感覚過敏・感覚刺激

昨日、お電話で感覚過敏に関するご質問を頂きました。そこで、情報の整理整頓を目的に「感覚過敏」「感覚刺激」「マッサージ」をキーワードに洗い出してみました。その結果、あらためてお伝えしたいポイントは次の2点になります。また、今回洗い出した内容も列挙させて頂きま
1.視覚や聴覚に加え、基本的な感覚ともいうべき触覚、固有覚、前庭覚の働きと様々な感覚間の情報統合が、子どもたちの発達の基礎となる。
2.自宅でできる対策として「五感のバランスのための乾布摩擦」がお勧めである。

感覚過敏は発達全体に影響を及ぼす可能性をもっている
自閉症と感覚過敏
・感覚過敏とは、最近になって自閉症に一般に認められるものとなった症状です。感覚が非常に敏感になっている状態で、刺激を恐れる場合と求める場合があります。たとえば、嫌な音を恐れて耳をふさいだり、音のする部屋に入らなかったりします。また、水路を見つめ小石を落とす行為をいつまでも続けたり、ビデオの同じ箇所を何度も見続けたりします。感覚過敏は視覚や聴覚など、あらゆる感覚に現れ、また、敏感性としてだけでなく鈍感性としても現れる、非常に多様な側面をもつ症状です。
・感覚過敏があると、刺激に対する反応が大きくなり、好きな物は非常に好んで求め、嫌いな物は恐れて避けるようになります。そのため、外界の捉え方が通常とは異なり、行動の仕方も通常と異なってくると考えらえます。このため、人々と共に生活することや学ぶことが難しくなってきます。ことばを学び、人々とコミュニケーションができないと、社会に参加することができなくなります。このように、感覚過敏は発達全体に影響を及ぼす可能性をもっています。

五感のバランスのための乾布摩擦(皮膚刺激で五感の感受性のバランスがよくなる)
発達障害児の言語獲得
乾布摩擦について
・遅れてことばが発達する子どもに共通して、感覚器官のダイナミズムに大きな変化があります。赤ちゃん時代からずっと口は飲む、食べるだけしかしていません。それ以外は泣き声だけで、自分の声を意識していません。少しことばが出はじめると、口の中の感覚が大きく変わりはじめます。同時に、聴覚や視覚にも変化が生じ、耳ふさぎや眼球擦りなどが生じることがあります。赤ちゃんはだれでも、五感の感受性にアンバランスがあり、たくさんの皮膚刺激で、五歳までにバランスがよくなります。
通常、聴覚優位なので、人の話を聞くだけでことばの学習が進みます。優位性がさらに過剰だと、耳ふさぎを示します。皮膚刺激の過敏、鈍感、味覚や嗅覚にこだわりや偏りを示す子もいます。
五感のバランスのために、乾布摩擦をして下さい。全身、朝、晩、服の着換えの時に、擦ってやってください。健康増進のためではなく、五感のバランスのための乾布摩擦なので子どもの顔を見ながら気持ちよさそうな表情を手がかりに、最適な擦り方を見つけてください。頭から足の裏まで、指の一本一本まで、嫌がる所はアンタッチャブルゾーンとして擦らないように、その境界線は特に丁寧に擦っていると、ゾーンは縮小していくはずです。消えるまで朝晩続けていると、ゆっくりと五感のバランスがよくなるはずです。

触覚敏感性問題の対策
自閉症の脳を読み解く
・じわじわと圧力をかけると触角が鈍くなることがある。マッサージは、思いやりを教える役にも立つ。自閉症の人のほとんどが、加重ベストを着たり、重いクッションの下にもぐりこんだり、しっかりマッサージを受けたりして、触覚を鈍らせると、ハグされることに耐えられるようになる。
・ちくちく、ヒリヒリする衣類に対する感受性を鈍くするのは困難だが、新しい衣類はすべて、肌に触れる前に何回か洗濯する。タグは全部取り除く。下着を裏返しに着る(継ぎ目が肌に触れないように)。
・診察に対する敏感性は、ときには、診察で触れられる部分にじわじわと圧力をかけると、鈍くすることができる。

ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要である。
発達障害について(発達障害の子どもたち)
・ボディイメージを育てるためには触覚と固有受容覚が特に重要になります。いわばボディイメージを育てる栄養です。もちろん、マッサージなどで他動的に触覚や固有受容覚を刺激することは効果的かもしれません。ただし、ボディイメージを高めるためには、能動的体験の中で触覚、固有受容覚を体験することも必要です。お風呂の中では、お湯の抵抗がありますので、身体を動かすと触 覚と固有受容覚のフィードバックがあるために身体を意識しやすくなります。同じ理由からスイミングもいいと思います。アスレチック遊具とかクライミングウォールにチャレンジすることもお勧めです。要は能動的に触覚刺激や固有受容刺激を感じて動きを作り出すことが大切なんです。しかも、いつもやらないような未経験の運動をやったほうがボディイメージは育ちやすいと思います。
・マッサージ:ブラシや素手でマッサージして、だんだんと感覚を受け入れられるようにします。治療者との関係を作ってから、「こうやって触れられれば、こういう感覚が入ってくるのだ」と覚えていってもらいます。身体の中では背中が受け入れやすい場所ですので、そこからマッサージを始めます。腹部、首、顔などは過敏反応が出やすいので、最初はやりません。マッサージはまず受け入れられる部分だけ行ったほうが良いでしょう。

体の内側に入る感覚刺激が足りないから、感覚を入れたい
療育
・多動といわれる状態は、動きたいという身体の内側にある感覚的な欲求が働いていることが原因の一つといわれています。「お腹がすいてご飯を食べたい」という生理的な欲求と似ていて、「体の内側に入る感覚刺激が足りないから、感覚を入れたい」という行動です。私たちが、窮屈な乗り物に長い時間乗っていると動きたいという気持ちにかられますが、それに似ています。
体の内側に感じる感覚は「固有覚」(筋肉や関節に感じる感覚)と「前庭感覚」(体の傾きや動いているスピードを感じる感覚)があります。どちらも感じにくいと跳びたくなったり、走りたくなったり、回転したくなったりします。ですから、我慢させすぎることのないように、内的な感覚欲求を満たしてあげることを考えましょう。
外遊びで、跳びはねたり、回ったりするといった遊びが少ない現代、この内的な感覚が足りないことと、子どもたちの行動に落ち着きがないと感じることは関係が深いと考えられます。

感覚間の情報統合が子どもたちの発達の基礎となる
感覚統合法の理論と実践
赤ちゃんは当初は生まれつき持っている反射や反応が助けてくれますが、徐々に感覚運動体験を積み、この多様性に富む複雑な世界に対し、柔軟に行動できるよう、自らの反応を複雑化していきます。赤ちゃんの学習は感覚刺激への反応に始まり、動きの形で反応し、母親やその他の人々も含めた広い意味での環境との相互作用で成長します。基盤となる感覚運動発達は、姿勢、手指の巧緻運動と各部位(首、肩、肘など)の固定、感覚-運動-感覚間の統合(話を聞きながらノートに正しく書き取る等の総合的動作)などです。
脳の研究やリハビリテーション学の進歩により、視覚や聴覚に加え、基本的な感覚ともいうべき触覚、固有覚、前庭覚の働きと様々な感覚間の情報統合が、子どもたちの発達の基礎となることが分かってきました。    
動物が運動する場合、運動に関連して常に二つの感覚が必要です。一つは環境と自分との関係、一つは自分の中心と体の他の各部分との関係を教える感覚です。前者が前庭覚、後者が固有覚であり、これにより空間の中での運動が可能になります。
50cm幅の溝を跳び越すとき、大げさに身構えて、1mも2mも跳ぶということはしません。視覚は溝の幅と接地点の状況を教え、足底は今踏んでいる地面の硬さを教えます。私たちは前庭覚や固有覚などから得た記録に基づき運動の計画を立て実行します。もし、この溝が2mであれば、運動はもっと慎重に計画されます。接地したときに、倒れないのは重力空間に対する頭部の位置関係、その位置を支える足の頭部に対する位置と運動の関係が入力により絶えずコントロールされているからです。
・運動活動を通して経験される固有感覚は、触覚とも関連しながら、子どもの筋緊張を適正にするとともに、興奮を鎮め、触覚の敏感性を低減します。したがって、固有感覚刺激は、覚醒水準が高く多動性を示す子どもに対しても、反対に注意機能が低下して寡動な子どもに対しても、必須な感覚刺激といえます。
発達障害児では、感覚の基本的な調節作用がうまく働いていないことが多く、感覚入力に非常に敏感であったり、逆に鈍感であったりします。その結果、覚醒水準の障害や注意の障害、あるいは多動や寡動などの動きの問題が目立ちます。