生の時間を費やすようなことは避けられた。

「病巣の成長」は、アフラトキシンの摂取量とは関係なく、ほぼ完全にタンパク質の摂取量に深く関わっていたのである。

このことは多くの方法で立証されたが、最初は、大学院の学生、スコット・アップルトンとジョージ・ダナイフによって立証された(代表的な比較については図9参照)

 

図9

画像出展:「チャイナ・スタディー」

アフラトキシンによる「形成開始期」のあと、「病巣の成長」はタンパク質が20%の食事の場合のほうが、5%の食事の場合よりもはるかに多く促進された。(「%」は総摂取カロリーに対するタンパク質の割合)

この時点まで、すべての実験動物たちは同量のアフラトキシンにさらされていた。しかし、もし初めにさらされるアフラトキシンのレベルが多様であったらどうなるのか、それでもタンパク質は影響するのだろうか、という疑問があった。

我々は、高レベルのアフラトキシンと低レベルのアフラトキシンのいずれかを、ごく標準的な食事とともに二つのグループのネズミに与え、この疑問を解き明かそうとした。

このため、二つのグループのネズミたちが「形成開始」時点で与えられる「ガン性の種」の量を別々にして、「病巣の成長」を促したのである。

次に「ガンの促進期」の段階では、高レベルのアフラトキシンを与えたグループに低タンパク食を、そして低アフラトキシンのグループには高タンパク食を与えた。

「ガン性の種」を大量に与えられた動物たちが、低タンパクの食事をすることによって、苦境を克服できるかどうか知りたかったからだ。

ここでも結果は目を瞠るものだった(図10参照)。ガンの「形成開始」が高レベルのアフラトキシン投与からスタートしたネズミは、タンパク質5%の食事を与えたとき、「病巣」はほんのわずかしか発現しなかった。

 

図10

画像出展:「チャイナ・スタディー」

それにひきかえ、低アフラトキシン投与からスタートしたネズミは、そのあとタンパク質20%の食事をさせたところ、かなり多くの「病巣」を形成した。

こうして、次のような「原則」が打ち立てられた。

 

初期段階では発ガン物質の量によって異なる「病巣の成長」だが、ガンの促進期に摂取される食物中のタンパク質のほうが、「病巣の成長」にはるかに多くの影響を与えている。

 

「ガンの促進期」のタンパク質の威力は、最初の発ガン物質への暴露とは関係なく、発ガン物質に優るのだ。

この知識を基にして、我々はさらに別の実験を企画した。次の実験は、大学院の学生、リンダ・ヤングマンによって行われた「段階別の実験」である。

すべての動物に同量の発ガン物質を与え、次に12週間の「ガンの促進期」の間、変化をつけながら5%と20%のタンパク食を与えた。

我々はこの12週間を、第1期は1~3週、第2期は4~6週といった具合に、3週間ごとの4期に分けた。

第1期と第2期では、ネズミがタンパク質20%の食事を続けている限り(タンパク質投与量20%のまま)、「病巣」は予測どおり増え続けた。

しかしこのネズミに、第3期目から投与量5%の低タンパク食を与えたところ、「病巣の成長」は激減した。

そして第4期から再び20%のタンパク食に戻したところ、「病巣の成長」が再開した。

別の実験では第1期に20%のタンパク食をネズミに与え、第2期に5%のタンパク食に替えると、「病巣の成長」は激減した。

しかしこのネズミを、第3期に入って再び20%のタンパク食に戻すと、「病巣の成長」を再度目撃したのである。

こうした実験は非常に意味深いものがある。

「病巣の成長」はタンパク質の投与量を変えることによってコントロールでき、しかも「病巣の成長」のあらゆる段階で、増大または減少に反転させることができたのである。

実験はまた、次のことも立証した。

初期の発ガン物質による攻撃が低タンパク食摂取時に休止状態になっていたとしても、体はそれを記憶していることができる。

すなわち、アフラトキシンに一度さらされることで、体には遺伝子(刷り込み)が残され、7~9週間後の20%のタンパク食によってその遺伝子が呼び起こされ「病巣」を形成することになるが、それまでの期間(5%のタンパク食の間)は、休止状態でいるということだ。

簡単に言えば、体は「恨み」を抱いているのである。もし私たちが過去に発ガン物質にさらされた場合、それがガンの形成を始めた段階で休止し、その状態のまま留まっていても、やがてこのガンはのちのちの悪い栄養摂取によって再び呼び起こされる可能性がある、ということになる。

この研究結果は、「ガンの増殖は、タンパク質の摂取量を相対的に控えめにすることによって変化を生ずる」、ということを証明しているのだ。

しかし、どれだけの量がタンパク質過剰となり、どれだけの量が過小ということになるのだろうか。

我々はネズミに、4~24%の範囲内のタンパク食を与えて調べてみたところ、タンパク質が10%までだと、「病巣の成長」はなかった。(図11参照)

 

図11

画像出展:「チャイナ・スタディー」

10%を超えると、タンパク質の増加に伴い「病巣の成長」は激増した。

のちに日本人の客員教授である堀尾文彦によって、私の研究室で行われた実験でも、同じ結果が得られている。

【注】堀尾文彦氏は、1988年にコーネル大学栄養科学部に留学。現在は名古屋大学 生命農学研究科 教授。(ご参考:『日本の研究.com』)

最も重大な発見は次の点にある。

 

「病巣の成長」は、動物がその体の成長に必要な食事タンパク質の量を満たしたときか、その量を超えたときに開始される。

すなわち、動物がタンパク質必要量を満たし、その量を超えたとき、病気が始まるのである。

以上はネズミを対象にした研究ではあるが、この研究結果は人間にも当てはまる。なぜなら、大人のネズミや人間が健康を維持していくのに必要なタンパク質の量だけではなく、子供のネズミや人間の成長に必要なタンパク質の量も、著しく似ているからである。(注)

【注】ネズミと人間のタンパク質必要量の比較について

人間とネズミのタンパク質必要量については、次のような異論もあります。

「ネズミのタンパク質必要量は、人間の場合よりもずっと多い」という見解は、1947年、『ジャーナル・オブ・ニュートリション(Journal of Nutrition)』誌に掲載された、ある研究グループの発表に基づくものです。

一方、キャンベル博士の「ネズミと人間のタンパク質必要量/推奨量は、ほぼ同じである」という見解は、上記の発表後の25年間に、さらなる数十の研究が行なわれ、1972年に全米科学アカデミー内の「米国学術研究会議」によって発表されたものです。

これは別々に行われた6つの動物実験の結果から導いた結論であり、少なくとも30の関連研究を再調査したうえのものです。

見解の相違についてキャンベル博士は、「ネズミのタンパク質必要量を人間の必要量とどう結びつけるのかという点の解釈にすぎない」とし、この相違は重要ではなく、最も大切なのは、次の二つのことである、と指摘しています。

①人間にとってタンパク質はどれだけ必要なのか。

②どのような種類のタンパク質が人間にとっての必要量を満たせるのか。

 

キャンベル博士の説明は、次のとおりです。

①過去40~50年の間、いろいろな研究によってさまざまなタンパク質必要量/推奨量が発表されてきたが、現在、多くの専門家や公的機関の合意のもとでの推奨量は、「総摂取カロリーの8~12%(平均10%)」となっている。

この数字は、成長率が最もめざましい子供から妊娠中や授乳中の女性たちまで、すべての人の必要量を満たし、全般的な健康を維持していくうえで十分な量である。

②プラントベースのホールフードは、十分なタンパク質を含んでいる。タンパク質の量が比較的少ないジャガイモ(カロリー当たりのタンパク質含有量7.1~8.4%)しか食べなくても、必要量に近い量を摂取できる。

プラントベースの食事をする人は、毎日一種類以上の食品をとることになるので、食事中のタンパク質量は実際には総摂取カロリーの8~12%の範囲になる。

特にタンパク質が豊富な緑葉野菜(同含有量42~44%)や豆類(同含有量24~36%)が食事に含まれていれば、タンパク質の摂取は万全だ。

ガンをコントロールすることは可能か

タンパク質の一日当たりの推奨摂取量(RDA:recommended dietary allowance)によれば、「私たち人間は総摂取カロリーの約10%をタンパク質からとるべきだ」とされている。これは実際に体が必要としている量よりもかなり多い。

しかし必要量は個人差が大きいため、すべての人が確実に必要量を摂取できるようにするため、10%の食事タンパク質がすすめられているのである。

では、平均的なアメリカ人は通常どれくらい摂取しているかというと、推奨量の10%どころか、15~16%のタンパク質をとっているのだ。

この量は私たちがガンという危険区域に足を踏み入れているということを動物実験の結果が指し示している。

体重や総摂取カロリーにもよるが、10%の食事タンパク質とは、一日50~60グラムのタンパク質を摂取することに匹敵する。

アメリカの全国平均摂取量15~16%は、一日約70~100グラムで、男性はこの数値の多いほうに近く、女性は少ないほうの端に近い。

食べ物で言えば、100キロカロリーのホウレンソウには12グラムのタンパク質が含まれており、乾燥のヒヨコマメ100キロカロリーには5グラム含まれている。また、100キロカロリーの上質のビーフステーキには13グラムのタンパク質が含まれている。

しかし疑問が残る。タンパク質の摂取量が異なると、アフラトキシンの投与量と「病巣の形成」の密接な関係も変わるかどうか、という問題だ。

通常、化学物質は大量投与によってガンの高い発生率をもたらさない限り、「発ガン物質」とはみなされない。

例えば、アフラトキシンの場合、その投与量が多くなるにつれ、病巣と腫瘍の成長も付随して増大しなければならない。

疑わしい発ガン物質に対応して、成長反応が見られなかった場合、「本当に発ガン物質なのだろうか」、といった疑問が生じる。

「用量反応」の調査のため、10グループに分けたネズミにアフラトキシンの量を増加させながら投与し、次に通常レベル(20%)と低レベル(5%)のタンパク食を「促進期」の間与えてみた(図12参照)。

 

図12

画像出展:「チャイナ・スタディー」

タンパク質20%食のネズミでは、アフラトキシンの投与量が増えるにつれ、「病巣」が増加した。「用量反応」は予想どおりの結果だった。

しかし、タンパク質5%食のネズミでは、「用量反応」の動向曲線は完全に消えていた。ネズミに最大耐量のアフラトキシンが投与されたときでさえ、病巣反応の変化は見られなかったのである。

これは「低タンパクの食事は、強力な発ガン物質(アフラトキシン)のガン誘発効果を抑えることができる」ことのもう一つの証明である。

では、一般的に発ガン物質は栄養的条件が適切でなかった場合ガンを引き起こさない、と断言できるのだろうか。

私たちの人生の大半は少量の発ガン性化学物質にさらされているが、「腫瘍を成長させるような食べ物を摂取しない限り、ガンは生じない」と言うことができるのだろうか。

はたして、栄養摂取の如何によって、私たちはガンをコントロールすることが可能なのだろうか。

ガンの促進要因は、「カゼイン(牛乳タンパク)」だった

これまでの話を理解していただけたとしたら、この研究結果がどれほど挑発的なものかおわかりだと思う。「栄養摂取によってガンをコントロールする」というのは極端な話に思われただろうし、その状況は昔も今も変わらない。

しかし、実はその研究結果はもう一つ、とんでもない情報をやがてもたらすことになるのだった。

それは、「実験にはどんな種類のタンパク質が用いられ、結果に影響を及ぼしたか」ということと深く関連している。

すべての実験で我々が使用したのは、「カゼイン」だった。「カゼイン」は、牛乳タンパクの87%を構成している物質だ。

したがって次の疑問は、「植物性タンパク質が同様の方法でテストされた場合、ガンに対して「カゼイン」同様の影響を与えるだろうか」ということになる。

そして、その答えは驚くべきものだった。「ノー」である。

すなわち、植物性タンパク質では、たとえ高レベルの量を摂取したとしても、ガンの増殖を促進するようなことはなかったのである。

この研究(図13参照)は私の指導している医学部進学過程の学生、デビット・シュルシンガーが行なったものだが。小麦タンパクのグルテンでは、たとえ同量の20%を与えても、「カゼイン」と同様の結果を引き起こすことはなかった。

また、大豆タンパクでも、同様の実験を行ったが、20%の大豆タンパク食を投与したネズミは、20%の小麦タンパク食の場合と同じように、初期の「病巣」を形成することはなかった。

 

図13

画像出展:「チャイナ・スタディー」

このような結果が出て、同じタンパク質でも牛乳のタンパク質がさほど良い食品には思えなくなってきた。

我々は、「低タンパクの食事がさまざまな方法でガンの形成開始を減らそうとしている」ことを発見したのである。

しかも、高タンパクの食事は、体の成長に必要以上の量になると、形成開始期間のあとのガンを促進させることもわかってきた。

ちょうど電灯のスイッチを入れたり消したりするように、タンパク質のレベルを変えることで、最初は発ガン物質にさらされていたにもかかわらず、ガンの促進をコントロールすることができたのである。

そして、この場合のガンの促進要因は、「牛乳のタンパク質」だったのだ。

「タンパク質はガンの増殖を手助けする可能性がある」という考えを受け入れることは、私の同僚たちにとっては実にやっかいなことだった。しかもそれは、「牛乳のタンパク質」なのだ。

自分の頭はどうかしてしまったのではないか。私は自問自答を繰り返した。

「ネズミによるタンパク質研究」に関するQ&A

この研究について、もう少し詳しくは知りたい方のために、いくつかの質問への回答を、次に記しておいた。

 

Q1 タンパク食の研究結果についてだが、ネズミの食事に含まれるほかの栄養による影響の可能性はないのか?

 食事中のタンパク質摂取量を20%から5%に減らすということは、減らされた分だけ代わりのものを何か与えなければならない。

我々はカゼインの代わりとして炭水化物を使用した。カゼインも炭水化物も、カロリー含有量が同量だからだ(いずれも、1グラムにつき4カロリー)。

タンパク質の減少に伴い、デンプンとグルコースの混合物(1対1の割合)が、タンパク質の減量分だけ増加された。

ネズミの「低タンパク食」に、デンプンとグルコースを増量したことは、「病巣の成長が低下する原因」とはなり得ていなかった。なぜなら、炭水化物を個別にテストすると、病巣が成長するからである。

すなわち「低タンパク食」では、おそらく、増加した少量の炭水化物は、ただガンの発生率を増加させ、低タンパク食の効果を相殺させてしまうだけだろう。このことは「低タンパク食によるガン予防の効果」を、なおいっそうめざましいものにしている。

 

Q2 タンパク質の影響についてだが、食べ物の摂取量自体が少ないため、摂取カロリーが減ったからなのではないか?

 1930年代、40年代、50年代に行われた多くの研究が、「食べ物の総摂取量、あるいは総摂取カロリーの減少は、腫瘍の成長を減少させる成長を減少させる」ことを証明している。

我々の情報を調べ直してみると、「低タンパクの食事」を与えた動物の摂取カロリーは少なくなく、平均してみれば、むしろ多かったのである。この事実もまた、「カゼインに見られる腫瘍の促進作用」を強調しただけの結果となった。

 

Q3 低タンパクの食事をしているネズミの相対的な健康状態はどうだったのか?

 「タンパク質の少ない食事を長期間与えたネズミは、健康でない」と多くの研究者が決め込んでいた。

ところが「低タンパク食」のネズミは、ほかのネズミと比べてずっと長生きしていたし、体をよく動かしていて、実に健康的だった。

そして100週目のときも、スリムな体つきで毛並みも健康的なものだった。その一方で、「高タンパク食」のネズミは、全部死んでいた。

また、カゼインの摂取量が少ない「低タンパク食」のネズミは、より多くのカロリーを摂取していたばかりか、より多くのカロリーを消費していた。

「低タンパク食」のネズミは、カロリーを燃焼するのに必要な酸素をより多く消費しており、またカロリーを燃焼するのに効果的な「褐色脂肪組織」と呼ばれる特殊組織のレベルも高かった。

カロリーの燃焼は、「熱発生」(体の熱としてのエネルギー消費)という形で生じる。この現象はすでに何年も前に実証されている。「低タンパク食」はカロリー消費を高めるのだ。したがって、「体重を増やすためのカロリー」を体に少ししか残さない。そして、おそらく「腫瘍の成長のためのカロリー」も、少ししか残さないだろう。

 

Q4 運動は低タンパクの食事と関係していたのか?

 各グループのネズミの運動量を測定するため、檻の中の車輪をネズミがどれくらい回転させたかを記録させ、ネズミの運動量を比較した。

2週間にわたる測定の結果、カゼイン摂取量の少ないネズミは、およそ2倍の運動量をこなしていた。

この結果は、「高タンパクの食事」のあとの私たち人間の反応と似ている。すなわち活気がなくなり眠くなってしまうのだ。

「タンパク質たっぷりのアトキンス・ダイエットの副作用は疲労だ」という話を聞いたことがある。あなた自身、「高タンパクの食事」をしたあと、このような反応を体験したことがないだろうか。

 

●「100対0」という結果が示す信頼度の高さ

我々は、これまでずっと「腫瘍の成長」、すなわち「初期のガン様病巣」を測定することだけの実験を続けてきた。

次は大きな研究をする番だった。それは、完全な「腫瘍の形成」をどこで測定するかだ。我々は数百匹のネズミを使った大規模な研究を企画し、異なった方法で生涯にわたる「ネズミの腫瘍形成」について調べたのである。

結論から述べると、タンパク質投与が「腫瘍の成長」に与える影響は、実にわかりやすいものだった。ネズミは一般的に2年ほど生きるので、研究期間は100週に及んだ。

アフラトキシンが投与されたあと、通常レベルの20%タンパク食を与えられたネズミは、すべて肝腫瘍で死んだか、あるいは実験終了時の100週後の時点で、肝臓ガンのために死にかけていた。

同量のアフラトキシンを与えたあと、5%の低タンパク食で育てられたネズミは、すべて100週後の時点でも毛並みには光沢があり、活発に動き回り元気に生きていた。

スコアとしては100対0となり、これはこうした研究では決して見られない現象だった。「100対0」という結果は、インドで行われた初めの研究とほぼ同じ結果だった。

我々はガン促進の可逆性について再び調べるため、同じ実験で何匹かのネズミの食事を40週目と60週目で入れ替えてみた。

高タンパクの食事から低タンパクの食事に替えたネズミは、高タンパク食を与えられたネズミより、「腫瘍の成長」がきわめて少なかった(35~40%少ない)。

一方、低タンパクの食事から高タンパクの食事に替えたネズミでは、その一生の半ばで「腫瘍の成長」が再開した。「本格的な腫瘍」に関するこの研究結果は、以前「病巣の増減」調査の結果を裏付けるものだった。

すなわち、栄養摂取による操作で、ガンの進行を「ON」にしたり「OFF」にしたりすることが可能なのである。

我々は、食事タンパクに対して示すネズミの病巣反応が腫瘍反応と類似しているかどうかを調べるため、ネズミの一生の動きを研究しながら「ネズミの初期病巣」をも測定してみた。

その結果、「病巣の成長状況」と「腫瘍の成長状況」とは見事に一致した。図14-①②参照)

  

この時点で、我々の研究結果があまりにも統一性を持っており、生物学的に説得力があり、統計学的にもこれほど重大なものになろうとは、私は思ってもみなかった。

結局のところ、我々はインドで行われた研究結果が正しかったことを完璧に裏付けることになった。しかもそれは、反論の余地のないほど徹底した方法で行われたのである。

次の点を明らかにしておこう。

牛乳のタンパク質は、アフラトキシン投与後のネズミに対し、きわめて強力なガン促進物質となる。

この促進効力は、齧歯(ゲッシ)動物や人間がごく普通に摂取しているタンパク食のレベル(10~20%)で生じるというのだから、さらに興味をかき立ててくれるし、次の課題に挑んでみたくなる。

「100対0」という結果が示す信頼度の高さ

我々は、これまでずっと「腫瘍の成長」、すなわち「初期のガン様病巣」を測定することだけの実験を続けてきた。

次は大きな研究をする番だった。それは、完全な「腫瘍の形成」をどこで測定するかだ。我々は数百匹のネズミを使った大規模な研究を企画し、異なった方法で生涯にわたる「ネズミの腫瘍形成」について調べたのである。

結論から述べると、タンパク質投与が「腫瘍の成長」に与える影響は、実にわかりやすいものだった。ネズミは一般的に2年ほど生きるので、研究期間は100週に及んだ。

アフラトキシンが投与されたあと、通常レベルの20%タンパク食を与えられたネズミは、すべて肝腫瘍で死んだか、あるいは実験終了時の100週後の時点で、肝臓ガンのために死にかけていた。

同量のアフラトキシンを与えたあと、5%の低タンパク食で育てられたネズミは、すべて100週後の時点でも毛並みには光沢があり、活発に動き回り元気に生きていた。

スコアとしては100対0となり、これはこうした研究では決して見られない現象だった。「100対0」という結果は、インドで行われた初めの研究とほぼ同じ結果だった。

我々はガン促進の可逆性について再び調べるため、同じ実験で何匹かのネズミの食事を40週目と60週目で入れ替えてみた。

高タンパクの食事から低タンパクの食事に替えたネズミは、高タンパク食を与えられたネズミより、「腫瘍の成長」がきわめて少なかった(35~40%少ない)。

一方、低タンパクの食事から高タンパクの食事に替えたネズミでは、その一生の半ばで「腫瘍の成長」が再開した。「本格的な腫瘍」に関するこの研究結果は、以前「病巣の増減」調査の結果を裏付けるものだった。

すなわち、栄養摂取による操作で、ガンの進行を「ON」にしたり「OFF」にしたりすることが可能なのである。

我々は、食事タンパクに対して示すネズミの病巣反応が腫瘍反応と類似しているかどうかを調べるため、ネズミの一生の動きを研究しながら「ネズミの初期病巣」をも測定してみた。

その結果、「病巣の成長状況」と「腫瘍の成長状況」とは見事に一致した。図14-①②参照)  


この時点で、我々の研究結果があまりにも統一性を持っており、生物学的に説得力があり、統計学的にもこれほど重大なものになろうとは、私は思ってもみなかった。

結局のところ、我々はインドで行われた研究結果が正しかったことを完璧に裏付けることになった。しかもそれは、反論の余地のないほど徹底した方法で行われたのである。

次の点を明らかにしておこう。

牛乳のタンパク質は、アフラトキシン投与後のネズミに対し、きわめて強力なガン促進物質となる。

この促進効力は、齧歯(ゲッシ)動物や人間がごく普通に摂取しているタンパク食のレベル(10~20%)で生じるというのだから、さらに興味をかき立ててくれるし、次の課題に挑んでみたくなる。

「カゼイン」が発ガン物質を刺激する

さて次なる課題とは、「この研究が人間の健康にとって、特に肝臓ガンにとって、どう関係しているのか」という核心ともいえる点にある。

この問題を解明する方法の一つは、異なる種属の動物やほかの発ガン物質、ほかの臓器について研究することである。

もしガンに対するカゼインの影響が、異種動物や別の臓器などにも共通していたならば、「人間も注意したほうがいい」という可能性が高くなっている。

そこで我々は、今までの研究結果が説得力を持つかどうかを確かめるため、研究の対象範囲を広げることにした。

我々は「B型肝炎ウイルス(HBV)の慢性感染症は、人間の肝臓ガンの主要リスクファクター(危険因子)である」という主張を、ネズミによる研究の進行中に発表した。

慢性的にこのHBVに感染していると、肝臓ガンになるリスクが20~40倍にもなる、と思われていた。

長い間、このウィルスがどのようにして肝臓ガンを引き起こすのか、多くの研究が行なわれてきた。

基本的には、一つのウィルス遺伝子をネズミの肝臓の遺伝物質の中に挿入すると、この遺伝子は、そこで肝臓ガンを形成するための行動をとり始める。実験として行われる際、このネズミは遺伝子導入動物とみなされる。

遺伝子導入ネズミを使って行われた研究は今までに数多くあるが、それは主に、HBVが作用する「分子レベルのメカニズム」について理解するために行われたものである。

しかしこうした今までの研究では、栄養が「腫瘍の成長」に与える影響については、全く見落とされていた。

ある研究団体が「アフラトキシンは人間の肝臓ガンの主要因である」と主張したり、あるいは、別の団体が「HBVが主因である」と主張しているのを、私は数年の間少々楽しみながら眺めてきた。

だが、「栄養としてとり込んだタンパク質こそがこの病気と関係している」と示唆する人など、どの団体にも一人としていなかったのである。

我々は、HBVによって誘発させたハツカネズミの肝臓ガンに、「カゼイン」が与える影響について知りたかった。これは大きな一歩である。発ガン物質としてのアフラトキシン、そして動物の種としてのネズミという研究範囲を超えていた。

私のグループにいた若くて優秀な大学院生、フー・ジファンが、この疑問に答えるための研究を始めていて、やがて、これにチェン・ジキアン博士が加わった。

我々には、遺伝子が導入されたハツカネズミのコロニー(共生集団)が必要だったが、この「血統」を持つハツカネズミは二か所に存在していることがわかった。一か所はカリフォルニア州ラ・フォーヤ、もう一か所はメリーランド州ロックビルだった。

この血統は、肝臓の遺伝子の中に一つの異なったHBV遺伝子を持っており、それぞれ肝臓ガンになりやすかった。

私はこの研究の責任者と連絡をとり、我々のハツカネズミのコロニーを作り上げるのに協力してもらえるかどうかを尋ねた。

二つの研究グループは、我々が何をしたいのか聞いてはきたが、双方とも「タンパク質の影響について研究するのは馬鹿げたことだ」といった考えに傾いていた。

私はこの問題を解明するために研究助成金を申請したが、却下された。審査官らは、「ウィルスによって引き起こされるガン」に与える栄養、特に「タンパク食の影響」という問題を、快く取り上げてはくれなかったのだ。

「もしかして私は、神話ともいえるタンパク質の栄養価値について、あまりにも疑問を抱きすぎてしまったのだろうか」と危ぶみ始めた。助成金の申請却下はそれを物語っていた。

だが、我々は最終的に資金援助を得て、二つの研究グループの血統を持つハツカネズミの研究を行えることになり、我々のネズミで行った場合と基本的に同じ結果を得た。

写真1はハツカネズミの肝臓の横断面を顕微鏡で見たものだ。

 

写真1

画像出展:「チャイナ・スタディー」

黒っぽい物質は、ガンの増殖を示している(穴は単なる血管の横断面なので無視してよい)。

「22%のカゼイン」を与えたハツカネズミでは、強烈な初期ガンがあるが(D)、「14%カゼイン」投与のハツカネズミではもっと少なく(C)、「6%カゼイン」のハツカネズミでは全くない(B)。

写真(A)は、ウィルス遺伝子を持たないハツカネズミの肝臓を写したもので、比較していただくために掲載した。

図15は、ハツカネズミの肝臓に挿入された「ガンを引き起こす二つのHBV遺伝子」の発現(活動状況)を示すものである。

 

図15

画像出展:「チャイナ・スタディー」

この写真とグラフは両方とも、同じことを示している。

すなわち、「22%カゼインの食事」ではガンを引き起こすウィルス遺伝子を「ON」にし、「6%カゼインの食事」では、このような活動はほとんどないことを示している。

我々はすでにこの時点で、牛乳の神聖なるタンパク質「カゼイン」は、「アフラトキシンを投与されたネズミ」そして「HBVに感染しているハツカネズミ」の肝臓ガンを劇的に促進する、と結論づけるに十分な情報を得たのである。

影響は相当なものだったが、我々はさらに、この影響を一緒に生じさせようとするネットワークも発見した。

次の課題は、「この研究結果を、ほかのガンや発ガン物質に当てはめて法則化することができるかどうか」という点にあった。

当時、シカゴにあるイリノイ大学メディカルセンターでは、別の研究グループが、「ネズミの乳ガン」について研究していた。

この研究は、カゼインの摂取量の増加が乳ガンの発生を促進することを証明していた。彼らはすでに、カゼインの摂取量が多いと次のようなことが生じるのを発見していたのである。

 

・実験用発ガン物質「7,12‐ジメチルベンズ(a)アントラセン(DMBA)」と「N‐ニトロソ‐N‐メチル尿素(NMU)」を投与されたネズミにカゼインを多く与えると、乳ガンの発生を促進する。

・ガンを一緒に増殖させるネットワークを通して、乳ガンの発生を促進する。

・ヒトに作用するのと同じ女性ホルモン系を通して、乳ガンの発生を促進する。

発ガン物質の量よりも重要なもの

どれにも共通する一つの現象が見えてき始めた。二つの異なった器官(肝臓と乳房)、四つの異なった発ガン物質(注)、そして二つの異なった動物の種属(ネズミとハツカネズミ)にとって、カゼインは高度の総合システムのメカニズムを使いながら、ガンの増殖を促進するのだ。

【注】アフラトキシン、HBV(B型肝炎ウィルス)、DMBA(7,12‐ジメチルベンズ(a)アントラセン)、NMU(N‐ニトロソ‐N‐メチル尿素)。

 

これは実に説得力のある現象である。例えばカゼインは、細胞と発ガン物質との相互作用、DNAの発ガン物質への反応、ガン性細胞の増殖などに影響する。

下記にあげた四つの理由から、この研究結果の深さと一貫性は人間にとっても適合することを強く示唆している。

 

①ネズミとヒトの「タンパク質必要量」は、両者ともほとんど同じである。

②タンパク質はネズミの体内とほとんど同様の方法でヒトの体内でも作用する。

③ネズミの腫瘍の成長を促す「タンパク質摂取量」のレベルは、ヒトが摂取している量と同等である。

④ネズミにとってもヒトにとっても、ガンは「形成開始期」より、「促進期」の段階のほうがずっと重要である。

 

「促進期」の段階のほうがずっと重要なのには、理由がある。

私たちは、日常生活の中で発ガン物質にさらされている可能性がきわめて高いが、この発ガン物質がやがて完全な腫瘍を生じさせるかどうかは、腫瘍の成長を促進させるか、させないかによって決まるからである。「カゼインの摂取量が増えるとガンを促進する」ということを確信するようになってきていたとはいえ、それでも、このことを広めることに対しては慎重でなければならなかった。

既成概念に対して、挑発的な研究結果だったからで、おそらくは大変な騒ぎとなるだろうことが予測された。しかし、それにもかかわらず、この結果は、次のようなことを喚起し、私は自分が得た証拠をもっと深く究めてみたかった。

 

・ほかの栄養素は、ガンにどのような影響を与え、また、ほかの発ガン物質や異なった器官と、どのように相互作用するのだろうか。

・ほかの栄養素、発ガン物質、器官の影響力は、互いに相殺するのだろうか。

・特定の種類の食品に含まれる栄養素に対する影響の一貫性はあるのだろうか。

・ガンの成長促進は反転可能なのだろうか。もしそうなら、ガンの成長を促進する栄養素の摂取を減らし、成長を阻止する栄養素の摂取を増やすことによって、ガンを容易にコントロールできるかもしれないし、反転させることさえできるかもしれない。

 

我々は、「魚タンパク」「食事脂肪」「カロテノイド類として知られる抗酸化物質」などを含む異なった栄養素を使い、さらなる研究を開始した。

優秀な大学院生のトム・オコーナーとヒー・ユーピンは、この栄養素が肝臓と膵臓のガンに影響する能力について調べた。

今回の結果やほかの研究が「栄養素は、ガンの促進をコントロールするうえで、ガンを発生させる発ガン物質の投与量よりもずっと重要である」ことを示していた。

「腫瘍の成長にとって栄養素は主に腫瘍の促進期に影響する」という考え方は、「栄養摂取とガンの関係」のポイントのように思われてきた。

国立ガン研究所の官報『国立ガン研究ジャーナル』は、我々の研究に注目し、研究結果のいくつかを特集で組んで掲載していた。

そして、さらにもう一つの傾向が見え始めてきた。

動物性食品からの栄養は「腫瘍の成長」を増加させる。

植物性食品は「腫瘍の成長」を減少させる。

こうした現象である。

アフラトキシンによって腫瘍のできたネズミの生涯において、この傾向は変わらなかった。

ほかの研究グループによって行われた「乳ガンと別の発ガン物質に関する研究」でも、この傾向は同じだった。

「カロテノイド系抗酸化物質とガンの初期形成」についての研究でも、この傾向は常に同じだった。

ガンの初期形成から第二段階のガンの促進期まで、この傾向は不変だった。

一つのメカニズムから別のメカニズムまで、このパターンは終始一貫していたのである。これほどまでの不変性は驚くほどだったが、依然としてこの研究のある側面が、我々に慎重であるように求めていた。

すなわち、すべての調査結果は実験動物による研究であつめられたものだったからだ。この結果は、質的には人間にも当てはまる強力な根拠があるとはいえ、量的に妥当かどうか、これはまだわからなかった。

まだ、次のような疑問が残っていたからだ。

 

・動物性タンパク質とガンに関するこれらの法則は、すべての状況において、そしてすべての人類にとって決定的に重要なものなのか。

・むしろこの法則はきわめて稀な状況のときや、ごく少数の人にとって重要だということにすぎないのではないのか。

・この法則は、毎年1000人のガン患者に関係する程度のものだろうか、それとも毎年100万人、あるいはそれ以上の人たちに関わるものなのだろうか。

新たなる研究チャンスの訪れ

我々は実際に「人を対象とした研究」による直接的な証拠が必要となってきた。

この証拠は、理想的に次のような方法で得られるだろう。

すなわち、似たようなライフスタイル(生活習慣)をしていて、似たような遺伝的性質を持ち、病気の発生率に関しては多様であるような大勢の人々を対象とし、そのデータを厳密な方法で集め、食習慣の傾向と関連して調べるのである。

こうした研究を行うチャンスなど、まずめったにないだろう。

ところが、信じられないことに、そのチャンスが訪れたのである。

我々が研究室で明らかにし始めた「法則」を、今度は「人間を対象にした研究」で検証していくチャンスが、与えられたのだ。

1980年、研究室にとても感じのいい科学者、チェン・ジュシン博士を迎えるという幸運に恵まれた。私は、この非凡な学者とともに、「大きな真実」を探求していくチャンスを手にしたのである。

「栄養の役割」「ライフスタイル」「病気」に関して、医学史上かつてないほどの総括的な方法で研究するときが来たのだ。

我々は「チャイナ・プロジェクト」と名づけられた大プロジェクトに一歩踏み出そうとしていたのである。

第4章 史上最大の疫学調査「チャイナ・プロジェクト」の全貌

幸運がもたらした「ガン分布図」の入手

あなたはある瞬間を永久に捉えておきたいといった気持ちに駆られたことがないだろうか。その一瞬を生涯決して忘れまいといった気持に囚われてしまう。

それは家族や親しい友人とのふれ合い、あるいはまた自然や精神上のこと、宗教に関する瞬間かもしれない。

たいていの場合、おそらく「特別な瞬間」とは、さまざまな要素が少しずつ重なって訪れるものではないだろうか。うれしいにつけ悲しいにつけ、この個人的な出来事のことを私たちは「思い出」といっている。「特別な瞬間」とは、すべてのことが同時に重なって訪れる。そして、人生で経験する出来事を「時のスナップショット」として特徴づけてくれる。

「時のスナップショット」は研究分野においても、その価値は高い。我々は、ある瞬間のスナップショットを長く保存し分析したい、と考えて実験を構築した。

1980年代、中国から優秀な研究主幹、チェン・ジュシン博士がコーネル大学の私の研究室に来てくれてから、幸運にも私はこのような「特別な瞬間」にめぐり合うことができた。

博士は中国を代表する健康研究所「栄養・食品衛生研究所」の副所長であり、米中間の国交樹立直後にアメリカを訪れたごく少数の中国人学者の一人だった。

 

1970年代初め、中国の周恩来首相がガンで死にかけていた。末期の状態で身動きができない中、首相は、この病気の情報を収集するため、中国全土に及ぶ調査を開始した。

それは2400余りの郡とその住民8億8000万人(人口の96%)を対象とした「12種にわたるガン死亡率」に関する途方もない調査だった。

この調査は、いろいろな点で注目されたが、その一つは、65万人の作業員が関与するという、「生物医学的研究プロジェクト」としては前代未聞の規模の大きさにあった。

この調査の最終結果は美しく色分けされた分布図に描かれ、どの地域に特定のガンのタイプが多く、また、ほとんどガン患者が存在していない地域はどこか、といったことを示していた。

 

図16

画像出展:「チャイナ・スタディー」

この分布図は、「中国のガンは地理的に一地方に集中している」ことを明らかにしていた。ある種のガンの頻度は、A地域とB地域とでは全く違っていたのである。

ガンの発生率は国によってかなり差があることを示す初期の研究が、この考え方のヒントになった。

ただし、中国のデータの場合、ガンの罹患率と地域的状況との関係性がきわめて密接だったため、より注目に価するものだった。

 

表4

画像出展:「チャイナ・スタディー」

『同一民族でありながら、各種ガンの死亡率にはかなりの幅があり、これは地域によって大きなばらつきがあることを示しています。』

この中国のデータは、人口の87%が同一民族(漢民族)であるという状況のもとで収集されたものである。

遺伝的性質が同じとき、異なった地域におけるガンの罹患率に、これほどのばらつきがあるのはなぜだろうか。

ガンは主に遺伝的特徴によるものではなく、環境やライフスタイルが原因で生じる、と見られる。著名な科学者らが、すでにそう結論を下していた。

1981年の米国連邦議会向けに作成された「食習慣とガンに関する主要報告」の著者たちは、「遺伝的特徴は、ガンのリスク全体のわずか2~3%を決定するにすぎない」と推定していた。

アメリカと中国では何が違うのか

中国のガン分布図のデータは意味深い。あるガンの罹患率が最も高い地域では、そのガンの罹患率が最も低い地域の100倍もある。この数字は実に驚くべき差である。

それと比較してアメリカを見ると、ある地域と他地域でのガンの罹患率の相違は、せいぜい2~3倍にすぎない。ガンの罹患率がわずかにもかかわらず、比較的重要でない相違が大きなニュースとなったり、莫大な利権をもたらしたり、政治問題になったりする。

私の住むニューヨーク州では、ロングアイランドにおける乳ガン罹患率の増加が長年の間話題になっている。この問題に対し、3000万ドルもの巨費と長い年月とが費やされてきた。

どの程度の罹患率が、このような大騒ぎを招いているかというと、ロングアイランド内の二つの地域の罹患率の差はわずか10~20%にすぎないのである。

この程度の違いでも、新聞の一面をにぎわし、人々を怖がらせ、政治家を動かすのには十分なニュースだった。この研究結果を、ガンの罹患率が地域によって100倍(10000%)も差のある中国と対比させてみるといい。

相対的に見て、中国人は遺伝的にはほぼ単一民族であるため、この相違は環境的因子によって説明されねばならない。これは次のような大きな疑問を引き起こす。

 

・なぜ、ガンは中国の一部の農村地域に多く、ほかの地域には少ないのか。

・なぜ、この相違はこんなに大きいのか。

・なぜ、中国では総体的に、ガンがアメリカより一般的ではないのか。

 

チェン博士と私は、これについて話せば話すほど、ますます中国農村部の食習慣と環境状況を瞬間で捉える「スナップショット」が欲しくなった。

 

・もし中国の人々の暮らしを見、食べているものを書きとめ、「どのような暮らしをしているのか」「血液や尿の中にどんなものが含まれているのか」「どのようにして亡くなっていくのか」などを知ることさえできたら……。

・今後末永く研究できるように、中国人のライフスタイルの詳細を前例がないほど細かく書き残すことさえできたら……。

 

もし、それができたら、我々の「なぜ」が解消するかもしれないのだ。

時折、科学・政治・資金が、驚くべき研究を可能にさせるように一つに結びつくことがある。それが我々にも起こった。我々は望んでいたこと以上の研究を行う機会を得たのだ。

こうして我々は、「食習慣」「ライフスタイル」、そして「病気」に関してこれまでで最も総括的な「スナップショット」を作り上げることができたのである。

第8章 ガン対策はどのように改善されるべきか

前立腺ガン形成のメカニズム

ほかのガンの項目ですでに見てきたように、大規模研究から、「前立腺ガンと動物性食品に基づく食習慣(特に乳製品が多い食事)との関連性」が明らかになってきた。

前立腺ガンと乳製品との関係を理解するには、その背景にある二つのメカニズムを知ることが決め手となる。 

(1)成長ホルモンに関するメカニズム

最初のメカニズムは、がん細胞を増殖させるホルモン、すなわち体が必要に応じて作るホルモンに関するものである。

この成長ホルモン「インスリン様成長因子1(IGF‐1)」は、ちょうどコレステロールが心臓病の予測因子であるのと同様、ガンの予測因子であることが判明した。

体が正常なときには、このホルモンは細胞の増殖速度をうまく管理している。この「増殖」とは、健康状態時に、細胞が自ら再生し古い細胞を捨てていく作業のことだ。

しかし、不健康状態のときには、「IGF‐1」がより活発になり、新しい細胞の誕生と成長が促進され、古い細胞の除去が妨げされてしまう。いずれもガンの発生にとっては有利な条件となる(7件の研究が言及)。

では、この状態は、あなたが食べているものとどう関係しているのだろうか。

動物性食品を摂取していると、血液中の成長ホルモンである「IGF‐1」のレベルがアップしてしまうことがわかった。

 

血液中の「IGF‐1」レベルが正常値より高い男性は、進行した前立腺ガンのリスクが5.1倍も高い。

IGF‐1を拘束し、不活発にするタンパク質の血中レベルが低い男性は、進行した前立腺ガンのリスクが9.5倍にもなる。

 

こうした数字は大いに強調すべきだろう。正常な人との違いがあまりにも大きく、驚くべき数字だからだ。

この研究の結論において最も基本的なことは、肉(魚介類も含む。以下同様)や乳製品のような動物性食品を摂取すると、より多くの「IGF‐1」を製造するという点にある。

 

 (2)「ビタミンDの代謝」に関するメカニズム

二番目のメカニズムは「ビタミンDの代謝」に関連している。ビタミンDは私たちがあえて摂取する必要のある栄養素ではない。体は一日おきに15分から30分、ただ日光に当たるだけで、必要な量をすべて作っている。日光の作用による製造に加え、ビタミンDは私たちが食べるものによっても影響される。

「活性型ビタミンD」の生成は、体によってきびしくコントロールされている機能であり、前立腺ガンばかりか、乳ガン、結腸ガン、骨粗鬆症、1型糖尿病のような「自己免疫疾患」などにも影響を与える、体に備わった均衡作用の代表である。

多くの病気にとってこのビタミンDが重要であることや、そしてこのビタミンDの機能に関する説明が複雑になることから、また、私の主張を過不足なく説明するため、簡略な図式を付記し補足しておいた。

 

図Ⅰ

画像出展:「チャイナ・スタディー」

「食べ物がいかに体の健康状態をコントロールしているか」を示す反応システムを、ビタミンDを取り巻く複雑なネットワークが解き明かしている。

このプロセスの主要素は、食べ物や日光から得られるビタミンDによって作られる「活性型ビタミンD(別称、過給型ビタミンD)」である。

「活性型ビタミンD」は、ガンや自己免疫疾患、骨粗鬆症などの予防を含む多大な効果を体に与えてくれる。このきわめて重要な「活性型ビタミンD」は、食べ物や薬から摂取するようなものではない。

「活性型ビタミンD」から作られた薬は強すぎて、医療用としてはあまりにも危険だ。体は入念にコントロールされたセンサーを用いて、それぞれの作業にとって、適切なときに適切な量の「活性型ビタミンD」を製造するのである。

結局のところ、私たちが口にする食べ物が、この「活性型ビタミンD」の生産量と生産後の働きを決定する可能性がある、ということだ。

私たちが摂取する動物性タンパク質は、「活性型ビタミンD」の生産を妨げてしまう傾向があり、このビタミンの血中レベルを低下させてしまう。もしこの低レベルが続くと、前立腺ガンが生じる。また、カルシウムをとりすぎていると「活性型ビタミンD」の働きが低下する環境を作ってしまい、問題を増大させてしまうことになる。

では、動物性タンパク質と大量のカルシウムの両方を含んでいる食べ物とは、どんなものなのだろう。それは牛乳や乳製品だ。これこそ、前立腺ガンとの関係を明らかにする証拠と一致する食品だ。

この情報は、我々が「生物学的妥当性」と呼ぶものを提供してくれており、観察データがこの情報と完璧に一致していることを示している。このメカニズムをまとめてみると、次のようになる。

・動物性タンパク質は、体により多くの「IGF‐1」を作らせる。これは次のプロセスで細胞の増殖機能と除去作用を崩壊させてしまい、ガン発生を促すことになる。

・動物性タンパク質は、「活性型ビタミンD」の生産を止めてしまう。

・牛乳の中に見られる「過剰のカルシウム」もまた、「活性型ビタミンD」の生産を止めてしまう。

・「活性型ビタミンD」は、体内でさまざまな健康効果を作り出すことに貢献している。

・「活性型ビタミンD」のレベルが低い状態が続くと、さまざまなガンや自己免疫疾患、骨粗鬆症ほかの病気を引き起こす環境を作り出すことになる。

 

重要なことは、「前立腺ガンのような病気は、良いものにしろ悪いものにしろ食べ物の及ぼす影響がいかに大きいか」といことを自覚することである。

ビタミンDを取り巻く複雑なネットワークの存在を発見したことから、私たちは「どの機能が最初に働き、どれが次の機能に続くのか」とすぐに推測したがるが、ネットワークの中の反応だけを独立して考えることは大きな誤りである。

病気予防のため、体の中できわめて複雑な方法で連携し作用し合っているという「膨大な反応数」は実に感動的だ。

ガンのような病気を引き起こす原因を完全に説明する唯一のメカニズムなど存在しない。このようなことを考えるだけでも馬鹿げたことだろう。しかし、私にわかっていることは、次のようなことだ。

ここで見てきたように、ガンはきわめて組織的なネットワークを背景にして形成されていく。そして、完璧な証拠によって、「乳製品や肉を摂取することは前立腺ガンの重大な危険因子となる」という結論に導かれた、ということである。

第11章 私たちの健康と食べ物に関する「八大原則」

表13表14は下に添付しています。


ご参考牛乳消費量と発ガンとの関係性について

下記の2枚の資料はネット上にあった情報を集め、自分なりに「牛乳消費量と発ガンの関係性について」考えたみたものです。時期的に同じではなく、寄せ集め情報によるものなので信頼性に課題はありますが、これを見ても牛乳と発ガンの関係は高いと考えて問題ないように思います。

なお、資料の下に参考とさせて頂いたサイトのリンク先や図を添付しています。


こちらのサイトでは、牛乳・乳製品消費量(2009~2011の平均)が確認できます。

この右側上部に「この統計の内訳データ」と書かれたボックスがあり、この中の上から6番目に(乳がん)はあります。

「乳がん検診受診率の国際比較(50~69歳)」のグラフはこちらの花王グループさまのサイトに出ています。

 

がんの話ではないのですが、「チャイナ・スタディ」のp410-412に、『「牛乳は危険な食品」を裏付ける研究』と題する章の中で、フィンランドで1980年代後半と1990年代半ばに開始された研究についての記載がありました。フィンランドが牛乳消費大国ゆえに、牛乳の安全性に対する意識が高いということだと思います。

 


【がん登録の歴史】 

資料はPDFです。国立ガン研究センターのサイト内にあるものです。