神経リンパ反射療法(後編)

今回のブログは、「神経リンパ反射療法(前編)」に続くものです。目次全体も前編に記載されていますのでご参照ください。

 

第2部 神経リンパ反射点を用いた治療

6 神経リンパ反射点を用いた基本治療
・どの反射点に関しても、重要なのは、周辺組織を近づけることを通して陽性の神経リンパ反射点を解放させ、「ネスト(巣、あるいは休める所という意味があります)」を形成することである。そうしてリラックスさせ、副交感神経系または再生へのスイッチの切り替えを行う。
6.1 身体器官治療と反射点グループ
・個々の器官の治療のほかに、チャップマンとオーウェンスは急性疾患と複合機能的病像のためにも適応症に関連づけた反射点グループを導入した。これらは今日の臨床的見地からすぐに自然に納得できるものではないが、自然療法的視点からは、それは理解可能で有意義なものである。
7 ホルモン機能障害と自律神経失調症(ストレス)
7.1 概要
・自律神経系のストレス症状とホルモン機能障害は互いに似ていることが多く、相互が原因となっていることも珍しくない。「攻撃や防御」反応という意味における交感神経系のストレスが刺激されるので、特に運動器官と中枢神経系が活性化され、血液と栄養が優先して供給される。同時に再生と構築を担う代謝器官の栄養状態は悪化する。
8 感染症群と免疫刺激の可能性
8.1 概要
・オステオパシーの起源には、内臓疾患と感染症疾患において徒手によるテクニックで治療の助けを得ようとする目的が存在した。そのためチャップマンも神経リンパ反射点をまずは感染症に役立てようとした。そのため身体器官の接尾辞に「-itis」を付けて表現した。感染症群と主要な補足的反射点が経験によって発見され、実践でその効果が証明された。
9 胃腸群と消化器官
9.1 概要
・チャップマンとオーウェンスによる胃腸群の治療は、消化器官疾患とリンパへの負荷と感染症における基本的な治療を示す。直接的な器官の関係性は非常に理解しやすい。甲状腺を組み込むことは、規則正しい消化機能への自律神経系制限の意義を示すものである。
 チャップマンとオーウェンスは、重く局所的な器官疾患を研究の中心に置いていたが、ここではさらに機能的症候群、特に回盲弁の意義についても取り上げる。
10 泌尿生殖器エリア
10.1 概要
・泌尿生殖器エリアの反射点は、骨盤底とその上に位置する横隔膜の機能と密接に結びついている。ストレス下で不特定に活性化されることが多く、自律神経系の過負荷ではともに治療することが検討されなければならない。本テキストにおいて女性の生殖器官を強調しているが、男性における生殖器官も少なくとも女性と同様に活発であることを記しておく。ストレスによる負荷は男女に関わらず同様に該当する。
 恥骨ゾーンの周辺と骨盤底のエリアにおける治療の症状と位置に関しては、特に注意深い取り組みが必要である。なぜなら多くの人は性的器官に関してトラウマに感じてしまう可能性があるからである。「Woman's care」や「Man's care」といったテクニックとともに治療することは、緩和をもたらすことが多い。ただし、これらのテクニックは明白なセッティングで、できれば同性のセラピストによって行われるべきである。
11 感覚器官と中枢神経
11.1 概要
・感覚器官と中枢神経系のための反射点は、頭部の感覚器官の診断と治療において、眼、鼻、耳の感覚の質にそれほど関係があるわけではないことを留意すべきである。それらはより器官の栄養変化に関連する。そのため夜盲症や高齢者難聴より、結膜炎や騒音性難聴の方が、相応する神経リンパ反射点の反応が大きい。また、感覚器官の「極度に緊張した状態」もチャップマン反射点に反映されやすい。そのようにして、非正規の場合、視力が悪化している側に過敏な箇所を見つけることが多い。
 眼、鼻、耳、大脳、小脳のソーンはクラニオセイクラル・セラピーにおいても重要である。

クラニオセイクラル・セラピーの施術は、病気の症状にではなく、人というシステム全体に働きかけるもの。セラピーの概念としては、頭蓋仙骨系を直接的、間接的にリラックスさせることによって、頭蓋の骨と骨を関節のようにつなぐ頭蓋縫合が柔軟になって緩んでいき、その働きで、自調整力と自然治癒力が改善される効果を得るものである。
 このセラピーはリハビリテーションや看護や介護、末期医療など、さまざまな現場で利用できるため、理学療法士、マッサージセラピスト、代替療法家、助産師などのプロフェッショナルな方々にも、スキルを持つ人が増えている。

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12 代謝の活性化と変化:骨盤・甲状腺症候群、治療チャート
12.1 概要
・肥満、2型糖尿病、高血圧、閉塞性動脈硬化症、痛風、脂質代謝障害などの国民病は、いわゆるメタボリック症候群に数えられる。神経リンパ反射療法からの視点としては、線維筋痛症のようなリウマチの形態範囲における疾患もこれらのグループに属すると考えられる。自然療法では、ピッシンガーによる自律神経基礎システムと間葉の浄化を、これらの病像の理解を広め、治療への提案の理論的なきっかけになるように提示しており、臨床医学もゆっくりとこれらの考えに近づいている。

 

第3部 グッドハート反射点による筋治療
14 グッドハート反射点による筋治療
14.1 概要
・最初のチャップマン反射点ですでに運動器官の治療を示すゾーンについて言及した。上肢神経痛の反射点、硬直した頚部、坐骨神経痛である。神経リンパ反射点の治療の重点が内臓の治療にあることは変わりない。
 グッドハートが取り入れた神経リンパ反射点の筋への関係性の解釈によって、診断と治療の可能性が大きく拡大した。この章では、運動器官の治療のためのコンセプトについて、その意義と可能性をより深く紹介したい。その中では、我々の診療所で効果を実証した、いくつかの治療ゾーンの例と治療の関連性を取り上げる。
14.2 頚椎
・頚椎の運動制限に関連する三つの神経リンパ反射点の効果は常に驚くべきものである。治療を通して、多くの患者において回旋、伸展、屈曲運動可動性が改善している。そこでは副鼻腔、鼻、咽頭の反射点が重要である。
 肩甲帯に作用するすべてのゾーンは追加的に頚椎の可動性にも影響を与える。頚部・肩部位における反射点を取り上げる。
14.3 肩甲帯
・肩甲帯における不調の最も多い原因は、治療の基礎でも紹介した胸骨結合の負荷姿勢にある。小胸筋、前鋸筋、鎖骨下筋の短縮は肩甲骨と鎖骨を前面・下方に引く。小胸筋は上肢の内転と内旋を通してその姿勢を強化する。それを通して伸長した頚筋と肩の筋における代償的な筋の過緊張をもたらし、同時に上肢筋における機能的・反射的障害も生じさせる。肩・上肢部位における偽性根性誤感覚の広がりは、可動性制限と緊張疼痛と同様の結果である。僧帽筋による棘突起への動きは、局所的な背筋深部を通して該当する頚椎と胸椎の髄節における代償的な遮断をまねく。大胸筋は肩甲帯における対抗する緊張を強める。
14.4 上肢

内転筋連鎖
 驚くべき反射点のひとつが内転筋連鎖のためのゾーンである。それは肩のエリアの内転に効果的であるだけではなく、下肢の内転筋緊張と上肢の把持と保持の機能全体にも効果的である。
 グッドハートの反射点「内転筋群」には上腕二頭筋、円回内筋、長母指屈筋が属する。反射点は小胸筋と大胸筋のラインに位置する。小胸筋の烏口突起に向かうラインには腕橈骨筋のためのゾーンが存在する。烏口突起には小胸筋のほかに上腕二頭筋短頭と烏口腕筋が起始する。我々の検査によると、このゾーンは少なくとも回外筋と、母指と少指、そして薬指との対立を実現する手の筋にも影響を与える。


内転筋ゾーンは次に掲載した父親と娘の写真で観察することのできるすべての機能に影響を与えている。父親は上肢を内転し、肘を屈曲し、前腕を回内させ、娘を安全に保つために母指と他の手指で把持する。娘は回内させた手で手すりをしっかりつかむ。これらの姿勢パターンは日常生活によく生じるものである。

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14.5 体幹
・腹斜筋と腹横筋
 薄筋は恥骨結合の外側縁に起始している。薄筋と内転筋は、筋膜の緊張システムにおいて、腹直筋と腹斜筋および腹横筋のために対抗する筋であり安定させる筋である。正中前面連鎖では、内転筋と薄筋から腹筋を通して胸筋に力の伝達が生じている。

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・仙棘筋群
 仙棘筋群として脊柱傍の起立筋全体が挙げられる。
 背側はL2の肋骨突起の両側に仙棘筋群のための反射点が位置する。この反射点は同時に腸腰筋と腹壁にも作用する。
 L3は明確な可動性を有す最後の腰椎である。L4とL5は靭帯と筋膜を通して仙骨と腸骨に結びつき、わずかな弾性をもつ比較的硬直した機能ユニットを形成する。L3と場合によってはL2への筋の結びつきは仙棘筋群の可動部の下方終末部を意味する。ここには相応する高い受容器の層が存在すると考えられる。また、この高さには、L2とL3の棘突起に起始する胸棘筋がある。この筋の起始と停止の切り替えゾーンT11とT12の高さに存在する。興味深いことに、仙棘筋群のための二つ目の可能性のあるゾーンとして後頭部外側の正中傍の上方起始部が有効である。
14.6 骨盤と下肢
・大殿筋
 背側の大殿筋ゾーンは、大腸のための結合織マッサージゾーンをカバーする。グッドハートによって、上後腸骨棘とL5棘突起の間は大殿筋ゾーンだと明記された。筋膜メカニズムの観点からは、我々が挙げたゾーンは納得がいくもので、臨床でも実証された。
 立位における15°の屈曲角度までは、脊柱は特に脊柱起立筋によって支えられている。そこからは次第に腰部の筋膜が支える働きを担う。30°からは筋膜が背筋よりもより支える機能を担う。大腸疾患による反射阻害が生じている場合は、腰背腱膜はその弾力性の一部を失う。腸骨稜を通して緊張は大殿筋の起始に伝わり、それは反射的にトーン(緊張)を高めることで反応する。筋膜上で力は腸脛靭帯に伝わり、大腿において腸脛靭帯が中央に位置することから腹側外側広筋に伝わる。このルートが大腸のためのゾーンと大殿筋のためのゾーンの二重の意義を説明する。

 

第5部 他の療法とのコンビネーション
17 マッサージ
・概要
 神経リンパ反射点は基本的にマッサージテクニックでもあることから、チャップマン反射点も自然に他のいくつかの療法によって補完することができる。これらの療法は、バランスをとり刺激を与えるために、補完的に投入することができる。
 「マッサージ」という定義は多様なテクニックと適応症を含む。異なるマッサージテクニックは常に似たようなメカニズムを刺激する。組織のトーン(筋緊張)、栄養状態、敏感性などの変化は、局所的な障害を示し、反射弓における障害に対して髄節徴候と髄節を超えた徴候を示す。この変化はマッサージにおける診断の基盤となり、同時に必要な治療の質を決める。局所的な特定と独特な治療の質は、多くのマッサージの適応症において投薬治療より効果的である。
どちらかというと局所的な作用
 古典的なマッサージ、サイリャックスによるマッサージ、腸マッサージ、アイダ・ロルフによる筋膜マッサージ、マニュアル・リンパドレナージがある。
伝達性の作用を伴う反射マッサージ
 結合組織マッサージ、骨膜マッサージ、足部の反射ゾーン療法、チャップマンとグッドハートによる神経リンパ反射点マッサージ、、ラドロフによる指圧と鍼治療マッサージがある。