がんと自然治癒力5

1971年のニクソン大統領の「がん撲滅宣言」に続き、1975年、フォード大統領は栄養問題を検討する上院特別委員会を設置し、世界規模の調査を実施するよう指示をしました。

 

著者:末松俊彦(医学博士)

出版:ヘルス研究所

発行:初版2012年1月30日(ヘルス研究所さまに確認済)

注)ブログでは記載された内容を箇条書きにしています。

1.マクガバン・レポートとは?  

マクガバン・レポートとは、1977年(昭和52年)に、アメリカ上院議員であるマクガバン氏(民主党の元副大統領候補)が政府に提出したレポートのこと。

●当時の死亡率は第一位が心臓病、二位はがん。一位の心臓病の治療費は180億ドル(約2兆円)に達し、この危機的な状態を打開するための医療改革の一つ。1977年に国民栄養問題アメリカ上院特別委員会が設置された。 

2.マクガバン・レポートの問題提起 

●国民栄養問題アメリカ上院特別委員会での「食事(栄養)と健康(慢性疾患)の関係」について、世界的規模での調査と研究は7年の歳月と数千万ドル(数十億円)もの国費が投入された。

●世界各国の医学者・栄養学者など、3000人以上に協力を求めた。 

まとめられた報告書は5000ページにも及ぶ膨大なもので、世界各国の政府や医学界に衝撃を与えるものだった。

●報告書では、ハンバーガーやステーキ、アイスクリーム、炭酸飲料などが完全に否定された。

●報告書では、先進国ほど不自然でひどい食事を摂っており、がん・心臓病・糖尿病の原因になっているとされた。また、20世紀初めのアメリカではがんや心臓病は珍しい病気であったとされた。

●報告書では、現代医学は手術や薬に偏りがちで、栄養については盲目的な医療を行っている。新しい栄養学をとり入れた医学に替える必要があると結論づけられた。

●報告書の中では、肉食中心に偏った食生活が引き起こした『食減病』であり、「これは薬では治らない。われわれはこの事実を素直に認めて、早急に現在の食事の内容を改める必要がある」と述べ、ただちにその改善に取り組むよう、政府に強く勧告した。また、食事内容を改善すれば、がんの発病もがんによる死亡も20%減少し、心臓病は25%減少、糖尿病は50%減少するとする推計学的予測も報告書に含まれていた。

画像出展:「マクガバンレポート」

3.7項目にわたる改善目標   

(1)野菜・果物・全粒(未精製)穀物による炭水化物の摂取量を増やす。

(2)砂糖の摂取量を減らす。

(3)脂肪の摂取量を減らす。

(4)とくに動物性脂肪を減らし、脂肪の少ない赤身肉や魚肉に替える。

(5)コレステロールの摂取量を減らす。

(6)食塩の摂取量を減らす。

(7)食べ過ぎをしない。

画像出展:「マクガバンレポート」

4.デザイナーフーズ計画   

●1979年にアメリカ政府や研究機関は、「ヘルシーピープル」という全米規模の健康政策を開始した。

●1990年代に入り、アメリカがん研究所が「デザイナーフーズ計画」を立ち上げた。この計画では、長年実施されてきた疫学調査のデータをもとに、がん予防に効果的な食品及び食品成分の約40種類を研究して、重要度(上記ほどがん予防が高いと考えられる)に応じて積み上げられた3層からなるピラミッド型の図が作られた。

 

画像出展:「マクガバンレポート」

5.日本とアメリカのがん死亡率が逆転 

●近年、日本人のがんによる死亡者数は増加の一途をたどっている。一方、アメリカではがんの患者数や死亡者数が毎年減り続けている。

●ニクソン大統領の「がん撲滅宣言(1971年12月23日)」から取り組んできた(食事の改善、禁煙・運動習慣・定期健診など)成果である。

6.お手本は昔の日本人の食事 

●5000ページにも及ぶマクガバン・レポートには、「最も理想的な食事は日本人の元禄時代(江戸中期)以前の食事である」と報告されている。

画像出展:「マクガバンレポート」

7.第2のマクガバン・レポート「チャイナ・スタディ」 

1983年(マクガバン・レポートから約6年後)から中国全土を対象にした史上最大の疫学調査が、アメリカの大学と中国衛生部・中国医療科学研究院によって行われた。これは第二のマクガバン・レポートともいえるもので、「チャイナ・スタディ」というレポートとしてまとめられた。

 注)「チャイナ・スタディ」については、次回のブログ(がんと自然治癒力6)で取り上げます。

●「動物性食品の摂取はがんの最大の要因であって、このような食習慣を変えることが、がんの予防や改善には最も大切なことである」と報告された。

8.ファイブ・ア・デイ運動  

●アメリカがん協会は、がん予防の主な食事指針として、①食べ物の大半を植物性の食品にすること、②高脂肪食品(特に動物性の食品)の節制をよびかけ、1991年には、ファイブ・ア・ディ運動(1日5皿「品目」以上の野菜と果物を摂ろうというもの)を始めた。これは、野菜や果物などの植物性食品全般には、色素や香り・苦味のもとになるファイトケミカル(植物由来の化学物質で、活性酸素を中和する抗酸化物質の総称。ポリフェノールやイソフラボンなどをいう)という物質が含まれているからである。

がん細胞は、正常な細胞の遺伝子が活性酸素(酸化力の強い酸素)によって傷つくなどして発生するため、ファイトケミカルの抗酸化力(酸化を防ぐ働き)は、正常な細胞を活性酸素の害から守り、がんの予防につながるとされた。

画像出展:「マクガバンレポート」

9.アメリカのがん問題調査委員会が代替医療を推奨 

アメリカでがんの死亡率が低下した主な要因として、代替医療の普及も挙げられ、アメリカの問題調査委員会では、とくに代替医療を推奨している。

代替医療とは、がんの通常療法(抗がん剤・放射線・手術)以外の治療法(食事療法・薬草療法・行動心理療法・薬物の生物学的治療法など)を指す。

●1990年にアメリカ議会技術評価局(OTA)の、がん問題調査委員会が発表した「がんの代替療法」という報告書によって推奨され、広く世界中に知られるようになった。

※OTAはThe Office of Technology Assessmentの略でアメリカ議会に1972年から1995年まで存在していたものです。ネット検索したところ、『The OTA Legacy』という英語のサイトがありました

●WHO(世界保健機構)の調査によれば、世界総人口の65~80%の人々が、西洋医学以外の代替医療を何れかの方法でとり入れていると報告している。

●ドイツ・フランス・イギリスでは医学教育の中に代替医療教育を導入しており、医師国家試験にも代替医療に関して出題されている。

●アメリカにある125の医科大学のうち82校(66%)が西洋医学を補完する医学として、代替医療分野の講座が設置されている。

画像出展:「マクガバンレポート」

10.自然治癒力を高めることが重要

医学の父、医学の祖ともいわれる古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、「自然は不調和を回復しようとする力を人体に与えており、これを自然治癒力という。これを助けるのが医術であり、治癒の根本方法である」と重要な教訓を後世にのこしている。

ファイブ・ア・ディ運動のような自然治癒力を高める方法で、健康を維持し、健康をとり戻すことがより一層基本的、且つ重要なことといえる。

 

画像出展:「マクガバンレポート」

ご参考

「栄養学の講座をもつ医学部」をキーワードに検索したところ、たいへん興味深い記事がありましたのでお知らせします。

また、大学では徳島大学さまが力を入れていることがわかりました。

医学部での栄養学講義 医師の7割以上が「必要」 適切な食事療法に向けて』 こちらは、医師限定コミュニティサイト「MedPeer」を運営するメドピアさまの調査によるもので、公開日は2012年6月6日となっています。